トヨタの運転支援機能とテスラのAutopilot、どちらがいい?【自動運転レベル1〜2】

テスラのハンズオフ機能は数段違い?



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

異色のBEVメーカーとして近年頭角を現した米テスラ。市場シェアではトヨタに遠く及ばないが、その存在感や話題性、影響力は自動車メーカーの枠を超え、テクノロジー企業として世界で台頭している。

テスラがテクノロジー企業と言える理由は、FSDに代表されるADAS(先進運転支援システム)にも明確に表れている。同社のADASは既存自動車メーカーと何が違うのか。


世界のトップに君臨するトヨタのADASとテスラのADASを比較してみよう。

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■トヨタのADAS

Toyota Safety Senseの概要

出典:トヨタ公式サイト

トヨタセーフティセンスは、2014年に発表され、翌2015年から導入が始まった予防安全パッケージだ。

衝突回避支援型プリクラッシュセーフティやレーンディパーチャーアラートといった各機能がパッケージ化されており、日本市場をはじめ世界各国の市場向けに標準搭載化が進んでいる。


当初は、レーザーレーダーとカメラを用いて衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームをパッケージ化したToyota Safety Sense Cと、ミリ波レーダーとカメラを用いることで歩行者検知機能付衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、レーダークルーズコントロールを実現した高機能版Toyota Safety Sense Pが設定されていた。

その後、第2世代で緊急時操舵支援機能やレーンチェンジアシストが加わるなど、徐々に機能が拡充され、2015年には、ITS専用周波数(760MHz)による路車間・車車間通信を活用した協調型運転支援システムの導入も始まった。

見通しの悪い交差点周辺で、道路に設置したセンサーが検知する対向車や歩行者情報を路車間通信によって自車両で取得したり、クルマ同士の接近情報を車車間通信で取得したりすることで、安全性能を高める狙いだ。これは、現在のレベル4自動運転に通じる技術と言える。

現在、モデルにもよるが、プリクラッシュセーフティ、レーントレーシングアシスト、レーンディパーチャーアラート、レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)、オートマチックハイビーム、ロードサインアシスト、ドライバー異常時対応システム、プロアクティブドライビングアシスト、発進遅れ告知機能、フロントクロストラフィックアラート、アダプティブハイビームシステム、レーンチェンジアシスト、緊急時操舵支援――といった機能がパッケージ化されている。


なお、レクサスブランドでは「Lexus Safety System +(レクサスセーフティセンスプラス)」が2015年から採用されている。いずれもレベル2システムとして機能している。

Toyota Teammateの概要

出典:トヨタ公式サイト

トヨタ/レクサスセーフティセンスの上位にあたる高度運転支援システムが、「Toyota Teammate(トヨタチームメイト)/Lexus Teammate(レクサスチームメイト)」だ。トヨタ独自の自動運転の考え方「Mobility Teammate Concept」に基づく技術として、上位車種を中心にオプション展開されている。

その代表的機能が、ハンズオフ運転を可能にする「Advanced Drive」と「Advanced Drive(渋滞時支援)」だ。レクサスとMIRAIは「Advanced Drive」と英語表記、トヨタ車は「アドバンスト ドライブ」とカタカナ表記になっている。

レクサス「LS」とMIRAIに設定されたAdvanced Driveは、高速道路や自動車専用道路の本線上での走行を強力に支援し、ハンズオフ運転を実現する。

時速5~125キロに対応しており、ナビゲーションで目的地を設定すると、ドライバー監視のもと交通状況に応じて車載システムが適切に認知・判断・操作を支援し、車線・車間維持や分岐、車線変更、追い越しなどを行いながら目的地までの運転を支援する。

これが現在トヨタ、レクサスにおける最上位ADASだ。

一方、Advanced Drive(渋滞時支援)は、時速0~40キロの高速道路渋滞時においてハンズオフ運転を可能にする。

Advanced Drive(渋滞時支援)はアルファード、ヴェルファイア、ヴォクシー、ノア、クラウン、クラウン(エステート・クロスオーバー、スポーツ)、ランドクルーザー250、センチュリーにオプション設定されている。

実用性に乏しい点は否めないが、比較的安価なセンサー・システム構成でハンズオフを実現する普及技術として見れば、その存在意義は大きい。

■テスラのADAS

テスラのADAS/自動運転戦略

公式発表が乏しいため当時の報道頼みとなるが、マスク氏がAutopilotに言及したのは2013年にさかのぼる。ブルームバーグのインタビューによると、マスク氏は当時、テスラへの出資者であるグーグル創業者のラリー・ペイジ氏らと自動運転に関する協議を行っていたことを明かしている。

