ロボタクシー普及、「日本人の保守性」攻略が鍵【解説:下山哲平】

「事故データの公表」が重要



出典:テレビ東京(2026年9月のWBS出演時)

Waymoの自動運転タクシーが2027年中にも日本に実装されることが発表された。テスラもロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」のお披露目展示を日本で実施した。いよいよ日本でもロボタクシー実現の機運が高まってきた印象だ。

ただ、Waymoが米国で無人サービスを開始したのは2019年末で、実に8年遅れとなる。しかも日本初となるだろうその技術は海外製だ。


なぜ日本はここまで遅れてしまったのか。その要因を、自動運転ラボ主宰者の下山哲平が解説する。

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■ロボタクシーの歴史

Waymoがパイオニア、2019年末ごろに無人化

ロボタクシーの歴史は、Waymoが2018年12月、アリゾナ州フェニックスでサービスを開始して幕を開けた。当初はセーフティドライバー同乗のもとサービスを提供していたが、約1年後に無人化を果たし、レベル4フリートを拡大していった。

2020年代に入ると、米国ではGM系Cruise、中国ではBaidu(百度)やWeRide、Pony.aiといったテクノロジー企業や新興企業が相次いでロボタクシーを実用化し、先行するWaymoを猛追する。

Cruiseは人身事故の発生・対応をきっかけに事業停止・解体されたが、中国勢は着実に力をつけ、複数都市で無人サービスを展開するなどWaymoと同格と言える水準に達している。


Google系Waymoが展開している自動運転タクシー=出典:Waymo公式ブログ

2025年ごろから事業拡大が一気に加速

米国内ではWaymoの独断場が続き、2023年にサンフランシスコで有償の無人サービスを開始し、2024年にはロサンゼルスでもサービス提供を開始した。

2025年にはオースティンとアトランタ、2026年にはダラス、デンバー、ヒューストン、マイアミ、ラスベガス、ナッシュビル、オーランド、サンアントニオ、サンディエゴ、タンパと大幅にエリアを拡大している。一部ではセーフティドライバーが同乗しているようだが、近く無人化される見込みだ。

米国では、2025年にアマゾン傘下ZooxやEV大手テスラが新たにロボタクシー市場に参入しており、再び競争が激化し始めている。2社の技術は現状Waymoに及ばないと推測されるが、テスラはE2Eをベースとしているため、数年後にとてつもないイノベーションを引き起こすようなポテンシャルを有する。

米国・中国以外では、2025年からアブダビやドバイなどの中東地域で導入が進み始め、2026年に商用無人サービスが実現している。欧州では、Pony.aiとVerne、Uber Technologiesが2026年4月にクロアチアのザグレブでサービスを開始している。同年9月に無人走行にも着手したようだ。


英ロンドンでも、Wayveが2026年9月に運行を開始している。こちらはまだセーフティドライバーが同乗している。

アジア圏では、韓国でも2024年にロボタクシーの試験運行が始まっている。セーフティドライバーが同乗する実質レベル3の運用が続いているが、ソウル・江南で有償サービスを展開しているようだ。

まごつく国内勢を尻目にWaymoが日本進出

出典:日本交通プレスリリース

一方、日本でも自動運転タクシー開発は2010年代から進められてきた。先陣を切ったZMP(現ROBO-HI)の取り組みは、今はあまり聞こえてこない中、2019年に着手したティアフォーは、おそらく2027年中に動きを見せるものと思われるが、経過に関するリリースが不足しているため、何とも言えない状況だ。

国内開発勢がまごついている間に、海外勢の進出計画が次々と発表されている。Waymoは日本交通、GOと手を組み、2027年中に東京都内でローンチする計画だ。WayveはUber Technologiesと手を組んでおり、日産、日の丸交通の協力のもと2026年末にも実証に着手するとしている。

近々では、WeRideも日本を有望市場の一つとして進出先候補に挙げたという。

■日本の遅れの要因

下山「日本人の保守性が要因」

前述したように、開発面、サービス実装面でも日本は米国に比べ8年ほど遅れているような印象だ。早期に自動運転開発に着手していたグーグル(Waymo)に遅れるのは仕方がない面もあるが、その差は一向に埋まらず、日本初のロボタクシーの座も同社にさらわれようとしている状況だ。

この要因について、下山は2026年10月2日放送のTOKYO MXの討論番組「堀潤激論サミット」でも触れていたが、「結論を言うと、国民の保守性のようなものに行き着く。新しいテクノロジーに対するアレルギーが一番の根源にある。国民がそうだから、政治もそこに注力しようとするインセンティブが働かない」と話す。

米国では、最新テクノロジーを寛容する国民性が育まれている。反対勢力も当然存在するが、多くはイノベーションによって社会や生活が革新・改善されることを望んでいる。これは日本国民も同様だろうが、その差は「寛容」の中身にあるのではないだろうか。

米国では、進化に伴う「リスク」に対して寛容である一方、日本はこのリスクを忌み嫌いがちだ。リスクを完全に排除した後でなければ、社会変化の風を受け入れないのだ。こうした風潮は開発・実証を停滞させる大きな要因となり、結果として実用化を遅らせることとなる。

下山は「新しいテクノロジーに対するアレルギーがあり、最初に導入する時から完璧を求めるといった風土が抵抗につながっている」と話す。

国民性が政府や民間の足を引っ張る?

