自動運転車、孫氏が2月8日に「2年後量産」の真意を語る…のか

GM Cruiseか中国Didiか?実は大本命はあの企業…?



ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は2021年1月29日、世界経済フォーラム主催の会合「ダボス・アジェンダ」にスピーカーとして登場し、「ステアリングのない自動運転車の大量生産が2年後には始まると思う」と発言した。

自動運転市場の一般的な見通しとして自身の考えを述べた場面だが、多くの自動運転開発企業に投資するソフトバンクグループにとってもこれは他人事ではない。ともすれば、この発言は同グループにおける予告ともとれる。







同グループの2021年3月期第3四半期の決算説明会が2月8日に開催されるが、その席で孫氏は「2年後に大量生産」の真意を語るのではないだろうか。

この記事では、ソフトバンクグループとつながりが深い自動運転開発企業において、2年後(2年以内)に大量生産が可能な企業を予測していく。

【参考】冒頭の孫氏のスピーチは「ダボス・アジェンダ公式サイト」から視聴できる。ちなみに2月8日の決算発表でのスピーチは、YouTube上では「ソフトバンクグループ株式会社 2021年3月期 第3四半期 決算説明会」からライブで視聴可能だ。

■本命その1:GM・Cruise

本命候補には、米GM傘下のCruise(クルーズ)が挙げられる。GMは2018年にソフトバンクグループとの提携を発表し、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)からクルーズへ22億5,000万ドル(約2,400億円)が出資された。2019年にもSVFやホンダなどから11億5,000万ドル(約1,200億円)が追加出資されている。

クルーズは2020年1月にステアリングなどを排除した移動サービス向けの自動運転車「Origin(オリジン)」を発表した。具体的な時期は示されていないが、量産化を見据えたモデルだ。

近々では、ホンダが2021年1月、クルーズの試験車両を活用し、日本国内で技術実証を2021年内にも開始すると発表している。クルーズ・オリジンを活用した将来的な事業展開にも言及しており、日本市場に導入される可能性は高そうだ。

事業運営はホンダモビリティソリューションズが担う予定となっているが、ここにソフトバンクが関わってくることも十分考えられる。

生産能力を持つGMなどがバックについているクルーズの自動運転車は、機が熟せばすぐにでも大量生産に着手できる環境にある。2年以内に事業を本格化させる可能性も高く、本命候補として申し分のない存在と言えるのではないだろうか。

【参考】クルーズ・オリジンについては「GMが新たに22億ドル投資、”ハンドル無し”自動運転車の量産視野」も参照。

■本命その2:Didi Chuxing(滴滴出行)

もう1つの本命が中国配車サービス大手のDiDiだ。ソフトバンクは、2016年に同社が実施した資金調達ラウンドに参加して以来追加出資を続けている。同社の自動運転開発子会社「DiDi Autonomous Driving」が2020年に実施した資金調達もSVFが主導している。

DiDiは2016年に自動運転開発を本格化し、2019年に開発部門を分社化している。北京、上海、蘇州や米カリフォルニアで公道走行試験のライセンスを取得し、自動運転タクシーの実証を進めており、2030年までに100万台の自動運転車を導入する計画も立てているようだ。

中国では自動運転タクシー実用化に向けた取り組みが過熱しており、百度やAutoXはセーフティドライバー不在の無人移動サービスの導入段階に達している。DiDiもこうした動きに追随していくはずだ。

2年後には中国内の自動運転タクシー市場が一定水準に達し、量産化に向けた動きも本格化している可能性が高い。ライドシェア事業で配車サービスプラットフォームを確立済みで、すでに多くの顧客を抱えているDiDiは、自動運転移動サービスを広域展開する基盤を備えている。

大量生産に踏み切る土台はすでに出来上がっており、後は自動運転技術の熟成を待つばかりと言えるのではないだろうか。DiDiの大株主であるソフトバンクグループも、海外展開などを含め水面下で戦略を練っている可能性が考えられそうだ。

【参考】DiDiの取り組みについては「ライドシェア無人化の衝撃!中国DiDi「自動運転車100万台」宣言」も参照。

■物流分野ではNuroが本命

ロジスティクスの自動化に向けた取り組みが加速する物流分野では、ラストマイル宅配を担う自動運転車両の開発を進めるNuroが本命に挙げられる。同社は2019年にSVFから9.4億ドル(約104億円)の資金調達を行っている。

同社は2020年にカリフォルニア州から無人走行許可や商業運用許可を取得したほか、コロナ禍によるコンタクトレス(非接触)需要の高まりを受け、実用実証も大きく加速させている。

歩道走行を前提にした小型ロボットタイプではなく一般の道路上を走行する車両タイプだが、宅配ロボット全体の社会受容性の高まりを受け、2年後には量産段階に達している可能性は高そうだ。

■大本命は実は…トヨタ?

ここまでソフトバンクグループの出資企業を挙げてきたが、大本命は国内に存在するのかもしれない。それはトヨタだ。両社が共同出資して設立したMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)を介する形で、大量生産した自動運転車の社会実装を進めていく可能性も考えられる。

モネは主要事業の1つに「Autono-MaaS」を掲げ、トヨタが開発を進める「e-Palette(イー・パレット)」の展開を視野に入れている。このイー・パレットの広域展開に向け、ソフトバンクグループが大きく動き出すという予測だ。

また、ソフトバンクグループとトヨタはともに米UberやシンガポールのGrabなど世界の配車サービス大手に出資している。配車サービスと自動運転の相性は良いため、トヨタが生産した自動運転車をもとに、各国で配車サービスを立ち上げていくような共同ビジネスに乗り出すことなども考えられそうだ。

■【まとめ】モビリティ群戦略がいよいよ本格化?

上記は予測・憶測であり、かつソフトバンクグループが直接大量生産するわけではない。ただ、2021年3月期第2四半期の決算説明会においても数年以内にAI(人工知能)技術による自動運転車が登場することに言及しており、「モビリティ群戦略」に力を入れていくことを強調している。

第3四半期の決算説明会でも、孫氏は間違いなくAI・自動運転に触れるはずだ。「2年以内に大量生産」に言及するかはわからないが、発言内容に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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