自動運転レベル4、ドイツが「世界初」公道解禁へ

道路交通法の改正案を閣議決定



ドイツが自動運転レベル4(高度運転自動化)の解禁に大きく動き出したようだ。日本貿易振興機構(JETRO)によると、ドイツ連邦政府はレベル4車両の公道一般走行を可能にする道路交通法の改正案を閣議決定したという。2021年半ばまでの法案可決、2022年までの施行を目指すとしている。







新たな法改正はどのような中身なのか。レベル4の開発動向などとともに解説していく。

■ドイツの道交法改正の概要

改正法案では、自動運転車の技術的要件や認可・車検、運転者の義務、データ処理に関する規定などが新たに盛り込まれた。レベル4走行が認められる分野には、シャトル交通サービスや自動運転ミニバス、ハブ・トゥ・ハブ交通、オフピーク時のニーズに応じたサービス、ラストワンマイルにおける人の移動やモノの輸送、自動バレーパーキングなどを挙げているようだ。

ドイツでは、2017年にレベル3走行を可能にする道交法や道路運送車両法の改正が行われているが、現実的な運用には至っていない。EU各国と地続きで連なるドイツでは、EUの枠組みにおける基準や国際基準の重要性が特に高く、事実上「待った」をかけられた状況となっている。

なお、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において2020年にレベル3に関わる国際基準が成立している。

レベル4は、一般乗用車への搭載が軸となるレベル3と異なり、移動サービスなどが主体になることが予想される。ODD(運行設計領域)が限られるため、自国内に限った独自運用も行いやすく、今後の動向に注目だ。

■自動運転レベル4とは?
レベル4最大のメリットはドライバーレスにあり

レベル4は「高度自動運転化」を指し、特定の条件下においてドライバーを要しない自動運転を実現する。特定条件はODD(運行設計領域)と呼ばれ、各自動運転システムの能力に応じて、走行エリアや道路環境、速度、天気など安全に走行することができる条件を定める。

「条件付自動運転化」と定義されるレベル3も特定のODDのもと自動運転が可能になるが、システムから手動運転の要請があった際、ドライバーは直ちに運転操作を行う必要がある。つまり、レベル3はドライバーの存在を前提としているのだ。

レベル4もシステム次第で手動運転を交えることが可能だが、ODD内に限定した走行をすることでドライバーレスを実現できることが最大のメリットとなる。

ドライバーレスは、自動運転タクシーや自動運転バスといった移動サービスや、ラストワンマイルを担う宅配などにおいて運用コストの大幅削減につながり、事業の継続性や新たなサービス展開を生み出す原動力となる。

日本は現在はレベル3が解禁された状況

日本では、2020年4月に道路交通法と道路運送車両法の改正が行われ、レベル3の走行が可能になった。レベル3搭載車両の一般販売はまだ行われていないものの、ホンダのレベル3自動運転システム「トラフィックジャムパイロット」が国土交通省から型式指定を受けており、保安基準に適合したシステムとしてまもなく市場化される見込みだ。

レベル4は各地で積極的に公道実証が行われており、開発が加速している印象だ。2020年11月に茨城県境町が自治体として国内初となる自動運転バスの定常運行を開始しているが、セーフティドライバーが同乗し、適宜車両周辺の監視や運転操作に介入するレベル3以下の状態で運行している。実証などの一時的な運行を除き、ドライバー不在の公道走行は法律上まだ認められていないからだ。

現行の道交法や道路運送車両法では、自動運行装置の存在が定義付けられたものの、運転者の存在を前提とした仕組みになっている。レベル4実現に向けては、運転者の存在を必ずしも前提としない新たなルール作りが必要となる。

【参考】自動運転に関する法律については「自動運転と法律・ガイドライン、日本の現状まとめ」も参照。

日本では2022年度までに法改正か

官民ITS構想・ロードマップ2020では、2022年度ごろまでを目途にBRT専用区間や生活道路などの混在空間において遠隔操作及び監視ありの自動運転サービスを開始し、徐々に拡大していく目標を掲げている。

この前提に立てば、遅くとも2022年度までにレベル4を可能にする道交法・道路運送車両法の改正が行われることになりそうだ。

なお、無人配送を担う自動走行ロボットに関しては、2021年度中の解禁を目指す動きも出ているようだ。車体が小さいロボットで、歩道などを走行するものを想定しているものと思われる。

【参考】自動走行ロボット解禁については「自動運転宅配ロボ、公道走行を2021年度中に解禁か」も参照。

■欧州自動車メーカーのレベル4開発動向

欧州勢では、仏スタートアップのNAVYAやEasyMileの自動運転シャトルが世界各地で実績を挙げているが、自動車メーカーでは量産化に向けた具体的な話はまだ出ていない。

欧州最大手の独フォルクスワーゲンは、米フォードと傘下のArgo AIとともにレベル4に向けた自動運転技術の共同開発を進めている。また、インテル傘下のMobileyeとイスラエルで2022年に自動運転サービスを開始する計画なども立てているが、ドイツ国内では具体的な実用化の話は出ていないようだ。コンセプトモデルとしては、レベル4~5に相当する「SEDRIC」を公開している。

【参考】SEDRICについては「確かに… 自動運転車がスキー場の”ゴンドラ”と酷似」も参照。

独アウディもレベル4コンセプトカー「AI:ME」などを公開しており、当初の目標ではレベル4商用車を2021年市場投入することを掲げていたが、開発に関する続報は入ってこない。まずは、一般乗用車向けにレベル3システム「Audi AIトラフィックジャムパイロット」の実装と進化に力を入れている可能性も高そうだ。

【参考】Audi AI:MEについては「自動運転時はハンドル格納 アウディの「AI:ME」が色々凄い」も参照。

独ダイムラーは、ボッシュとの協業のもと2020年代初めまでにレベル4の移動サービス実現を目指す目標を掲げている。一時BMWとも共同開発を進めていたが、こちらは2020年に提携を解消している。

なお、ダイムラー・トラックと米Waymoは2020年10月、レベル4トラックの開発に向け戦略的パートナーシップを交わしている。トラック部門は2021年内に分社化する見込みで、新たな展開を迎えそうだ。

BMWはミュンヘン郊外に自動運転開発拠点を設置し、MobileyeやIBMなどをパートナーに開発を進めているが、こちらもレベル4に関する続報は入ってこない。

各社ともレベル4車両や実証などに関する具体的な公式リリースを出しておらず、開発状況がやや不透明な印象だ。

■【まとめ】ドイツがレベル4社会実装の見本に

自動車大国ドイツにおいても、米国、中国などと同様にレベル4サービスはスタートアップなどが口火を切る可能性が高そうだ。ドイツ鉄道なども自動運転EV(電気自動車)バスの開発や実証を進めており、有力視されている。

いずれにしろ、要件を満たした自動運転車両が所定のサービスを自由に行う環境が構築されつつあるのは事実だ。どういった基準で各自動運転車両を認定し、またどのように社会実装されていくのか、他国にとって参考すべき点は多い。引き続きドイツ政府の動向に注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、ゼロから分かる基礎知識&進捗まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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