2030年の自動運転(2022年最新版)

移動サービスはじめ自家用レベル4も



局所的ながらも実用化が始まった自動運転技術。2020年代には裾野を大きく広げ、同技術を活用したさまざまなサービスが社会に浸透していくことが予想される。自動運転時代の幕開けだ。


では、節目となる2030年はどのような社会となっているのか。この記事では2022年5月時点の情報をもとに、2030年の自動運転社会について予測含みで解説していく。

■自動運転オーナーカー
レベル4オーナーカーも普及段階に?

ホンダ・レジェンドを皮切りにレベル3の市場化が始まったばかりのオーナーカー。当面は、各社がフラッグシップモデルなどを中心にレベル3技術の実装を進める動きが続くものと思われる。

【参考】レベル3については「自動運転レベル3市販車、2022年における各社の発売計画一覧」も参照。

オーナーカーにおけるレベル4は、ODD(運行設計領域)の設定や手動運転との両立面などでハードルが高い。おそらく高速道路などの自動車専用道路をODDとするシステムが先行するものと思われるが、渋滞時限定などでは使い勝手が悪く、通常の制限速度域でいかに自律走行を可能にするかがカギとなりそうだ。


その意味では、レベル3の進化を待つ可能性もある。レベル3が通常の制限速度域で走行可能になり、知見を積み重ねることでレベル4への道を開く――といった筋道が王道となる。

一方、イスラエルのモービルアイは中国の浙江吉利控股集団(Geely)とのパートナーシップのもと、レベル4を実現する「Mobileye Drive」を搭載した自家用モデルを2024年にも中国市場で販売する計画を明かしている。どのようなODDを設定するのか、また他のメーカーとの協業など、今後の動向に要注目だ。

【参考】モービルアイの取り組みについては「自動運転で未知の領域!「市販車×レベル4」にMobileyeが乗り出す」も参照。

警察庁によるヒアリングの結果は?

なお、国内動向としては、警察庁が2021年3月に発表したレポート「自動運転の実現に向けた調査研究報告書」の中で自動運転システム開発者などに対するヒアリング結果が公表されている。


レベル4自家用車の実用化目標時期に関するヒアリングでは、2020年代前半が1社、2020年代後半が2社、2030年以降が1社となっている。2020年代前半の実現を目指す意欲的な企業が1社存在するのは特筆もので、2030年までに計3社が実用化する意向を示している。

あくまで目標ベースだが、2030年までに何らかの形でレベル4オーナーカーが実用化される可能性は十分あるということだ。今後、どのような進化を遂げていくのか注目したい。

【参考】警察庁によるヒアリングについては「自動運転レベル4の自家用車「いつ実現できます?」 警察庁が事業者ヒアリング」も参照。

自動運転バス・シャトル
小型バス・シャトルがまず普及
出典:COAST Autonomous公式サイト

一定路線を走行する自動運転バスや自動運転シャトルはODDを設定しやすく、小型モデルであれば比較的実用化しやすい自動運転サービスだ。低速で運行する仏NAVYAのARMAやカートを改造したモデルなどはすでに実用化域に達している。

国内では、福井県永平寺町と沖縄県北谷町で遠隔監視・操作型のレベル3運行が始まっており、今後レベル4に向けた取り組みに着手する。国の目標では、2025年度を目途に40カ所で無人自動運転サービスの実現を目指す方針で、その大半は小型の自動運転バスやシャトルになるものと思われる。

自動運転中型バスの実証も進められているが、混在空間においてサイズ・重量のあるモビリティを自動運転で走行させるには数段ハードルが上がるため、実用化にはもう少し時間がかかりそうだ。

【参考】自動運転バス・シャトルについては「自動運転バス・シャトルの車種一覧(2022年最新版)」も参照。

2030年の国内自動運転シャトルは170台規模に?

富士経済が2020年9月に発表した自動運転シャトルの国内市場調査によると、2030年に170台、2035年にまでに460台の自動運転シャトルが投入され、市場規模は322億円に達すると予測している。

一方、Report Oceanが2021年7月に発表した予測では、半自律型バスと自律型バスの市場は2020〜2027年にCAGR(年平均成長率)23.1%以上で成長すると予測している。

2030年頃には中型・大型の自動運転バスも実用化が始まっており、シェアを拡大し続けているものと思われる。ARMAなどの汎用性が高い小型モデルは普及し、あちこちで市民権を得ている可能性が高そうだ。

自動運転タクシー
WaymoCruiseがすでに実用化
出典:Waymo公式サイト

Google系Waymoなどすでにサービスインしている自動運転タクシー。米MarketsandMarketsのレポートによると、2021年の市場規模は617台という。なかなかリアルな数字だ。

継続的なサービスが行われているのは米国・中国の一部都市にとどまるが、現在世界的な拡大局面を迎えつつあり、各国の法整備と相まって実用化に向けた実証が本格化し始めている状況だ。

米GM系Cruiseは米国内やドバイなどでサービス展開するプロジェクトを進めており、同社CEOのKyle Vogt氏は2030年までに自動運転タクシーを100万台まで増やす目標を明らかにしている。

【参考】Cruiseの取り組みについては「GM傘下Cruise、自動運転タクシー「2030年に100万台」」も参照。

中国7都市で自動運転タクシーの実用実証を進める百度(Baidu)CEOのロビン・リー氏も、2030年までに100都市で展開する目標を明らかにしているようだ。

【参考】百度の取り組みについては「たった870万円!中国アポロの自動運転タクシー、製造コスト判明」も参照。

2030年には140万台規模に?

