アメリカのウーバー・テクノロジーズ、中国のDidi Chuxing(滴滴出行)、アジアのGrab…。これらの企業はともにライドシェア事業を展開し、世界から注目される有望企業の1社となっている。ただ彼らも現在の事業スタイルに固執すれば、将来的に会社存続の危機が訪れるかもしれない。
自動運転技術の発達により、将来、間違いなく自動車のほぼ全てがAI(人工知能)による無人走行が可能な仕様となる。そういう時代が来れば、2010年代に世界で爆発的に普及したライドシェアは無くなっていく。人がクルマを運転する時代が終わるからだ。
そうなればライドシェアを展開するプラットフォーマーたちは、ライドシェア事業による手数料収入を得られなくなっていく。
■ウーバーも自動運転タクシー企業に転身?
こうした事態を当のライドシェア企業も危惧しており、既にその対策に乗り出している。それは、自らがライドシェア企業から自動運転タクシー企業に転身を果たす、というものだ。現にウーバーやDidi Chuxingは既に自動運転技術の開発に力を入れている。
ウーバーは過去に自動運転車による死亡事故を起こしたものの、いまも着々と自動運転技術の向上に取り組んでいる。自社で専門組織「アドバンスト・テクノロジーズ・グループ(ATG)」を立ち上げ、2019年はコンピュータービジョン技術に強いAIスタートアップの買収なども進めている。
Didi Chuxingもウーバーと似た動きを見せている。2018年1月には日本のトヨタが開発する自動運転EV(電気自動車)「e-Palette」(イーパレット)で協業することを発表しており、2019年8月には自動運転開発に特化した新会社をスピンアウトで誕生させることを明らかにしている。
ただライドシェア企業が自動運転タクシー事業に転身しても、「いばらの道」が待ち受けているかもしれない。その理由は、これまでは車を販売していた自動車メーカーが自動運転タクシーで移動サービスを提供するプラットフォーマーになっていく可能性が高いからだ。
現にEV(電気自動車)大手の米テスラは顧客に販売する自動運転車両を使うロボットタクシー事業の構想を発表しているし、欧州勢のダイムラーとBMWもモビリティサービスに取り組んでいる。こうした自動車メーカーがウーバーやDidi Chuxingの将来の競合になり得るわけだ。
【参考】関連記事としては「ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入」「欧州の双頭・BMWとダイムラーによる「リーチナウ」の可能性とは?」も参照。
BMWとダイムラーの「REACH NOW」に秘める可能性とは? 自動運転車からバスまで、シームレスな移動の実現 https://t.co/8utHBHL9DX @jidountenlab #BMW #ダイムラー #モビリティサービス
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) February 27, 2019
■ライドシェアは長い目で見れば…
長い目で見ればライドシェアは21世紀に登場して消える一過性のサービス形態となる可能性は十分にあり得る。
ただ、自動運転社会が到来していない現代においてはライドシェアは有用なサービスであることも間違いない。日本においては現在、地方都市における移動の足を確保する目的や観光客の移動手段を充実させる目的で、住民によるライドシェアが一部で実証的に行われている。
時代の変化とともに消えていくサービスもあれば新しく誕生するサービスもある。ライドシェアもその一つなのだろうか。
【参考】ライドシェアについては「ライドシェアとは? 意味や仕組み、ウーバーなど日本・世界の企業まとめ」も参照。