高まり続ける物流需要を背景に、世界的にドライバー不足が深刻化している。その救世主として期待されているのが自動運転技術だ。ADAS(先進運転支援システム)導入による運転負担軽減や隊列走行、自動運転レベル4(高度運転自動化)による無人化で現状を打破し、新しい物流システムの早期構築が求められている。
物流業に変革をもたらす自動運転技術の現状はどのようなものか、自動運転トラックの開発状況を調べてみた。
・2024年8月30日:自動運転トラック事業をやめた企業について記載
・2019年2月6日:記事初稿を公開
記事の目次
■自動運転トラックの利点・メリット
まず自動運転トラックの利点・メリットを説明していく。
ドライバー不足の解消
EC(電子商取引)業者の台頭によりインターネット通販が激増し、輸送需要は増加の一途をたどっている。また、近年は収まりつつあるもののEC業者間の「送料無料」サービス合戦のしわ寄せも物流業界を直撃し、ドライバーを取り巻く環境は悪化するばかりだ。当然ドライバー不足は深刻化・慢性化し、物流業界は変革を迫られている。
その解決策の1つが、自動運転技術を活用した輸送だ。無人運転の導入はドライバー不足の解消に直結する。長距離トラックの場合、多くはレベル3や手動走行併用のレベル4で、例えば高速道路のみ自動運転を可能にするといった形で社会実装が進むものと思われる。
現在実証が進められている後続車無人隊列走行も、先頭を走る1人のドライバーにより大量の輸送が可能となる技術として、早期実現に期待が寄せられている。
安全性の向上
大きく重たいトラックの事故は大事故につながる可能性が高く、安全性の確保が最重要課題となっているが、自動運転技術を導入することで事故の防止や被害拡大を図ることができる。
トラックの自動運転はサイズや重量からより高度な技術を要するため一般乗用車より導入が遅れているが、自動運転レベル2(部分運転自動化)に相当するADAS技術を搭載したトラックの市場化が始まり、事故抑制効果に期待が持たれている。
また、後続車有人隊列走行を実現するため、定速走行・車間距離制御装置(ACC)と車線維持支援装置(LKA)を組み合わせた技術開発・商品化も進んでいるようだ。
配送の効率化
トラックを無人化することで1台当たりの稼働時間を伸ばすことができるほか、走行速度など一定の環境下で運行するため輸送時間も安定する。また、自動運転とともに車両・運行管理システムの導入も飛躍的に進むものと思われ、全体の運行管理計画なども立てやすくなる。
倉庫業の自動化なども組み合わせることで、コストの削減や業務の効率化はいっそう進むものと思われる。
環境面への貢献
事業用トラックの大半はディーゼル車で、排気ガスによるCO2(二酸化炭素)などの排出により一昔前は環境への悪影響が大きく騒がれていた。近年クリーンディーゼルなど低炭素型ディーゼルトラックの比率が高まっているが、自動運転の導入でこれまでより燃費の良い走行が可能になるほか、自動運転と相性の良いEV(電気自動車)が導入されれば、その効果はいっそう高まるものとみられる。
■海外の自動運転トラック開発企業
ボルボ・トラックス:Auroraとプロトタイプを共同開発
ボルボ・グループのボルボ・トラックスはこれまで、ノルウェーの鉱業現場における自動運転トラックの実証や、EVトラックコンセプトカー「Vera(ベラ)」を活用した港湾エリアにおける搬送実証など積極的に進めている。
また、2018年に自動運転開発を手掛ける米Aurora Innovationと提携を交わし、共同開発を進めている。北米向けのハブツーハブアプリケーションに焦点を当てており、2021年9月にAurora Driverを統合したボルボ・トラックスの長距離VNLモデルのプロトタイプを発表している。高速道路における自動運転を実現できるようだ。
▼Volvo Trucks公式サイト
https://www.volvotrucks.com/en-en/
ダイムラー・トラック:自動運転開発に特化した企業を設立
ダイムラーAGのグループ再編により分離・独立し、Daimler Truck AGとして2021年にフランクフルト証券取引所に上場したダイムラー・トラックは、いち早くレベル2のADASを実用化するなど、自動運転関連の開発に積極的な1社だ。
レベル4開発に向けては、2019年に今後数年間で計5億ユーロ(約620億円)を投資する計画を明かしており、欧州や米国、日本を拠点に研究開発を行うスタートアップ「Autonomous Technology Group」を設立したほか、米TORC Roboticsや米Waymoと提携するなど、パートナーシップも拡大している。
▼Daimler Truck AG公式サイト
https://www.daimlertruck.com/en/
ヒュンダイ:レベル3のトラック走行実証試験実施
韓国の現代自動車(ヒュンダイ)も自動運転トラックの開発に力を入れているようだ。自動運転レベル3(条件付き運転自動化)相当の技術を搭載した自動運転トラックの走行実証実験を2018年8月に実施している。最大積載量40トンの大型セミトレーラートラック「Xcient」が実験車両として用いられ、仁川などで40キロメートルを運転手の操作なしで走破したという。
