自動運転開発スタートアップの中国WeRideが2024年10月、米ナスダック市場への上場を果たした。自動運転向けSoC開発を手掛ける中国Horizon Roboticsも香港証券取引所に上場を果たすなど、中国勢の上場ラッシュがついに始まった。
一方、日本国内に目を向けると、自動運転開発スタートアップの上場は未だ噂話の域を脱しない。実用化に向けた勢いの違いが資金調達面からもうかがえるようだ。
中国開発勢の株式上場の動向をまとめてみた。
記事の目次
編集部おすすめサービス<PR> | |
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント) 転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を | |
タクシーアプリなら「GO」(配車アプリ) クーポン超充実!「実質無料」のチャンスも! | |
新車が月5,500円〜!ニコノリ(車のカーリース) 維持費コミコミ!頭金は0円でOK! | |
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり) 「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今! |
編集部おすすめサービス<PR> | |
パソナキャリア | |
転職後の平均年収837〜1,015万円 | |
タクシーアプリ GO | |
クーポンが充実!「乗車無料」のチャンス | |
ニコノリ | |
新車が月5,500円〜!頭金0円でOK! | |
スクエアbang! | |
「最も安い」自動車保険を提案! |
■中国自動運転開発企業の上場動向
WeRideがナスダックに上場、グローバル企業へ前進
WeRideは2024年10月25日、ティッカーシンボル「WRD」でナスダック市場に正式に上場したと発表した。
新規株式公開価格は、米国預託株式(ADS)1株あたり15.5ドルに設定され、計8,90万3,760株を発行する。株式公開による総収益は、同時並行の私募による3億2,000万ドルと合わせ4億5,850万ドル(約700億円)に達すると予想している。
初日は16.55ドルで終了し、時価総額は44億9100万ドル(約6,900億円)となった。同社のトニー・ハーンCEOは「株式公開は新たな始まり。WeRideは技術革新を推進し続け、安全で快適、便利な自動運転製品とサービスをより多くの国と地域に提供していく」とコメントしている。
同社は2017 年設立で、自動運転タクシーを中心にロボバス、ロボバン、ロボスイーパー、ADAS(先進運転支援システム)など幅広い開発を進めている。
現在、中国、UAE、シンガポール、米国の自動運転走行ライセンスを所持しており、7カ国30都市で自動運転の研究開発や実証、運用を行っている。
北京では高速道路を含むエリアでサービス実証許可を取得しており、ロボスイーパーもル無人運転衛生商用プロジェクトに正式導入されたという。
広州では、ロボタクシー・ロボバスに加え、白雲、花都、番禺、黄埔、南沙、海珠の6地区と南沙全域でロボバンによる完全無人の貨物走行を行うことも承認されている。広州国際バイオアイランドで自律型都市貨物輸送の商用パイロットプログラムに着手しており、毎日5万個を超える荷物を輸送しているという。
2024年5月には仏ルノーと提携し、第一弾として2024年の全仏オープン(5月~6月)中にイベント会場と駐車場間を往復する自動運転シャトルサービスを開始する計画を発表した。
2024年6月には、シンガポールで5つ星ホテル群と高級リゾートを結ぶルートでロボバスの運行を開始している。
2024年9月には配車サービス最大手の米Uber Technologiesと提携し、アラブ首長国連邦・アブダビを皮切りにUber プラットフォームにロボタクシーを導入していく計画を発表した。アブダビでは2024年中の導入を予定しているという。なお、提携には米国・中国内での協業は含まれていないとしている。
10月には、Geely系ブランド・ファリゾンオートの「Farizon SuperVan」をベースにした最新世代のロボタクシー「GXR」を発表した。運転席はあるが助手席を排し、快適な乗員スペースを確保したモデルで、世界のロボタクシーの中で最も広い車室空間を誇るという。
中国内をはじめ、積極的に世界展開を推進して印象で、ロボスイーパーの需要も高いようだ。自動運転タクシーサービスのグローバル化を実現する第一人者となるか、今後の動向に引き続き注目したい。
【参考】WeRideについては「中国WeRide、北京で「有料×完全無人」の自動運転タクシー展開へ」も参照。
Horizon Roboticsは香港市場へ
Horizon Roboticsは2024年10月24日、香港証券取引所への上場を果たした。香港市場における今年最大の
公開株価は3.99香港ドル(約78円)で、初日は終値4.1香港ドル(約81円)で取引を終えた。時価総額は69億ドル(約1兆510億円)に達し、単純比較で東京証券取引所に上場した東京メトロ(1兆103億円)を上回った。
2015年設立の同社は自動運転向けのAIチップの開発を手掛けており、独自のソフトウェアとハードウェアの共同設計・統合アプローチに基づいて設計したBPUを武器としている。わかりやすく言えば、米NVIDIAの自動運転セグメントの中国版──といった感じだ。
レベル2ソリューション「Horizon Mono」や高速道路におけるNOA(ナビゲーション・オン・オートパイロット)を可能とする「Horizon Pilot」、フルシナリオにおけるNOAと駐車機能を提供する「Horizon SuperDrive」、自動車グレードに最適化されたスマート運転ソリューション「Horizon Robotics Journey」シリーズなどのソリューションも豊富に展開している。
同社製品はLi Auto がすでに採用済みで、SAIC傘下のRoeweやBYD、GAC系AION、NIO、Cheryなどが協力関係を築いている。同社によると、OEM24 社・31ブランドに採用され、270超の車種に実装されているという。出荷数は2024年6月に600万台を突破した。
自動運転関連では、AptivとWind Riverとパートナーシップを結ぶほか、フォルクスワーゲングループのソフトウェア開発子会社Cariadと合弁CARIZONを立ち上げ、開発を進めている。
【参考】Horizon Roboticsについては「東京メトロの時価総額、中国の「駆け出しの自動運転企業」に負ける」も参照。
Black Sesame も上場、Pony.aiやMinieyeなども近々?
