コネクテッドカーのメリットとデメリットを総まとめ

セキュリティ対策や費用面で課題も





コネクテッドサービスの普及が始まり、徐々に「つながるクルマ」が増えてきた。まだまだ産声を上げた段階であり、「常時つながるクルマ」というよりは「つながることができるようになったクルマ」レベルのサービスが中心だが、第5世代移動通信システム「5G」の実用化など、一つのイノベーションを機に大幅に進化する可能性が高い。







大きなポテンシャルを持つコネクテッドサービスが本格化した際の利便性はどれほどのものか。その反面、どのようなデメリットが考えられるのか。

コネクテッドカー実用化に際し考えられるメリット・デメリットをまとめてみた。

■メリット
日常メンテナンスの負担を減らす

コネクテッドカーですでに実用化されているサービスに、警告灯点灯時に対応方法などを通知してくれるものがある。この手のサービスが発展すれば、ブレーキフルードやブレーキパッドの減り具合、タイヤの空気圧や損傷具合、バッテリー液や冷却水など、さまざまな点検項目をシステムが自動判断してくれる日が到来するかもしれない。

また、クルマの状態が「電子カルテ」化することで、車検の際もスムーズなサービスを受けることができるようになる可能性は高そうだ。

リモートコントロールで車両を制御

自宅玄関と同様、「あれ?鍵閉めたっけ?」といった不安な状況を、遠隔操作で制御するリモートコントロール機能。ドアの施錠・解錠のほか、ウィンドウやエンジン始動の通知など盗難防止の面でも役に立つサービスが実用化されている。

BMWが実用化した、外から遠隔操作で駐車を行う「リモート・コントロール・パーキング」も、自動運転技術とコネクテッド技術を結び付けた新たな技術といえる。こういった研究開発の応用が進むことで、自動運転はもちろん手動運転にも役立つさまざまな新サービスの誕生につながっていくのだ。

【参考】BMWの自動運転技術については「BMWの自動運転技術や戦略は? ADAS搭載車種や価格も紹介」も参照。

緊急通報システムで事故被害を低減

万が一の事故の際、自動で消防や病院などに通報してくれるシステム。すでに「HELPNET」や「D-Call Net」といったサービスが実用化されているほか、自動緊急通報装置に関する国際基準も策定され、将来的には車両に標準装備されることも考えられる。

進化系としては、加入している保険会社や家族など、登録した連絡先に自動通知してくれる機能なども考えられる。

V2XでADAS機能を強化

クルマとクルマがつながるV2V(車車間通信)やインフラとつながるV2I(路車間通信)など、走行する周囲の環境とつながることで、ADAS(先進運転支援システム)も進化する。

現在のADASはカメラやレーダーなどのセンサー類で周辺の状況を検知する仕組みが大半だが、コネクテッド技術により前方を走行する車両と通信することで、前走車の加減速を瞬時に把握することが可能になり、クルーズコントロールの安定性が飛躍的に増すほか、追突などの危険性を大きく減少させることができる。

また、インフラと通信することで、交差点の信号情報や歩行者情報などもリアルタイムで把握することが可能になり、事故の未然防止や交通の円滑化に貢献することができるようになる。

ドライブを効率的かつ効果的に

つながるクルマは、周辺施設などともつながることが可能だ。駐車場やレストランなどの混雑状況をリアルタイムで把握できるほか、ガソリンスタンド情報なども価格込みの情報を入手し、効果的に選択することが可能になるかもしれない。

観光施設なども、混雑状況や開園情報などのほか、お得なチケット情報なども含め情報を入手可能になるだろう。

従来、パソコンやスマートフォンなどで逐一検索して調べていた情報が、コネクテッドカーで効率的かつ効果的に入手できるようになるのだ。

管制機能で交通円滑化やレベル4サービスを実現

コネクテッドカーやインフラに設置された通信機などからリアルタイムの交通状況をクラウドに収集し、解析した結果を配信することで、交通の全体最適化を図ることができる。

また、限定領域において無人自動運転を実現する自動運転レベル4も、コネクテッド技術の恩恵を大いに受ける。自動運転は、基本的に車両に搭載されたカメラなどのセンサー類による検知と、ダイナミックマップなどクラウドと連携した情報のやり取りによって成り立つ。それらの結果をもとにAI(人工知能)が自動車の制御を判断する仕組みだ。

