
高市早苗内閣が2025年10月21日に発足して3週間が経過した。少数与党での船出となったものの、安倍氏以来の保守色の強さとキャラクターで高支持を集めており、自民党関係者は胸をなでおろしているのではないだろうか。
新政権の施策も少しずつ形になり始めているが、モビリティ分野ではどのような施策が打ち出されるのか。近年、自動運転関連は内閣が代わろうと一貫した施策のもと開発強化と実用化に向けた施策が続いていた。
一方、コロナ禍後のインバウンド増などを背景に急浮上したライドシェア解禁議論は、宙に浮いたままとなっている。高市政権はライドシェアをどのように考えているのか。
新政権下、ライドシェアの全面解禁はあるのか。それとも、このまま議論は尻すぼみとなり、オワコン化していくのか。ライドシェア議論の行方に迫る。
記事の目次
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■高市内閣の政策方針
今のところ交通政策への言及はなし
新政権樹立後の第219回国会で所信表明演説を行った高市総理は、経済財政政策の基本方針、物価高対策、危機管理投資による力強い経済成長、食料安全保障、エネルギー安全保障、国土強靱化対策、健康医療安全保障、地域未来戦略、人口政策・外国人対策、治安・安全の確保、外交・安全保障などに言及した。
高市総理は「何を実行するにしても『強い経済』をつくることが必要。この内閣では、『経済あっての財政』の考え方を基本とし、強い経済を構築するため責任ある積極財政の考え方の下、戦略的に財政出動を行う」と積極財政の考えを改めて示した。
また、成長戦略の肝は「危機管理投資」とし、経済安全保障をはじめとしたさまざまなリスクや社会課題に対し、官民が手を携え先手を打って戦略的投資を行っていく方針を打ち出した。「世界共通の課題解決に資する製品・サービス・インフラを提供できれば、更なる日本の成長につながる。未来への不安を希望に変え、経済の新たな成長を切り拓く」としている。この辺りは高市総理らしい政策と言える。
「AI・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティなどの戦略分野に対し、大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出す。『世界で最もAIを開発・活用しやすい国』を目指し、データ連携などを通じてAIをはじめとする新しいデジタル技術の研究開発及び産業化を加速させる。加えて、コンテンツ産業を含めたデジタル関連産業の海外展開を支援する」とした。
交通関連施策への言及はなかったが、AI・半導体に関連して自動運転分野への支援は引き続き行われることが期待できそうだ。
2024年総裁選ではライドシェアの安全性を危惧
ライドシェアに関しては、当然と言えばそれまでだが言及される場面はなかった。高市総理はどのように考えているのだろうか。
これまで高市総理は表立ってライドシェアに言及する場面はほとんどなかったが、2024年9月に行われた自民党総裁選の討論会で、当時の高市候補は「ライドシェアの全面解禁は交通安全上の問題や、強盗などの犯罪被害に遭う恐れがある」と述べている。
高市総理は、本格版ライドシェアに対しては消極的、むしろ反対の姿勢が強い印象だ。高市政権下において、トップダウンで本格版ライドシェアが解禁されることはまずないものと思われる。
【参考】関連記事「自民総裁選、ライドシェア「全面解禁しなそう」ランキング!1位は石破氏、2位は?」も参照。
■高市内閣の関係閣僚の意向
国土交通大臣の意向は?

