Luminarの年表!自動運転の目「LiDAR」を開発

高校在学中に創業、25歳でナスダック上場



出典:背景画像はVolco Carsプレスリリース/Luminar公式サイト

自動運転に欠かせないセンサーとして年々存在感を高めているLiDAR。開発においては自動運転システム同様スタートアップの活躍が著しいが、その代表格がLuminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)だ。同社は2020年末に上場を果たし、すでに次のステップへと事業を進めている。

この記事では、同社の足跡を時系列でたどり、今後の展望に触れていく。







■ルミナーの概要

ルミナーの歴史を語る上で切り離せないのが、若き創業者Austin Russell(オースティン・ラッセル)氏だ。1995年生まれのラッセル氏は11、12歳の時に自宅ガレージを改造して光学・電気に関するラボを作るなど、早くから科学技術の領域に足を踏み入れていた。

14、15歳のときに光工学に興味を持ち、LiDARの実験を開始したという。以後、世界中の論文やインターネット活用のもと知識を蓄え研究を重ね、2012年、高校在学中の17歳でルミナーを設立する。卒業後はスタンフォード大学に進学するが、約半年で中退し事業に集中していく。その際、スタートアップ創出に向け学生向けに研究奨励金を出すThiel Fellowshipから10万ドル(約1,100万円)を受け取っている。

その後、コアテクノロジーの構築に向け5年間のステルスモードに突入する。2016年に光学製品開発企業Open Photonicsを買収するなど力を蓄え、2017年に表舞台へ。以後、資金調達や提携がとんとん拍子に進み、有力スタートアップとしてルミナーはその名を世界に広めることになる。

ラッセル氏が25歳となった2020年に米ナスダック市場への上場を果たし、その勢いはさらに増している印象だ。以下、ステルスモード脱却後のルミナーの快進撃を時系列で紹介していく。

▼Luminar公式サイト
https://www.luminartech.com/

■2017年4月:LiDAR発表とともに表舞台へ

ルミナーは2017年4月、独自開発したLiDARで自動運転車市場に参入することを表明した。200メートル先の黒い車やタイヤといった低反射率の物体を検出でき、かつ時速75マイルで7秒間の反応時間を提供する低コストLiDARで、まもなく本格化する自動運転時代の需要を取り込もうとした格好だ。

すでに戦略的パートナーと4つの自動運転プログラムに向け限定生産を進めていることのほか、チーム拡大に向け2つの買収を行い、シードキャピタルのCanvas VenturesやGVA Capital、1517Fundなどから計3600万ドル(約40億円)を調達したこともあわせて発表した。

なお公式発表されていないが、ルミナーは2018年初頭にもベンチャーラウンドで1億ドル(約110億円)超の資金調達を行っているようだ。

■2017年9月:トヨタグループのTRIと提携

最先端技術の開発を手掛けるトヨタグループのTRI(トヨタリサーチインスティチュート)は2017年9月、ルミナーのLiDARセンシング技術を搭載した最新の自動運転テスト車両となるプラットフォーム2.1を発表した。

ルミナーは「TRIは新しいセンシングプラットフォームを最初に深く統合した企業」とし、TRIのジェームス・カフナーCTO(最高技術責任者)は「データの忠実度と範囲のレベルはこれまでに見たものとは異なる」と同社製LiDARを評価した。

■2018年4月:最新のセンシングプラットフォームなど発表

ルミナーは2018年4月、全ての試験車両に搭載可能な最新のセンシングプラットフォームとともに、新たな企業買収や製造施設の拡大などを発表した。

チップ開発を手掛けるBlack Forest Engineeringを買収し、開発体制を350人以上の規模に拡大するとともに製造施設も拡大し、四半期ごとに5,000台以上を生産できる体制を構築した。

■2018年6月:ボルボ・カーズと提携、共同で自動運転開発

ルミナーは2018年6月、スウェーデンのボルボ・カーズとの提携を発表した。ボルボ・カーズの試験車両に最新のLiDARセンシングプラットフォームを提供し、共同で自動運転開発を進める内容だ。

また、スタートアップの支援に向けボルボ・カーズが立ち上げたばかりの投資ファンド「ボルボカーズ・テックファンド」が第1弾の投資先にルミナーを選定したこともあわせて発表されている。

このほか、ボルボ・カーズとの提携においては2020年にルミナー製LiDARをシームレスに統合したモジュラー車両アーキテクチャが発表されており、2022年に生産開始する予定としている。

