自動運転、難易度は6つの評価軸で考えよう

公道か私有地、大型か小型、人の移動かモノの移動か





自動運転レベル3の解禁や限定領域における自動運転レベル4の導入が、国内でも2020年に始まろうとしている。自動運転元年がまもなく到来するのだ。







レベル3は一般的に高速道路をはじめとした自動車専用道路において、またレベル4は道の駅を拠点とした一部区間で導入されることが見込まれているが、こうした道路条件や地理的条件はどのような理由から判断されているのか。自動運転にも、実用化しやすい条件としにくい条件があるようだ。

今回は、「社会実装のしやすさ」という観点から、実用化しやすい自動運転の要件についてまとめてみた。

■「非限定領域」よりも「限定領域」の方が難易度が低い

自動運転の第1段階となる自動運転レベル3は、限定された条件のもとでシステムが全ての運転タスクを実施するが、緊急時などシステムからの要請があれば運転者が直ちに操作を行う必要がある「条件付運転自動化」、一方、レベル4は限定された条件のもとでシステムが全ての運転タスクを行い、システムからの要請などに対する応答が不要となる「高度運転自動化」とそれぞれ定義されている。

例えば、レベル3では高速道路などの自動車専用道路で、一定の速度の範囲内において部分自動運転が可能になる。レベル4も同様で、こちらは条件を満たさなくなった場合でも、必ずしもドライバーが操作を行う必要はない。

【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。

こうした自動運転が可能となる各種条件をODD(Operational Design Domain/運行設計領域)という。ODDには、自動車専用道路と一般道の区別や車線数といった道路条件をはじめ、都市部や山間部、仮想的に線引きした地理的境界線(ジオフェンス)などの地理条件、天候や日照状況などの環境条件、速度制限や信号情報などのインフラ協調の有無といったその他の条件などが含まれる。

これらの中で最も表に出やすいのが、道路条件と地理的境界線だ。「自動運転車がどこを走ることができるのか?」という領域を表している。走行可能な道路や地理的範囲を定めることで、その限定領域化のみ自動運転が可能なシステムを構築すればレベル3やレベル4を達成できる。

限定領域には、主に①自動車専用道路(高速道路)②あらかじめ設定した走行ルート③ジオフェンス内――が考えられる。①は、道路環境が一定程度規格化されており、基本的に歩行者などが介在しない環境下において自動運転を成立させればよく、ハードルは比較的低い。

②は、バス路線のようにあらかじめ設定したルートのみを走行するシステムで、該当ルートのマッピングやインフラ協調などと合わせてシステムを構築する。基本的に一般道を走行するため、歩行者や自転車などへの注意も必要だ。

③は、あらかじめ線引きした一定範囲内において自動運転を可能とするシステムで、用途として自動運転タクシーなどが想定される。領域内全てをマッピングする必要があり、走行ルートや環境も複雑化することから、比較的ハードルの高い自動運転システムを要することになる。

こうした限定領域を定めなければ、その自動運転車両はどこでも走行可能なレベル5を達成できることになるが、そのためにはいかなる道路環境においても自動運転を可能とするハイレベルなシステムを構築しなければならない。

難易度が低い「限定領域」での自動運転実現で展開されるサービスは?

最も難易度が低いと思われる自動車専用道路における自動運転サービスでは、後続車両無人によるトラックの隊列走行が挙げられる。「自動車専用道路のみ」を走行するケースが稀であるためレベル4サービスには不向きで、条件付きで自動運転が可能となる自家用車におけるレベル3に向けた用途と考えた方が良さそうだ。

「あらかじめ設定した走行ルート」では、現在実証が進められている道の駅などを拠点とした自動運転サービスが想定される。

中山間地域の道の駅を拠点に、自動運転車両が地域の病院や役所などを巡回する仕組みを構築することで、地域の人流の確保と物流の確保の双方が可能となるほか、観光など地域の活性化にも展開可能なため、実用に向けた実証が鋭意進められている。

また、自動運転バスも基本的に同一路線を走行するため、この部類に入るだろう。

「ジオフェンス内」では、自動運転タクシーが代表格となる。ジオフェンス内における一部の道路のみを走行可能とするシステムなども想定され、実用化においては、安全を確保しやすい限定領域から徐々に対象範囲を広げていく手法が見込まれそうだ。