では、関係する閣僚はどうだろうか。高市総理が消極的であっても、担当閣僚にやる気があれば、新たな安全確保策などを交えた上で制度設計を行い、議論の俎上に載せることができるはずだ。
ライドシェアを所管する国土交通大臣の考えはどうか。公明党が与党を去ったことで16年ぶりに自民党内から国土交通大臣が誕生した。歴代の公明党大臣は本格版ライドシェアの解禁に消極的だったが、自民党大臣はどうだろうか。
中野洋昌氏から国交大臣のバトンを引き継いだのは、金子恭之氏だ。金子大臣は、会見で記者から前任の公明党大臣がライドシェア全面解禁に慎重なり反対なりといった立場であったということを踏まえた上での考え方を問われ、「私もこれまで国土交通関係で、自民党の部会や色々な局面でこのライドシェアについては議論してきた。その中で、日本版ライドシェアということで動き出しているわけであり、まずはそちらを進めていく」と回答した。
その上で以下のように述べている。
有償で旅客を運送するサービスについては、一つ目は、適切な運行管理、車両整備管理によるドライバー・車両の安全の確保、それから二つ目に、事故が起きた時をはじめとした運送の責任をどうするのか、三つ目に、ドライバーの適切な労働条件の確保というのが大変重要であるということはこれまでの議論の中で御承知のことだと思う。例えば、運行管理あるいは車両整備等について責任を負う主体を置かず、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態で、旅客運送を有償で行うことについては、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題があると考えている。
ライドシェア全面解禁に対し明確な回答は避けているものの、明らかに慎重派だ。タクシーを補完することを目的とした日本版ライドシェアで線引きし、同制度を維持することで本格版の解禁を阻止していく可能性が高い。国交省としては、公明党時代の流れが今しばらく続いていくことになりそうだ。
デジタル大臣の意向は?

では、デジタル大臣はどうだろうか。デジタル大臣に抜擢されたのは、松本尚氏だ。松本氏は医師・医学博士として活躍し、フライトドクターとしてドクターヘリ事業の立ち上げに係わるなど、医療分野における功績が高い。ドラマ「コード・ブルー」の医療監修を務めたことでも有名だ。2019年には、空飛ぶクルマ開発を手掛けるSkyDriveの顧問に就任したことも発表されている。
ライドシェアに関しては、これまで特に言及した場面はないものと思われる。イノベーションに対する理解は深そうだが、医療関係者の視点で言えば、安全・安心を重視する可能性が考えられるため、本格版ライドシェアの導入を推進することもなさそうな印象だ。
松本大臣には、医療×自動運転関連での活躍に改めて期待したいところだ。
規制改革担当大臣の意向は?

最後の砦……ではないが、規制改革担当大臣はどうだろうか。内閣府特命担当大臣(経済財政政策 規制改革)に就任したのは、城内実氏だ。日本成長戦略担当、スタートアップ担当なども担っている。
城内氏は、2024年2月の予算委員会でライドシェアに関する質疑を行っている。城内氏は、タクシー事業を取り巻く環境について懸念を示す形で「ライドシェアが大きな議論となっている。タクシー乗務員不足は喫緊の課題であり、どのように確保していくかをしっかり考えていかなければならない。しかし、注意すべきは安易な参入障壁の引下げ、新規参入の増加は、かえって安全、安心な地域公共交通機関としてのタクシーサービスを毀損しかねないということ」と持論を展開している。
その上で、日本版ライドシェアについて「タクシー会社がドライバーの教育や運行管理、車両整備管理等の安全確保を行い、運賃もタクシーに準じ、運送責任もタクシー会社が負う形であれば、事故防止や安全性も一定程度担保される。これによりタクシー不足が改善されるとともに、一般ドライバーの二種免許取得、タクシー運転手の増加につながることが期待される」と評価しつつ、次のように本格版ライドシェアへの懸念を示している。
私が懸念しているのは、日本版ライドシェア導入の後、6月に向けてタクシー事業者以外の者によるライドシェア事業のための法律制度の議論を行うということ。タクシー会社が管理する一般ドライバーの自家用車を使った有償の旅客運送と、タクシー事業者以外の者によるライドシェアは全く異なるもの。タクシー事業者以外の者によるライドシェアはまさに白タク行為であり、運行管理や車両整備管理についての民事、刑事上の法的な責任問題や、ドライバー、乗客の安全性、タクシーを含めた既存の公共交通機関との過当競争や交通渋滞を招く危険性など、重大かつ新たな問題を多くはらんでいる。