▼ヒュンダイ公式サイト
https://trucknbus.hyundai.com/global/en/
フォード:レベル4のコンセプトモデル発表
米フォードの商用車部門は、自動運転技術を搭載した電動大型トラックのコンセプト「ビジョン」を2018年9月に発表した。自動運転レベル4の技術を搭載するほか、電動化、コネクテッド化、軽量化などに関して同社の将来像を表したものという。
また、2019年1月には、商用バンやピックアップトラックの自動運転共同開発に向け独VWと提携することが報じられている。
▼Ford公式サイト
https://www.ford.com/
TuSimple:ユニオンパシフィック鉄道とアリゾナ州で貨物輸送へ
2015年創業の中国系新興企業TuSimpleは、米アリゾナ州を起点に自動運転が可能な物流網を拡大していく方針を掲げ、長距離自動運転トラックの実用化を進めていく戦略だ。2024年までに米国全体を網羅する予定としている。2021年4月に米ナスダック市場に上場したが、その後、上場廃止となっている。
同社の自動運転システムは、最大1,000メートル離れた場所を検知し、夜間でも物体を特定できるAI・センサーシステムや、毎秒600兆回の情報処理能力を持つコンピュータを備えているという。
2021年末には、運転席無人のトラックで一般道や高速道路計80マイル(約130キロメートル)以上を走行するテストプログラムに成功している。
ロジスティクスプロバイダーのDHLやフリート管理ソリューション開発を手掛けるRyder System、不動産開発のHillwoodなどパートナーシップも拡大しており、2022年2月には、米国最大規模の貨物鉄道ユニオンパシフィック鉄道が最初の顧客となり、アリゾナ州ツーソンとフェニックス間の輸送ルートで貨物輸送を行うことが発表されている。
▼TuSimple公式サイト
https://www.tusimple.com/
【参考】TuSimpleについては「中国系TuSimple、公道で自動運転トラックの「完全無人」運用に成功」も参照。
Plus:米国や中国、欧州でもパイロットプログラム着手へ
2016年設立の中国系スタートアップPlusは、さまざまな車体プラットフォームに統合可能なレベル4ソリューション「PlusDrive」の開発を進めている。
中国では、2018年に中国の青島港で同社初の無人レベル4の実証を行ったのを皮切りに、2021年には3,000キロメートル超の蘇州と敦煌間を往復する長距離実証も行っている。
第一汽車集団と共同開発した自動運転トラック「J7L3」は中国内15万キロメートルの高速道路をすべてカバーしており、すでに2021年に生産を開始しているという。
また、米国ではAmazonと自動運転システムの供給に関する大型契約を締結したことが2021年6月に報道されるなど、事業化に向けた取り組みが加速しているようだ。
欧州でも、CNHインダストリアル傘下のIVECOと共同でパイロットプログラムを実施することを2021年12月に発表しており、世界を股に掛けた取り組みに注目が集まるところだ。
▼Plus公式サイト
https://plus.ai/
【参考】Plusについては「自動運転トラック、中国のスタートアップPlus.aiの驚異の実力」も参照。
Kodiak Robotics:自動運転ソリューションのサブスクも計画
2018年創業の米スタートアップKodiak Roboticsは、自社開発した自動運転システム「Kodiak Driver」で長距離輸送のゲームチェンジに挑んでいる。
運行設計領域(ODD)が限られる社会実装初期において、「自動運転の最大の市場は長距離トラック」と見据え、ミドルマイルとなる高速道路を自動運転化し、ファーストマイルのピックアップとラストマイルの配達を従来通りの手動運転で行う現実路線で開発を進めている。
サブスクリプションサービスも計画しており、自動運転ソフトウェアとハードウェアで構成されるKodiak Driverを1マイルあたりの低額料金で運用するサービスを2025年以降に事業化する予定としている。
▼Kodiak Robotics公式サイト
https://kodiak.ai/
【参考】Kodiak Roboticsについては「ブリヂストンが出資した米Kodiak Robotics、トラック自動運転化の実力」も参照。
Gatik:ウォルマートと無人配送実証に着手
2017年設立の米Gatikは、軽トラックから中型トラックを対象としたミドルマイルの自動運転に焦点を当てた開発を進めている。
米小売大手のウォルマートと提携しており、2021年夏ごろからはアーカンソー州の店舗間約11キロメートルを無人走行する実証も行っている。
2021年4月には、いすゞの北米法人いすゞノースアメリカコーポレーションと自動運転中型トラックの開発に向けパートナーシップを結んだことが報じられている。その後、2024年5月にはいすゞがGatikに対し、3,000万ドル(約47億円)を出資することに合意したことが発表された。
▼Gatik公式サイト
https://gatik.ai/
【参考】Gatikについては「世界初!米Walmart、完全無人の自動運転トラック導入 拠点間配送で」も参照。