自動運転関連では、Horizon Roboticsと同業でAIチップ開発を進めるBlack Sesameが2024年8月に香港証券取引所に上場を果たしている。
また、自動運転タクシー事業を進めるPony.aiが米国市場、自動運転ソリューション開発を手掛けるMinieye Technologyと自動運転シミュレーション開発を手掛けるBeijing Saimo Technologyが香港証券取引所への上場に向けそれぞれ準備を進めているようだ。
CASE関連に広げると、Geely傘下Lotus Technologyが2024年2月に米ナスダック、同Zeekrが2024年5月に米ニューヨーク証券取引所に上場している。配車サービス大手CaoCaoやON TIME、新興EVメーカーHozon New Energy Automobileも近く香港市場への上場を計画している。
EV関連はNIOやXpeng、Li Autoなどがすでに上場しており、生き残りをかけ株式市場に進出する動きが以前から盛んだが、自動運転分野でも中国勢の上場ラッシュが始まったようだ。
上場意欲は5年ほど前から盛んだったものと思われるが、米国・中国間の経済摩擦を背景に停滞していた。Horizon Roboticsはもともと米国市場へのIPOを予定していたが、2021年に香港市場を目指す計画に変更した。中国政府の働きかけがあったものと思われる。
Pony.aiも2021年に米国市場への上場を検討している旨報じられていたが、計画を凍結した。中国政府が海外上場への規制・監視を強化している真っ只中で、先行してニューヨーク証券取引所に上場したDiDi Chuxing(滴滴出行)はすぐさま政府の調査が入り、上場廃止に追い込まれた経緯がある。
ただ、中国内の経済が停滞していることもあり、政府は市場の規制緩和と監督強化を繰り返すようになる。おそらく、現在は規制緩和のフェーズに入ったものと思われる。
もちろん、それでも監視や規制の目は強く、多くが香港市場に流れている可能性が高い。WeRideのように、グローバル路線を明確に目指す強い信念がないと米国市場への上場は未だ難しいのかもしれない。
■日本の開発勢の動向
上場気配は未だ感じず……
日本国内でも、自動運転に関わる新興勢が次々と誕生している。自動運転開発を担うベンチャーには、ティアフォーを筆頭に、先進モビリティやWHILL、TRUST SMITH、Turing、T2など意欲的な企業がずらりと並ぶ。2024年に入ってからも、金沢大学発ベンチャーとしてムービーズが設立された。
TuringやT2、ムービーズなどは設立からまだ日が浅いため上場フェーズに至らないのは当然かもしれないが、先進モビリティは2014年、ティアフォーは2015年、TRUST SMITHは2019年に設立された。先進モビリティとティアフォーは10年選手なのだ。
しかし、一向に上場の気配が伝わってこない。国内でも自動運転バスの実証が大きく拡大し始めているものの、「商用化」の観点にはまだ至っていないのが現状だ。商用化・量産化の一歩手前のフェーズが見えてこないと、やはり上場には至らないのかもしれない。
ティアフォーは早くからグローバル展開を推し進めており、アメリカのナスダック市場など海外市場での上場を目指す可能性が高そうだ。
ただし日本企業のナスダック上場は直近だと、メディアアーティストの落合陽一氏が代表であり、クルマ椅子の自動運転化技術なども手掛けるピクシーダストテクノロジーズが、上場から1年経たずに上場廃止を申請すると発表しており、上場維持のための潜在的なコストなどを考えると、グローバル展開での売上や利益が付いてこないと悲惨な結果となるケースも考えられる。動向を注視したいところだ。
同社は世界初の自動運転オープンソースソフトウェア「Autoware」の世界展開を進めている。業界標準を目指す国際業界団体「The Autoware Foundation」を2018年に設立しており、Autowareは米国や中国、タイ、イスラエル、エストニアなどで導入・実証実績を有する。2020年には米国拠点TIER IV North Americaも設立した。
なお、国内では、Autowareを活用した同社の自動運行装置「AIパイロット」が2023年10月に大規模物流拠点GLP ALFALINK相模原内の道路でレベル4認可を受けた。
相模原に続き、2024年10月には長野県塩尻市の一般道においてもレベル4認可を取得した。こちらは純粋な一般車道で、塩尻駅と塩尻市役所間を結ぶルートを走行するという。
実用化に向け新たなフェーズに突入したようだ。取り組みが加速して自動運転システムの精度や普遍性が増し、無人運行に要する作業過程・時間を短縮できる段階に達すれば新規エリアへの導入が加速し、量産効果も相まって普及が一気に進むかもしれない。今後の動向に期待したいところだ。