■2018年12月:フォルクスワーゲングループのAIDと提携

ルミナーは2018年12月、アウディ子会社で自動運転開発を手掛けるフォルクスワーゲングループの「Autonomous Intelligent Driving(AID)」との提携を発表した。AIDのパートナーシッププログラムにおいてルミナーが選ばれ、専門知識を組み合わせ2021年までに自動運転技術の確立を目指す方針としている。

なお、AIDは2020年、米フォードとフォルクスワーゲンと提携する有力自動運転スタートアップArgo AIに買収され、Argoの欧州開発拠点となっている。

■2019年7月:資金調達2.5億ドル突破、量産車向け「Iris」発表

ルミナーは2019年7月、最新の企業動向を発表した。2022年発売予定のIrisで消費者向けの乗用車や商用トラック市場にも参入する戦略のほか、これまでに調達した資金が累計2億5,000万ドル(約270億円)を突破したことなども発表した。

資本増強によって量産車両市場への進出を加速するとし、その際の主力となる製品がIrisだとした。レベル3から4の自動運転を実現する基本的な性能をはじめ、安全性やコスト面でも優れたパフォーマンスを発揮するセンシングプラットフォームで、1000ドル(約11万円)未満の価格を目標とした。

なお、この時点で世界の上位15社の自動車メーカーのうち12社が、自動運転開発プログラムの一環としてルミナーのセンシングプラットフォームを利用していると明らかにされた。

出典:Luminar公式サイト
■2020年1月:LiDARのサブスクサービスを発表

ルミナーは2020年1月、LiDAR「Hydra」の出荷を開始し、サブスクリプション方式でリリースすると発表した。

Hydraのリリースによって、ルミナーはセンサーの販売から自動運転開発パートナー向けのサブスクリプションベースのサービスにコアビジネスを移行。これにより、開発サイクル全体の統合が深まり、開発速度が向上してより焦点を絞った機能開発が可能になるとしている。

Hydraについては、最新の知覚コンピューターやNVIDIA Xavier SoC上に構築されたリファレンスデザインを備えるほか、より高いフレームレートでも高解像度を実現する機能や500メートル先まで検知する認識技術、オブジェクトの速度測定など、多数の新しい機能を提供するとした。

出典:Luminar公式サイト
■2020年10月:Daimler Trucksとパートナーシップ

ルミナーは2020年10月、商用車メーカーの独Daimler Trucksと戦略的パートナーシップを交わしたと発表した。Daimler Trucksの北米部門や自動運転開発部門と共同でレベル4の開発を進めていくとした。

パートナーシップに伴い、Daimler Trucksはルミナーの株式の一部を取得したようだ。

■2020年11月:Mobileyeの自動運転車にLiDAR供給

ルミナーは2020年11月、自動運転開発を手掛ける米インテル傘下のモービルアイと契約を交わしたことを発表した。イスラエルのテルアビブなど世界中の主要市場でレベル4サービスを展開するモービルアイのパイロットプログラム向けの第1世代の車両に、1,000ドル未満のコストでLiDARを供給する。

両社は約2年前から共同開発を進めていたとしており、モービルアイのアムノン・シャシュアCEO(最高経営責任者)は「高性能LiDARは自動運転ソリューションの重要な部分であり、無人運転車開発の次の段階でルミナーと緊密に協力してきた」と話している。

単眼カメラへのこだわりを持つモービルアイだが、認知システムの冗長性を高めるため、近年はカメラ主体のシステムとLiDAR主体のシステムの両方を備えた自動運転システムの開発を進めている。

LiDARの独自開発にも取り組んでいるが、ルミナー製品を使用する計画に変更はないという。

■2020年12月:米ナスダック市場にSPAC上場

ルミナーは2020年12月、特別買収目的会社(SPAC)のGores Metropoulosと合併し、米ナスダック市場にSPAC上場した。Luminarのティッカーシンボルは「LAZR」。

これに先立ち、同社は7月にゴールドマンサックスの自動車部門で責任者を務めていた実績を持つトム・フェニモア氏をCFO(最高財務責任者)に任命するなど、経営体制の大幅強化を図っていた。

【参考】Luminarの上場については「LiDAR企業のLuminar上場!株価急上昇、自動運転の「目」を開発」も参照。

■2021年1月:ボルボ・カーズとLiDARデータセット公開

ルミナーとボルボ・カーズは2021年1月、自動運転開発者向けに厳選したLiDARデータセット「Cirrus」を公開すると発表した。長距離LiDARの検出や分類に向けたアルゴリズム開発を促進する狙いだ。