その中で、自身は「自動運転」という言葉より「自動操縦(Autopilot)」という言葉の方が好きなこと、グーグルのアプローチはセンサースイートが高額になり過ぎることなどに触れ、テスラは自動運転システムを独自開発し、LiDARベースではなくカメラベースとする構想などを打ち明けている。

この考え方は、現在までしっかりと引き継がれている。また、グーグル同様、早くから自動運転開発を意識していたこともうかがえる。

その後、アダプティブクルーズコントロール(トラフィックアウェアクルーズコントロール)とレーンキープアシスト(オートステアリング)を備えたレベル2システムとしてAutopilotを正式に発表し、2014年下半期に生産された車両からまずハードウェアの搭載を開始した。

当初、Autopilotは有料オプション扱いで、2,500ドル(当時のレートで約25万円)と設定されていた。

また、テスラはハードウェア構成に関し「自動運転に対応可能な構成で、継続的なソフトウェアアップデートで自動運転を実現する」とし、段階的に全車への標準搭載化を表明していたが、その後幾度もSoCを最新版に変更するなど改善を重ねている。2021年には、ミリ波レーダーを取り払いカメラのみに依存した「Pure Vision Autopilot」の実装を開始している。

自動レーンチェンジ機能などを備えた拡張版「Enhanced Autopilot」や、より高度な機能を搭載した「Full Self Driving(FSD)」も有料オプションとして追加された。FSDは2016年から登場していたが、ソフトウェアアップデートを通じて将来自動運転を実現する――といった、現在につながる形の提供は2020年リリースのベータ版からとなるようだ。つまり、将来的な自動運転化を正式に約束したのが2020年以降となる。

アーリーアクセスプラグラムに参加している一部オーナーを対象に展開を開始し、その後、独自の安全スコアリングシステムで高評価を得たオーナーなどに徐々に拡大していった。北米の全オーナーに開放されたのは2022年後半になってからだ。

テスラは、FSDオーナーから走行データを随時受け取り、大量のデータをもとに機能向上を図っていくサイクルで開発速度を上げている。

【参考】テスラの自動運転戦略については「テスラの自動運転(Autopilot, FSD)とロボタクシー計画を徹底解説」も参照。

Autopilotの概要

Autopilotは、マスク氏が航空機のAutopilot(自動操縦)をイメージしてネーミングしたADASで、自動運転・自動操縦機能ではない。

メイン機能は「トラフィックアウェアクルーズコントロール」と「オートステアリング」だ。トラフィックアウェアクルーズコントロールは、周囲の交通状況に合わせて車両の速度を調整しながら設定した巡航速度による走行を支援する。言わばアダプティブクルーズコントロールだ。

オートステアリングは、明確に示された車線内でステアリング操作を支援する。区画線が認識できる環境下で、車線の中央を走行できるよう支援する機能で、レーンキープアシストと同義だ。

なお、オートステアリング作動中は、ステアリングホイールに加えられたトルクを常に測定し、トルクが不十分な場合、段階的に警告音と警告表示を繰り返し、正しくハンドルを握るよう促す。ハンズオフではなく、ハンズオンのレベル2であるためだ。

警告を繰り返し無視した場合、その運転中はオートパイロットが使用不可となる。また、バックミラー上部に設置した車内カメラが常時ドライバーの注意力を監視し、道路から目を離さないようドライバーに警告を発する。

強化バージョンでは、オートステアリングが作動している際にウィンカーを作動させると隣接車線にスムーズに移動する「オートレーンチェンジ」機能や、車線変更の提案やインターチェンジのナビゲートなど、高速道路の入口から出口までを通じてレーンチェンジ含め案内する「オートパイロットナビゲート」、ワンタッチで縦列駐車や垂直駐車をサポートする「オートパーク」、最大12メートル離れた状態で車外から駐車制御を行う「サモン」、最大65メートルの範囲で駐車場内などにおいて自車両を自分のもとまで自動で呼び寄せる「スマートサモン」などの各機能も提供されている。

FSD(Full Self Driving Supervised)の概要

出典:Tesla公式サイト

FSD(Supervised)は、ドライバーによる能動的な監視の下、すべての運転に対応するよう設計されたADASだ。ルート案内、ステアリング操作、車線変更、速度制御、駐車などを含む運転操作をインテリジェントかつ正確に実行する。

