21世紀に入って大きな進化を遂げ続けるAI技術。ディープラーニング(深層学習)や生成AIの登場によりその応用範囲を拡大し、さまざまな分野への導入・有効活用に期待が寄せられている。
自動運転分野もその恩恵を受ける領域の一つだ。Waymoが火をつけた開発競争はまさにAIの進化とともに大きく裾野を広げていった。自動運転開発競争がAI開発を押し上げた側面もうかがえる。
自動運転ではどのようにAI技術が活用されているのか。その関係性について解説していく。
・2025年8月12日:各AIの発達・進化状況をアップデート
・2024年4月18日:トロッコ問題に関する関連記事を追加
・2023年7月7日:関連記事を追加/ChatGPTなどの生成AIとの関連性について追記
・2022年6月9日:記事初稿を公開
記事の目次
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■自動運転システムにおけるAI
画像解析におけるAI

自動運転システムは、車両に搭載されたカメラやLiDAR、ミリ波レーダーなどの各種センサーが映し出すデータを分析し、それをもとにAIが車両をどのように制御すべきかを判断して走行する。
カメラなどに映し出されたデータは、そのままの状態ではそこに何が映し出されているのかコンピュータは把握できない。コンピュータはあくまでデジタルデータを扱っているに過ぎないからだ、
そこで、各データに映し出されたものに対して、一つひとつ名前を付けて分類・区別していく作業=ラベリングが必要になる。車線や各種道路標識、信号機などをはじめ、人や自転車、さまざまな形をした車両など、道路交通に関係する全てのものを分別する。
この分別されたものをベースに、AIが各オブジェクトの特徴を学んでいく。データが多ければ多いほど特徴が浮き彫りとなり、オブジェクトの判別の精度が増していく。AIが脳となり、一つひとつのオブジェクトを学習し、その外観的な特徴や動作などを少しずつ学んでいくのだ。
この反復作業によってAIの頭脳は徐々に賢さを増し、画像に映し出されたものが何かを識別するとともに全体の状況を把握可能になっていく。コンピュータビジョンと呼ばれる技術領域だ。
なお、ラベリングそのものをAIに任せ、分類・区別を自動化させる手法もある。AIにおける「教師なし学習」と呼ばれるもので、AIが自動で仕分けしたグループの中から車両が分類されたものを見つけ、後から「これは車両です」などと教える手法だ。
この画像分析は、人間でいうところの「目」と「脳」の役割を担う最重要領域と言っても間違いではない。自動運転の根幹と言うべき領域だ。
【参考】画像解析技術については「「教師なし学習」で自動運転!ホンダも出資するHelm.aiの正体」も参照。
判断におけるAI
コンピュータビジョンによりオブジェクトを把握可能となったコンピュータは、それをもとに車両をどのように制御すべきか判断・意思決定を行う。これもAIの役割だ。
車両が区画線をはみ出しそうになったら横方向の制御を行い、前方の信号機が赤であれば縦方向の制御を行って減速・停止する。走行中に路肩を走る自転車がいれば適正距離を保ちながらかわし、横断歩道を渡りそうな歩行者がいればしっかりと停止する。
周囲のオブジェクトと接触することがないことを前提に、人間のドライバーが普段行っているのと同様の判断をAIが瞬時に下すのだ。リアルタイムで画像を解析し、瞬時に判断を迫られるため、高いデータ処理能力とともに高精度なAIの開発が強く求められる。
予測におけるAI
判断における要素の1つに「予測」がある。前方を走行する車両や歩行者などがどのような挙動を行うかを予測し、それを踏まえたうえで車両を制御しなければならない。交通環境における他のオブジェクト全てに対し予想される動きを事前に割り出し、判断・意思決定に活用していく。
例えば、片側複数車線を走行中、前方車両が自車の手前に進路変更してくる可能性や後続車による追い越し、路上駐車車両などの死角からの飛び出し、自転車の急なふくらみ走行など、あらゆる可能性を予測に組み入れることでリスク回避行動をとりやすくなり、安全性を高めることができる。
野生動物の飛び出しなど、レアケースと言える事象にも対応できることが望ましい。事故の多くはレアケースに基づくためだ。交通情報などから飛び出しが多いエリアを割り出したり、路外のオブジェクト検知精度を高めたりするなど、こうした事象にどれだけ対応できるかが自動運転のクオリティを左右する。
AIにおけるトロッコ問題

