百度(Baidu)の自動運転戦略(2023年最新版)

完全無人の自動運転サービス4カ所に



出典:Daniel Cukier / Flickr (CC BY-ND 2.0)

米国と並ぶ自動運転大国となった中国。その躍進はとどまるところを知らず、もはや米国を追い抜いたといっても間違いではないほどだ。

この中国勢の躍進をけん引するのが、IT大手のBaidu(百度)だ。同国における自動運転開発の最前線に立ち続け、中国各都市での自動運転サービスを次々と実現している。


この記事では、躍進著しい同社の取り組みを年代順に追っていく。

<記事の更新情報>
・2023年6月28日:2021年8月以降の動向を追記
・2021年7月17日:記事初稿を公開

記事の目次

■Baiduの概要

Baiduは2000年に検索エンジンプラットフォームとして設立されたIT企業だ。検索エンジンとしては、グーグルに次ぐ世界2位の規模を誇る。

マップサービスやクラウドサービスなど同業他社と同様のサービス展開を図りながらAI(人工知能)開発能力を高め、モバイルエコシステムやAIクラウド、そしてインテリジェントドライビングなどの領域に事業を拡大している。


自動運転分野では、2017年に立ち上げた「プロジェクトアポロ」の存在が大きく、ここから開発とサービス実装が一気に加速していくことになった。

■2023年6月:深センでも完全無人商用サービスを開始

百度は、深センでも車内オペレーター不在の完全無人サービス許可を取得したと発表した。重慶、武漢、北京に次ぐ4都市目となる。Apollo Goサービスは、深センの188平方キロメートルのエリアで提供される。

■2023年4月:HDマップソリューションなどをアップグレード

百度は、自動車向けのインテリジェンスカンファレンスでHDマップなど主要製品のアップデート情報を発表した。

マップ関連では、インテリジェント運転ソリューション「Apollo City Driving Max」により、従来のHDマップに比べ80%近くデータを軽量化することができるという。


また、統合自動ナビゲーション・バレーパーキングソリューションの「Apollo Highway Driving Pro」も、アルゴリズムプラットフォームのアップグレードを完了し、最新の単一TDA4-VHプラットフォームを使用することで、AIとCPUの電力使用量を以前のプラットフォーム比で50%削減できるという。

自動駐車ソリューション「Apollo Parking」もアップグレードし、一般的な上位5つの駐車シナリオにおいて99%以上の成功率を誇るという。

レベル4サービスのみならず、乗用車向けのレベル2+などの展開も加速し、ビジネス性を高めていく狙いのようだ。

■2022年12月:北京でも完全無人化へ 2023年4月には商用許可も取得

百度は、重慶と武漢に続き北京でも車内オペレーター不在の完全無人自動運転の実証ライセンスを取得したと発表した。計10台の自動運転車両を北京宜荘経済開発区の20平方キロメートルのエリアで実証し、安全性を担保したうえでサービス化につなげていく構えだ。

2023年3月には、北京初の完全無人配車サービスの提供許可も取得した。このライセンスにより、重慶と武漢同様完全無人の自動運転車によるサービスが展開できるようになった。

北京市政府活動報告書によると、市は宜庄経済開発区にある高レベル自動実証区を既存の60平方キロメートルから拡大し、最終的には500平方キロメートルにする計画を発表している。

百度も2023年中に中国全土でさらに200台の完全無人自動運転タクシーを稼働させる計画だ。国・行政の方針と百度の取り組みが呼応するかのように自動運転サービスが拡大していきそうだ。

【参考】北京での取り組みについては「世界初!完全無人自動運転サービス、中国が「首都で認可」」も参照。

■2022年11月:2023年に世界最大の完全無人配車サービスエリアを構築する計画を発表

百度は、自動運転技術イベント「Apollo Day」の中で2023年にも世界最大の完全無人配車サービスエリアを構築する計画を発表した。

重慶と武漢で実現済みの完全無人配車サービスの事業エリアを2023年も拡大し、世界最大の完全無人自動運転タクシーサービスエリアを構築していく予定としている。

Apollo Goは中国内で10都市以上をカバーしており、2022年の第3四半期だけで47万4,000回以上の乗車を完了した。前年同期比311%増、前四半期比65%増という。