【参考】道の駅における自動運転サービスについては「いま道の駅が自動運転のサービス拠点として注目を集めている」も参照。

■「公道」よりも「私有地」の方が難易度が低い

自動運転開発の基本は公道を走行可能にすることにあるが、利便性をいち早く享受するため、また実証を重ねるために注目されているのが「私有地」だ。

安全の確保が大前提となるが、私有地においては法律などの縛りが緩く、比較的自由に導入することが可能となる。また、走行するルートの設計や、そのルートや自動運転システムに合わせたインフラなども専用設計することが可能なため、公道に比べ導入が容易となる。

難易度が低い「私有地」での自動運転実現で展開されるサービスは?

私有地における導入事例としては、空港敷地内や大規模商業施設、企業の敷地内、大学構内、観光施設内、テーマパークなどが想定されるほか、ビル内における宅配や施設内におけるパーソナルモビリティなど、さまざまな分野で自動運転技術が生かされる。

【参考】大学構内における実証については「同志社大学構内を「RoboCar」が走行 自動運転技術ベンチャーZMPが開発」も参照。パーソナルモビリティの導入については「自動運転電動車イスの有人走行、WHILLやJALが羽田空港で実証」も参照。

■「自律型」よりも「誘導型」の方が難易度が低い

一般的な自動運転システムは、LiDAR(ライダー)やカメラなどのセンサーによって道路や周辺の設備、歩行者などを検知し、並行してダイナミックマップと突合して自車位置の測定などを進めながらAI(人工知能)がアクセルやブレーキ・ステアリングなど自動車を制御する仕組みがベースとなる。

こうしたシステムを補完する形で開発が進められているのが、磁気マーカーシステムに代表される「誘導型」だ。車両底部に取り付けた磁気センサーモジュール(MIセンサモジュール)が、走行ルートに敷設された磁気マーカーの微弱な磁力から自車位置を高精度に計測し、車両が磁気マーカー上を通過するように舵取り装置を制御する仕組みだ。古くは、LiDARなどのセンサーに頼らない磁気マーカーシステム単体の自動運転システムの開発なども進められていた。

現在は、一般的な自動運転システムの確実性を増すために付加する形で導入が検討されているが、インフラと直接協調したシステムのため正確性が高く、GPSなどの測位システムが機能しない場合でも有効だ。

【参考】磁気マーカーシステムについては「自動運転車、落としどころは電車のような「誘導型」?」も参照。

難易度が低い「誘導型」の自動運転実現で展開されるサービスは?

磁気マーカーシステムは、道の駅や空港など、走行ルートがあらかじめ定められた自動運転システムの開発において積極的に導入が検討されている。また、バス停などにおける正着制御技術としても導入が進められている。

国内では、トヨタグループの特殊鋼メーカー・愛知製鋼が開発を進めており、BRT(バス高速輸送システム)専用道における自動運転バスの実証実験や道の駅における実証などを進めている。

【参考】磁気マーカーシステムの道の駅における実証については「愛知製鋼、北海道の道の駅での自動運転実証に技術協力 「磁気マーカシステム」で」も参照。磁気マーカーシステムの空港における実証については「走行ルートに磁気マーカー埋設!羽田空港で自動運転バス実証 レベル3搭載」も参照。

■「大型」よりも「小型」の方が難易度が低い

自動運転の実現においては、大型サイズよりも小型サイズの方が有利だ。理由は明白で、走行する道路スペースに対する余裕が大きくなることと、万が一事故が発生した際の影響を小さく抑えやすいことだ。

通常の自家用車においても、大柄なボディサイズの車両を運転するのは苦手という方も多い。車幅と道路の幅の差が少なく、またホイールベースなどに左右されるが、小回りも効きにくいため、運転に神経を使うのだ。

これは自動運転車においても同様で、道路上における「あそび」が少なければ少ないほどより緻密で正確な制御を求められることになるのだ。誤解のないように明記しておくが、小さければ誤差が許されるということではなく、道路空間に余裕が生まれることで制御の自由度が増すという意味だ。

また、一般的に車両の大きさと重量は比例するため、大型車ほど制御に要するエネルギー量も多くなる。ブレーキをかけた際の制動距離が長くなるのは何よりのネックだろう。同時に、万が一事故が起きた際の影響も大きいため、開発には慎重を要するのだ。自家用車に比べ、トラックなどの自動運転の導入が一歩遅れているのはこのためだ。

難易度が低い「小型」の自動運転実現で展開されるサービスは?