自動運転車が走行中、物陰から突然自転車が飛び出してきたとする。予測の範疇を超えた挙動の場合、自動運転車はこれを避けることができず、このままでは衝突が避けられない。避けるためには、急ハンドルを切って自動運転車を壁に激突させるしかない状況だ。
自転車か乗員のどちらかの負傷を避けられないような究極の選択を迫られた際、AIはどのような意思決定を行うべきか――といった、トロッコ問題もよくトピックに上がる。
開発者の意向が反映される部分となりそうだが、あくまで外部の人間を守るべきか、乗員を保護すべきか。人数の多寡で判断すべきか。あるいは急ブレーキを踏むなど最大限の努力を行い、成り行きに任せるべきか。
結論を出すことは簡単ではないが、例えばドイツで可決・施行された「自動運転法(改正道路交通法)」では、「人命へのリスクが避けられない場合は個人的な特徴を基に人命の重み付けを行わない事故防止システムを備えること」と定められている。1つの指針を示した格好だ。
また、ボルボ傘下のボルボ・オートノマス・ソリューションズは、自動運転車は倫理的な心配をする必要はないとする姿勢を示している。
避けられない衝突に陥らないよう設計することが第一であり、トロッコ問題は実質的に役に立たない仮説的なシナリオに過ぎないとしている。
トロッコ問題にとらわれ過ぎるのも開発の遅れにつながりかねない。要は、急な飛び出しなど衝突を避けきれない状況に対し、自動運転システムがどこまで責任を負うべきか、どこまで対応すべきか……といった面を明確にすべきということだろう。
【参考】関連記事としては「自動運転とトロッコ問題」「自動運転、国交省が「トロッコ問題」の解決などに予算2.4億円計上」も参照。
■自動運転におけるAI開発
主流のルールベースから徐々にE2Eモデルへのシフトが始まる
自動運転システム総体としてのAIモデルも進化の過程にあるようだ。グーグル系Waymoに代表される先行開発勢の多くは、ルールベース型で設計されているが、近年はエンドツーエンド(E2E)方式を採用する開発企業が増えている。自動運転システム構築に向けたアプローチが異なるのだ。

ルールベースは、LiDARによる認識やカメラによる認識、高精度3次元地図を用いた自己位置推定など、要素ごとにAIモデルを開発・活用し、これらをモジュールとして統合する形で全体をなす。自動運転システムがさまざまなソフトウェアで構成され、これらが複雑に連動することで自動運転を行うイメージだ。
また、AIに判断能力を学習させる過程において、ルールベースは一つひとつのシナリオに対し細やかな指示を受けて学習していくのも特徴とされる。
「赤信号に対しては停止線で必ず停止して待機する」「自転車が路肩を走行している場合、~メートル以上の距離を必ずとる」など、交通ルールや注意ポイントを一つひとつ教え込むのだ。
AIは、これらの教え込まれた指示を忠実に守る形で判断基準を学び、自動車の制御判断を下す。同様のシチュエーションに対し、どこまで応用を利かせられるかはAI次第で、自動運転の幅や精度を高めるにはより細かな指示が必要で、その作業は膨大なものとなるが、教え込まれた範囲内においては精度の高い判断を下すことができる。
応用は効きにくいが、教えれば教えるほど上達していく。自動車教習の教本をもとに、忠実に運転を行うイメージだ。
自動運転開発創世期においては、柔軟な自律走行能力を求める余裕はなく、より多くのシチュエーションを体験して一つひとつ学ばせることで、自動運転の精度を高めていくのがスタンダードだったのだ。
一方、E2Eは画像認識や判断、制御に至るすべての工程を基本的に一つのAIで一体的にまかなう。ソフトウェアとしては非常にシンプルな構成だが、その分非常に高度な能力が求められる。
学習過程においては、AIが機械学習によって膨大なデータからパターンを見出すなどし、さまざまなシナリオに対する正解を導き出していく。大量のデータをもとに、AIが自ら学習を進めていくイメージだ。
膨大なテキストデータをもとに言葉の意味や文章の構造、文脈などを理解していく大規模言語モデルの自動運転バージョンのようなものだ。データを繰り返し繰り返し学習することで正しい判断能力を養っていく。
ルールベースに比べ学習時に人間が介入することが少ない一方、AIが自ら学ぶ工程に膨大な時間を要する。自動車教本などベースとなる知識を与えられることなく、経験則に基づいて安全な走行方法を身に着けていくためだ。
