2050年に経済効果7兆ドル!「ドル箱市場」に挑む知られざる自動運転ベンチャーたち

海外企業13社をピックアップ





自動車メーカーをはじめ、非常に多彩なメンバーが顔を連ねる自動運転業界。大学やテクノロジー企業などからスピンアウト・スピンオフしたスタートアップの参入も旺盛で、大きな脚光を浴びてユニコーン化する企業も少なくない。







新型コロナウイルスの影響が経済に影響を与える中でも、自動運転分野では人材採用を積極的に進めるベンチャー企業やユニコーン企業も多く、攻勢を続けている印象だ。

米インテルは過去に調査会社とともに、自動運転が生み出す経済効果が2050年には7兆ドル規模に拡大するという試算を発表している。将来は「ドル箱市場」となる自動運転市場においてはすでにメジャーな存在となったベンチャー企業も多いが、裾野は広く、高度な技術に比してまだまだ日本では知名度が低い海外のベンチャー企業も数多く存在する。

今回は自動運転ラボでも未掲載の海外スタートアップ・ベンチャーを中心に、今後自動運転領域で急成長が見込まれる企業を紹介していこう。

■Echodyne(米国):低価格で高性能なレーダーパフォーマンスを実現へ

コンパクトなソリッドステートビームステアリングレーダーセンサーの製造・開発を手掛ける米ベンチャー。特許取得済みのMESAテクノロジーとインテリジェントなソフトウェアを組み合わせ、低価格で高性能なレーダーパフォーマンスを実現するとしている。

航空領域での取り組みが目立つが自動運転領域も視野に入れており、自動運転車向けのコグニティブレーダーセンサー「EchoDrive」は、方位角と高度で高い空間分解能を提供し、全天候型の全環境センサーとしてあらゆる運転シーンに適応可能という。

これまでに二つの資金調達ラウンドで7000万ドル(約76億円)を調達しており、投資家の中にはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も名を連ねている。

■DataRobot(米国):機械学習自動化プラットフォームを開発

機械学習自動化プラットフォームの開発を手掛けるベンチャー企業。時系列機械学習プラットフォーム開発のNutonianや自動機械学習スタートアップNexosis、データコラボレーション・プラットフォームのCursor、MLOpsのパイオニアParallelMを次々と買収し、機械学習の実用化・運用の分野においてリーディングカンパニーを目指している。

データサイエンス需要の高まりなどを受け幅広い分野への応用に高い期待が寄せられており、今後、自動運転分野への導入にも注目が集まるところだ。

■Quanergy Systems(米国):ダイムラーやサムスンが株主の3D-LiDAR企業

ソリッドステート式3D-LiDARを開発する2012年設立のベンチャー企業。2018年の資金調達シリーズCラウンドで、20億ドル(約2250億円)を超える資金を確保し話題となった。投資家には、独ダイムラーや韓国のサムスン、デルファイなどが名を連ねている。

複数のアイセーフレーザービームと飛行時間計測技術を使用したLiDARセンサー「Mシリーズ」は、最大200メートルの範囲をカバーし、視野率は水平360度、垂直20度を誇る。

LiDARを活用したプラットフォーム開発にも力を入れており、2020年4月には、新型コロナウイルス対策の一環として社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)を把握するソリューションをサポートする「Flow Managementプラットフォーム」の拡張を発表している。

リアルタイムで人の流れを匿名かつ正確に追跡・分析するソリューションで、体温の高い人を特定して追跡できるようサーマルカメラとの統合も可能にしているという。

■Parallel Domain(米国):画像生成APIを開発

画像生成APIの開発などを手掛ける2017年設立のベンチャー企業。同社のAPIを使用することで、機械学習アルゴリズムをトレーニング・テストするためのデータを迅速に生成することが可能になる。

同社の画像生成APIは、さまざまなパラメーターを備えた非常にリアルな合成データセットを迅速にレンダリングすることを可能にする。ラベル付けされたデータをほぼ瞬時に取得し、データの取得と注釈のプロセスを桁違いに高速化する。センサー構成を変更する必要がある場合は、APIへの引数を変更し、再度レンダリングするだけという。