車両のセンサーが取得した情報を逐一クラウドに発信し、クラウド側からもさまざまな情報が逐一車両に発信されるため、膨大な情報を常に受発信しながら走行することになる。その前提には、高速かつ大容量の通信技術、コネクテッド技術が必須になるのだ。

また、無人配車サービスなども、コネクテッド技術により各車両がコネクテッド化され、管制のもと運行される仕組みを基本とする。無線などでつながっている現在のタクシーシステムが、より拡張されるイメージだ。

車内がエンタメ空間に

コネクテッドサービスを商業的目線で見た場合、最もお金が動く可能性が高いのがエンターテインメント分野だ。自動運転技術が確立していない現在においては、音楽配信をはじめ同乗者向けのサービスが中心となるが、将来的には、映画鑑賞やゲームといった各種エンタメサービスが受けられるようになる。

車内は移動する個室空間となり、フロントウィンドウを全面ディスプレイとして使用したり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を活用したさまざまなサービスが実現したりするなど、可能性は大いに広がる。

仕事面でも、テレビ会議の要領でコネクテッド会議を行うなど、さまざまな活用方法が生み出されるだろう。

■デメリット(課題)
ハッキングの脅威

つながるクルマの最大にして永遠の課題ともいえるデメリットは、常にハッキングの脅威にさらされることだろう。インターネットの世界で、個人のパソコンにとどまらず企業のサーバーなどがハッキングされ続けている現状、どれだけセキュリティを強化しても悪質なハッカー(クラッカー)は小さな穴を見つけ、攻撃を仕掛けてくる。いたちごっこが続いているのだ。

コネクテッドカーが常につながる限り、100%の安全は確保できない。何重ものプロテクトを配し、乗っ取りに時間を要する仕組みを構築し、攻撃を感知したら直ちに接続を遮断する……といったアナログな手法でも、100%ハッキングを回避できるとは言い切れない。

コネクテッドサービスを運営するサーバー・クラウド側、個々の車両、ダウンロードコンテンツなど、各セキュリティ対策のうち一つでも欠ければ、乗員が危険にさらされる可能性は飛躍的に高まるのだ。

では、コネクテッドカーは危険か?利用すべきではないのか?-と問われれば、答えに窮するところだが、ハッキングの危険性に常にさらされているインターネットを個人や企業が使い続けるのと同様、そこに大きなメリットがあれば利用の道を探るのが人間だ。

ただ一つ、間違いなく言えることは、コネクテッドカーにおけるハッキングの場合、最低限の安全性を担保できるかどうかが一つのポイントになりそうだ。

【参考】セキュリティ開発企業については「「自動運転×セキュリティ」に取り組む日本と世界の企業まとめ」も参照。

個人のパソコンや企業サーバーがハッキングされた場合、その被害は情報の抜き取りや業務妨害が多くを占めるが、遠隔制御が可能なコネクテッドカーが乗っ取られた場合、それは鉄の塊であるクルマを物理的に乗っ取られることになり、乗員をはじめ周辺にいる人たちの命に直結する事件になりかねない。これだけは絶対に防がなければならない。万が一ハッキングされても、システムが強制シャットダウンして一切の制御ができなくなるなど、最低限のラインを死守することだけは絶対命題となるだろう。

こうした環境下、サイバーセキュリティをめぐる研究開発は非常に活発に行われている。自動車メーカーや部品メーカーをはじめ、IT系やスタートアップなどがさまざまなアプローチでセキュリティ強化に向け開発を進めている。

