自家用自動運転車の第一歩目となる自動運転レベル3。ホンダが世界初となる実用化を2021年に果たして以来、早4年余りが経過した。
この間、自動車メーカー各社はどのような戦略でレベル3と向き合ってきたのか。法整備など各国の受け入れ態勢はどのような状況なのか。自動運転開発や導入の最新動向をまとめてみた。
・2025年9月19日:最新情報にアップデート
・2024年3月14日:BMWやホンダ、日産の最新動向を追記
・2023年6月30日:メルセデスの最新情報について追記
・2022年2月16日:各社の動向を更新
・2018年5月4日:記事初稿を公開
記事の目次
- ■自動運転レベル3の概要
- ■トヨタ(日本):レベル3は当面見送り?
- ■日産(日本):2027年度に次世代プロパイロットを市場化
- ■ホンダ(日本):2021年3月に世界初のレベル3搭載車両を発売
- ■アウディ(ドイツ):2017年にレベル3搭載「A8」を発表したものの・・・
- ■BMW(ドイツ):レベル3搭載のBMW7シリーズを展開へ
- ■メルセデス(ドイツ):レベル3の有料オプションを展開
- ■フォルクスワーゲン(ドイツ):子会社CARIADとボッシュがレベル3開発
- ■ボルボ・カーズ(スウェーデン):自動運転分野で迷走中?
- ■テスラ(アメリカ):汎用性高いレベル2+で先行
- ■Stellantis(本社オランダ):「STLA AutoDrive 1.0」発表
- ■中国勢:レベル3実証本格化、2026年にも正式解禁か
- ■韓国:当初計画は延期、2025年時点で動きなく
- ■日本における政策動向は?
- ■国際標準化の動向は?
- ■自動運転レベル3実現までに抱えている課題とは?
- ■【まとめ】実用性増すレベル3、市場で存在感高まる?
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■自動運転レベル3の概要
まずは自動運転レベルの定義についてざっとおさらいしていく。自動運転レベルについては、日本をはじめとする世界の大半の国が、米自動車技術者協会(SAE)が策定した基準に準拠している。中国など一部例外はあるが、同国もほぼ同じ内容の独自基準を策定しているため、特に言及しないこととする。
米SAEによる定義・呼称
世界における自動運転レベルの定義は、米SAEが示した基準が主流となっている。2014年1月に初めて自動運転レベルの定義付けが行われ、2016年9月に第2版(SAE J3016)として6段階のレベル分けが行われた。その後も細かい改変が行われているが、この第2版の定義が現在も標準として使用されている。
レベル0(運転自動化なし) | 運転者が全ての動的運転タスクを実行 |
レベル1(運転支援) | システムが縦方向または横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行。 |
レベル2(部分運転自動化) | システムが縦方向および横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行。 |
レベル3(条件付運転自動化) | システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行。作動継続が困難な場合は、システムの介入要求などに適切に応答。 |
レベル4(高度運転自動化) | システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行。 |
レベル5(完全運転自動化) | システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行。 |
自動運転レベル2までの運転主体はあくまで運転者であり、システムは安全運転を支援する装置という位置付けだが、自動運転レベル3になると運転者とシステムが混在して対応することになり、自動運転レベル4からはシステムが運転主体となる。
限定条件下とは言え、システムが主体となり得る自動運転レベル3は、自動運転にとって大きなターニングポイントと言える。
日本語意訳も
このSAEの基準は、公益社団法人自動車技術会などが標準化活動の一環として翻訳・解釈し、JASOテクニカルペーパー「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」として公表している。
▼自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義
https://www.jsae.or.jp/press/detail/2257/
同レポートでは、レベル3(条件付運転自動化)について「ADS (自動運転システム)が、所定の/通常の操作においてすべての DDT (動的運転タスク)を ODD(運行設計領域/限定領域) において持続的に実行。この際、フォールバックの準備ができている利用者は、他の車両システムにおける DDT 実行に関連するシステム故障だけでなく,ADSが出した介入の要求を受け入れ、適切に応答することが期待される」としている。
つまり、自動運転システムが作動条件とするODD内においては、システムがすべての自動車制御を持続的に実行するが、利用者(運転者)はフォールバック(システムが使用不可となり、代替手段に切り替えてサービスを継続する仕組み)に備えておく必要がある。この場合の代替手段は、手動運転となる。
自動運転システムが手動介入を要請した場合、運転者は速やかに運転を引き継がなければならない――ということだ。基本的には、高速道路出口が近づいた際など、計画通りODDを外れるタイミングが想定されるが、天候の急変など何らかの理由でODDを外れる可能性もある。
