自動運転車の解禁、世界で加速!米当局、ハンドルなし車両を認可へ

ジョイスティックやデュアルモードタイプも視野



米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2022年3月、連邦自動車安全基準(FMVSS)の改訂を見据え、ハンドルやアクセルペダルなどの手動制御装置を備えない自動運転車を対象とした乗員保護安全基準に関する最終規則を公表した。







従来の自動車と仕様が異なる自動運転車の広範な実用化を見据えた規則改訂だ。日本でも2022年、レベル4の実用化を可能にする改正道路交通法の審議が行われる見通しで、付随して道路運送車両法などの見直しも進められていく可能性が高い。

米国や日本をはじめ、世界的に自動運転認可に向けたルール改正の動きが顕著となり始めているのだ。この記事では、NHTSAの発表内容とともに近い将来主流となるだろう自動運転車の動向に迫っていく。

■NHTSAの発表内容

NHTSAの発表によると、これまでの乗員保護に関する安全基準は、ハンドルなどの手動制御装置を含む一般的な車両機能を前提としていた。この対象に、新たに自動運転システム(ADS)を搭載した革新的な車両も加え、従来の乗用車と同レベルの乗員保護を求めることとしている。

ADSについては、「動的な動作全体を行うことができるハードウェアとソフトウェアの集合体」と定義しており、特定の運行設計領域(ODD)に限定されるかどうかにかかわらず、持続的に運転タスクを行うとしている。

ピート・ブティジェッジ運輸長官は声明で「2020年代を通じ、ADSや先進運転支援システム(ADAS)と安全基準が歩調を合わせるようにすることが運輸省の使命だ。新しいルールは重要なステップであり、ADS搭載車両の堅牢な安全基準を確立する」と述べている。

今回公表した最終規則では、従来設計の車両で使用されていたステアリングホイール(ハンドル)などについて、不必要な用語を避けながら明確化するなど、既存の規制をできるだけ維持しながらADS搭載車も対応可能な修正を図っているようだ。

ジョイスティックタイプの設計や、手動制御装置とADSの両方を備えたデュアルモードADS搭載車両などにも言及しているほか、運転席や助手席の在り方などにも触れている。

また、手動のステアリング装置を非搭載化することによるコスト減にも触れており、安全装置強化による増額分と相殺しても1台あたり約995ドルを節約できると見積もっている。

■新設計の自動運転車
実証車両の大半は量産車ベース

自動運転開発における実証車両の大半は既存の自家用車などを改造したもので、基本的にハンドルなどの手動制御装置もそのまま備えている。初期の実証では、有事に備えセーフティドライバーがすぐにハンドルを握り手動制御できるよう構えている。

こうしたデュアルシステムは、自家用車向けの自動運転技術にそのまま転用できる。手動運転と自動運転を両立させるタイプだ。

徐々に新設計車両が台頭
出典:Waymo公式ブログ

一方、自動運転タクシーやシャトルなどの移動サービスや輸送サービスにおいては、ドライバーレスの仕組みが重要となる。ドライバー不在でサービスを提供することが目標であり、大前提だからだ。

こうしたサービス向けの自動運転車両においては、従来の手動制御装置はコスト増と車内スペースを占領する邪魔者でしかない。有事の際のフェールセーフとして使用できなくもないが、可能な限り車内から手動制御装置を省きたいというのが本音となる。

今のところ自動運転タクシーの実用化モデルはほぼ全てが量産車をベースに改造したものとなっているが、近い将来手動制御装置のないオリジナル車両が登場する可能性も十分考えられる。

自動運転タクシーサービスで先行する米Waymoは2021年12月、吉利汽車やボルボ・カーズを傘下に置く中国の浙江吉利控股集団(Geely)とのOEMコラボレーションにおいて、特別設計したライドシェア専用EV(電気自動車)に自動運転システムを統合すると発表した。この専用車両はハンドルやペダル類などを備えていないが、米国の連邦車両基準と一致するレベルの安全性を確保しているという。

こうした新設計の車両が今後自動運転タクシーなどのサービスにどんどん導入されていくことになるのだろう。

【参考】Waymoなどの取り組みについては「自動運転車、「ハンドルがない」のにデザインはほぼ変わらず?」も参照。

手動制御装置のないシャトルがすでに実用化
出典:NAVYA公式サイト

実用化が進む小型の自動運転バス・シャトルは、すでにオリジナルモデルが数多く登場しており、手動制御装置非搭載のものも多い。仏NAVYAのARMAなどが代表例だ。自動運転システムを補完可能なジョイスティックや遠隔操作システムなどを手動制御装置の代わりに搭載し、自由度の高い車内空間を確保している。

こうしたモデルが主流となる見込みで、トヨタの「e-Palette(イーパレット)」やGM Cruiseの「Origin(オリジン)」などもボックス型の車内に手動制御装置を備えず、サービス提供に向け空間を有効活用している印象だ。

なお、Cruiseは2022年2月、Originによる商用サービスを可能にするための承認を求める請願書をNHTSAに提出したことを発表している。請願書は、Originが既存の規格の安全目標をどのように達成するかを示しており、新たな自動運転規制に資するものとしている。

【参考】自動運転バス・シャトルについては「自動運転バス・シャトルの車種一覧(2022年最新版)」も参照。

■【まとめ】新規格車両認可で開発も加速

自動運転シャトルはもちろん、自動運転タクシーなどにおいても徐々に自家用車タイプのものから新設計タイプへの移行が徐々に始まるようだ。

ハンドルのない新規格車両に対する安全基準が国際標準化すれば、開発企業の取り組みも大きく加速し、世界を股に掛けた自動運転サービス競争が過熱する。合わせて、各国の道路交通法などの規制も刷新されるものと思われる。今後の各国の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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