万博の自動運転バス、「車両も技術も国産」でレベル4認可を獲得

海外モデルが幅を利かす状況は終わる?



Osaka Metro(大阪メトロ)は2025年2月、大阪・関西万博で使用する自動運転バスレベル4認可を取得したと発表した。同社によると、国土交通省近畿運輸局管内では初で、一般道における大型バスとしても国内初という。


EVモーターズ・ジャパン製の大型バスに先進モビリティ製の自動運転システムを搭載した純国産型の自動運転バスで、万博開催期間の約半年にわたり来場者をお迎えする予定だ。

この「純国産型」が一つのポイントだ。これまで、国内の自動運転サービスは海外モデルが幅を利かせていたが、国産勢が巻き返し始めているのだ。万博を契機に、国内開発勢への注目が一気に高まることも考えられる。

万博の概要とともに、自動運転分野の国内情勢に迫る。

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■万博における自動運転サービスの概要

舞洲と夢洲をつなぐルートの一部でレベル4認可

大阪メトロは、2025年4月13日から同年10月13日までの万博開催期間中、会場内、及び会場周辺で自動運転バスによる旅客輸送を行う。


今回レベル4認可を受けたのは、舞洲駐車場から会場となる夢洲第1交通ターミナルを結ぶルートの一部区間で、舞洲万博P&R駐車場(A・Bブロック)内及び周辺の約2.5キロとなる。大阪メトロはレベル4区間延長に向け引き続き取り組んでいくとしている。

2024年5月時点の想定スケジュールでは、万博開幕後、当面は一部ルートをレベル4、その他レベル2で走行し、第2期レベル4申請を経て認可が下り次第全区間をレベル4で走行するとしている。全ルートでのレベル4が万博開幕に間に合わないのは、新設道路の竣工時期の影響などもありそうだ。

出典:Osaka Metroプレスリリース

EVモーターズ×先進モビリティの自動運転バスを運行

運行車両はEVモーターズ・ジャパン製「F8 series2-City Bus 10.5m」で、先進モビリティの自動運転システム「ASM-AD」を搭載している。乗車定員77人、航続距離280キロのBEVで、この車両にカメラやLiDARなどを搭載してレベル4を実現している。

また、インフラ側に磁気マーカーやターゲットラインペイント、スマートポールを設置するなどし、信号協調と合わせV2I技術などで自動運転を支援する。


2024年5月時点の想定スケジュールでは、万博開幕後、当面は一部ルートをレベル4、その他レベル2で走行し、第2期レベル4申請を経て認可が下り次第全区間をレベル4で走行するとしている。計画では、大型の自動運転バス6台を導入する予定だ。

出典:Osaka Metroプレスリリース

【参考】EVモーターズについては「EVモーターズ、創業4年で「万博向け自動運転バス」採用の快挙」も参照。

会場外周や大阪駅ルートなどでも自動運転バスを導入

万博では同ルートのほか、万博会場内・外周ルートと新大阪駅・大阪駅ルートの計3ルートで自動運転バスが走行する予定となっている。

万博会場内・外周ルートも大阪メトロの担当だ。計画では、EVモーターズ・ジャパン製の小型路線バスタイプ6台を導入し、会場の外周4.8キロをレベル4で走行する。

ルートには停留所を6カ所設置し、往復運行するようだ。走行中給電も導入する計画だ。このルートに関しては磁気マーカーシステムは用いず、スタンダードなレベル4技術でドライバーレスを実現する計画となっている。

新大阪駅・大阪駅ルートは、阪急バスと京阪バスがそれぞれ担当する。阪急バスは、新大阪駅から夢洲の交通ターミナルまで運行し、このうち淀川左岸線2期区間(大淀入口~海老江JCT)の西行きのみ自動運転としている。インフラとしては、磁気マーカーやターゲットラインペイントを使用する計画だ。使用車両は、EVモーターズ・ジャパン製の8.8メートルの中型観光バスタイプ車両という。

