2020年の自動運転実証、コロナ患者減で実施続々と 首相は「配送実証」へ号令

国内の実証プロジェクト状況まとめ





新型コロナウイルスの影響により、緊急事態宣言期間を中心に多くの分野で経済活動がストップした。自動運転業界も例外ではなく、実証実験などを見合わせる動きも少なからずあったようだ。







しかし、新型コロナウイルスの患者減を受け、活動再開に向けた動きは着実に進んでおり、すでに実証に着手している例も出始めているようだ。2020年の自動運転実証プロジェクトの状況を改めてまとめてみる。

■現在も進行中の実証実験
東京臨海部の大規模実証、2020年度スタート

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のもと国内外の自動車メーカーや部品メーカー、大学など計29機関が参加し、2019年10月から東京臨海部で行っていた自動運転の各種実証実験は、緊急事態宣言下で一時中断していたものの、宣言解除とともにスピーディに再開しているようだ。

2020年6月5日から、羽田空港第3ターミナルビルと羽田空港跡地を結ぶ公道の実環境下において、磁気マーカーやITS無線路側機を活用した公共車両優先システムや信号情報提供、高精度3次元地図等を利用した実証実験を開始したほか、臨海副都心地域の一般道や羽田空港と臨海副都心等を結ぶ首都高速道路などにおいても、走行計画に基づきインフラ協調システムの検証などを進めている。

【参考】東京臨海部の実証については「SIP第2期、羽田空港地域で自動運転の実証実験がスタート!」も参照。

KDDIらが5G高度化に向けた基地局仮想化技術を実証

KDDIは2020年5月、日本電気、ノキアソリューションズ&ネットワークス、富士通と協力し、5Gネットワークの高度化に向けた実証実験を9月にかけて行うことを発表している。

最適なネットワークを提供可能にする要素技術の一つである基地局仮想化および業界団体O-RAN Alliance準拠のマルチベンダー接続性に関する実証で、データ処理部であるCU (Central Unit)と無線信号処理部であるDU (Distributed Unit)に仮想化技術を適用し、仮想化された基地局の実用性を検証する。

将来的には通信ネットワーク全体でのネットワークスライシングへの対応を目指すこととしており、4K・8Kといった高精細映像の高速データ伝送や産業機械の遠隔操作、自動運転など、さまざまな分野で「超高速」「多数同時接続」「低遅延」といった5Gの特長を最大限に生かしたネットワークの提供が可能にしていく方針だ。

■具体的な延期が発表された実証実験
東京臨海部の大規模実証に合わせた一般公開は延期

前述した東京臨海部の大規模実証に合わせ、日本自動車工業会が2020年7月に予定していた自動運転実証の公開は延期が発表された。

当初予定では、東京五輪開幕を間近に控えた7月に、企業10社の参加のもと自動運転車両約80台予定を投入し、バスをモデルケースとした実証・デモや・高速道でのインフラ連携の実証・デモ、混合交通の公道における自動運転や緊急停止、多様なタイプの自動運転車両による実証・デモなどを計画していた。

一般公開デモとしては国内最大級になる見込みで、それゆえ多くの観覧者が集うことを懸念したための措置と思われる。

具体的な延期時期についてはまだ発表されていないが、注目度の高さは変わらない。続報に期待したい。

【参考】自工会の自動運転実証公開については「大手軒並み参加の「自動運転実証」、7月開催を延期 自工会、新型コロナの感染拡大受け」も参照。

トヨタの自動運転体験試乗会も延期に

実証ではないが、トヨタのAIエージェント「YUI」と最新の自動運転コンセプトカー「LQ」を掛け合わせた体験試乗会「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」も延期が発表されている。

YUIとの会話をはじめ、自動運転レベル4相当の技術や無人自動バレーパーキングシステム、AR-HUD体験ドライブなど、未来の移動体験が可能なツアーで、当初は2020年6~9月の期間、MEGAWEB及やお台場・豊洲周辺の公道を会場に開催される予定となっていた。

実施時期は未定で、決定次第改めてアナウンスすることとしている。

【参考】LQについては「トヨタ「LQ」を徹底解説!自動運転時代の愛車に」も参照。

■2020年3月以降に実施された実証実験
まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアムが住宅地で自動運転実証

IHI、あいおいニッセイ同和損害保険、沖電気工業、名古屋大学、日本自動車研究所、日本総合研究所は2020年3月16日から25日まで、自動運転車両を用いた路車間通信の実証実験を神戸市北区筑紫が丘で実施した。

まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアムが取り組んでいる住宅地における移動サービス向けの運行設計領域の検討・定義の一環で、自動運転車両が交差点で右折や合流をする際、死角からの飛び出しに備えたり、発進・停止や加減速のタイミングを最適化させたりするため、車載センサーと道路側センサーの協調による仕組みを検証した。

道路側センサーのセンシング状況や精度を評価するとともに安全で円滑な自動運転車両の挙動のあり方を検証するほか、これらの評価を条件の異なる複数の交差点で実施することにより、交差点の違いによるリスクの違いも可視化していく。

【参考】まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアムの取り組みについては「住宅地で実施!自動運転車での路車間通信実証、沖電気やIHIなどが参加」も参照。