高速道路などに限定せず、住宅街などを含む一般道路でも作動させることができ、信号や道路標識も認識し、信号に従って交差点でゆっくり車両を停止することもできる。

限りなく自動運転に近づいているが、あくまでドライバーの常時監視を必須とするレベル2・レベル2+に相当する。

ただ、市街地をはじめとする広範囲でレベル2+に対応したシステムを実装している自動車メーカーはテスラ以外にはいない。他社は高速道路をはじめとした自動車専用道路におけるレベル2プラスからいまだに脱却できていないことを踏まえると、テスラの技術は自動車メーカーの中で図抜けていると言える。

Autopilot(自動操縦)やFull Self Driving Supervised(完全自動運転)といった誤解を生みやすいネーミングや、マスク氏による過剰な宣伝、実際に高性能であることなどを理由に、ハンドルから手を放す行為に留まらず、前方監視を怠るドライバーも散見された。運転席を離れるドライバーまで出る始末で、ハンドルに手を添えているようにセンサーをだますハンズオン対策グッズまで販売された。

テスラも対策を強化しており、前述したハンドルにかかるトルクを測定するセンサーなど、さまざまな予防技術を導入している。

FSDでハンズオフが可能になったのは、2024年のFSD Ver.12.4のアップデートからだ。明確にハンズオフ機能をうたっているわけではないが、従来のハンドルのセンサーを、車内のドライバーモニタリングシステムによる監視で代替できるよう改善したのだ。

このアップデートにより、ドライバーはハンドルを握る必要はなくなり、しっかりと前方を監視していればよくなった。事実上のハンズオフ容認だ。状況によってはハンドルを握るようシステムから警告が発されることもあるが、特段ODD(運行設計領域)を設定していないため、システムが許す限りいつでもどこでもFSDを作動できるようになっている。

なお、テスラが2025年6月にオースティンで開始したロボタクシーもFSDを搭載しているが、これは特別なバージョンであり、自家用車向けとは異なる。

報道によると、このロボタクシーに搭載されている特別バージョンのFSDは、自家用車向けより約6カ月分技術が進んでおり、近い将来自家用車向けにリリースするという。FSDの進化はまだまだ続きそうだ。

■トヨタとテスラのADASの比較

レベル2+の性能に大きな差

トヨタはSafety Senseでレベル2、TeammateのAdvanced Driveでレベル2+を実現しているのに対し、テスラはAutopilotでレベル2、FSDでレベル2+を実現している。

単純なレベル表記だけで見れば対等と言えるが、レベル2、レベル2+の中身が大きく異なる。高速道路に限定されるトヨタに対し、テスラは一般道路も網羅している。

この差は非常に大きい。歩行者や自転車が行き交う一般道路で交差点にも対応するには、相当高い技術水準を必要とするためだ。控えめに見ても、既存自動車メーカーの5年先を進んでいると言える。

FSDの価格は、変動があるものの2024年に8,000ドル(約120万円)、または月額99ドル(約1万5,000円)となっている。トヨタをはじめとする他社のADAS価格、さらにはメルセデスベンツのレベル3「DRIVE PILOT」価格(5,950ユーロ/約97万円)よりも高額となるが、将来的に完全自動運転を実現すると考えれば、お買い得と言えるのかもしれない。

テスラの技術については賛否両論が激しい。レベル4水準で見ればまだまだ危うい場面が多く、先走る形で実装すればおそらく重大事故が発生し、厳しい規制の対象となる可能性が考えられる。

しかし、純粋にレベル2+として見れば、トヨタをはじめとする世界の自動車メーカーを軽く凌駕する機能を実装しており、もはや追随を許さない領域に到達している。

もし、マスク氏が過剰に自動運転PRをせず、レベル2+として正確な情報を宣伝していれば、テスラに対する世界的評価は今とは違う意味で大絶賛されていたかもしれない。それほどの技術と言える。

■【まとめ】ADAS勝負はテスラに軍配

テスラとトヨタのADASを比較すると、どう考えてもテスラに軍配が上がる。それほどの差があるのだ。もはやテスラを自動車メーカーの枠に押し込んで比較するのはナンセンスで、テクノロジー企業として認識しなければ正しい評価はできないだろう。

テスラは今後、どこまで信頼性を高め、レベル4、そしてレベル5への道を切り拓くのか。対するトヨタはどのような戦略で立ち向かっていくのか。各社の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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