そのため、ルールベースに比べ自動運転システムが一定の精度に達するまで時間がかかる場合が多い。しかし、その先には大きなベネフィットが待ち受けている。AIが自ら学習を進めるため、自動車教本に載っていないレアケースや想定外の事象にも対応可能になるポテンシャルを有しているのだ。
ルールベースでは、初めて走行する道路には原則対応できないが、E2Eモデルであれば対応可能となる。これは、走行エリアなどの条件が付されるレベル4を超え、原則制限のない自律走行を可能とするレベル5への道を切り拓くことを意味する。
少し前まで、このE2Eによる自動運転は現在技術では無理・無謀とまで言われていた。しかし近年、生成AIに代表されるようにAI技術が著しく進化し、状況が変わった。E2E開発に着手する事業者は増加傾向にあり、実現可能な領域となり始めた。
自動運転業界において、現時点での開発の主流はルールベースだが、E2Eがこのまま伸びていくこともほぼ間違いない。想定より早い段階でE2Eがスタンダードとなる可能性もありそうだ。

テスラやTuringが代表格
E2E開発の代表的存在は米テスラだ。同社CEOのイーロン・マスク氏は早くからレベル5を視野に収めた自動運転開発を進めており、ADASながら2023年ローンチのFSD V.12からE2Eモデルの実装を始めている。
まだ甘いところは残っているようだが、市街地を含む広範囲でハンズオフ運転を実現しており、著しい進化を遂げている。レベル4の土俵ではまだWaymoに後れを取っているものの、数年以内に逆転してもおかしくない状況だ。
日本では、「テスラ超え」を標榜するスタートアップ・TuringがE2E開発に注力している。マルチモーダル生成AI「Heron」や生成世界モデル「Terra」、大規模GPUクラスタ「Gaggle Cluster」など必要な要素を次々と自社開発しており、都内を30分間走行できる自動運転システムを開発するプロジェクト「TOKYO30」を2025年中に実現する計画だ。
これまでルールベースによる自動運転開発を進めていたWaymoやティアフォーなどもE2E開発に着手しており、今まさにトレンドの移行期を迎えつつあるのかもしれない。
【参考】ルールベースとE2Eについては「自動運転モデル「ルールベース」「E2Eモデル」とは?」も参照。
■マッピング技術におけるAI
自動運転における要素技術の1つに数えられるマッピングにもAIは活用される。高精度3次元地図やダイナミックマップは、一般的に車載カメラやLiDARなどのデータを用いて作製する。
【参考】関連記事としては「ダイナミックマップとは?自動運転に有用」も参照。
例えば、LiDARによるマッピングの場合、データは点群となって返ってくる。センサーから発した無数のレーザーがオブジェクトにぶつかって戻ってくるまでの時間を計測することで、そのオブジェクトまでの距離を正確に導き出す仕組みだ。
それぞれのレーザーは点となって返ってくるが、このレーザーを辺り一面にくまなく発すると、点描のようなイメージで周囲の状況を3D化することができる。
ただ、そのままではその点描にどのようなオブジェクトが含まれているかはわからない。そこで、前出の画像認識と同様、車線や路肩縁、道路標識、街路樹など、必要となる道路周辺の構造物などに対し、それが何かを示す情報を付加=ラベリングしていく作業が必要になる。
このラベリング作業においてAIが活躍する。画像に映し出されたものが何かをAIが自動判別してラベリングしていくのだ。
高精度3次元地図の更新作業においても、AIが活躍する場面は多そうだ。現在、一般的な車載カメラや衛星写真などを活用して高精度3次元地図の作製・更新を行う技術開発が進められているが、さまざまなデータを効率的に統合していく過程でAIが活用される可能性は高い。
このほか、SLAM(Simultaneous Location and Mapping)などのアルゴリズムを使用してリアルタイムでマップを生成していく技術などでもAIは重宝しそうだ。
【参考】関連記事としては「SLAM技術とは?」も参照。
【参考】マッピング・高精度3次元地図については「自動運転向け地図・マップ解説」も参照。
■ルート最適化におけるAI
自動運転車には、現在地から中継地、目的地に至るまでのルートを総合的に判断し、最大限効率的な経路を導き出すルート最適化技術も必須となる。
目的地までの間の時間単位での渋滞予測や工事情報などをもとに車線単位で最適なルートを選択するほか、複数の乗客を需要に合わせてピックアップしていくオンデマンドモビリティでは、どの順で回れば最も効果的かつ最短かを瞬時に判断しなければならない。