ソフトバンクらが5G遠隔自動運転を実証

ソフトバンクとWireless City Planning、エフ・イー・ヴイ・ジャパンの3社は2020年3月24、25の両日に渡り、第5世代移動通信システム「5G」を活用した「車両の遠隔運転」の応用事例に関するフィールド実証実験を北九州学術研究都市で実施した。

総務省の「高速移動時において無線区間1ms、End-to-Endで10msの低遅延かつ高信頼な通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」の請負によるもので、5G無線端末を遠隔運転車両と仮設の遠隔操作センターに取り付け、5Gの応用事例として災害発生後の二次災害発生の抑制を目的とした「遠隔運転による放置車両の撤去」のデモを行った。

【参考】ソフトバンクらの取り組みについては「ソフトバンク、5Gによる「遠隔運転」の実証実験 自動運転の補完的役割としても注目」も参照。

■新たに発表された実証実験
DMG森精機とNTT Comが自律走行型ロボット実証

DMG森精機とNTTコミュニケーションズは2020年5月21日から、無人搬送車に人協働ロボットを搭載した自律走行型ロボットをローカル5Gで遠隔操作する共同実験を開始している。

スマートファクトリーの構築に向けた取り組みで、電波伝搬試験や通信品質試験、ローカル5Gを介したAGV の遠隔操作などのアプリケーション試験などを2021年4月までDMG森精機伊賀事業所で行う予定としている。

ZMPが自動運転警備ロボットで無人消毒実証実験

自動運転警備ロボット「PATORO(パトロ)」に消毒液散布機能を追加するなど、新型コロナウイルス対策に積極的に対応してきたZMP。6月12日には、有楽町線月島駅構内で無人消毒の実証実験を行っている。

実験は終電後に行われ、パトロが自動走行しながら駅設備に消毒液が散布されることを確認した。同様の取り組みは、竹中工務店の東京本店オフィスでも実施したようだ。

同社はこのほか、一人乗り自動運転ロボ「RakuRo(ラクロ)」の仮想体験が可能な「オンライン動物園」の取り組みを5月17日に実施している。

千葉市動物公園協力のもと、園内の草原ゾーンを走行するラクロを特設サイトの参加者が遠隔操縦できる取り組みで、360度ビューで自由な動物観察を可能にしたようだ。

6月下旬には、延期していたラクロの体験会を同園で実施することとしており、オンライン動物園で走行したルートを、動物ガイドを聞きながら実体験できるという。

ZMPの各種取り組みは、自動運転ロボットを有効活用した好例と言えそうだ。

愛知県の自動運転社会実装プロジェクト始動

愛知県は2020年6月、2020年度の自動運転社会実装プロジェクト推進事業の実施について発表した。本年度は、常滑市の中部国際空港島内や西尾市の駅周辺市街地、長久手市の愛・地球博記念公園を会場に、商用5Gを活用した遠隔監視や、地域の店舗、観光スポットと自動運転車両で共通の利用ポイント付与し回遊性を向上させる取り組み、景色とデジタルコンテンツを重ねて表示可能な透明ディスプレイの実証などを行う予定。

具体的な日程は未定だが、年度内に実施する方針だ。

東京都も自動運転ビジネスモデル構築プロジェクト公募へ

東京都は、2020年度の「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」実施に向け公募を進めている最中だ。

2019年度は、ZMPなどによるが空港リムジンバスと連携した都心部での自動運転タクシーサービスの実証や、NTT東日本などによる島しょ部観光MaaSの実現に向けた移動手段創出の実証が採択され、それぞれ2週間ほど都内で実証実験を行った。

本年度は、先端技術を積極的に活用したハイレベル部門と早期実用化部門の2部門について、2020年中に2~4週間を目途に実施する前提で募集をかけている。

首相も年内の配送実証実験にゴーサイン

2020年5月に開催された未来投資会議の席で安倍晋三首相から、低速・小型の自動配送ロボットの早期実現を促す発言が飛び出した。新型コロナウイルス感染症拡大対策の一環としての意味合いも込められているが、自動配送ロボットの公道走行実証を2020年内に実行できる環境を構築する方向で協議が進められている。

自動配送ロボットの話題ではあるが、これも立派な自動運転実証である。コロナウイルスが完全に終息するのを待たず一国の首相がゴーサインを出した格好となったが、未来に向けた経済活動としての側面を持つ実証実験の実施は、自粛と経済の天秤の均衡を崩すものではないということだ。

■【まとめ】活動再開の動き広がる自動運転業界

緊急事態宣言が発令された4月は年度初めということもあり、実証実験計画そのものが少なかったように感じられる。また、通常の実証実験はいわゆる「3密」に当たらないケースが多く、3月中や5月下旬など、緊急事態宣言期間の前後にしっかりと事業を進めている例も少なくない。

一方、デモンストレーションや体験会など、一般市民を巻き込む形の実証はまだ一考の余地があるようだ。

海外では、自動運転タクシーで先行する米Waymo(ウェイモ)が5月中旬に公道実証を再開するなど、早々に再始動に踏み切るケースは珍しくない。

あからさまに開放的な経済活動は世論の標的になり得るが、過度な自粛で経済が衰退していくと取り返しのつかないことになるのも事実だ。

自粛と経済・社会活動の線引きが不明確で、様子を見ている関係者や悲観モードに陥っている関係者もいるかもしれないが、自動運転業界では着実に活動が再開され始めている。後れを取らぬよう、コロナ対策も踏まえたうえで前向きかつ自信をもって事業再開を検討してほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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