システムは、 ODDの限界を超えそうになっているかどうかを自ら判断し、超えそうになっていると判断した場合、できるだけ早くテイクオーバーリクエスト(運転交代要請)を発することが求められる。
また、運転者が即座に対応できるとは限らないため、リクエストを発した後、数秒間は自動運転を継続する能力も求められる。国際基準を議論するWP29(国連自動車基準調和世界フォーラム)では、引継ぎ要件の目安が10秒程度とされている。
このリクエストに運転者が応じない場合、システムはリスクを最小化する形で車両を制御し、路肩などに停車する。
なお、運転者は車内の利用者とは限らない。レポートでは「遠隔利用者」にも言及している。自動運転システムが、遠隔監視センターなどでフォールバックの準備ができている利用者に対し手動介入のリクエスト発すると、遠隔利用者が遠隔運転者となり、遠隔操作で車両を制御する――というものだ。
自家用車ではほぼ考えられないが、レベル4サービスへの進化を目指す自動運転バスの実証期など、開発過程でこうしたケースが出てくることが想定される。
睡眠は厳禁、スマホ操作などは可能に
自動運転システム稼働中、運転者はどのような行動が許されるのか。先述の通り、運転者はシステムからの手動運転交代要請に迅速に応じる必要がある。目安としては10秒以内だ。10秒以内にハンドルを握るだけでなく、現在車両がどのような場所をどのような環境で走行しているのか、速度はどれほど出ているのかなど、状況をすべて把握しなければならない。
そうしたことを踏まえると、自動運転とは言え睡眠などは厳禁となる。運転席を離れることも基本的に許されない。スマートフォンやカーナビなどの車載機器の使用などは認められるが、食事に関しては賛否両論ありそうだ。
■トヨタ(日本):レベル3は当面見送り?
世界の自動車業界をけん引するトヨタだが、未だにレベル3戦略が浮上してこない。自家用車市場においては、今しばらくレベル2とレベル2+で勝負していくつもりなのかもしれない。
トヨタの市販車に搭載されている運転支援システムは、予防安全機能をパッケージ化した「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」が中心で、レーダークルーズコントロールやレーントレーシングアシストによるレベル2相当の運転支援を実現している。
MIRAIやレクサスLS、ノア、ヴォクシーにオプション設定されている「Advanced Drive」「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」は、高速道路におけるレベル2+機能としてハンズオフ運転を可能にしている。
過去には、レベル3以上を見据えた技術として、自動車専用道路における自動運転「Highway Teammate(ハイウェイチームメイト)」、一般道路における自動運転「Urban Teammate(アーバンチームメイト)」の開発を進めていたが、現在は音沙汰がない。
一方、レベル4に関しては、自動運転サービス向けのBEV「e-Palette(イーパレット)」の開発を進めており、2025年9月に満を持してe-Paletteの販売を開始した。安全面ではレベル2相当の技術の搭載に留まっているが、2027年度を目途にレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指すとしている。
【参考】トヨタの動向については「ついに2024年、トヨタが「自動運転レベル3」で沈黙破るのか」も参照。
■日産(日本):2027年度に次世代プロパイロットを市場化
日産も過去の発表において、自動運転レベル3の技術を搭載した「プロパイロット3.0」を2020年にも実現することを発表していた。ただし、プロパイロット3.0は2025年時点でもまだ日産車に搭載されていない。
▼日産│先進技術│プロパイロット
https://www2.nissan.co.jp/BRAND/PROPILOT/
現在提供している「プロパイロット」は自動運転レベル2に相当し、2019年にはハンズオフ運転が可能なレベル2+システム「プロパイロット2.0」を国内メーカーの先陣を切って実用化した。
2025年4月の発表では、次世代の運転支援技術(ProPILOT)を2027年度から市販車に搭載するとしている。英WayveのWayve AI Driverと次世代LiDARを活用した日産のGround Truth Perception技術により構成され、最先端の衝突回避能力を備えた運転支援技術の新しい基準を確立するとしている。
運転支援としているためレベル2+が濃厚となるが、応用系としてレベル3への進化の可能性があるのか、あるいは別途レベル3開発を進めているのかなど、気になるところだ。
【参考】プロパイロットについては「日産プロパイロットとホンダセンシング、どちらがいい?【自動運転レベル2】」も参照。
■ホンダ(日本):2021年3月に世界初のレベル3搭載車両を発売
ホンダは2021年3月5日、自動運転レベル3の機能を搭載した新型LEGENDを発売した。自家用車のレベル3は世界初で、限定100台がリース販売された。現在は市場に出回っていない。
ホンダは2020年11月、高速道路渋滞時にレベル3走行を可能とする「トラフィックジャムパイロット」の型式指定を国土交通省から取得した。このトラフィックジャムパイロットを、LEGENDに搭載される「Honda SENSING Elite」の一機能として実装した