Aurora Innovation:乗用車から大型トラックに至るまで自動運転化
タクシー用途など乗用車向けの自動運転開発で話題に上がることが多い米オーロラ・イノベーションも、振り出しは自動運転トラック開発だ。
自動運転システム「Aurora Driver」は大型トラックから乗用車まで広く統合可能で、トヨタをはじめUber、ボルボ・グループ、FedEx、PACCARなど、移動や輸送を担う企業と広くパートナーシップを結んでいる。
2022年2月には、Aurora Driverとフリート管理ツール「Aurora Beacon」、物理的なサービスやメンテナンスなどを提供する「Aurora Shield」を合わせた「Aurora Horizon」や、Aurora Driverをライドシェアサービスに統合する「Aurora Connect」なども発表している。
▼Aurora Innovation公式サイト
https://aurora.tech/
【参考】Aurora Innovationについては「Aurora Innovation、自動運転の年表!トヨタやボルボとの協業も具体化」も参照。
頭角を現すスタートアップが続々登場
このほかにも、例えば中国ではWestwell(2016年設立)、TrunkTech(2017年設立)、FABU Technology(同)、Inceptio Technology(2018年設立)、SENIOR(2020年設立)、Qingtian Truck(2021年設立)など、続々とスタートアップが表舞台に出始めている。
TrunkTechは中国EC大手京東集団傘下のJD Logisticsなどとともに高速道路における自動運転輸送実証を進めており、累計輸送距離は120万キロメートルを突破したという。
自動運転タクシーなどと同様、自動運転トラックもスタートアップが先行して開発を進めている印象で、今後もまだまだ新規参入が相次ぐことになりそうだ。
▼TrunkTech公式サイト
https://www.trunk.tech/
【参考】TrunkTechについては「TrunkTech、中国×自動運転トラックで大本命!?120万キロという累計輸送距離」も参照。
自動運転トラック事業をやめた海外企業
2016年創業のエンバーク・トラックスは2018年2月、西海岸のロサンゼルスから東海岸のジャクソンビルまでの約3,900キロメートルを自動運転トラックで移動するアメリカ横断に成功するなど、精力的に自動運転開発を進めていた。
しかし、Embark Trucksは期待の一社だったが、2023年に全従業員宛にレイオフが告げられ、その後トラック事業を売却したことが報じられている。詳しくは「自動運転トラック開発の米Embark、会社清算か 従業員70%解雇」の記事も参照してほしい。
自動運転タクシーで先行するGoogle系の米ウェイモも、輸送ロジスティクスに焦点を当てた配送向けソリューション「Waymo Via」の開発を進めていたが、自動運転タクシーの事業に注力するため、トラック事業の停止を発表している。
■日本の自動運転トラック開発企業
UDトラックス:2030年までに完全自動運転トラックの量産を目指す
いすゞ自動車グループ傘下となったUDトラックスは、2018年4月に発表した次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)—ビジョン2030」の中で自動運転技術を柱の1つに位置付け、研究開発を進めている。
デジタル化をベースとしたコネクティビティ技術の開発にも力を入れており、2019年時点で国内と一部海外で走行する約5万台のUD車両がコネクテッド化されているという。2025年までに15万台に増加し、運行状況から収集したデータを解析することで、車両の稼働率向上や運行管理、品質・技術革新に役立てていくこととしている。
レベル4関連では、工場の構内や港湾など一定区域における安全な低速自動運転技術の開発をはじめ、高速道路における自動運転やCACC技術を用いたトラックの隊列走行技術などの開発を進めており、2018年12月に大型トラックによるレベル4のデモンストレーションを本社敷地内で実施している。
港湾内や工場構内、物流施設、建設現場などの限定領域を想定したもので、GPS(全地球測位システム)やレーダー、LiDAR(ライダー)、車載カメラ・ソフトウェアなどの自動運転技術を駆使し、発進や停止、Uターン、旋回、バック走行などを高精度で行った。
ロードマップでは、2020年までに特定用途での実用化を行い、2030年までに完全自動運転トラックと大型フル電動トラックの量産化を目指すこととしている。
2021年11月には、神戸製鋼所とレベル4を搭載した大型トラックによる自動運搬技術の実証を行うことを発表した。
大型トラック「クオン」をベースとしたレベル4車両を1台使用し、加古川製鉄所内の運搬コースの一部をルートに2022年下半期を目途に走行実験を行う予定としている。実証を通じ、スマート物流サービスや製造・物流現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を図っていく構えだ。