わかりやすい例としては、1人乗りや2人乗りのパーソナルモビリティが挙げられるが、コンパクトな4~5人乗りサイズの自動運転車も小型の部類に入るだろう。

こうした小型車両の中で開発・実用化に向けた動きが加速しているのが、ヤマハ発動機のゴルフカートを改造したモデルだ。

自動運転開発を手掛けるティアフォーとアイサンテクノロジーが共同で開発したワンマイルモビリティのプロトタイプ初号機「Milee(マイリー)」は、ヤマハ発動機の電動ゴルフカートをベースにした4~5人乗りの自動運転EV(電気自動車)となっている。直近では、NTTドコモとアイサンテクノロジーが愛知県で11月に開催された「愛・地球博記念公園」で実証実験を行った。

一方、ティアフォーは2019年1月開催の「第2回自動運転EXPO」で、マイリーの進化版となる「Postee(ポスティー)」を一般公開している。

1人乗りでは、ロボットベンチャーのZMPが開発した「Robocar Walk」や、電動車イスの自動運転技術などを開発するWHILLの製品などがある。Robocar Walkは、備え付けのタブレットで簡単に行き先を指定するだけで目的地まで安全に自律移動することができる。

■速度は「低速」の方が難易度が低い

言うまでもないことだが、自動運転車は高速よりも低速の方が実現しやすい。低速であればあるほど制御に余裕が生じるためだ。ブレーキをかけた際の制動距離も短く、低速ゆえ危険を察知してから制御するまでの時間的余裕なども生まれやすい。

万が一事故を起こした際も、その影響の大きさは速度に比例するため、低速の方が安全性が高いことも言うまでもないだろう。

難易度が低い「低速」の自動運転実現で展開されるサービスは?

基本的に、私有地で導入される自動運転車は最高時速20キロ程度に抑えたモデルが多い。小型車両の項で登場したマイリーも最高速度は時速19キロに抑えられている。

公道を走行するには遅すぎるかもしれないが、私有地をはじめとした公道以外の走行にはうってつけだ。例えばゴルフ場や公園内、テーマパーク内などの中での移動でも低速の自動運転車は使えそうだ。

■「人の移動」よりも「モノの移動」の方が難易度が低い

自動運転開発の潮流には、人の移動とモノの移動に向けた流れがあるが、実用化しやすさという観点ではやはりモノの移動に軍配が上がる。

人を乗せる場合、人命を預かることから当然その責任は重く、ゆえに法律をはじめとした規制も厳しく敷かれている。

モノを移動する場合、乗用車サイズで公道走行を要する場合は人の移動と基本的な要件は変わらないが、小型タイプで路肩や歩道走行するモデルや敷地内を走行するモデルの場合は、ハードルがぐっと下がる。

特に、ビル内など用途が私有地に限定される場合は、安全配慮義務を全うすれば基本的に導入可能であり、また小型かつ低速のため大事故も起きにくい。

難易度が低い「モノの移動」の自動運転実現で展開されるサービスは?

すでにホテル内における宅配ロボは国内でも実用化が始まっており、清掃ロボや警備ロボといった自動運転ロボットの実用実証も進められている。

宅配ロボに関しては、右肩上がりの需要を背景に導入を図る動きが活発化しており、国も宅配をはじめとした自動走行ロボットの社会実装を目指し、公道実証実験を可能にするためのガイドラインの作成を検討している状況だ。

■【まとめ】「レベル5は一日にして成らず」 一歩ずつ社会実装を進め着実な進化を

ざっくりとまとめると、低速小型で限定された区域を走行する自動運転が実用化しやすく、また人の移動よりもモノの移動の方が規制や安全要件のハードルが低いという結果となった。

当然と言われればそれまでだが、低いハードルから実用化を進め、徐々にそのハードルを上げていくことがロードマップとしても最適で、一つずつ課題を認識し、克服しながらより高い技術開発を進めていくのだ。

レベル5は一日にして成らず。社会実装しやすいところから確実に実証と実用化を進め、進化を続けることが何よりも肝要なのだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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