自動運転で存在感!群馬大学の取り組みまとめ

各地で企業連携や実証実験加速





出典:次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)公式サイト

官民総出で自動運転の研究開発が進む中、「学」も近年目覚ましい活躍を見せている。専門的な研究を行う大学が続々と自動運転分野に進出し、企業や自治体と手を組みながらさまざまな取り組みを進めている。

その中でも、ひときわ大きな存在感を発揮しているのが国立群馬大学だ。次世代モビリティを見据えた研究センターを立ち上げ、研究開発や実証を加速している。







今回は、群馬大学の取り組みを調査し、自動運転分野における同大学の立ち位置を探ってみた。

■次世代モビリティ社会実装研究センターとは?
関係機関の連携のもと高度な人材育成を

次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS/クランツ)は、次世代自動車産業振興に資する産学官金連携イノベーションの拠点形成を目指す群馬大学が、次世代モビリティシステムの社会実装研究と開発、高度な人材育成を進めるため2016年12月に桐生キャンパスに設置した研究開発施設。2018年5月には、実験フィールドなどを備えた一大拠点を荒巻キャンパスに整備し、移転している。

CRANTSには教育研究部と技術開発部が置かれており、教育研究部では産学官金協働で学生や社会人の教育を提供するとともに、ベンチャー企業や金融機関との連携によりアントレプレナーシップ教育・起業人養成プログラムを提供する。

一方、技術開発部では、小型・バス型電動自動運転自動車の製造・安全走行技術やモーター駆動のメカトロニクス精密制御技術、自動運転のための画像認識技術や人工知能化技術、軽量金属材料、カーボン材料の製造や加工技術、ビッグデータ解析技術、社会実装のための社会情報シミュレーション技術といった次世代モビリティの技術開発を進めていくとしている。

完全自動運転をはじめとした将来性あふれる次世代モビリティの世界で関係機関の連携を図り、最新の技術開発を通して人材育成を図っていくイメージだ。

2020年目途にレベル4社会実装へ

いかなる条件下でも自動運転が可能になる自動運転レベル5の実現は現状ハードルが高い。このため、同センターでは限定された地域専用の自動運転を開発し、実証実験の実績を蓄積することで2020年を目途に技術的にも社会的にも自動運転に対応させることを目指すとしている。

さまざまな自動運転対応車両や実験フィールドを完備 多様な実験に対応

総合研究棟には、車両整備開発室や管制・遠隔操縦設備室、データセンター、シミュレーション室など、自動運転の研究開発に必要な各種設備を備えており、連携企業も利用することができる。

また、公的研究機関としては国内有数となる約6000平方メートルの専用試験路となる実験フィールドも完備している。信号や標識など可動式の道路要素を備えた自動運転車両のための実験路で、道路要素を実験目的に適合する道路環境になるように移動させることで、さまざまな技術課題に対応した実験を行うことができる。

車両は、乗用車タイプをはじめバスやトラック、一人乗りの小型車両まで、計18台の自動運転に対応した多様な自動車を取り揃えている。地域のニーズによって適切なモビリティを導入することを重要視しており、これらの車両を各連携企業と実施する公道実証実験に利用し、実地の生きたデータを取得して完全自動運転の早期社会実装を目指すこととしている。

■研究プロジェクトは「自動運転」など3部門

CRANTSの研究プロジェクトは、自動運転レベル4に特化して自動運転技術や運行技術を開発し、社会実装を進める自動運転部門と、低速モビリティ部門、遠隔空間部門がある。

低速モビリティ部門では、低速モビリティに関する技術開発と地域実装に関するさまざまな社会的効果、受容性、導入に向けた仕組みづくりなどを研究しており、低速モビリティに関わる運行ノウハウの蓄積・データベース化をはじめ、情報共有の場の提供、新しい低速モビリティ開発、地域導入を支える関連技術など、多岐にわたる研究を行っている。

研究や実証では、群馬県桐生市に本社を構えるシンクトゥギャザーが開発した低速電動バス「eCOM-8」が主に使用されているようだ。

遠隔空間部門は現在計画中のプロジェクトで、遠隔地の空間をそれとは異なる場所に存在しているように人間に知覚させる技術「テレスペース技術」を開発する予定という。人々が交通手段によって移動する目的は「異なる空間に自分を置く」ことにあるため、等価的にそれを達成することができれば一種の交通手段と見なしても良いのではないか、という観点から着想しており、テレスペース技術を活用した究極のモビリティは「移動しないこと」にあるとしている。

