令和のロボット大戦!自動配送ロボ、中国製が日本に相次ぎ上陸

市場が過熱、国産ロボットと真っ向勝負



コロナ禍を契機に国内外で一気に注目度が高まった自動配送ロボット。コンタクトレス(非接触)を可能とする新たなサービスは、宅配や飲食店における配膳などさまざまな分野で導入が進んでいる。


日本国内では、すぐに導入可能な配膳ロボットの需要が高まっており、国内企業における開発機運が高まっているほか、海外製品、特に中国製のロボットが続々と上陸を果たしているようだ。

この記事では、日本に上陸済みの中国開発勢と日本開発勢をピックアップし、紹介していく。

■日本上陸済みの中国ロボット開発企業
京東商城(JD.com)

EC大手のJD.comは、ロジスティクスの観点からファクトリーオートメーションに力を入れており、その一環として自動運転小型トラックや自動配送ロボットの開発を進めている。

自動配送ロボットは全長171×全幅75×高さ160センチほどのサイズで、最大30個の荷物を積み半径5キロ以内で配達することが可能という。2020年のコロナ禍においては、武漢市などで医療関係者が購入する日用品や医薬品の配送で大活躍した。


国内では2019年2月、楽天が日本国内で構築する無人配送ソリューションに、JD.comのドローンや自動配送ロボットを導入することに合意している。同年5月の千葉大学構内、同年9~10月の横須賀市内、2020年8~9月の東急リゾートタウン蓼科内などでそれぞれ行われた配送実証で活用されている。

【参考】楽天の取り組みについては「楽天の自動運転・MaaS・配送事業まとめ ライドシェア企業へ出資も」も参照。

Pudu Robotics

2016年設立のPudu Roboticsは深センを本拠に商用サービスロボットの設計・開発を進めており、これまでに屋内向けの配膳・配送ロボット「PuduBot」「GazeBot」「HoloBot」「BellaBot」「KettyBot」「FlashBot」などを商品化している。

国内ではDFA Roboticsや海容、Roundyedge、三機など取扱事業者が多く、レストランなどにおける導入事例も増加傾向が続いているようだ。

配膳ロボットのBellaBot は猫型ディスプレイが特徴で、SLAM技術や無指向性3D障害物回避機能などで自動運転を行い、最小2センチの物体も検知する。また、ビル内デリバリーロボットのFlashBotは、ホテルやオフィスビル、商業ビルなど活躍の場を広げている。セキュリティゲートや入退室管理システム、エレベーターなどの各システムと協調制御することも可能だ。

Beijing Yunji Technology

2014年設立のBeijing Yunji Technologyは、ホテル向けの自動走行ロボットを主軸に商用展開を進めており、サービスロボットの累積走行距離は15万キロを突破している。

国内では、NECネッツエスアイが自動配送ロボット「YUNJI DELI」の国内独占販売権を取得している。3段のトレイで仕切ることが可能な大容量積載スペースを備えており、最大50キロの荷物を載せて配送することができる。飲食店をはじめ、ホテルや病院など幅広い活用を見込んでいるようだ。

【参考】YUNJI DELIについては「日本に中国から上陸!自動運転配送ロボ「YUNJI DELI」とは?」も参照。

Keenon Robotics

2010年創業のKeenon Roboticsは、配膳ロボットや案内ロボット、ホテル用ロボット、消毒ロボットなどサービスロボットの開発をいち早く進めてきた1社で、同社によると配膳ロボットの市場占有率は80%に達しているという。

マルチセンサーと最新のSLAM技術で誤差1センチの自動走行を実現しており、自動充電やエレベーターの乗降機能なども搭載している。

2021年9月には、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2主導のもとシリーズDラウンドで2億ドル(約220億円)を調達した。

国内では、テクトレや日本システムプロジェクトなどが製品を取り扱っている。テクトレは最新モデルなどを取り揃えているほか、日本システムプロジェクトは配膳ロボット「PEANUT」の日本独占販売権を取得しており、国内出荷台数は150台を超えているという。

