国土交通省は2020年6月30日までに、国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において「自動運行装置」などの基準化に向けた専門家会議が行われ、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の車両を対象とした国際基準が成立したことを発表した。
自動運行装置などの基準化に向けては、WP29傘下の専門家会議などで日本が共同議長などの要職を担い、官民オールジャパン体制で議論をリードしてきた経緯がある。ちなみに今回の成立した内容と同等の基準は、既に日本で今年4月に施行されている。
この記事では改めて、今回成立した国際基準の「乗用車の自動運行装置」と「サイバーセキュリティとソフトウェアアップデート」における要件などをそれぞれ解説していこう。
▼自動運行装置(レベル3)に係る国際基準が初めて成立しました|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000343.html
■自動運行装置の国際基準の概要
自動運行装置の国際基準で対象となるレベル3の自動運転は、日本語では「条件付き運転自動化」と訳される。イメージとしては、渋滞時や自動車専用道などでの走行時のみの自動運転だ。
こうしたレベル3の自動運行装置(定義:高速道路等における60km/h以下の渋滞時等において作動する車線維持機能に限定した自動運転システム)に求められる主な要件として、今回成立した国際基準では以下などが挙げられている。
- 自動運転システムが作動中、乗車人員及び他の交通の安全を妨げるおそれがないことについて、注意深く有能な運転者と同等以上のレベルであること。
- 運転操作引継ぎの警報を発した場合において、運転者に引き継がれるまでの間は制御を継続すること。運転者に引き継がれない場合はリスク最小化制御を作動させ、車両を停止すること。
- 運転者が運転操作を引き継げる状態にあることを監視するためのドライバーモニタリングを搭載すること。
- 不正アクセス防止等のためのサイバーセキュリティ確保の方策を講じること。
- 自動運転システムのON/OFFや故障等が生じた時刻を記録する作動状態記録装置を搭載すること。
こうした要件については、シミュレーション試験やテストコース試験、公道試験などによる適性確認が必要となる。例えば、他車の割り込みが考えられる状況において自動運転車の反応速度や制御力を確認し、衝突を回避できるかなどを確認するというもののようだ。
■サイバーセキュリティとソフトウェアアップデートの国際基準の概要
サイバーセキュリティとソフトウェアアップデートの国際基準の主な要件としては、以下の3点などが挙げられる。
- サイバーセキュリティ及びソフトウェアアップデートの適切さを担保するための業務管理システムを確保すること。
- サイバーセキュリティに関して、車両のリスクアセスメント(リスクの特定・分析・評価)及びリスクへの適切な対処・管理を行うとともに、セキュリティ対策の有効性を検証するための適切かつ十分な試験を実施すること。
- 危険・無効なソフトウェアアップデートの防止や、ソフトウェアアップデート可能であることの事前確認等、ソフトウェアアップデートの適切な実施を確保すること。
自動運転車両においてソフトウェアは「頭脳」であり、非常に重要な要素だ。スマートフォンやパソコンのように、ソフトウェアを常に最新に保つことがセキュリティ上も求められる。
■【まとめ】国際基準成立でレベル3の実用化や車両製造が加速!?
今回発表された国際基準に基づき、世界において自動運転レベル3の実用化や車両製造に向けた動きが一層加速するはずだ。
ちなみに日本では2020年4月に改正道路交通法(道路交通法の一部を改正する法律案)などが施行され、レベル3の車両の公道走行が解禁されている。今回成立した国際基準と同等の内容が日本で今年4月に先行して施行されたのは、レベル3が同月に解禁されたからだ。
▼自動運行装置(レベル3)に係る国際基準が初めて成立しました|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000343.html
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【参考】関連記事としては「ついに幕開け!自動運転、解禁日は「4月1日」」も参照。