【参考】低速モビリティやeCOMについては「自動運転実証実験の”常連”8車両まとめ MileeやeCOM-10、RoboCar、Robot Shuttleなど」も参照。

■2016年10月から公道実証実験、各地で取り組み

群馬大学が関わる自動運転の公道実証実験は、CRANTSが設置される少し前の2016年10月、地元桐生市から始まっているようだ。各自治体や企業などとの連携のもと、各地域が抱える交通課題の解決などさまざまな目的に合わせ、実証を重ねている。

2017年には札幌市、神戸市、前橋市、2018年には千葉市幕張、東京都江東区、東京都三宅島(三宅村)、富岡市、大分市、福岡市、浦和市、四日市市、福山市でそれぞれ実証を行っており、富岡市では、同市とあいおいニッセイ同和損害保険と共同で、「富岡まちなか周遊観光バス」の運行コースの一部において時速20キロ未満の低速電動バスを用いた自動運転走行の実証実験を行った。

江東区では、大和自動車交通、日本総合研究所と、自動運転移動サービスの公道実証実験を実施。ハイヤー・タクシー事業者が主体となって実施するものとしては全国初の取り組みで、大和自動車交通本社から猿江神社までの区間において、ミニバン車両を改造した自動運転車両を用い、テストドライバー同乗のもと試乗者を乗せて走行した。

また、福岡市では、同市で開催された「第16回アジア太平洋地域ITSフォーラム2018福岡」に合わせ、あいおいニッセイ同和損害保険、NTTデータと共同で低速電動バスを用いた自動運転デモンストレーションを実施している。

前橋市では、同市と日本中央バスと共同で、上毛電鉄中央前橋駅とJR前橋駅を結ぶシャトルバスでの「自動運転実証実験事業の実施に関する協定書」に基づき、一般乗客が通常時と同様にバスを利用・乗車する中での実証実験を2018年12月から2019年3月まで実施している。バスの営業路線で運賃収受を行いながらの自動運転実証実験は全国初という。

【参考】日本中央バスとの取り組みについては「全国初の自動運転営業バス、群馬県前橋市に登場 レベル4搭載、12月から実証実験」も参照。

■民間企業との連携を加速

群馬大学はCRANTS発足後、自動運転に関わる非常に幅広い分野において、企業との連携を加速している。

2017年11月には、新明和工業と自動運転車の機械式駐車設備利用実現に向けた共同研究に関する契約を締結した。今後、高密度化が進む都市環境において機械式駐車設備や周辺設備が自動運転に対応する必然性が高いことから。3年間の共同研究により自動入出庫の実証実験や完全自動運転社会を想定した駐車場に関するインフラのコンセプト創出などを進めていくこととしている。

【参考】新明和工業との取り組みについては「自動運転自動車の自動入庫、機械式駐車設備で初の成功 新明和工業が発表」も参照。

2018年2月には、三井住友銀行と「次世代モビリティ社会実装研究に関する協定書」を締結した。自動運転分野に特化した大学と銀行の産学連携は国内初の取り組みという。

2018年3月には、アークノハラと自動運転車両と標識や視線誘導標など道路付帯物との間で行われる路車間通信(V2I)の基礎開発などについて共同研究する契約を締結した。

V2I方式の調査・開発、通信内容の検討を進めるとともに、V2Iの種類や設置位置、車両速度などのパラメーターの検証、通信内容をどのように車両の制御に利用するかなど、実証実験を交えながら研究していくこととしている。

2018年4月には、両毛システムズと「完全自律型自動運転におけるHILS(Hardware-In-The-Loop-Simulation)評価に向けた共同研究」に関する契約を締結した。

HILSは、VCU(ビークル・コントロール・ユニット)と呼ばれる車載コンピューターの動作検証を仮想環境で試験する装置。両毛システムズはシミュレーションモデルを用いて事前評価を取り入れたモデルベース開発技術などを持っており、こうした技術を生かしながら共同で完全自動運転車における制御システムの評価方法の知見を得て技術力の向上を図っていくこととしている。