■Phantom Intelligence(カナダ):LiDARの知覚能力や信頼性を強化

低価格帯のLiDAR開発を手掛ける2011年設立のベンチャー企業。多層化されたデジタル信号処理や独自のインテリジェンスアルゴリズムにより、エッジでより多くの処理を可能にしつつ複数のLiDARアーキテクチャに適合可能な製品を開発している。

2019年6月に発表した軽量コンパクトなフラッシュLiDAR「Guardian」は、78×37×48ミリの小型ボディで40メートルの範囲、25×1.5度の水平×垂直視野(FoV)を実現し、レーザーフラッシュからの反射光エコーをデジタル化し、バックグラウンドノイズをフィルターで除去する独自テクノロジーなどでセンサーの知覚能力や信頼性を強化しているという。

このほか、100×48×74ミリのボディで200メートル先を計測可能な「Sentinel」などもラインアップしている。

■Plus.ai(智加科技)(米・中国):自動運転トラックで米大陸横断

2016年に設立された自動運転トラックの開発を手掛けるベンチャー企業。シリコンバレーに本社を構えるほか、中国にR&D拠点を設け、次世代の商用貨物輸送ソリューションの構築を目指している。

レーダー、LiDAR、カメラなどのセンシング技術により車両の周囲360度を検知し、フュージョンベースの知覚システムによって1600メートル先の車両も検知できるという。

2019年12月には、自動運転レベル4トラックでカリフォルニア州からペンシルバニア州まで約4500キロに及ぶ大陸横断を3日未満で完了したことを発表している。2020年末までに米国内すべての州をカバーする試験プログラムを開始するとしている。

■Haylion Technologies(中国):VWグループと自動運転EVバスの共同研究

自動運転EVバスの開発を手掛ける2016年設立のベンチャー企業で、中国の深センに本社を構えている。2017年12月に巴士集団と共同で自動運転バス「AlphaBa」の公道走行試験に着手したほか、独フォルクスワーゲングループのスウェーデン・スカニアと2018年2月に自動運転EVバスの共同研究で合意している。

自動運転技術とスマート公共交通システムを活用したシステムの構築を進めており、2020年3月には、Qingdao BusとShenzhen Urban Data Technologyと3社で都市のスマート輸送協力プロジェクトに関する3つの協力協定に調印し、ビッグデータや自動運転、スマート交通の社会実装に向け研究開発を進めていくこととしている。

■Singulato Motors(中国):創業者は日本に馴染みがある沈海寅氏

EV開発などを手掛ける2014年設立のベンチャー企業。2016年に最初のモデルとなるSUVを発表後、2018年には量産体制を整えている。

創業者の沈海寅(シェン・ハイイン)氏は検索サービスのJWordやKINGSOFTの設立など日本を拠点に活躍していた経歴を持つ人物で日本になじみがあり、2019年にトヨタとEV技術の提供で手を組んだほか、オンキヨーともAI向け音声の取得技術で技術提携を交わしている。

また、フェアレディZやスカイラインのサスペンションを設計するなどシャーシメカニズムに精通したエンジニアの宇野高明氏をCTO(最高技術責任者)に迎えるなど、日本との結びつきを強めている印象を受ける。

NVIDIAとも提携しており、今後の自動運転技術の開発にも注目の一社だ。

■FiveAI(イギリス):ロンドンなど英国各地で実証

イギリスのブリストルに本拠を置く自動運転ソフトウェアの開発を手掛けるベンチャー企業。モジュール式のクラウドベースのプラットフォームの構築や高度なオンラインコンポーネントの開発などを進めており、現在ロンドンなど英国各地で実証を重ねているようだ。

英政府が主導する自動運転開発に向けた共同プロジェクト「StreetWise」でも活躍しており、2018年には英国内で走行する自動運転車を対象とした安全認証に関わる枠組みなども発表している。