Yours Technologies

2018年設立のスタートアップで、歩道を走行可能な小型自動配送ロボットの開発を手掛けている。すでに中国内ではショッピングモールなどで実証・導入が進んでいるようだ。

国内展開はまだ行われていないが、ヤマトホールディングスなどが立ち上げたCVCファンド「KURONEKO Innovation Fund」の第1号案件に選定されたことが2020年12月に発表されており、ヤマトは技術交流を図るとともに、国内での活用に向け検討を進めていくこととしている。

Linming

Linmingは、中国内のホテルで3000台以上の導入実績を誇るAI配膳ロボットの開発を手掛けている。国内では、エイム・テクノロジーズがこのロボットをジャパンクオリティにチューニングし、さまざまな業態に柔軟に対応出来るようカスタマイズした「AIM ROBOT SAKURA」を展開している。

Rice Robotics

屋内向けの自動配送ロボットの開発を手掛けている香港のスタートアップ。外寸約76×54×50センチの小型ロボット「RICE」を主力に、消毒ロボットやパトロールロボットなどの開発も進めている。

国内では、ソフトバンク系列のアスラテックが日本展開をサポートしており、展示会への出展をはじめ、JR東日本が高輪ゲートウェイ駅で実施した実証やソフトバンク本社ビルにおける実証、日本郵便による実証などでも活用されている。

本社ビルでは、セブン‐イレブン・ジャパンの協力のもと、セブン‐イレブン店舗への注文商品をオフィス内の利用者のもとへ配送する実証を行っている。

一方、日本郵便は5台のRICEを使用し、マンション入口から受取人の住戸玄関まで配送を行う本格導入時に近い形で実証を行っている。

倉庫内向けの搬送ロボットも

配送ではなく搬送となるが、工場や倉庫内で活躍する自動走行ロボットの導入も盛んだ。Malu Innovationはフォークリフトタイプやリフティングタイプなど幅広くモデルを展開しており、国内ではジャロックが販売代理店契約を締結し導入を図っている。

Syrius Roboticsも全地形に対応した自動走行ロボットやピッキング補助ロボットなどを製品化しており、レンタル制(サブスクリプション)のRaaS(Robotics as a Service)展開を行っているのが特徴だ。国内では、ロジスティクスソリューションを扱うKEYCREWとRaaS事業提供に向けた事業会社ROBOCREWを2021年に設立しており、今後本格導入が進みそうだ。

■自動走行ロボットを開発する国内企業
ティアフォー

自動運転開発を手掛けるティアフォーは、小型自動搬送ロボット「Logiee S1(ロージー・エスワン)」を開発している。脱着可能なモジュールを車両上部に付け替えることでさまざまなニーズに対応可能なモデルだ。

2021年8月には、川崎重工などとともに新たなロボットの開発・実証に着手することを発表している。同分野への自動運転ソフトウェア「Autoware」の活用にも注目だ。

【参考】ティアフォーの取り組みについては「強力布陣で挑む!自動搬送ロボ、いよいよ都内で「車道端」も走行」も参照。

パナソニック

パナソニックも自動走行ロボットの開発に着手している。すでに神奈川県藤沢市の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」での実証や、楽天とともに神奈川県横須賀市で実証を行っている。

藤沢市では、ロボットに「湘南ハコボ」といった愛称が付けられたほか、実証実験のデモ見学をオプションに据えたツアーが実施されるなど、地域密着型の実証となっているようだ。

【参考】パナソニックの取り組みについては「重たい米もOK!楽天&西友、パナ製自動配送ロボで国内初サービス」も参照。

Hakobot

自動配送ロボットの開発に特化したベンチャーも立ち上がっている。2018年設立のHakobotは、三笠製作所との業務提携のもと製品化や実証を進めており、ドバイでの取り組みにも活用されているようだ。

ZMP

国内宅配ロボットのパイオニア的存在のZMPは、「DeliRo(デリロ)」の商用展開を進めている。高さ109×幅66× 奥行96センチで、複数のロッカーに最大50キロの荷物を積載可能で、複数の配送先へ同時に配達することができる。実証経験も豊富だ。