【参考】神戸製鋼所との取り組みについては「UDトラックス、自動運転レベル4の共同実証実施へ 神戸製鋼所と合意」も参照。
三菱ふそうトラック・バス:ダイムラー・トラックの技術を共有
ダイムラー・トラック傘下の三菱ふそうは、2019年に国内商用車市場初となるレベル2相当のADAS「アクティブ・ドライブ・アシスト」を搭載した大型トラック「スーパーグレート」を発売した。親会社であるダイムラー・トラックとADASや自動運転技術を共有できる点が何よりの強みだ。
自動運転については、社長兼最高経営責任者(CEO)のハートムット・シック氏 が会見の席で「レベル3(条件付き運転自動化)を通り越してレベル4を目指す」ことを公言しており、ダイムラーと協調しながら2025年にも高速道路などに限定した完全自動運転トラックを実用化する意向を示している。
また、2021年4月に開催した自社イベント「デザイン・エッセンシャルズ」では、悪路を走破可能な緊急車両のコンセプトモデルであるモジュールトラック「I.RQ(Intelligent.Rescue Truck)」を発表した。ボディとシャーシの連結部分をモジュール方式とすることで、状況や目的に応じた車両に換装することができるという。
2021年6月には、トヨタグループのウーブン・アルファと自動地図生成プラットフォーム「AMP」を活用した共同研究に着手したと発表している。自社のADAS技術とAMPを組み合わせて商用車の安全性向上を目指す取り組みで、同年内にAMPを利用したカーブ進入時速度超過警報装置の実証に着手するとしている。
日野自動車:トヨタグループでの取り組み加速
トヨタグループのバス・トラック部門を担う日野は、車両安定制御システムや歩行者検知機能付き衝突被害軽減ブレーキなどをすでに実用化しており、現在はドライバー異常時対応システムやCACCなどのトラック隊列走行の技術、車線維持走行支援(LKA:レーンキープアシスト)などの技術開発を進めている。
2018年4月に独フォルクスワーゲン(VW)グループのバス・トラック部門と戦略的協力関係の構築に向けた合意を交わし、既存の内燃パワートレーンやハイブリッド、電動パワートレーンをはじめ、コネクティビティや自動運転システムなどを含む技術領域で協力体制の構築を目指す。
2020年には、建設大手の大林組と大型ダンプトラックによるレベル4実証をダム建設現場で実施した。夜間の建設現場で稼働する搬送ダンプに自動運転車を1台導入し、有人ダンプと自動運転車が混在した交通下における運行への影響や、全車自動運転車とした場合の運用などについて検討を進めた。
2021年6月には、ウーブン・アルファのAMP活用に向けた検討を進めていくことで同社と合意したほか、10月にはスズキ、スバル、ダイハツ、トヨタ、マツダによる次世代車載通信機の技術仕様の共同開発に参画することを発表している。
いすゞ自動車:アメリカでミドルマイル自動運転に挑戦
いすゞは2016年、日野と自動走行・高度運転支援に向けたITS技術の共同開発を行うことに合意し、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットフォーム正着制御の4つの技術を開発していくことを発表した。
一方、2006年から続くトヨタ自動車との資本関係解消を2018年に発表したほか、2019年にはボルボ・グループと商用車分野における戦略的提携に向けた覚書を締結し、自動運転をはじめとしたCASE対応に向け技術的な協力体制を構築するとともにUDトラックスの譲渡に合意した。
ボルボ・グループと20年以上の長期にわたる長期戦略的提携を交わしつつ、2021年3月には日野とトヨタと商用事業でCASE分野における協業を行い、再度トヨタとの資本提携に合意したことを発表している。
業界再編の波に揺れている感を受けるが、見方を変えれば時代に合わせて柔軟に対応しているとも言える。特に自動運転開発においてはパートナーシップが必須の状況となりつつあり、今後の展開に注目が集まるところだ。
自動運転関連では、三菱ふそうや日野と同様、ウーブン・アルファとAMPの活用に向けた検討を進めている。
アメリカにおいては、Gatikとパートナーシップを構築して出資も行い、ミドルマイル自動運転による輸送サービスで派遣を握ることを狙っているようだ。
TRUST SMITH:国内ベンチャーも自動運転トラック開発へ
東大発AIベンチャーのTRUST SMITHも、工場敷地内における自動搬送トラックの開発を進めている。ファクトリーオートメーションを実現するソリューションを中心とした研究開発の中で、自動運転車による工場内の事業自動化を支援する関連会社SMITH&MOTORSを立ち上げ、障害物回避型アームアルゴリズムや自動搬送ロボット、自動搬送トラックの開発などを進めている。
自動運転システム向けのオープンソースソフトウェア「Autoware」を活用する予定で、レーザレーダーやカメラ、GNSSなどの環境センサーを活用し、自車位置や周囲物体を認識しながら倉庫内などで自律走行を実現していくという。
【参考】TRUST SMITHについては「東大AIベンチャー、「完全自動化工場」へ自動運転トラックの開発スタート!」も参照。
■日本における物流と自動運転、実現のロードマップは?
