自動運転株、一世一代の投資チャンス到来か

低迷銘柄、底打ちからの「一発逆転」も

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自動運転関連4銘柄のチャートを比較=出典:Trading View

世界各地で開発が加速する自動運転技術。本格実用化に向けた機運の高まりとともに近年IPO(新規株式公開)を行う新興企業も多い。

ただ、コロナ禍や米中摩擦、紛争、それに伴う各国の政策などを背景に株式市場が右往左往する場面も少なくない。米国の代表的な株価指数S&P500を見ると、新型コロナの影響で2020年2月ごろに急落した後、約2年間上昇を続け、その後、再び下降トレンドとなっている。

自動運転関連銘柄の多くはコロナ禍に上場を果たしているが、こうした株式市場全体の影響を受け株価は低迷している。

ただ、一部で底打ちを見通す声も出始めている。あくまで仮の話となるが、底打ちした場合、下がりに下がった自動運手関連銘柄は今後大きな上昇トレンドを迎える可能性がある。底値買いにより、大きな投資利益を得るチャンスになるかもしれない。

そこで今回は、代表的な自動運転関連銘柄の大まかな推移と概要を参照し、その有望性に触れていこう。

■Innoviz Technologies(ティッカーシンボル:INVZ)
出典:Trading View

イスラエルLiDAR開発企業Innoviz Technologies(イノヴィズ・テクノロジーズ)は、2021年4月にナスダック市場にSPAC上場した。ティッカーシンボルは「INVZ」だ。

初値11.21ドルでスタートし、その後若干の波はあるものの徐々に値を落とし、現在はおおむね4~5ドル台で推移している。

イノヴィズは早い段階でBMWと契約を交わし、BMWのレベル3車両への自社LiDAR採用を勝ち取っている。その後も、2022年にフォルクスワーゲングループ(VW)のソフトウェア開発子会社CARIADと先行受注額40億ドル(約5,330億円)、総受注額66億ドル(約8,800億円)に上る契約を発表している。VWグループ全体を対象にLiDARを供給する大型契約だ。

2022年9月には、アジア拠点の大手自動車メーカーにもサプライヤーに選ばれたことを発表している。OEM各社はハンズオフを可能とする高度なレベル2やレベル3車両の開発を加速しており、量産車へのLiDAR採用案件は今後も伸び続けるものと思われる。

自動運転車を筆頭に拡大し続けるLiDAR市場の伸びしろはまだまだ残されているようだ。

なお、同社製品はBMWに採用された車載グレードのソリッドステートLiDAR「InnovizOne」をはじめ、次世代低コスト型の「InnovizTwo」や360度の視野を確保した「Innoviz360」などもサンプル出荷段階を迎えているようだ。

▼Innoviz Technologies公式サイト
https://innoviz.tech/

【参考】Innoviz Technologiesについては「LiDARをトヨタへ?Innovizが「アジアの車会社」と大型契約」も参照。

Luminar(ティッカーシンボル:LAZR)
出典:Trading View

LiDAR開発を手掛ける米Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)は2020年12月にナスダック市場にSPAC上場した。ティッカーシンボルは「LAZR」。初値は23.65ドルで、一時40ドル台まで値を上げたが2022年10月時点においては7ドル前後で推移している。

同社は安価かつ高性能なLiDAR製品の開発を目的に、当時高校生だったオースティン・ラッセル氏が2012年に設立した。2017年に事業を本格化し、トヨタグループのTRIやボルボ・カーズ、ダイムラートラックス、インテル子会社のMobileyeなど、数多くのパートナーシップを結んでいる。

特にボルボ・カーズとのパートナーシップは深く、LiDARデータセットの公開やフルスタックの自動運転システムの開発など、共同研究を促進しているようだ。2022年11月発売予定のフラッグシップEV「EX90」にもルミナー製LiDARが搭載される。

2022年も業績は好調で、第2四半期の収益は前年同期比57%増の990万ドルを記録した。通期の収益見通しも4,000万ドルから4,500万ドルに上方修正している。

▼Luminar Technologies公式サイト
https://www.luminartech.com/

【参考】Luminar Technologiesについては「サービス売上が139%増!自動運転向けLiDAR開発の米Luminar」も参照。

Aurora Innovation(ティッカーシンボル:AUR)
出典:Trading View

自動運転開発を手掛ける米Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、2021年11月にティッカーシンボル「AUR」でナスダック市場にSPAC上場した。初値は11.25ドルで、一時17ドル台まで上昇したがその後は緩やかに下降し、現在は2ドル台で推移している。

2016年設立のオーロラは、自動運転システム「Aurora Driver」を武器に事業展開を進めている。当初は自動運転トラックを軸としていたが、自動運転タクシーなどを見据え乗用車へのAurora Driver統合も加速している。

これまでに、フォルクスワーゲングループやFCA、ボルボ・グループ、トヨタ、FedExなどとパートナーシップを交わし、開発を進めている。トヨタとの提携では、デンソーを交えトヨタ「シエナ」にAurora Driverを統合し、2021年末までに自動運転シエナのフリートを構築して実証を開始する予定としている。