【参考】ティアフォーについては「自動運転エンジニア社長のティアフォー、資金調達で「日本1位」に!2024年1〜6月調査」も参照。
【参考】自動運転スタートアップについては「自動運転ベンチャー、未上場企業一覧(2024年最新版)」も参照。
■海外市場上場のメリット・デメリット
ブランド力向上とより大きな資金調達が可能に
株式上場、特に米国市場への各社の上場に期待を寄せたいところだが、上場にもリスクやデメリットがつきまとう。その一つは維持コストだ。
IPOの際には、審査料や新規上場料などの費用が発生する。日本取引所によると、上場審査料はプライム市場で400万円、新規上場料は1,500万円となっている。
また、上場を維持するためには年間上場料も必要となる。このほか、監査費用や、多くのスタートアップの場合開示書類の作成費用や株式事務代行機関への委託費用なども発生する。
「この程度も支払えないようでは上場企業に値しない」……と言われればそれまでだが、これは国内のケースだ。海外の場合、その国の証券取引ルールに従うためさまざまな手間・費用が発生する。
例えば、最も資金が集まる米国市場への上場を行う場合、基本的にはADR形式となる。ADRは「American Depositary Receipt」の略で、米国で外国企業の株式を流通させるために発行する当該株式の権利を表章する証券を指す。
厳密には純粋な上場とは異なるが、株式と同様に取り引き可能なため事実上は一緒だ。この仕組みにより、米国人投資家は外国株式への投資が容易になる。外国企業としては、投資が盛んな米国人から投資を受ける機会を得ることができるほか、国際的に開かれた米国市場を通じて海外から別の第三国の企業に投資する機会も創出される。国際的な知名度アップも図れるなど、メリットは大きい。
取引量に上場維持コストが見合わないケースも
一方、デメリットも当然ある。米国証券取引委員会(SEC)のルールに従い、米国企業なみのディスクロージャーが求められるほか、維持コストも増大する。
近々では、落合陽一氏が率いるピクシーダストテクノロジーズがナスダック市場からの撤退を表明し、話題となった。同社は日本国内市場をすっ飛ばして2023年8月にナスダックに上場したが、2024 年 10 月、ナスダック市場からの非上場化とSECからの登録解除申請を行うことを決議したと発表した。
上場を維持し米国証券法による報告義務を遵守することによる潜在的コスト及びその他一切の事情を勘案した結果 、 ADR の非上場化を決定したとしている。
実際のコストや労力がどれほどのものかは不明だが、上場メリットを上回るものと判断したことは間違いない。安易にADR上場を目指してはならないことを示す案件と言える。
また、TDKが2009年、日立製作所が2012年、NTTが2017年、キヤノンが2023年にそれぞれニューヨーク証券取引所における上場廃止を申請するなど、大企業の撤退案件も少なくない。
日本の金融・証券市場が国際化し、外国人投資家が日本市場・企業にアクセスするのが容易となったことなどもあり、米国市場における取引が減少していることを要因に挙げている。各社ともブランド力向上などの目的を達成し、その上で上場による追加的なコスト負担を嫌い廃止を決断したようだ。
敬遠ムード漂うSPACは規制強化がダメ押しに?
特別買収目的会社(SPAC)を介して行うSPAC上場も、SECが規制強化を決定した。買収企業の業績予想開示に関する法的責任が明確化されることで、通常IPOに比べ緩かった規制が引き締められた。
SPAC上場は、IPOを目指す新興企業にとっては上場しやすいメリットがある一方、SPAC事業者の報酬や利益相反など不透明な部分が多く、一般投資家の利益を害する懸念があった。
事実、SPAC上場したAurora InnovationやLuminar Technologiesなど、多くの企業の株価は伸び悩んでいる。SPACがどこまで影響しているかは不明だが、一部投資家から敬遠されていることは間違いない。
SPAC上場は2021年を最後にブームが終わっており、規制強化で終焉を迎えることになりそうだ。日本でもSPAC導入に向けた議論が進められているようだが結論には至っていないようだ。
【参考】SPAC上場については「自動運転ベンチャー、日本でのSPAC解禁で「上場ラッシュ」も」も参照。
■【まとめ】まずは実用化に弾みを
グローバル化を望む中国勢にとって米国市場は垂涎の存在かもしれないが、日本勢にとってはかつての魅力は失われつつあるのかもしれない。
兎にも角にもまずは国内における実用化に弾みをつけるのが肝要だ。事業の見通しが立つフェーズが来なければ国内上場もままならない。国内実証は加速し、本格実用化に移行する例も出始めてきたが、事業としてはやっとスタートラインに立ったばかりと言える。さらなる前進に期待したい。
【参考】関連記事としては「自動運転、米国株・日本株の関連銘柄一覧(2024年最新版)」も参照。