MarketsandMarketsの調査では、自動運転タクシーの市場規模はCAGR136.8%で成長し、2030年には144万5,822台に達すると予想している。

2025年ごろまでに世界各国で法整備が進み、さまざまな条件下で実用化を見越した実証が展開されるものと思われる。次第に、新たなエリアに自動運転車を導入しサービス展開する技術や手法のノウハウが蓄積されマニュアル化が進み、新規導入が促進されていく可能性が高い。

導入エリアの増加によって量産コストも低下し、イニシャルコストも低下していく。こうしたコストの低下が運賃にどこまで反映されるかも興味深いところだ。

一方で、既存タクシーとどのように共存していくかといった観点にも注目が集まる。2030年ごろには自動運転タクシーも一定のシェアを誇る規模に成長しているものと思われるが、有人タクシー市場も根強くシェアを確保しているはずだ。

数十年後の将来、自動運転タクシーが有人タクシー市場を上回る可能性が高いが、その逆転はいつ訪れるのか。2030年時点でどのような比率となっているかなども注目だ。

自動運転トラック
レベル4は海外が先行、国内では2025年以降が目標に
出典:Plusプレスリリース

海外では、米国・中国を中心に自動運転トラックの実用化を目指す取り組みが活発化している。日本に比べ長距離輸送の比率が高く、ドライバー不足が後押しする形で開発需要が高まっているのだ。

スタートアップ・新興企業の活躍も著しく、すでに量産段階を迎えた中国Plusをはじめ、TuSimpleやWaymo、Aurora Innovation、Embark Trucks、Kodiak Roboticsなど各社が数年以内の実用化を視野に入れている。大半は高速道路などの専用道でレベル3~4走行を可能にするシステムとなっているようだ。

法規制に左右される面もあるが、おそらく2025年ごろまでに複数の国で本格実用化が始まり、2030年ごろには普及期を迎えている可能性が高そうだ。

国内では、後続車無人の隊列走行技術の開発が先行している印象で、2020年度までに一定の成果を上げている。高速道路におけるレベル4は、2025年以降の実現を目指す構えで、自家用車におけるレベル4技術の確立を待つ形で導入が進んでいくものと思われる。

【参考】自動運転トラックについては「自動運転トラックの開発企業・メーカー一覧(2022年最新版)」も参照。

■自動配送ロボット
2030年にはスタンダードな存在に?
出典:Nuro公式ブログ

歩道を中心に自律走行し、ラストマイルを担う自動配送ロボットの実用化もすでに始まっている。海外では、Starship TechnologiesやNeolixなどのスタートアップをはじめ、アマゾンや京東集団といったEC大手による開発も盛んだ。

国内でも開発が大きく加速しており、草分け的存在のZMPをはじめ、Hakobotやティアフォー、パナソニック、ホンダなど各社が参戦し、実用化に向けた実証を進めている。

車道を走行する比較的大きなモデルの開発を進める企業もあり、海外ではNuroが先行している印象だ。国内でも京セラコミュニケーションシステムが公道実証を行っている。

国内では、道路交通法の改正などにより2022年度までに公道走行・実用サービスが可能になる見込みだ。導入を試みる小売り各社の動向などにも左右されそうだが、安定運行と費用対効果が明確になれば一気に導入が進み、スタンダードな存在となっている可能性も十分考えられる。

Astute Analyticaによると、世界のデリバリーロボット市場は2027年までに3億5,660万ドル(約460億円)に達すると予測している。2030年ごろにはどこまで普及が進んでいるのか、興味深いところだ。

【参考】自動配送ロボットについては「自動配送ロボット(宅配ロボット)最新まとめ!国内外で開発加速」も参照。

■各種ロボット
さまざまな場面で活躍するロボットが浸透?

屋内向けのデリバリーロボットをはじめ、警備ロボットや清掃ロボットなど、さまざまなロボットの実用化が進んでいる。IoT化を推し進める動きやコロナ禍などが背景となり、無人化技術やロボットへの関心が高まりを見せている。

屋内をはじめ私有地内では法規制が緩く、導入のハードルは低い。今後、ロボットが代替可能なタスクにはどのようなものがあるかを模索する動きも活発化し、新種のロボットが続々と登場することも考えられる。

また、ビルなどのIoT化も進み、ロボットの導入を前提とした社会の構築が進んでいくものと思われる。2030年ごろにはオフィスビルや商業ビル、公共施設、観光施設、飲食店など、さまざまな場面で活躍するロボットが浸透している可能性は高そうだ。

■【まとめ】予測を超える成長を遂げる可能性も

2030年まで残すところ8年。2022年を起点に8年前(2014年)の社会を思い返すと、自動運転車は公道走行許可を得るのも今とは比べ物にならないほどの苦労を要し、本格的な実用化を見据え表立った取り組みを進めていたのは米グーグルくらいだ。

しかし、このグーグルの取り組みが開発各社に波及し、わずか8年で世界的に大きな成長をなし得たことは周知の事実だ。

8年という期間で技術や社会受容性がどこまで向上するかは正直なところ未知数だが、AIや半導体の進化によって予測を超える成長を遂げる可能性も考えられる。期待を胸に引き続き各社の取り組みを追っていきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転、歴史と現状(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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