ラストマイルを担う物流系自動運転車も、ルート最適化技術が必須となる。一回の出動で複数の配達先を回るためだ。
発展系としては、ルートごとの事故率などをもとに危険性を分析して安全ルートを導き出す機能や、路面状況や右左折の回数、信号機の数などをもとに乗り心地を重視したルートを導き出す機能なども考えられる。
複数車両が運行する自動運転タクシーにおいては、エリア内で同時多発的に次々と生まれる需要に対し、どの車両を配車すればよいか全体最適化を図りながらルートを最適化していく必要がある。さらには、どの時間帯にどの場所で需要が発生しやすいかを予測し、これを念頭に置きながら配車していくことも将来的には必要かもしれない。
複雑化する需要に将来予測を加味しながら瞬時に答えを導き出す技術は、AIだからこそ成せると言っても過言ではなさそうだ。
【参考】ルート最適化については「ルート最適化システム、市場拡大の予兆 日本郵便でも試行導入拡大」も参照。
■乗員とのコミュニケーションにおけるAI
ドライバーや保安員が不在となる自動運転車においては、乗員の状況や意思確認をはじめ、走行状況の伝達といった乗員とクルマのコミュニケーションをシステムが代替しなければならない。ここでAIが活躍する。
乗員が自動運転車に何らかの指示を出す場合、現状は車載機器やスマートフォン・タブレットなどを活用するが、利便性を高める技術として注目が高まっているのが音声認識技術だ。乗員の「コンビニまで行って」「ちょっと止まって」といった指示をはじめ、「おいしいレストランに連れて行って」などの要望にも的確に応えるため、乗員が発する言語を正確にとらえるとともに、乗員が何を求めているのかをしっかりと理解する必要がある。こうした際にAIが活躍するのだ。
さらには、レストランなどの情報も即座に入手し、混雑状況やおすすめメニューなども踏まえた上で回答する機能などにも期待される。膨大な情報を瞬時に把握・判断を下すのだ。
乗員同士の会話と自動運転車への指示・要望をしっかりと判別することなども求められる。通り一遍の対応ではなく、フレキシブルな対応はAIだからこそ可能となる領域だ。
また、車内カメラなどの情報をもとに、乗員がどういった状態にあるかを分析し、能動的な対応をとることも考えられる。例えば、乗員が寝ていると判断した場合、車内の灯火類を落とし、リラクゼーション効果のある音楽を流すことや、乗員がせき込んでいる場合、最寄りのドラッグストアや診療所を案内することなどが考えられる。
将来の自動運転車は、VIPを乗せたショーファーカーさながらの対応をAIが行う可能性が高い。特に2023年に入ってから、ChatGPTを始めとした「生成AI」が一大ブームを巻き起こしており、自動運転車の中でも生成AIが人の質問に音声で応じるようになるのはもはや必然と言えるのかもしれない。
【参考】音声認識技術については「音声認識大手の米ニュアンス、車載向け技術の説明会開催 デモカーでの最新ソリューション「Dragon Drive Innovation Showcase」の体験会も」「デンソー子会社、音声認識でAI自動運転車を操作できる技術を開発 デンソーアイティーラボラトリ」も参照。
■セキュリティ技術におけるAI
コネクテッド化され、常時通信が行われる自動運転車においては、高度なサイバーセキュリティ対策が必要不可欠となる。この分野でもAIの活用が広がっている。
サイバーセキュリティにおいては、脅威の検知と分析、対策などが必要となるが、サイバー攻撃の質や量、複雑さが増す中、膨大な量のデータやプログラムの収集・解析が欠かせない。こうした過程において、正常なプログラムと脅威となり得るプログラムをAIが学習し、未知のプログラムに特性をあてはめることで脅威となり得るものかを効率的に判定することができる。
IBMによると、AIは何十億に及ぶデータを取り込むことでサイバーセキュリティの脅威とサイバーリスクを把握し、悪意のあるファイルや疑わしいIPアドレス、内部関係者における脅威間にある関係などを数秒から数分で分析することができるという。
また、厳選されたリスク分析を提供することで、脅威の修復に向けセキュリティアナリストが行う決断にかかる時間を短縮することもできるとしている。
その一方、日立ソリューションズ・クリエイトによると、AI技術を悪用したサイバー攻撃も現実化しつつあるという。AI技術によってシステムのぜい弱性を発見するのも容易になるほか、機械学習アルゴリズムによって人間のふるまいを模倣することも考えられるという。