累計乗車回数は140万回に達し、北京や上海などの都市では1台あたり1日15回の乗車を提供している。これは、一般的な配車サービスの乗車平均とほぼ同じ数字という。

自動運転タクシーが市民権を得つつあり、その波を中国全土に拡大していく戦略だ。

【参考】百度の取り組みについては「爆速展開!百度の自動運転タクシー、すでに140万ライド」も参照。

■2022年8月:重慶と武漢で完全無人の自動運転タクシーサービス許可を取得

百度は、重慶と武漢で完全ドライバーレスの自動運転タクシーの商用運行許可を取得したと発表した。完全無人の自動運転タクシー有料サービスは中国初という。

この許可により、百度は両都市で車内にオペレーターを配置することなく、完全無人の自動運転車両を活用して有力タクシーサービスを展開することが可能になった。サービスエリアは武漢経済技術開発区の13平方キロメートル、重慶市永川区の30平方キロメートルで、当面は第5世代の車両5台を配置するという。

中国初の商用完全無人配車サービスの許可を取得したことで、 重慶と武漢の一般道路に完全無人ロボタクシーを設置することも可能になる。

武漢経済技術開発区は、自動運転車の実証に向け321キロメートルの道路を改修し、そのうち106キロメートルの区間に5Gを活用したV2Xインフラストラクチャを設置したという。一方の重慶は、永川区のエリアを自動運転パイロットゾーンに指定し、各社の実証を後押ししている。

■2022年7月:第6世代「Apollo RT6」発表 タクシー料金を半減

百度は2022年7月、BEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)の量産対応モデルとなる次世代完全自動運転車「Apollo RT6」を発表した。生産コストを大幅削減することが可能で、自動運転タクシー料金を半分にできるという。

第6世代となるApollo RT6の生産コストは、1台あたり25万元(約500万円)。2021年発表の「Apollo Moon」の48万元から大幅削減されている。2023年からApollo Goの自動運転配車サービスに加えていく予定としている。

このApollo RT6の登場により、自動運転車の導入が大きく加速し、中国全土に数万台の自動運転車を導入できるようになるとしている。

スペックとしては、LiDAR8台、カメラ12台を含む38個のセンサーや、最大1200TOPSの演算能力を持つデュアルコンピューティングユニットを搭載している。

■2022年6月:合弁Jiduがコンセプトロボカーを発表

百度とGeely(浙江吉利控股集団)の合弁Jidu Auto(集度汽車)が、量産向けのコンセプトロボカー「ROBO-01」を発表した。

NVIDIAのSoCやLiDAR2台、ミリ波レーダー5台、超音波レーダー12台、カメラ12台の外部センサー、そしてApollo 自動運転無人運転機能を搭載し、ポイントツーポイントの高度な自動運転が可能という。Jiduはレベル4相当の機能をほのめかしているが、当面実装されるのはレベル2~レベル2+相当の補助機能になるものと思われる。

このほかにも、折りたたみ式LiDARや折りたたみ式U字型ステアリングホイール、3Dボーダレス統合超鮮明スクリーン、3Dヒューマンマシン協調運転マップなど、さまざまな最新技術が搭載される予定だ。

同年末には、「Robo-01 Lunar Edition」を2023年に限定版として5万5,000ドル(約750万円)で販売開始することを発表している。

百度は、自動車産業が「燃料自動車1.0時代」から「電気自動車2.0時代」、そして「インテリジェントカー3.0時代」に突入し、Jiduが新世代の自動車をリードしていくとしている。

【参考】Jidu Autoのコンセプトロボカーについては「世界初「自動運転レベル4市販車」、中国・百度が発売へ」も参照。

■2022年4月:北京で運転席無人のタクシーサービスが可能に

百度は、運転席無人による自動運転サービスの許可を北京市から取得したと発表した。乗客を実際に乗せたサービスにおいて運転席を無人化し、オペレーターが助手席に同乗する形で運行する許可だ。

北京高級自動運転実証区本部の許可によると、まず10台の自動運転タクシーが認可され、北京市内の60平方キロメートルの指定エリア内でサービスを提供することができるという。

この運行形態で安全性が認められれば、次は運転席・助手席ともに無人でオペレーターが後部座席に座ることになる。完全無人化への道を着実に歩んでいるようだ。

■2022年2月:深センで自動運転タクシーサービス開始

百度の自動運転タクシーサービス「Apollo Go」が、深センでも始まったようだ。北京、上海、広州、重慶、長沙、滄州に続く7都市目だ。

サービスは、タレントパークなどのダウンタウンの主要スポットを中心に、周辺の住宅地や商業地、娯楽・文化エリアなどをカバーしており、乗客はアプリを介して約50のスポットでタクシーを呼ぶことができる。スポットは2022年末までに300以上に拡大する計画という。

