自動運転ベンチャー、続々と大型受注案件!ビジネス段階に突入

LiDAR企業を含む9社の最新受注案件まとめ



自動運転技術の社会実装が本格化の兆しを見せており、市場が活気づいている。自家用車向けの自動運転レベル3をはじめ、移動サービス向けのレベル4、自動運転配送車、各種ロボットなど、量産に向けた動きが活発化しているのだ。


こうした動きに呼応し、自動運転分野のスタートアップにも売上を得る機会が出始めているようだ。この記事では、株式上場を果たしたばかりの卒業組を含め、スタートアップによる大型受注案件を調べてみた。

Luminar Technologies:ボルボ・カーズやSAICの量産車両にLiDAR採用

2012年創業のLiDAR開発スタートアップで、2020年12月に米ナスダック市場に上場した。安価で高性能な製品開発を進めており、パートナー企業はトヨタをはじめとする自動車OEMトップ10のうち7社を含む50社に上る。

同社は2020年、ボルボ・カーズの次世代車両へのLiDAR採用が決まったほか、モービルアイ、ダイムラートラックとパートナーシップを結び、開発力を強化している。モービルアイの自動運転ソリューションなどにもLiDARを供給している。

ボルボ・カーズの新車は2022年量産開始予定のほか、傘下のソフトウェア開発企業Zenseactもルミナーと共同でシリーズ生産向けのフルスタック自律システム「Sentinel」を開発するなど、パートナーシップを深めている。


2021年3月には、中国の自動車メーカーSAIC(上海汽車集団)との戦略的パートナーシップを発表し、新型EV(電気自動車)ブランド向けにLiDARを提供することを発表した。車両は2022年に量産開始する予定で、長期的にはすべての車両ラインにおいてルミナー製LiDARを標準化する計画もあるようだ。

同年5月には、Pony.aiもルミナーと共同開発した新しいセンシングプラットフォームを発表している。同社は2023年に自動運転フリートをグローバル展開する予定としている。

ボルボ・カーズなど大型受注案件が右肩上がりで増加している印象だ。量産時期はおおむね2022年以降となっており、ルミナーの躍進はまだまだ続きそうだ。

【参考】Luminar Technologiesについては「自動運転向けLiDAR開発のLuminar、提携続々!Airbusとも新たに」も参照。


■Innoviz Technologies:BMWの新型EVにLiDAR採用

2016年創業のイスラエルのスタートアップで、2021年4月にナスダック市場に上場した。マグナやAptivなどの自動車部品大手をはじめBMWとパートナーシップを結んでおり、2021年発売予定のBMWのフラッグシップEV「iX」にイノヴィズのLiDARが搭載される。

BMWに採用された「InnovizOne」は2021年に出荷を開始する。また、2022年には新製品「InnovizTwo」のサンプル出荷・シリーズ生産に入る見込みで、今後の動向に注目だ。

【参考】Innoviz Technologiesについては「イノヴィズ(Innoviz)とは?自動運転向けLiDARを開発するイスラエル企業」も参照。

■Innovusion:NIOの新型EVにLiDAR採用

2016年創業の中国スタートアップで、400メートル先まで検出可能な長距離LiDAR「Jaguar Prime」など各種LiDARの開発を手掛けている。

EV開発メーカーの中国NIOと2021年1月に提携を交わし、同社が2022年発売予定の新型セダン「ET7」にInnovusion製のLiDAR「Falcon」が搭載される。

台数などは明かされていないが、数万台規模に達する可能性もありそうだ。

■TuSimple:ナビスターから約7,000台の自動運転トラックを受注

2015年創業の中国系スタートアップで、自動運転トラックの開発を手掛けている。2021年4月に米ナスダック市場に上場した。トラックメーカーのNavistarやフォルクスワーゲングループのTRATON、運輸業のUPS、US Xpressなどとパートナーシップを結んでいる。