トラフィックジャムパイロットは高速道路本線上での渋滞時において自動運転を行うシステムで、自車の速度がシステム作動開始前に時速30キロ未満であることなどが作動要件となっている。作動後は、時速50キロを超えるとODDを外れる。
車両にはLiDAR4台、カメラ2台、レーダー5台を搭載し、高精度3次元地図やGNSS(全球測位衛星システム)の情報、外界認識用センサーを使って車両制御を行い、車内向けカメラで運転手の監視も行う。
その後は沈黙を続けているが、2025年にハンズオフ運転を可能とする「Honda SENSING 360+(プラス)」の実装を開始するなど、着々と技術開発を続けているようだ。Eliteについても、2020年代後半にさらに進化させた自動運転車両の技術確立を目指しているという。
余談だが、ソニーとの合弁「ソニー・ホンダモビリティ」の動向も気になるところだ。ブランド「AFEELA」の第1号モデル「AFEELA 1」は、米カリフォルニア州で2025年内の正式発売を予定している。
当初はレベル2~レベル2+となるが、将来はレベル3も実現可能にする計画で、こちらの技術との兼ね合いも気になるところだ。
【参考】ホンダのレベル3については「ホンダの自動運転、チーフエンジニアが「秘密」明かす」も参照。
■アウディ(ドイツ):2017年にレベル3搭載「A8」を発表したものの・・・
フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディは2017年、世界に先駆けて自動運転レベル3を搭載可能な量販車「Audi A8」を発売した。自動運転機能「Audi AIトラフィックジャムパイロット」は、時速60キロ以下の高速道路、つまり渋滞時の高速道路という限られた環境下で自律走行できるシステムだ。
ただし、法律上の問題を理由に、A8のレベル3技術は見送られたままとなっている。また、国際基準の制定に合わせ新たな動きを見せるものと思われていたが、2025年時点でいまだに沈黙を守っている。そしてその間にホンダが自動運転レベル3の搭載車を発売したため、実質的な「世界初」の称号はホンダに譲った形だ。
Audiに関しては、戦略を高度なレベル2の実装にシフトしたとする一部報道もあり、ある意味、現実路線への転換を進めているのかもしれない。ただし、自動運転レベル4の搭載を想定したコンセプトモデル「Audi Elaine」を公開するなど、自動運転の開発競争から離脱しているわけでは全くない。
【参考】Audi A8については「アウディ「A8」の自動運転技術や価格まとめ 自動運転レベル3搭載」も参照。
■BMW(ドイツ):レベル3搭載のBMW7シリーズを展開へ
BMWは衝突回避・被害軽減ブレーキ、アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)などを備えた「ドライビング・アシスト・プラス」を「5シリーズ」や「7シリーズ」などに標準装備している。2019年には、3シリーズにハンズオフ機能を実装し、注目を集めている。
2024年春には、新型「7シリーズ」にレベル3システム「BMW Personal Pilot L3」をオプション設定し、ドイツ国内で販売を開始した。価格は税込6,000ユーロ(約94万円)とされている。
最高時速60キロの渋滞時限定だが、レベル2システム「ハイウェイ・アシスタント」は最高時速130キロまで対応しており、メルセデスに負けじとレベル3の速度引き上げに動く可能性が高そうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3機能、「世界3番目」はBMW濃厚 来年3月から提供」も参照。
■メルセデス(ドイツ):レベル3の有料オプションを展開
メルセデス・ベンツは2022年、レベル3走行を可能とする「DRIVE PILOT」をSクラスとSクラスのEV版「EQS」に有料オプションとして設定し、ドイツ国内で実用化を開始した。
2023年には、米ネバダ州とカリフォルニア州からも公道走行許可を取得し、翌2024年に対象車種の納入を開始している。
また、ドイツ国内では、ドイツ連邦自動車交通局からDRIVE PILOTの最高速度を時速95キロに引き上げる承認を受け、2025年中に実装すると発表している。現行レベル3としては世界最速で、既存のDRIVE PILOT搭載車は無料アップデートが可能で、新たにDRIVE PILOTを設定する場合も価格(5,950ユーロ/約93万円~)は据え置くとしている。
中国市場への導入を模索する動きも報じられており、2023年末に北京でレベル3走行試験の認可を取得したほか、2024年8月には同市内の指定都市道路と高速道路におけるレベル4試験の承認も得たと発表している。
このレベル4も自家用車への搭載を意識したもので、将来的には世界中の個人所有車両に搭載する目標を掲げている。
【参考】メルセデス・ベンツの動向については「自動運転レベル3、ドイツが世界最速の「時速95km」まで認可」も参照。
■フォルクスワーゲン(ドイツ):子会社CARIADとボッシュがレベル3開発
フォルクスワーゲンは、米フォードとの提携のもとレベル4開発を進めていたが、出資していたArgo AIを見切り、国内開発に注力しているようだ。
レベル3に関しては、自動運転開発子会社のCARIADとボッシュがパートナーシップを組み、高度なレベル2からレベル3まで拡張可能な運転システムの開発を進めている。
ハンズオフモデルもまだ市場化しておらず、自家用車分野での遅れは否めないが、トヨタ同様、腰を据えてじっくりと戦略を進めている可能性も考えられそうだ。
■ボルボ・カーズ(スウェーデン):自動運転分野で迷走中?