京阪バスはJR大阪駅から夢洲の交通ターミナルまで運行し、阪急バス同様淀川左岸線2期区間西行きのみ自動運転走行を行う。使用車両は、BYD製の10.5メートルの大型路線バスタイプを導入する。

出典:Osaka Metroプレスリリース

【参考】万博における自動運転については「【悲報】万博の自動運転バス、半分以上が「誘導型」 なぜかトヨタは不参加」も参照。

未来の移動の在り方を想像するきっかけに……

今回の万博では、旅客船として国内初となる水素と電気のハイブリットで航行する水素燃料電池船や、レベル4相当の自動運転や走行中給電などの新技術を融合させたEVバス、次世代モビリティ・空飛ぶクルマ、未来社会の実証実験の場としてロボットエクスペリエンスを体験・観覧できる。「スマートモビリティ万博」だ。

純粋な無人サービスとはならず、インフラ頼みの面も少なくない。何より、会場内外を走行するバスの大半は手動運転モデルとなるが、国内外から来場する多くの人が未来の移動の在り方を想像するきっかけとなるような取り組みとなることに期待したい。

■国内自動運転サービスの情勢

自動運転実証・実用化の主流は海外モデルばかり

先に少し触れたが、万博に導入される自動運転車両は、BYD1台を除きすべて国産だ。万博会場内・外周ルートと新大阪駅・大阪駅ルートにおける自動運転システム開発企業は明かされていないが、こちらも先進モビリティである可能性が高い。もし先進モビリティでなければ、ティアフォーが候補に挙がる。

国産バス×国産自動運転システムの組み合わせだ。その意味では、自動運転分野においては国内勢の躍進を感じられる万博となりそうだ。

これまで、日本国内の自動運転シーンをリードしてきたのは、多くが外国産だった。と言うか、仏Navya(現Navya Mobility)製のARMAによるところが多かった。

自動運転EVシャトルバス「ARMA」は、2015年9月に提供開始されたという。2015年は、グーグルが初めて自動運転による公道走行を成功させた年だ。2016年設立のWaymo自動運転タクシーを開始した2018年末より3年も前に、自動運転ソリューションを商用化していたのだ。

このARMAに早期に目を付けたのがソフトバンク系のモビリティ企業SBドライブ(現BOLDLY)とマクニカだ。SBドライブは2017年にARMAを購入し、国内各地の自動運転実証への活用を開始した。

一方、マクニカはNavyaの国内総代理店となり、2023年には仏GaussinとともにNavyaを買収し、傘下に収めている。

他社製に比べ完成度が高く、コンパクトな車体で低速走行を前提としたコンセプトは、実証や初期の自動運転実装に最適で、世界各地で導入が相次いでいる。

国内では、BOLDLYらが茨城県境町をはじめ、HANEDA INNOVATION CITY、北海道上士幌町、愛知県小牧市、愛知県日進市、岐阜県岐阜市など、各地における実証・サービス実装にARMAを用いている。

HANEDA INNOVATION CITYや北海道上士幌町ではレベル4システムとして認可を受け、前者は民間初の特定自動運行許可も取得している。まさに、国内における自動運転創世期を代表するモデルなのだ。

BOLDLYはARMAに加え、エストニアのAuve Techと連携し、同社製モデルMiCaの日本仕様モデルを開発して各地の実証・サービスに導入している。

こうした完成度の高い自動運転車を輸入し、実証を通じて運行管理の知見を高めたBOLDLYのビジネスモデルは、見事の一言に尽きる。自動運転サービスを早期実装する点において、こうした先行モデルの導入が近道であることは紛れもない事実だろう。

【参考】ARMAについては「NAVYA社の自動運転バス「ARMA」、誰でも操作できる?」も参照。

NAVYA社の自動運転バス「ARMA」、誰でも操作できる?