2021年までにアリゾナ州からテキサス州、2023年までにカリフォルニア州からフロリダ州、そして2024年までに米国の48州全体に自動運転可能なルート・ネットワークを拡大していく方針を掲げている。

2021年5月には、ナビスターが6,775台のレベル4トラックを予約したことを発表した。2024年の生産を目指すとしている。

■Plus.ai:FAWと提携、すでに1万台以上の受注

2016年創業の中国系スタートアップで、TuSimpleと同様に自動運転トラックの開発を手掛けている。中国では、一汽グループのトラックメーカーFAW Jiefangとパートナーシップを結んでいる。

同社の自動運転技術を搭載した自動運転トラック「FAW J7 +」は、2020年11月に中国の国家認証試験に合格しており、2021年に量産化を開始する見込みとなっている。出荷は2022年予定で、すでに1万台以上の受注があるという。

■Aeva:TuSimpleの自動運転トラックにLiDAR採用

2017年創業の米スタートアップで、物体の移動速度も計測可能なFMCW方式の4D-LiDARの開発を進めている。2021年3月にニューヨーク証券取引所に上場を果たした。

2021年1月にTuSimpleと提携し、TuSimpleが開発した自動運転トラックに4D LiDARを導入することが発表されている。

また、デンソーとの提携も発表しており、開発力を強化しマスマーケットに投入していく方針を掲げている。

■Argo AI:フォードとフォルクスワーゲンの自動運転車にLiDAR採用

2016年創業の自動運転開発スタートアップ。ソフトウェアをはじめ、センサーやコンピューティングに関するハードウェア、マップ、クラウドサポートインフラストラクチャなど幅広く開発を進めている。フォードとフォルクスワーゲンから出資を受け、パートナーシップのもと開発力を強化している。

同社は2021年5月、独自開発した「Argo LiDAR」を発表した。400メートルの長距離計測をはじめ、高解像度、低反射率の検出、360度視野角などを単一のセンサーで実現しているという。この新型LiDARは、まずフォードとフォルクスワーゲンがまもなく大量生産を始める自動運転車に導入される予定としている。

■Livox :自動清掃ロボットに1万基のLiDAR採用

2016年創業の中国スタートアップ・Livoxは、ドローン開発を手掛けるDJI系列企業としてLiDAR開発を手掛けており、レベル3~4向けのコンパクトで超高精度、高信頼性なLiDARセンサーを低価格で提供する。

2020年10月に発表した近距離検知向けの新製品「LiDAR Mid-70」は、自動清掃ロボット開発などを手掛けるGaussian Roboticsが1万ユニットを発注している。

同年12月には小鵬汽車(Xpeng Motors)と提携を交わし、同社が2021年に量産開始する新車種にLiDAR技術を提供することを発表している。

Aurora Innovation:Uberの配車サービス向けに自動運転車を開発中

2017年創業の自動運転開発スタートアップ。汎用性の高い自動運転システム「Aurora Driver」の開発を進めている。

受注とは異なるが、配車サービス大手Uberの自動運転ユニット「Advanced Technologies Group(ATG)」を買収し、トヨタ・デンソーとの協業のもと2021年末までに自動運転システムを搭載したトヨタ・シエナを構築し、実証を開始する予定だ。

計画通り進めば、自動運転化されたシエナがUberの配車ネットワークに導入されることになる。自動運転システムの大型受注案件として来年以降の動向に注目したい。

【参考】Aurora Innovationについては「自動運転開発のAurora、止まらない買収攻勢!LiDAR企業をさらに1社吸収」も参照。

■【まとめ】自動運転車の量産が本格化、先行投資からビジネス段階へ

案件の性質上ハードウェアが目立つため、LiDARや自動運転トラック開発企業が多くを占める結果となったが、着実に市場化・ビジネス化が進んでいる様子がはっきりと分かる。

レベル3を含む自動運転車両は2021年から量産化に向けた動きが本格化しており、その勢いは2022年以後も増していくことが予想される。大型受注案件も増加し、合わせて株式上場に向けた動きも一気に加速する可能性がありそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事