ボルボ・カーズは当初、レベル3は運転主体がドライバーとシステム双方にまたがることを安全上懸念し、レベル3をスキップして2021年までにレベル4の実用化を目指すこととしていた。
その後戦略を一転し、2022年に次世代EVにレベル3システム「Ride Pilot」を搭載し、北米で発売する計画を発表したものの、2025年時点で特段の進展は見られない。
【参考】ボルボ・カーズの動向については「天才ラッセル率いるLuminar、ダイムラーと急接近!自動運転向けLiDARを開発」も参照。
■テスラ(アメリカ):汎用性高いレベル2+で先行
EV世界最大手に成りあがった米テスラは、「FSD(Full Self Driving)」により一般道路を含む広範囲でのハンズオフ運転を実現している。レベル2+技術では世界最高峰と言える。
自動運転に関しては早くからODDを設けないレベル5の実現を公言しており、FSDの継続的な進化で実現する戦略を進めている。FSDはバージョン13まで進化しており、2025年下半期に14がリリースされるといった話も出ている。
テキサス州オースティンでは、不完全ながらロボタクシーのサービスも開始しており、FSD進化の速度は加速している印象だ。
世界初のレベル5実用化に期待が高まるところだが、規制上待ったがかかる可能性も高い。妥協策としてレベル3から実装を進める可能性も否定できないため、今後の動向に要注目だ。
【参考】テスラの動向については「テスラのロボタクシー、「急がば回れ」の典型例!人間的AIに固執」も参照。
■Stellantis(本社オランダ):「STLA AutoDrive 1.0」発表
ステランティスは2025年2月、ハンズオフ運転やアイズオフ運転を可能とする「STLA AutoDrive 1.0」を発表した。走行可能な国・エリアなどは公表されていないが、最高時速 95 キロに対応するという。
傘下ブランドは、プジョーやシトロエンといったフランス勢をはじめ、フィアットやアバルト、アルファロメオなどのイタリア勢、ドイツのオペル、北米のクライスラーなど多国籍に及ぶため、展開戦略に注目が集まるところだ。
一方、2025年8月のロイターの記事によると、高額なコストや技術的課題、消費者需要を巡る懸念から、STLA AutoDrive 1.0の実用化を棚上げする方針であることが報じられている。
【参考】ステランティスの動向については「「4社目」の自動運転レベル3、またトヨタじゃなかった」も参照。
■中国勢:レベル3実証本格化、2026年にも正式解禁か
中国では、以前からレベル3開発・量産化の動きが報じられていたが、2024年に正式に特定路線におけるレベル3走行実証が認められ、開発が加速している。
2024年6月時点で、NIO(上海蔚来汽車)、BYD(比亜迪)、長安汽車、GAC(広州汽車集団)、SAIC(上海汽車集団)、BAIC BluePark、FAW Group(第一汽車集団)、SAIC Hongyan(上海依維柯紅岩)、Yutong Bus(宇通客車)の9社が走行ライセンスを取得したようだ。
また、吉利汽車(Geely)・Zeekrは2025年下半期に、小鵬汽車(Xpeng)は2026年にレベル3搭載EVの販売を開始する最新計画を発表している。
一部報道によると、中国政府はレベル2による事故の影響なども踏まえながら規制の在り方の整理を進めているようで、2026年中のレベル3解禁を目指す考えという。
【参考】中国の動向については「株価93%下落の中国NIO、「自動運転レベル3」の試験許可を取得」も参照。
■韓国:当初計画は延期、2025年時点で動きなく
日本同様レベル3の走行環境が整った韓国も、レベル3の実装に力を入れているようで、現代自動車(ヒョンデ)や起亜自動車(KIA)が当初2021年のレベル3車の販売を計画していた。
ヒョンデは新型Genesis G90にレベル3を実装する――といった報道もあったが、2025年時点で実現していない。
【参考】韓国勢の取り組みについては「日本と横並びに…韓国も7月に「自動運転レベル3」の販売解禁」も参照。
■日本における政策動向は?