官民ITS構想・ロードマップによると、2020年度に新東名高速道路での後続車無人隊列走行システムを技術的に実現することとしており、2021年2月に新東名高速道路の一部区間で3台の大型トラックが時速80キロメートル、車間距離約9メートルで隊列走行する実証に成功している。
レーダーを用いて前方を走行する車両との車間距離を一定に保つ技術「ACC(Adaptive Cruise Control)」に加え、車車間通信でより精密な車間距離制御を行う「CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control:協調型車間距離維持支援システム)」などが実用化される見込みだ。
実証を積み重ね、2022年度以降に東京大阪間の高速道路における後続車両無人の隊列走行の商業化実現を目指す方針だ。また、これに先立ち、2021年までにより現実的な後続車有人隊列走行システムの商業化を目指し、技術的課題や事業面での課題を総合的に検証し、運用ルールを含め整理が必要となる事項について、2018年度中に官民で具体的な議論が進められている。
自動運転レベル4以上の完全自動運転トラックについては、自家用車における自動運転システムの技術面での進展や、隊列走行トラックの実証実験の成果などを踏まえ、高速道路での完全自動運転トラックの実現を2025年以降に目指す構えだ。
【参考】後続車無人隊列走行の実証については「トラックの後続車無人隊列走行、新東名高速で実現!豊田通商が国の事業として実施」も参照。
■【まとめ】スタートアップによる事業展開がシェア伸ばす
メーカー各社が自動運転開発に力を入れているものの、開発スピードではスタートアップに軍配が上がり、自社開発した自動運転プラットフォームを既存のトラックに統合していく事業展開がしばらくシェアを伸ばしそうだ。
米国ではまもなく本格的な商用化段階を迎え、先行開発勢はすでに量産体制に入っている。一方、日本では隊列走行技術の開発が中心となっているが、高速道路などにおけるレベル4が解禁された場合、海外スタートアップが続々と日本市場に押し寄せ、メーカー各社とパートナーシップを交わす――といった展開も考えられる。
日進月歩で進化を遂げる自動運転業界。今後の動向に引き続き注目だ。
■関連FAQ
トラックが自動運転化されれば運転手不足の解消につながり、輸送コストも低減されていく。トラックに限ったことではないが、安全性の高い自動運転システムが実現すれば、事故率も手動運転より飛躍的に低くなる。
アメリカ企業ではEmbark TrucksやKodiak Robotics、中国系企業ではPlusやTuSimple、カナダ企業ではGatik、日本企業では東大発AIベンチャーのTRUST SMITHなどが挙げられる。
まず高速道路での隊列走行で「後続車無人」を実現するのが第一歩だ。その後、高速道路での自動運転レベル4(高度運転自動化)の実現を2025年以降に目指すロードマップを政府は策定している。詳しくは「官民ITS構想・ロードマップ」を参照。
日本のトラックメーカーも自動運転化に向けて技術開発を進めている。例えば、いすゞ自動車グループ傘下となったUDトラックスは、2030年までに完全自動運転トラックの量産化を目指している。日野自動車はADASの技術開発に注力しているが、トヨタグループの一員として、トヨタ本体との技術のシェアに関しての期待感も高い。
ボルボ・トラックスは自動運転スタートアップの米Aurora Innovationと提携し、まず高速道路での自動運転実用化に向けた取り組みを進めている。ダイムラーはいち早く自動運転レベル2を実現したトラックメーカーとして注目を集めた経緯があり、2019年にレベル4実用化に向けて5億ユーロ(約620億円)を投資する計画を発表している。
(初稿公開日:2019年2月7日/最終更新日:2024年8月30日)
【参考】関連記事としては「自動運転が可能な車種一覧」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)