新シリーズとして、宅配ボックスの代わりにオープンな荷台を設けたモデル「DeliRo Truck(デリロ トラック)」も登場した。こちらは最大100キロまで荷物を積載することができるようだ。

京セラコミュニケーションシステム

京セラコミュニケーションシステムは、歩道ではなく車道を走行するロボットとしては大型タイプの自動配送ロボットの開発を進めている。

2021年8月から9月にかけ、シェアリング型配送サービスの実証実験を北海道で実施した。

【参考】京セラコミュニケーションシステムの取り組みについては「日本初!自動配送ロボットが車道走行 京セラ子会社、北海道で実証実験」も参照。

ARRK

ロボット開発支援事業を手掛けるARRKは、搬送ロボット「STACKY」と手荷物搬送ロボット「RAXii」といったコンセプトロボットを発表している。

STACKYは磁気誘導による自動運転タイプだが、お洒落なデザインで特別感を演出することが可能なモデルとなっている。一方、RAXiiは大型商業施設などでロボットが代わりに荷物を運んでくれる近未来を想定したモデルで、スマートフォンで呼び寄せ、荷物を入れて駐車中のマイカーなど目的地を指定すると自動で運んでくれるイメージだ。

アルファクス・フード・システム

外食企業向けに各種サービスを提供するアルファクスは、配膳・除菌AIロボット「サービスショット」を取り扱っている。

自律走行しながら配膳・下げ膳する機能を搭載するほか、席を回って追加注文を促す「おすすめ機能」やオーダーシステム「テーブルショット」などとの連携機能など、外食産業に特化したシステム開発の経験・ノウハウを生かした機能が特徴だ。

スマイルロボティクス

2019年創業のスマイルロボティクスは、アーム付きの全自動配膳・下膳ロボット「ACUR-C(アキュラシー)」を開発した。既存の配膳ロボット同様に自律走行が可能なほか、ロボットとテーブル間の皿の乗せ替えなどを行うことができるロボットアームが特徴だ。

約1メートル離れた場所からトレーを回収することができ、先端のハンド部分を交換することでさまざまな物の下膳に対応することができる。自動運転はLiDARとDepthカメラによって行う。

シンテックホズミ

シンテックホズミは、スマートモバイルロボット「AISLE」シリーズを展開している。オフィスやホテル、病院、レストランなどの公共空間向けのソリューションとして、荷物の搬送をはじめ除菌機能や遠隔コミュニケーション機能などマルチユースに活用可能という。

「AISLE Tower Type」は高さ約1メートルの円筒型で、レーザースキャナによるマッピングで自動運転を行う。最高時速3キロの低速タイプで、最大200キロ搬送可能という。

自動車メーカーも無人配送ロボットの開発を本格化

自動走行ロボットをめぐっては、トヨタホンダといった自動車メーカーも開発に本腰を入れ始めたようだ。

ホンダは2021年7月、楽天グループと自社開発した自動配送ロボットの走行実証実験を開始したことを発表した。一方、トヨタはWoven Cityで地下道を走行する配送ロボット「s-Palette」の存在を明らかにしている。

【参考】自動車メーカーの取り組みについては「トヨタとホンダ、「無人配送」でもガチンコ勝負 自動運転技術を応用」も参照。

■【まとめ】今後は屋外向けのロボット導入の動きも活発に?

中国関連では、このほか日本に馴染みのあるSegway-Ninebotも配送ロボット「Loomo Delivery」などを開発しており、今後導入を図る動きが出てきそうだ。車道走行型ロボットの開発を手掛けるNeolixもすでに日本上陸を果たしたという話も出ている。

中国製品の国内展開は法規制を受けにくい屋内向けロボットが中心となっているが、今後は実証環境が整った屋外向けロボットの導入を図る動きも増加するものと思われる。

スタートアップの台頭が著しい中国は開発層が厚く、日本市場を舞台とした「令和のロボット大戦」はますます熱を帯び、シェア獲得を巡る争いは激化の一途をたどりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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