Aurora Driverは現在バージョン3.0に達しており、2023年第1四半期の終わりまでに機能が完全になる予定という。

なお、オーロラに関しては、一部メディアが2022年9月に同社が身売りや株式の非公開化、分社化などを検討していたと報じている。この件についてオーロラは声明を出しておらず真偽は不明だが、株価低迷による資金面の問題が背景となっている可能性がありそうだ。

ただ、オーロラに限らず多くの自動運転開発企業の事業が本格化するのはもう少し先だ。また、仮に事業を売却することになっても、オーロラクラスであれば買い叩かれるようなことにはまずならず、既存株主の利益も一定以上担保されるはずだ。

1株2ドルという格安の現在値が、オーロラのポテンシャルを正確に反映しているか――といった観点から考慮すると、投資対象としてはなかなか魅力的ではないだろうか。

▼Aurora Innovation公式サイト
https://aurora.tech/

【参考】Aurora Innovationについては「自動運転業界のスター技術者、Appleへの「身売り」検討」も参照。

■TuSimple(ティッカーシンボル:TSP)
出典:Trading View

自動運転トラックの開発を手掛ける米TuSimpleは、2021年4月にティッカーシンボル「TSP」でナスダック市場に上場を果たしている。初値は40.25ドルで、2021年6月に70ドル台まで高騰したものの現在は6~7ドルあたりで推移している。

同社は2015年に創業し、米国・中国を拠点に自動運転トラックの実装を加速している。米国では、自動運転可能な高速道路網をアリゾナ州・テキサス州を起点に徐々に拡大し、大陸を網羅する「TuSimple Autonomous Freight Network(AFN)」の構築を進めている。

パートナー企業には、米トラックメーカーのNAVISTARやフォルクスワーゲングループのTRATON、SCANIA、情報通信系のAT&TやVERIZON、NVIDIA、AWSなどが名を連ねている。

2021年12月には、米アリゾナ州のツーソンとフェニックスを結ぶ高速道路で完全無人オペレーションに成功するなど、レベル4技術は実用化域に達しているようだ。

ロイター通信の2022年3月の報道によると、同社は米国事業に集中するため中国事業の売却を検討しているという。公式発表は出されていないが、近年の米中摩擦などを考慮すると信ぴょう性はありそうだ。

▼TuSimple公式サイト
https://www.tusimple.com/

【参考】TuSimpleについては「中国系TuSimple、公道で自動運転トラックの「完全無人」運用に成功」も参照。

■【番外編】Mobileye(ティッカーシンボル予定:MBLY)
モービルアイのアムノン・シャシュアCEO=出典:インテル

インテル傘下のイスラエル企業Mobileye(モービルアイ)も近く再上場を行う見込みのため、番外編として紹介しておく。同社は2014年8月にニューヨーク市場に上場し、その後インテルによる買収で2017年9月に上場廃止している。なお、当時の初値は36ドルで、上場廃止時には62.67ドル、時価総額139億ドルを記録している。

同社は1999年創業で、独自のコンピュータービジョン技術に基づくADASソリューションやシステムオンチップ(SoC)でシェアを拡大してきた。インテル傘下となった後も順調に業績を伸ばすとともに自動運転開発を加速し、レベル2++と位置付けるADAS「Mobileye SuperVision」やレベル4を実現する「Mobileye Drive」などの実用化を推し進めている。

自動運転サービスの展開に向けては、MaaSプラットフォーマーMoovitの買収をはじめ、Al Habtoor Group(アラブ首長国連邦)やRATP(パリ交通公団/仏)、WILLER(日本)、Udelv(米)など世界各地の企業とパートナーシップを結んでいる。現地の各企業との協力のもと、サービスを実装していく方針だ。

再上場に関しては、インテルが2021年12月、ナスダック市場に上場する計画を発表している。その後、202年10月にクラスA普通株式のIPOを申請したことを正式発表しており、ティッカーシンボルは「MBLY」となる予定だ。

企業価値は300億ドルとも500億ドルとも言われている。上場時期は未定だが、2022年末から2023年初頭ごろになるものと予測される。米国でも最大規模のIPO案件で、業界を超え広く投資家の注目を集めることになりそうだ。

▼Mobileye公式サイト
https://www.mobileye.com/

【参考】モービルアイについては「業界最大4兆円IPOへ!Intel傘下Mobileyeの自動運転事業を徹底解剖」も参照。

■【まとめ】自動運転市場にはまだまだ多くの資金が流れ込む

政策金利や紛争の動向などに注視が必要だが、自動運転関連銘柄の多くにお買い得感が生まれているのは確かだ。今後本格化するであろう自動運転市場の将来性と、遅かれ早かれ底打ちする株価市場を天秤にかけると、今が買い時かもしれない。

また、IPOのタイミングを慎重に見定めている有力スタートアップも多い。右肩上がりの成長が予測される自動運転市場には、まだまだ多くの資金が流れ込んでくることになる。潮流をしっかり捉え、効果的なタイミングで投資判断を行いたいものだ。

※編注:この記事は特定の株式銘柄への投資を推奨するものではありません。

【参考】関連記事としては「自動運転銘柄、米国株・日本株一覧(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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