百度は自動運転サービスを2025年までに中国全土65都市、2030年までに100都市で展開する目標を掲げている。攻勢はまだまだ続きそうだ。

【参考】深センでの取り組みについては「百度の自動運転タクシー、もう7都市目!日本なら東名阪札仙広福」も参照。

■2021年11月:北京で自動運転サービスの商用運行承認

百度は2021年11月、北京の一般道路における自動運転サービスの商用運行の承認を受けたと発表した。これにより、市内の指定エリアで有料サービスを提供することが可能になった。

百度の自動運転車は、北京経済技術開発区の60平方キロメートルのエリアをカバーしており、商業地域と住宅地域において600超の送迎ポイントを設置しているという。道路の総延長は350キロメートルで、67台の自動運転タクシーが配備されている。

【参考】北京での商用展開については「百度、北京経済技術開発区で自動運転タクシーを商用展開へ」も参照。

■2021年9月:上海で「Apollo Go」サービス開始

百度は2021年9月、上海で配車プラットフォーム「Apollo Go」を介して自動運転タクシーサービスを開始したと発表した。北京や広州などに続き、乗客がロボタクシープラットフォームを試用できる5番目の都市となった。

百度は8月、サービス開始に先駆けて上海市嘉定区に「Apollo Park」を開設し、実証を加速していた。今回のサービス化では、市内全域に150駅を段階的に開設し、アプリを通じて乗客に移動サービスを提供するとしている。

【参考】百度の上海における取り組みについては「百度、上海市で「Apollo Park」開設!自動運転実証の場が拡大」も参照。

■2021年6月:自動運転量産車「アポロムーン」初公開

Baiduは2021年6月、BAIC傘下のEVブランドARCFOXと共同開発した新世代のシェアサービス向け量産自動運転車「ApolloMoon(アポロムーン)」を世界初公開した。コストは48万元(約820万円)で、業界におけるレベル4モデルの平均コストの3分の1という。

最新のテクノロジーにより冗長性を高めるとともに、動的ID認証機能や後部座席の乗客のステータス検出、音声操作、車外に向けたステータス表示、スマートドアなど、移動サービス向けの各機能も盛り込まれている。

計画では、今後3年間で1,000台をフリート化する予定としている。

ApolloMoon=出典:百度プレスリリース
■2021年4月:20都市の高速道路などをカバーする計画発表

Baiduは2021年4月、上海モーターショーの記者会見において自動運転分野における同社の最新の状況を発表した。同社のレベル4車両によるテストマイレージは1,000万キロを超え、2021年中にアポロのスマートドライビングエリアは20都市の都市道路と高速道路をカバーし、その後2023年までに100都市をカバーする計画という。

アポロ関連の自動運転車の生産は、2021年後半にピークを迎え、毎月新車が発売される予定としている。提携関係では、車載OSなどを含めると、これまでにアポロは世界の70を超える自動車ブランドと協力関係を構築し、600を超えるモデルにアポロのインテリジェント製品が搭載されているという。

■2021年2月:5つの自動運転モデルを公開

広州黄埔区とBaiduは2021年2月、共同で自動運転MaaSプラットフォームを構築し、春祭りイベントに合わせて5つの自動運転モデルを公開した。

イベントでは、ロボタクシーやロボバス、ミニバス「アポロン」といった自動運転移動サービスに加え、無人の小売りや清掃、警備を行うロボットなども導入した。

■2021年1月:ジーリーとスマートカー製造企業設立

Baiduは2021年1月、吉利控股集団(Geely)の協力のもとインテリジェントEV(電気自動車)を設計・生産する新会社を設立し、スマートカー開発・製造で自動車業界に参入すると発表した。

スマートカーの設計や研究開発、製造、販売、サービスの業界チェーン全体に焦点を当て、自社のAIやインターネット技術をはじめアポロの主要な自動運転機能を活用し、スマートカーの在り方を新たに提案するスマートトラベル時代のイノベーターを目指すとしている。