2018年8月には、電通と「次世代モビリティ社会実装研究における産学連携協定書」に締結。近未来のモビリティ社会におけるコミュニケーション・プラットフォームや広告・コンテンツの配信手法などについての研究を行っていくこととしている。

■自動運転バスの開発にも尽力

群馬大学は2018年6月、バスの2次架装などを手掛けるケイエムオーと共同で、完全自動運転技術の公共交通機関への導入を検討するための自動運転バス車両を開発したことを発表した。

市販バス車両を改造したもので、全方位カメラやレーザーセンサー、GNSS受信機などを搭載したほか、自動運転に対応させるため、ブレーキやハンドルをコンピューターで操作できる制御用モーターも取り付けている。

車両は自動運転レベル2での運用を想定しており、運転手がブレーキやハンドル操作を行うと、ただちに手動運転に切り替わる仕組みとなっている。

【参考】ケイエムオーとの取り組みについては「産学連携で「レベル2」達成 群馬大、自動運転バス開発の成功発表」も参照。

また、2019年4月には、相鉄グループの相鉄バスとバスの自動運転に必要なシステムの開発や、同システムを活用した実証実験の実施、自動運転による輸送サービスの構築などに係る共同研究契約を締結した。

営業路線を中心に大型バスの自動運転による実証を2019年秋以降継続的に実施する方針で、将来的には自動運転レベル4車両による営業運転を目指すこととしている。

同年9月14日から1カ月間にわたり、よこはま動物園正門と里山ガーデン正面入口の約900メートルの区間で、自動運転レベル2技術を搭載した自動運転バスによる営業運行を行う。

【参考】相鉄バスとの取り組みについては「日本初!大型バスの営業走行で自動運転 無人化の潮流、国内外で」も参照。

■オンデマンドサービスやMaaS関連の取り組みも

群馬大学とNTTデータ、大和自動車交通は2018年9月、東京都江東区豊洲の公道で複数の自動運転車両を用いたオンデマンド移動サービスの実証実験を3日間にわたり実施した。

実証実験では、地域住民に対し3台の自動運転車両を用い、オンデマンド型で3拠点間の移動手段を提供した。自動運転車両の運行に必要な乗客からの配車依頼の受け付けや車両への走行指示、走行中の遠隔監視などを運行管制システムで実現する仕組みだ。

【参考】オンデマンド移動サービスに関する取り組みについては「NTTデータ、自動運転移動サービスの実証実験 豊洲の公道、将来はレベル4目指す」も参照。

MaaS(Mobility as a Service)関連では、国土交通省の新モビリティサービス推進事業に選定された「前橋版MaaS」にも参加している。

鉄道、タクシー、デマンドバス、自転車をはじめ自動運転バスを含む多くの交通モードを統合したMaaSアプリを開発するほか、予約が必要となるタクシーやデマンドバスにはAI配車システムを搭載し、一括経路検索・予約・チケッティング・決済を可能としていく取り組みで、CRANTSやNTTデータ、NTTドコモ、未来シェア、ジョルダン、各交通事業者らにより前橋版MaaS実証委員会を設置して取り組むこととしている。

【参考】新モビリティサービス推進事業については「いざMaaS元年へ!決定した19の先行モデル事業の詳細 自動運転やライドシェアの導入も」も参照。

■【まとめ】産官学連携加速 人材育成、ベンチャー化にも期待

さまざまな立場から自動運転分野の技術革新に取り組む各企業や関係機関が群馬大学に集い、社会実装を目指して共同で開発を進めており、産官学連携が着実に進歩している印象だ。

人材育成を担う大学としての観点からも、最先端の研究開発の現場が目の前にあるのは理想的で、次世代を担うエンジニアや経営者の誕生にも高い期待が持てそうだ。

海外、特に米国では、大学とベンチャー、スタートアップの結びつきが強く、学生特有の先進的なアイデアを生かした新規ビジネスなどが起業しやすい環境も備わっている。ある意味、こうした社会に向けたビジネス化の動きが大学の研究開発力の指標になっているとも言える。

群馬大学発ベンチャーも医療や環境など幅広い分野で育っているようだが、自動運転分野における今後の起業にも注目した。







関連記事