こうした国民性は、国の施策や民間の開発に影響する。政治は、イノベーションによる社会の進化を支持しつつも、一部で反対が起こればその声を無視しきれず、対処に迫られる。リーダーシップを発揮できる政権でなければ、一部の懸念を解消することを優先し、研究や社会受容性向上を名目とした周知活動などに注力する。その結果、実証などは後回しになってしまいがちだ。

民間についても同様だ。下山は「個人所有車であっても商用車であっても、自動運転車が事故を起こせばその車両を作った人が悪いという風潮になる。ファーストペンギンが叩かれ、チャレンジしづらくなる」と話す。

続けて「大手企業であればその傾向は顕著。トヨタなどの大手自動車メーカーの自動運転・運転支援技術は高いものがあるが、バッシングを考慮すると、あえてトヨタがそうしたデメリットがあるムーブを起こすことはなくなる。開発力も資金もある素晴らしい企業ほどこうしたジレンマに陥る」とする。この点については、2026年9月15日に報道番組「ABEMA Prime」に出演した際にも強調した。

【参考】関連記事としては「下山哲平が報道番組「ABEMA Prime」で、自動運転について解説」も参照。

トヨタが開発・展開するe-Palette=出典:トヨタプレスリリース

日本の政治も企業も、米国に比べ「評判」を気にし過ぎる傾向にあるのではないだろうか。自動運転に限らず、日本ではちょっとした事故・事件でも過剰に叩き上げる空気がSNSなどを中心に出来上がっている。

米国では、こうした声を気にせず無視して事業を遂行できる風土があるように感じるが、日本は必要以上に評判を気にする体質なのだろうか、弱腰になってしまいがちだ。

下山は「例えばテスラのFSDはレベル2という人間が管理しなければならない段階だが、世の中的には自動運転のようにみられている面がある。この数年間で、原因は人間にあるものの何人もの人が悲惨な事故で亡くなっているが、テスラはびくともしない。日本企業では、販売停止措置を講じることになりかねない」と言う。

自社に本質的な責任がなくとも、いったん蓋をして事態の鎮静化を図る……といったことは確かにありそうだ。

一度の体験が社会受容性を変える

また下山は、自動運転に関するアンケート結果では、未体験層と体験層の回答は大きく異なることを指摘する。未体験層の多くが「自動運転は怖い」と回答する一方、体験層は「安心できた」とする回答が増加する――と語る。

改善策として下山は「社会受容性の向上には『データの公表』が不可欠。体験してもらうことも重要。日本人は『右向け右』の性格もあり、一度実用化し始めると速いはず。米国との遅れを取り戻せる可能性もあるのでは」と説明する。

自動運転車も事故を起こすことは間違いないが、それは手動運転よりも低い割合となっていることを明確にデータで提示し、その上で「一度体験してみよう」というムーブが起きれば、社会受容性は一気に高まるのかもしれない。

競争環境なども異なる

このほか、下山は競争環境などに関する違いも指摘する。「アメリカの場合、国の補助金などに頼らず完全に民間の力でやることができる。過去、グーグルが検索エンジンにベットしたように、このマーケットは滅茶苦茶でかくなるとわかっているからそこに投資する。技術・サービスが普及した未来からさかのぼり、そこに繋がる方法で資本をつぎ込んでいる」と話す。

先進的なテクノロジーやイノベーションに対する投資家の理解も深く、巨額の資金調達を行いやすい環境が整っており、新進気鋭のスタートアップなど最新テクノロジーを使った事業者が山ほど出てくる条件が揃っているようだ。

一方、日本に関しては「新しいテクノロジーや規制改革においては、手段が目的化しがち。日本は自動運転バスに関しては進んでいる方だったが、ふたを開けてみれば日本初のレベル4は磁気マーカー式だった。この方法では広範な普及は見込めない。他所よりも早く実証・実用化する実績を作りたかっただけではないのか。手段が目的化した典型例」と警鐘を鳴らす。

道の駅における自動運転の取り組みでも、公道を一時的に自動運転専用道にして「自動運転実現」をうたう例もあった。国の支援体制は米国より整っているが、「~年までにレベル4実現」といった当初目標を達成するために本質を見失っては、その後の開発にも負の影響を及ぼしかねない。

また同時に下山は、2026年9月11日放送のテレビ東京の経済報道番組「WBS(ワールドビジネスサテライト)」に出演した際にも触れたが、海外の自動運転開発企業の日本進出について「日本では、タクシー会社が運行管理をしないと、タクシーの有償サービスとしては展開できない」とした上で、Cybercabの日本お披露目で注目を集めるテスラについては「テスラ単体では展開できない」とも話している。

【参考】関連記事としては「下山哲平がテレビ東京「WBS」で、自動運転について解説」も参照。

日本の自動運転「なんちゃってレベル4」で出遅れ鮮明 下山哲平の現状解説

■【まとめ】トラブルは必ず起こる。でも負けるな!!

下山は「トラブルは必ず起こる。叩かれる。じゃあ止めた方が、やらない方が良いんじゃないかと気持ちが折れかかるが、めげずに進めていくことが重要」と民間の取り組みを後押しする立場だ。

一方、利用者サイドに関しては、「まず一度体験してみよう」という空気を醸成することの重要性を強調する。自動運転の現状や効能を正しく理解し、実際に体験することで世論は大きく変わり、逆風・無風が追い風に変わっていく。

外資の国内市場参入で情勢はどのように変わっていくのか。まずは2027年の各社の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「下山哲平が報道番組「ABEMA Prime」で、自動運転について解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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