データセットは、ボルボ・カーズが開設した「Volvo Cars Innovation Portal(ボルボ・カーズ・イノベーション・ポータル)」において、APIやエミュレーターなどとともに公開している。

Cirrusでは、長距離に重点を置いたLiDARスキャンパターンの不均一な分布を提供する。対応するカメラ画像や均一なスキャンパターン、注釈なども含んでいる。

具体的には、6285ペアのRGB、LiDARガウス、LiDARユニフォームフレームを含む。250メートルのLiDAR有効範囲全体にわたり、車両、大型車両、歩行者、自転車、動物、車輪付き歩行者、オートバイ、トレーラーの計8つのオブジェクトカテゴリに対し注釈が付けられている。シナリオは、高速道路と都市道路の両方を含んでいる。

【参考】データセットの公開については「ボルボがCASE分野の独自ツールを「無償公開」する真の狙い」も参照。

■2021年3月:ボルボ・カーズ傘下のZenseactとパートナーシップ

ルミナーは2021年3月、ボルボ・カーズ傘下のソフトウェア開発企業Zenseactとパートナーシップを結び、フルスタックの自動運転システムを開発・提供すると発表した。

ルミナーが開発したIrisや知覚ソフトウェアなどをZenseactのOnePilot自動運転のソフトウェアソリューションに統合し、全ての自動車メーカーに対応可能なフルスタック自動運転ソリューション「Sentinel」として製品化していく。

長きに渡って継続しているボルボ・カーズとの提携関係は、いっそう深まっているようだ。

■2021年3月:上海汽車の新型EVで「Iris」が採用される

ルミナーは2021年3月、中国の上海汽車(SAIC)と戦略的パートナーシップを結び、同社のEV(電気自動車)ブランド「R」の車両にルミナーのIrisが採用されたことを発表した。

新モデルは「高速道路の自律性と予防安全機能を実現する」としており、高速道路におけるレベル3機能を備えるものと思われる。今後数年は、こうした量産車両への採用がLiDAR市場の拡大を強力に後押ししていくことになりそうだ。

■2021年3月:2020年の受注額が10億ドルを突破

ルミナーは2021年3月、2020年の財務結果と2021年の戦略を発表した。2020年は、ボルボ・カーズをはじめ第4四半期までにモービルアイやダイムラートラックスなどとのパートナーシップを獲得し、受注額は目標の10億ドル(約1,100億円)を超えたようだ。

2021年はIrisのサンプル生産を進め、少なくとも3つの商業プログラムを勝ち取り、受注額40%増を目指すとしている。

■2021年4月:エアバス子会社とパートナーシップ

ルミナーの技術は、空飛ぶクルマにも採用されたようだ。同社は2021年4月、航空機メーカーエアバス子会社Airbus UpNextとのパートナーシップを発表した。

3Dスキャン技術で障害物などのオブジェクトを正確に検出することで航空機の安全性を高め、さらには自動運転が可能なアーバンエアモビリティ(UAM)の実現を目指す構えだ。

【参考】ルミナー製LiDARの需要については「売れまくるLuminarのLiDAR!Volvo、テスラにも!?自動運転の目を製造」も参照。

■2021年5月:Pony.aiの次世代フリートにIrisを統合

自動運転タクシーの開発を進める中国Pony.aiは、ルミナーと共同で新しく設計したセンシングプラットフォームを発表した。

Pony.aiは2023年に自動運転タクシーのフリートをグローバル展開する予定で、次世代フリートにはIrisを統合する。同社は現在広州、上海、北京、カリフォルニア州アーバイン、フリーモントの5都市でサービス実証を進めており、200台を超える自動運転車両を保有しているという。

サービスが完全に実用化域に達し本格化されれば、フリートに導入される台数も飛躍的に増すことが予想される。

■【まとめ】低価格でスケーラビリティ溢れるルミナー製品

主力となるIrisの本格生産は2022年の見込みだが、着実にレベル3量産車や自動運転車への採用を獲得し、業績を伸ばしている印象だ。大量生産を前提に設計したLiDARは、ハードウェア・ソフトウェア両面でスケーラビリティを高めており、今後も採用が続く可能性が高い。

強力なライバルが次々と台頭するLiDAR業界だが、先頭を走る若き創業者の足はさらなる加速を見せそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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