攻撃と防御の双方にAI技術が活用されることとなり、その応酬はいっそう激化することが予想される。その意味で、守る側における高度なAIの導入は今後重要性を増すことになりそうだ。
【参考】サイバーセキュリティについては「「自動運転×セキュリティ」に取り組む日本と世界の企業まとめ」も参照。
■クラウドとエッジAI
膨大なデータを生成・分析し続ける自動運転車は、車両単体では情報処理が追い付かなくなるケースが考えられる。このため、クラウドにデータを送り、クラウド上で分析した結果を自動運転車に随時伝送し、効率的にデータ処理を行う手法もスタンダード化されている。
しかし、クラウドを経由することでデータ遅延が発生し、リアルタイム制御を損なう可能性もある。高速・大容量な通信網も完全整備されなければならない。エッジ側となる車両に搭載されたAIで一定の処理を行うことも必然と言える。
分散コンピューティングの観点で、エッジで活用すべきAIとクラウドで活用すべきAIの領域を明確化し、全体最適化を図っていくことも将来必要となりそうだ。
【参考】クラウドとエッジについては「自動運転でのデータ処理、「クラウド側」「エッジ側」の2パターン」も参照。
■需要予測におけるAI
オンデマンド系の自動運転サービスにおいては、需要を予測するAIも重要性を増していく。
既存の人間によるタクシーサービスを例にすると、曜日や時間帯、天気、電車の遅延、近隣のイベント情報などをもとに、どの場所に需要があるかを予測する。そこに各ドライバーの経験に基づく直感や予測も加味し、より多くの需要を拾う。
自動運転タクシーの場合、流し営業や駅前のタクシープールでの待機などが規制されるものと思われるため、従来のタクシーと比較すると意外とリアルタイムの需要予測の重要性は低いのかもしれない。
しかし、情報をもとにいつどこで需要が発生しやすいかを計算し、予測に基づいて配車体制を整えることで計画的にフリートを稼働させることができる。
また、熟練ドライバーが養ってきた「勘」のような予測をAIで分析・データ化することができれば、広範囲に活用可能な新たな予測アルゴリズムを構築できるかもしれない。
もう一点、需要予測と連動した導入に期待を寄せられるのがダイナミックプライシングだ。需要を正確に見通すことができれば、それに合わせて料金を柔軟に変更することで新たな需要を喚起したり、収益を最大化したりすることができる。
AIを活用することでその作業を自動化し、柔軟かつリアルタイムで細やかな料金設定が可能になる。これらのAIは手動・自動運転を問わず活用できるため、開発や実装が速い段階で進む可能性もありそうだ。
■【まとめ】伸びしろ未知数のAI
ディープラーニングの登場で飛躍的進化を遂げたAIが、生成AI技術などにより加速度をさらに高めている。AIが人間の知能を超えるシンギュラリティも、想定より早く訪れるのかもしれない。
自動運転領域でも、レベル5の実現は2040年以降と言われ続けてきたが、このまま開発が加速していけば2030年代早期に準レベル5相当の技術が実用化されてもおかしくはなさそうだ。
社会生活を大きく変化させるAI。その技術は今後もさらに加速していくことになるのか。その動向を注視したい。
■関連FAQ
「画像解析」「判断」「予測」などで活躍するほか、「マッピング」や「ルート最適化」、乗員とのコミュニケーションでもAIが活用される。
センシングデータのラベリングの際などに活用される。例えば、センシングした構造物が「信号」なのか「街灯なのか」といった具合だ。
道路状況を鑑み、どのような運転操作をすべきか(もしくは最適か)、といった判断を行う。車両が区画線をはみ出しそうになったら横方向の制御を行う、といった運転操作でもAIが活用される。
さまざまなデータをAIに学習させれば、歩行者や対向車などの未来の動きをパターン化することができる。AIはそうしたパターンが起きることをリアルタイムに予測することで、安全性の高い自動運転を実現することができる。
複数の地点を経由する必要がある場合、どのルートで全ての地点を経由するのが最も最短距離もしくは最短時間となるかを判断するのが、ルート最適化AIだ。オンデマンド型の自動運転バスなどでの活用が期待されているほか、手動運転であっても、例えば配送トラックのドライバーにとっても有用なAIだ。
(初稿公開日:2022年6月9日/最終更新日:2025年8月12日)
【参考】レベル5については「完全自動運転(レベル5)とは?いつ実現?課題は?」も参照。