城内氏は「日本版ライドシェアの効果をしっかりと検証することが何よりも重要」とし、本格版に明確に反対する意思は示していないものの、明らかに反対派だ。
規制改革推進会議でも特に議論が進んでいる様子はない。再び本格版ライドシェアが俎上に載る日は訪れるのか、一応注目したい。
■ライドシェア議論の動向
ライドシェアは長らくタブーな存在だった
第2次安倍政権以降の過去の流れを見ていこう。第2次安倍内閣が誕生した2012年は、米国でUber Technologiesなどがライドシェア事業を拡大中の時期で、内閣発足当初はライドシェアに注目が集まることはなかった。
その後、Uber Technologiesの日本法人が誕生し、2015年に福岡県福岡市でライドシェアの検証プログラムを開始した。このあたりからライドシェアへの注目が高まったと言える。なお、Uber Technologiesの取り組みは国土交通省から「白タク行為」に抵触すると指導が入り、中止を余儀なくされた。
2016年の第190回国会では、特区における自家用有償旅客運送の対象に観光客などを追加する国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案が可決されたが、この際、附帯決議として「国家戦略特別区域自家用有償観光旅客等運送事業については、公共交通であるバス・タクシー等が極端に不足している地域における観光客等の移動の利便性の確保が目的であることから、既存の一般旅客自動車運送事業で対応可能な場合はこれを認めないこと。また、同制度の全国での実施や、いわゆる「ライドシェア」の導入は認めないこと」ことが明記されている。
2020年の第201回国会閣法第20号でも同様の決議が付されている。日本では、タクシー営業に必要な許可を得ず道路運送法に違反する形でサービス提供する行為を「白タク」と呼び、厳格に規制している。この流れが長らく続き、本格版ライドシェアは禁忌とされていた。
その後、コロナ禍でタクシー需要は落ち込み、タクシードライバー離れが一時加速することになる。コロナ禍が明けると、国内移動が活発化し、円安を背景にインバウンドも増加の一途をたどる。大都市部や観光地などでタクシー需要が急増したものの、ドライバー不足が顕著となり、移動需要を満たせなくなった。
議論の結果「自家用車活用事業」創設
そこで菅義偉元首相らがライドシェア解禁の是非を議論すべきと提唱し、検討が始まった。その結果制度化されたのが「自家用車活用事業」、通称日本版ライドシェアだ。
2024年3月に創設された日本版ライドシェアは、タクシー事業者のもと、参加したい一般ドライバーが自家用車を用いて旅客運送サービスを提供するものだ。
実施主体はあくまでタクシー事業者であり、一般ドライバーは二種免許などが不要であるものの、タクシー事業者にパートなどの形で雇用される必要がある。管理はタクシー事業者が行い、サービスに必要な教育も実施する。
あくまでタクシー不足を補う目的のため、サービス提供可能なエリアや時間帯なども限られている。事実上、お試しタクシードライバー制度といったところだ。
2025年9月第2週時点で、登録ドライバー数は9,709人、運行回数は103万9,573回に上る。このうち、ドライバー数、運行回数ともに9割を大都市部が占めている。
【参考】関連記事「ライドシェアとは?定義や意味は?課題や免許についても解説」も参照。
■【まとめ】自動運転タクシーが実用化されれば議論は終わる?
おそらく、高市内閣下ではライドシェア議論は進展しないものと思われる。河野太郎氏や小泉進次郎氏ら推進派の温度・発言力も下がっている感が強く、日本版ライドシェアを維持していく方向で話が進む可能性が高そうだ。
のらりくらりと議論を交わしていれば、そのうち自動運転タクシーが実用化され、移動サービスを補完していくことになる。当初は限定的なサービスだが、長いスパンで見れば既存タクシーサービスをしっかり代替する無人サービスとなっていく。
そう考えると、日本において本格版ライドシェアは出番なしで終わり、配車サービスとしてのプラットフォーマーの競争だけが残るのかもしれない。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシーとは?アメリカ・日本・中国の開発状況は?」も参照。