【参考】スマートカー製造については「中国・百度、自動運転の大本命に!吉利と最新EV車両製造へ」も参照。

■2020年12月:北京市から無人走行ライセンス取得

Baiduは2020年12月に開催した「アポロ・エコロジカルカンファレンス」で、北京市から無人走行ライセンスを取得したと発表した。同年9月には長沙でも無人ライセンスの発行を受けており、これまでに5万2,000キロを走行済みという。

ApolloGoによる自動運転サービスも、ロボバス含め21万人以上の利用があったとしており、今後3年間でサービスエリアを30都市に拡大していく予定としている。

無人サービスは2021年5月までに北京市でサービスインしており、乗客から利用料金30元(約500円)も徴収しているという。運行エリアは2.7平方キロメートルで、タクシーの乗降ステーションも8カ所設置するなど一定の制限はあるものの、本格的なドライバーレス自動運転タクシーサービスとなる。

各都市が独自設定する走行ルールに左右されるが、許可が下り次第順次他都市へサービスを拡大していくものと思われる。

【参考】無人自動運転タクシーサービスについては「百度の完全無人自動運転タクシー、「中国全土制覇」の現実味」も参照。

■2020年4月:自動運転タクシー「ApolloGo Robotaxi」サービス開始

Baiduは2020年4月、湖南省長沙市で一般客を対象に自動運転タクシーサービス「ApolloGo Robotaxi」を開始した。セーフティドライバー同乗のもとサービスを提供する形で、同年8月に河北省滄州、同年9月に北京市とエリアを拡大している。

■2019年7月:北京市からT4ライセンス取得

Baiduは2019年7月、北京市から取得が最も難しい自動運転免許「T4ライセンス」が付与されたと発表した。同ライセンスの取得は中国初で、より複雑な環境下で都市道路を自動運転できるようになるという。

T4取得には、北京市の自動運転テストコース「Yizhuang Autonomous Driving Test Field」で5,000キロ以上走行実証を重ね、102のシーンカバレッジテスト全てに合格するほか、車両の能力評価テストを通過するなど厳しい認定基準があるという。

北京市で2018年中に行われた各社の実証では、走行距離ベースでBaiduが全体の9割を占めるなど圧倒しており、アポロ自動運転システムの技術レベルの高さと勢いを感じさせる。

なお、同市の2019年における実証レポートによると、2019年中には13社計73台の車両が計約88万キロを走行しており、このうち52台、約75万キロをBaiduが占めている。

Baiduは2019年末までに長沙や滄州など23都市で走行実証を行っており、総走行距離は300万キロを超えたとしている。

■2019年3月:AI人材の育成に向け開発キットをリリース

Baiduは2019年3月、天津大学とAI人材の育成に向け戦略的提携を交わした。調印式に続いて学生向けのレクチャーも行われ、この中で自動運転開発キット「Apollo開発キット」を公開した。同大では2018年4月からBaiduによるAIディープラーニングレクチャーが行われており、戦略的提携により取り組みをいっそう強化していく。

開発キットは、ワイヤー制御車両シャーシからハードウェアセンサーまでの統合ソリューションを提供する。最終的な製品構成フォームは、純粋な電気無人ワイヤー制御シャーシに高度でスケーラブルなハードウェア構造プラットフォーム、マルチセンサーキットで構成されるという。

また、Baiduは2019年4月にも北京航空航天大学と共同で同国初の自動運転大学院プログラムの確立に向け学校運営を行っていくと発表している。

自動運転関連の教育に向けたリソースとプラットフォームを提供し、「自動運転」修士号を創設するなど高度な専門技術を持った人材育成を目指すとしている。

大学における自動運転の研究開発を促進するとともに、次代を担うAI人材の育成を積極的に進めているようだ。

■2018年6月:通信分野でChina Mobileと戦略協定締結

2018年6月、BaiduとChina Mobileはデジタルホームやスマート端末、自動運転分野において協力展開していく包括的戦略協力協定に署名した。

自動運転関連では、Baiduは同年10月、「China Mobile 5G Autonomous Driving Alliance」に参画し、同年11月にプロジェクトアポロにChina Mobileを招待するなど相互連携を深め、5G-V2Xやエッジコンピューティングなどの技術や製品の連携を推進している。