この一年ほどで国内勢が躍進

こうした海外モデルに席巻されつつあった日本市場だが、この一年ほどで潮目が変わり始めた。ティアフォーや先進モビリティの自動運転車による実証・サービス実装が本格化し始めたのだ。

ティアフォーは2023年、オリジナルの自動運転バス車両「Minibus」の導入を開始し、同年度、新潟県佐渡市や神奈川県平塚市、富山県富山市、千葉県横芝光町など国内23カ所で実証を行った。2024年度に入っても、沖縄県豊見城市や埼玉県深谷市など新規着手したエリアが相次いでいる。

自動運転向けデータの収集エリアは、2024年末時点で約100カ所に上る。高速道路も首都高速道路をはじめ15エリアでデータ取得を行っているようだ。

レベル4実現に向けては、2023年10月に大規模物流施設GLP ALFALINK相模原の敷地内通路をODDに自動運転システム「AIパイロット」がレベル4認可を受けたほか、2024年10月には、長野県塩尻市の一般道でもレベル4が認められ、2025年1月に特定自動運行許可も取得した。純粋な一般道における自動運転サービスの始まりだ。

自動運転タクシー実用化に向けた取り組みも進展している。既存交通事業と共存可能な自動運転タクシー実装を目指し、2024年11月にお台場、12月に西新宿でプレサービス実証を実施した。

西新宿では、利用者は同一の乗り場から7カ所設定された目的地を選択し、指定された経路を走行する方式だったようだ。車両はトヨタ製JPN TAXIを使用している。

こうした実証を通じて自動運転タクシー用リファレンスデザインを確立する。2027年度までに、新たにサービスを導入する地域に対し、リファレンスデザインを活用することで3カ月以内に自動運転タクシーの運用を開始できるサービスモデルを構築する計画だ。

【参考】ティアフォーの取り組みについては「自動運転バス、肌感覚では「手動運転とほぼ同等」に!長野県塩尻市で無事故運行」も参照。

自動運転バス、肌感覚では「手動運転とほぼ同等」に!長野県塩尻市で無事故運行

先進モビリティも実証続々、ひたちBRTで中型バスが特定自動運行許可

先進モビリティは2024年以降、山梨県甲府市、愛知県常滑市、栃木県宇都宮市、神奈川県横浜市、東京都臨海副都心エリア、よこはま動物園ズーラシア、佐賀県佐賀市、兵庫県三田市、埼玉県和光市、愛知県岡崎市、大阪府岸和田市、ひたちBRT、栃木県下野市など各地で実証を行っている。

運行事業者によっては自動運転システム開発者を公表しない例もあり、おそらくだが、こうしたものの多くが先進モビリティと思われる。陰の功労者なのだ。

ひたちBRTでは、2025年1月までにレベル4認可と特定自動運転甲許可を取得し、中型バス車両としては国内初となるレベル4営業運行を開始したようだ。

また、新東名高速道路においては、レベル4トラック開発に向け豊田通商やメーカー各社と共同で実証に着手している。

【参考】先進モビリティの取り組みについては「Googleも注目?茨城交通、「完全自動運転バス」展開なら世界的快挙に」も参照。

Googleも注目?茨城交通、「完全自動運転バス」展開なら世界的快挙に

万博を契機に国内勢が躍進?

このように、国内開発勢の技術がNavyaの技術に追い付き始めたのだ。実証・実用化が明らかに加速しており、今後の進捗によってはあっさりと追い越すことも考えられる。BOLDLYも、ティアフォーなどと手を組む機会が増えたように感じる。

万博における国産EV×国産自動運転システムを契機に国内勢への注目度が増し、大きく躍進していくきっかけとなるかもしれない。

■【まとめ】さらなる黒船来襲も……

海外モデルが主流だった国内自動運転市場で、国内勢による巻き返しが勢いを増しているのは紛れもない事実で、今後の展開に期待したいところだ。

しかし、さらなる黒船の来襲も予想される。世界最高峰クラスのWaymoを筆頭に、May MobilityやMobileyeといった有力開発勢の日本進出も計画されているのだ。

こうした企業と同じ舞台で比較することで、世界との距離を正確に測ることができる。現状、どこまで技術水準に差があるのか。そして、その差は縮まっているのか、伸びているのか。

世界の技術と競争しなければならない時は遅かれ早かれやってくる。早い段階で世界を知り、そして共に伸びていくのが理想だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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