ホワイトハッカーたちが中心となって創業した株式会社イエラエセキュリティは2018年11月、自動車ハッキングについての情報発信や自動車関連におけるセキュリティエンジニアの育成などを目的に、日本発のサイバーセキュリティ国際会議「CODE BLUE 2018」において、車載ネットワークのハッキングコンテストである「Car Hacking Challenge」を開催した。

同社は2019年6月、デンソーと野村総合研究所グループのセキュリティ子会社であるNRIセキュアテクノロジーズが出資・設立したNDIAS社と、自動車のサイバーセキュリティ分野における共同開発に合意したことを発表した。自動車分野におけるサイバーセキュリティの強化にますます力を入れているようだ。

自動車価格の高騰

コネクテッドカーには、車載通信機(DCM)などの機器類をはじめ、通信料金やアプリをはじめとしたサービス利用料金などが発生する。当然のことだが、無料サービスと有料サービスがあり、多くのサービスを利用しようと思えばそれだけ多く課金される仕組みだ。

最低限のサービスを受けたい場合でも、オプション料金か車両価格にDCMなどの価格が加わり、車両購入時に要する費用が高くなる。標準搭載となれば、コネクテッドサービスを必要としない人もその価格分を負担しなければならない。コネクテッドサービスが本格化し、セキュリティ要件が高くなれば、その対策費の類も価格に転嫁されるだろう。

通信費用などについては、車両購入から数年間無料とするサービスが多いが、基本的には年額・月額費用が発生すると思っていたほうが良い。例えば、トヨタ自動車の「T-Connect DCMパッケージ」の場合、基本3年間無料の後、基本利用料として年額1万2960円が必要となる(DCM非搭載で携帯端末によって接続する場合は無料)。

今後、5Gが実用化されれば、従来回線は割安に、5G回線はしばらくの間高額に……といった料金変動も考えられる。

利便性の高いさまざまなサービスの対価は、決してゼロではないのだ。

乗り換えの際の煩雑さ

さまざまな情報が蓄積されるコネクテッドカーには、個人情報を含め重要な情報が一定程度蓄積されることになる。いわばスマートフォンやパソコンと同様、買い替えや乗り換えの際に、ストレージ情報の移行や消去、諸手続きが必要になるなど、ある程度の作業が必要になる可能性がある。

利便性を享受できる一方で失うものも

利便性を享受する裏側で、失うものも出てくるかもしれない。かつて、携帯電話が普及する以前は、自宅はもとより勤務先や友人などの自宅電話番号は頭の中に記憶していた。カーナビが普及する以前は、事前に地図を頭の中に入れ、目印となりそうなものを注意深く観察しながら道を覚え、運転していた。

しかし現在では、親密な友人や恋人の携帯電話番号を覚えている人はほぼおらず、道案内もカーナビ頼みという人は決して少なくないはずだ。ちょっとした調べごとや暇つぶしは、スマートフォンで完結してしまう。スマートフォンがない生活に戻れるだろうか?

便利さに慣れてしまうと、それを失ったときの不便さは何倍にもなって返ってくる。それが便利であればあるほど、そのストレスも倍増されるのだ。

コネクテッドカーのサービスが本格化し、その利便性が最高潮に達したとき、良くも悪くも元の生活にはなかなか戻れないということも頭の中に入れておこう。

■【まとめ】メリット>デメリット コネクテッドカーが車社会にイノベーションをもたらす

コネクテッドカーの実用化によるメリットは、応用が進みどんどん広がっていくことになる。この十数年でスマートフォンが大幅普及・定着したのも、当初考えられていた利便性をどんどん超えていった結果だ。

対するデメリットは、最も重要な課題といえるセキュリティ関連は常に念頭に置いておかなければならないが、サービスに対する対価は本来的に必要不可欠なものであり、乗り換えの際の煩雑さや利便性の裏側などは、正直なところ無理やり捻出したデメリットだ。

メリットとデメリットを比較すると、明らかにメリットによる恩恵が大きくなるものと思われるコネクテッドカー。車社会のイノベーションはもうすぐそこまで来ているのだ。







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