■2018年4月:アポロ1周年 パートナー企業は100社超に

Baiduは2018年4月、北京でテクノロジーカンファレンスを開催し、アポロアライアンスの規模が100社を超えたことなどを発表した。

この日までにアポロはバージョン1.5、2.0、2.5とアップデートを重ね、カメラベースの視覚認識ソリューションでセンサーに係るコストを従来比90%削減可能にしたほか、ビジュアルデバッグツールや高精度マップデータコレクター、クラウドシミュレーターなどより効率的な開発ツールの公開も開始している。

アポロでは、2018年末までに金龍客車がレベル4自動運転バス、Neolixが無人配送ロボットの量産段階に入っている。

■2017年9月:自動運転プロジェクト支援に向けファンド設立

Baiduは2017年9月、自動運転事業を対象に投資する「アポロファンド」の設立を発表した。基金の総額は100億人民元(約1,650億円)超で、3年間でスタートアップをはじめ100を超えるプロジェクトに投資していくこととしている。

■2017年4月:プロジェクトアポロ発表

Baiduは2017年4月、オープンソフトウェアプラットフォームを活用した「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」と呼ばれる新しい計画を発表した。

自動運転技術の研究開発は底が深く、無人運転を実現するには長期的な設備投資と人的投資が必要となる。そこで、幅広い分野のパートナーと共同で技術開発を進めるオープン戦略を採用し、業界全体の開発を加速させる方針だ。

BaiduはAIやビッグデータ、各種ソフトウェアなど自社テクノロジーをプラットフォームを通じてオープンにし、将来の自動車業界で重要な役割を果たす確固たる基盤を築くとしている。

プラットフォームでは、車両プラットフォームやハードウェアプラットフォーム、ソフトウェアプラットフォーム、クラウドデータサービスを含むソフトウェア、ハードウェア、サービスソリューションに至る完全なセットを提供するとしており、環境認識や経路計画、車両制御、オンボードオペレーティングシステムなどにおける開発・テストツールを提供する。

また、車両とセンサーの分野においては、高い相乗効果と互換性を備えたパートナーを選択して共同提携し、プロジェクト参加者における研究開発のしきい値をさらに下げ、技術の急速な普及を促進することを推奨する。

計画では、同年7月にクローズドな環境で機能を実装し、徐々に開放していく。2020年までに高速道路や都市道路における自動運転を実現するとしている。

■2015年:ダイムラーと車載用ソフトウェアの開発で提携

Baiduは2015年、独ダイムラーと車載用ソフトウェアの開発で提携を交わした。もともと車載インフォテインメントシステムなどの分野で自動車メーカーとの協業はあったが、2017年のプロジェクトアポロ始動後は、独BMWや米フォード、スウェーデンのボルボ・カーズなど、コネクテッド技術やAI、自動運転分野における協業が加速していくことになる。

ダイムラーとも2018年に自動運転やコネクティビティーの分野で提携強化を図っていくことが発表されている。

■2015年:北京で自動運転実証に着手

Baiduは2015年、自動運転分野の研究開発への大規模投資を開始し、同年12月に北京の高速道路と都市道路で自動運転車の実証実験を行った。自動運転の研究開発は2013年に開始したとしているが、取り組みを本格化させたのはこの年からと思われる。

AI開発に力を注いできたロビン・リー会長は、「AI技術と機械学習技術は既存のビジネスに役立つとともに、将来のビジネスにも役立つと考えてきた。そのためAIへの投資を続けてきたが、自動運転車への応用が非常に期待できることが分かった」とし、同社が開発する自動運転車について「半自動運転ではなく、ドライバーの操作を完全に代替する車輪付きのコンピューターになる」と話した。

翌2016年9月には、米カルフォルニア州の自動運転実証免許を取得するなど、取り組みの幅を広げているようだ。

■【まとめ】中国内における自動運転サービス加速 他国展開の可能性も

中国各地の公道実証で着実にステップアップを図り、重慶、武漢、北京、深センで完全無人の自動運転サービスを実用化させるなどその勢いはまだまだ衰えることを知らない。

中国内を網羅することが先決となっていそうだが、アポロプロジェクトのパートナー企業は世界に及ぶ。今後、主要な開発プレイヤーがいない他国での展開にも注目が集まりそうだ。

一方、製造コストを抑えた自動運転車の量産化技術や、乗用車向けソリューションの展開も本格化の兆しを見せている。収益性の観点からも同社の自動運転関連事業に注目したい。

(初稿公開日:2021年7月17日/最終更新日:2023年6月28日)

【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシー事情(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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