イノヴィズ(Innoviz)とは?自動運転向けLiDARを開発するイスラエル企業

製品がBMWの自動運転レベル3車両に搭載予定



InnovizTechnologiesの創業メンバー。中央がCEOのOmer David Keilaf氏=出典:InnovizTechnologies公式サイト

LiDAR(ライダー)開発企業の上場が相次ぐ中、イスラエルのスタートアップ企業InnovizTechnologies(イノヴィズ・テクノロジーズ)の注目が高まっている。

同社は2021年第1四半期に株式上場を予定しているほか、同社のLiDARは独BMWが2021年に発売予定の自動運転車への採用が決まっており、2021年は業界にイノヴィズ旋風が巻き起こりそうだ。







過熱するLiDAR市場で大きな脚光を浴び始めたイノヴィズの沿革やLiDAR製品などに迫ってみよう。

■Innovizの沿革

イノヴィズは2016年、イスラエル国防軍(IDF)やSTマイクロエレクトロニクスなどでエンジニアとしてキャリアを重ねてきた現CEO(最高経営責任者)のOmer David Keilaf氏らが設立した。

マグナやアプティブなどとパートナーシップ構築

2017年の資金調達では、マグナやデルファイ(現Aptiv)といった自動車部品大手をはじめ、ソフトバンク系やサムスン系企業などから計7,300万ドル(約75億ドル)を調達し、早くも業界からの注目を集めることになった。

自動車メーカーでは独BMWがいち早くイノヴィズの技術に注目し、2021年発売予定の自動運転レベル3の条件付自動運転車にイノヴィズの製品を採用することを決定した。

なおBMWは、EVのフラッグシップとなる新モデル「iX」にイノヴィズのLiDARを搭載する見込みだ。同社の自動運転技術やコネクテッド技術、電化技術などを結集した象徴的なモデルとなるようだ。

2019年には、資金調達Cラウンドで1億7,000万ドル(約176億円)の大型資金調達も実施している。Keilaf CEOによると、これまでに累計2億5,200万ドルを調達し、3年強で社員270人を超える規模に拡大したという。

サプライヤーとのパートナーシップでは、マグナやアプティブのほか、サムスン傘下の米ハーマン、中国のHiRainなどがすでに関係を構築している。

2021年第1四半期目途に上場

2020年12月には、特別買収目的会社(SPAC)のCollective Growth Corporationとの企業結合を通じてナスダック市場に上場することを発表している。時期は2021年第1四半期を目指す。

いわゆるSPAC上場で、Collective Growthの1億5,000万ドル(約156億円)の信託現金と、AntaraCapitalやマグナをはじめとしたティア1パートナー、フェニックスインシュアランスなどからの戦略的投資が含まれるという。

上場企業や商品を識別するティッカーシンボルは「INVZ」となる予定だ。

■InnovizのLiDAR製品
2021年に最新LiDAR「InnovizOne」を出荷予定

同社のLiDARはソリッドステートMEMS式で、製品化済みの「InnovizPro」をはじめ、2021年に出荷開始予定の「InnovizOne」、2022年にサンプル利用が可能になる見込みの「InnovizTwo」が公表されている。InnovizProはインダストリアルマーケット向けの製品ながらその性能の高さから自動運転シャトルなどで採用されているようだ。

InnovizOneは自動運転レベル3〜5に対応する車載グレードで、高い堅牢性や信頼性、低消費電力、軽量、手頃な価格となっているようだ。日光や気象条件に耐性があり、最大250メートル先の3D点群を作製することができる。サイズは45×111.4×97.9ミリで、角度分解能は0.1×0.1度、視野角は水平115度、垂直25度をカバーしている。BMWが採用したのもこのモデルだ。

InnovizTwoは、InnovizOneと比較し大幅なコスト削減とパフォーマンスの向上を実現するという。低価格化によって自動運転レベル2+での導入を増加させることで多くのデータを収集し、レベル3以降への進化を促進していく狙いがあるようだ。

一方、認識ソフトウェアは、高度なAI・機械学習ベースによる分類や検出、追跡機能を備え、自社ハードウェア製品を理想的に補完するように設計されている。

出典:InnovizTechnologies公式サイト
日本国内ではマクニカが代理店に

日本国内では、技術商社のマクニカが2019年にイノヴィズと代理店契約を締結し、同社製LiDAR製品の販売を手掛けている。

InnovizOneの注文も2020年12月に受付開始している。同製品に加え、後段の認識や自己位置推定アルゴリズム構築、ハイパワーコンピューティングシステム、OS、実証実験車両など、自動運転開発におけるさまざまな要望に沿ったトータルソリューションを提供可能としている。

■LiDARが実装される有望市場

イノヴィズは自社製品を展開する市場として、自動運転機能やADAS(先進運転支援システム)を搭載した自家用車をはじめ、ロボタクシーやシャトル、自動運転トラック、倉庫などのロジスティクス、歩道を走行する宅配ロボット、産業用ドローン、農業や建設、鉱業の各セクターにおける重機などを想定しているようだ。

高性能LiDARの主戦場は自動運転市場となるが、その用途は今後大きく広がっていくことが予想される。近々では、米アップルが2020年3月発売のiPad ProにLiDARを搭載して話題となった。その後iPhone 12 Proにも搭載しており、タブレット端末やスマートフォンにも搭載される時代がやってきたようだ。

自動車・自動運転分野では、今後市場を拡大する高度なレベル2やレベル3を備えた乗用車へのLiDAR搭載が進み、需要を大きく伸ばすことが予想される。

バスやタクシーなど、レベル4による移動サービスも米国・中国を筆頭に実用実証が加速しており、世界各国でシェアを拡大しながら右肩上がりの成長を続けていくものと思われる。

宅配ロボットやドローンでもLiDARの需要

モノの移動を担う自動運転配送車や宅配ロボットも、サービスの社会実装が本格化すれば相当数の需要を生み出す。農機具や建機などの自動運転技術も開発が進んでおり、さまざまな作業と自動運転を両立し無人化や省力化を図る動きが加速している。

ドローンにおいてもLiDARの活用が見込まれる。モノを運ぶ配送ドローンの実用実証をはじめ、人の移動を可能にするいわゆる「空飛ぶクルマ」の開発も大きく前進している。また、測量向けや災害時の状況把握などへの活用も進んでおり、こうした場面でも空間把握を得意とするLiDARが本領を発揮する。

このほか、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術などでも導入が進んでおり、点群データとして取得した地形にエフェクトを描画することで立体的な演出が容易になるようだ。アップルがスマートフォンなどへの導入を進めているのも、こうした活用方法に魅力を感じたようだ。

■【まとめ】LiDAR戦国時代突入へ

イノヴィズ以外にも、LiDAR開発分野では米Velodyne Lidar(ベロダイン・ライダー)をはじめスタートアップの米Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)らが専門的な技術開発能力で強みを発揮し、次々と頭角を現している。

一方、デンソーやボッシュ、ヴァレオ、コンチネンタルといったサプライヤーも開発に力を入れるほか、パイオニアや京セラ、三菱電機、リコーなど国内勢の開発も年々熱気を帯びている。

LiDARの社会実装が大きく進むと思われる2021年は、いよいよLiDAR戦国時代に突入することになりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転の目「LiDAR」を開発するイノヴィズが上場へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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