内閣府が2018年4月に発表した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム研究開発計画」によると、2020年を目途に自動運転レベル3、2025 年を目途に自動運転レベル4の市場化がそれぞれ可能となるよう、研究開発を進めて必要な技術の確立を図るとしている。
改正道路交通法、及び改正道路運送車両法が2019年に成立し、2020年4月に施行されたことにより、国内でのレベル3の公道走行が可能になった。
保安基準対象装置に自動運行装置が追加・定義され、道路交通法もこれを準用する形でその利用に関する運転者の義務を盛り込んだほか、EDR(イベントデータレコーダー)などの作動状態記録装置に関する規定も明文化されている。
【参考】改正道交法などについては「日本の警察は「自動運転」にどう向き合っている?」も参照。
■国際標準化の動向は?
国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で2020年6月、乗用車の自動運行装置、すなわちレベル3に関する自動運転システムに求められる要件の国際基準が成立した。
高速道路などにおける時速60キロ以下の渋滞時などにおいて作動する車線維持機能に限定した自動運転システムと定義され、要件としてミニマムリスクマヌーバーやドライバーモニタリング、サイバーセキュリティ確保の方策、作動状態記録装置の搭載などが挙げられている。
その後、最高時速130キロに上限が引き上げられるなど、改正も行われている。
【参考】レベル3の国際基準については「自動運転レベル3の国際基準「注意深く有能な運転者と同等以上」」も参照。
■自動運転レベル3実現までに抱えている課題とは?
自動運転レベル3は、人間からコンピュータへ運転主体が移行する発展途上の段階にあるとも言える。コンピュータがすべての動的タスクを担う一方、運転者は常時監視義務はなくともすぐに運転交代できる状態でなければならない。この切り替え部分はあいまいな点も多く、責任の所在のあり方や運転者のモラルハザードなど内在する課題は多い。
ハンズオフ運転が可能なレベル2+では、運転の責任は運転者に課せられるが、機能を誤認・過信して周囲の監視を怠り、重大事故を起こす事例が各国で出始めている。
レベル3も、テイクオーバーリクエストに正しく応答しないなど、使い方を誤ればこうした事故は起こり得る。正しい理解を促進する施策も今後重要性を増すことになるのは間違いない。
また、有事の際、責任があいまいにならぬよう作動状態記録装置の設置も義務付けられているが、システム側に本当に誤りがなかったのかなど、運用しているうちにさまざまな問題が浮上する可能性が高い。
運転者や開発メーカーの一方的な言い分に左右されないような客観的手法で責任を明確にするルール作りが肝要となりそうだ。
■【まとめ】実用性増すレベル3、市場で存在感高まる?
日本やドイツ、北米などで法環境整備が整い、実用化が始まったレベル3。従来は渋滞時限定で最高速度60キロに留まり実用性に欠けていたが、最高速度95キロのシステムも認可され、実用性が一気に高まった。
北米など自動車専用道路での長距離移動が多いエリアでは、レベル3の潜在需要は想像以上に大きいはずだ。搭載モデル含めた価格は今しばらく高止まりが続きそうだが、どの段階で普及が本格化するかが今後の見どころだ。
普及に時間を要すると、今度は先行開発勢による高速道路限定レベル4の実装が始まる可能性も考えられる。そうなると、レベル3は刹那的にその役割を終えることになりかねないが、一般幹線道路や市街地における自家用自動運転を踏まえると、こうした過渡的なレベルが役立つことも大いにあり得る。
今後、レベル3がどのように進化し、どのように市場を拡大していくのか。自家用車の自動運転化を占う技術として存在感を高めていくことに期待したい。
(初稿公開日:2018年5月4日/最終更新日:2025年9月19日)
【参考】関連記事としては「自動運転レベルの定義とは?【0・1・2・3・4・5の解説表付き】」も参照。