■Automotive Artificial Intelligence(ドイツ):仮想環境での検証ソフトを開発

ベルリンに本拠地を構え、仮想環境で自動運転アルゴリズムを効率的に検証するシミュレーションソフトウェア開発に取り組む2017年設立のベンチャー企業。

インテリジェントトラフィックモジュールと高忠実度センサーシミュレーションによって最新の仮想シナリオや耐久性テストなどを可能にする「AAIReplicaЯ」をはじめ、インテリジェントトラフィックシミュレーションやセンサーシミュレーションなどさまざまなソリューションを展開している。

開発パートナーには、独アウディやコンチネンタル、中国のNavInfoなどが名を連ねており、コンチネンタルはAAIとの協業により「自動車市場向けの仮想シミュレーションツールの分野におけるパイオニアとしての地位を確立した」と発表している。

■Uniti(スウェーデン):スウェーデン・ルンド大学発のスタートアップ

スウェーデン・ルンド大学のオープンイノベーション研究プロジェクトから2015年に設立されたEV開発スタートアップ。3人乗りの低価格帯コンパクトEV「Uniti One」をすでに製品化している。

2017年のUniti One発表時、米NVIDIAのNVIDIA DRIVE PXなど自動運転に対応したソリューションを搭載したことで話題になった。現在の実車にはMobileyeの衝突回避システムへのオプションアップグレードなどが明記されており、高度な車両や歩行者、車線検出などが可能になるようだ。

より高速なネットワークや接続されたインフラストラクチャー、IoTデバイスなど、今後10年間で拡大するシステムに対応できるよう開発されており、同車両を活用した自動運転開発などが進む可能性もありそうだ。

■WayRay(スイス):AR技術を活用したヘッドアップディスプレイ

自動車向けのホログラフィックAR(拡張現実)テクノロジー開発を手掛ける2012年設立のベンチャー企業。AR技術を活用したヘッドアップディスプレイなどを製品化している。

仮想オブジェクトをリアルタイムでレンダリングするソフトウェアプラットフォームであるARレンダリングエンジンを使用し、ホログラフィック光学素子を介して道路にデジタルデータを投影する技術開発などを進めている。

2018年に独ポルシェ主導のもと8000万ドル(約86億円)のシリーズCラウンドを終了し、研究開発や生産ラインを強化すると発表している。CES2019では、韓国の現代(ヒュンダイ)の高級セダンに組み込んだホログラフィックARディスプレイを展示した。

フルカラーで表示可能な次世代ディスプレイは、自動運転や新たなインフォテインメントシステムなどで大きな飛躍を遂げそうだ。

■AImotive(ハンガリー):AIを活用した自動運転ソフトウェアなど開発

AIを活用した自動運転ソフトウェアやエンドツーエンドのシミュレーションツール開発などを手掛ける2015年設立のベンチャー企業。自動運転開発に向けたシミュレーションを加速する「aiDrive」や「aiSim」、「aiWare」といったソリューションを製品化しており、本拠のブダペストのほか米国や日本にも拠点を構えている。

2019年11月には、オランダのHERE Technologies、英Vodafoneとともに自動バレーパーキングソリューションを開発したと発表した。また、2020年4月には、aiSimシミュレーターが世界初のISO26262認定を受けることも発表している。

■【まとめ】スタートアップの新規参入なお加速

米国、中国を筆頭に各国でベンチャー企業が乱立しており、掲載企業の絞り込みに思いのほか頭を悩ませられた。業界通の方であればすでにおなじみの企業をはじめ、日本ではほぼ知られていないものと思われる企業までラインアップしたつもりだ。

ベンチャー企業の設立は今なお加速している。水面下でひっそりと研究開発を進めている企業も多く、数年後に一気に頭角を現す企業も相当数出てくることが予想される。業界の地図は毎年大幅に更新されることになるが、それは新たな技術やサービスが世に送り出されたことの証左と言える。

盛者必衰とならぬよう、第一線で活躍している企業も研さんを重ね、業界をいっそう盛り上げてほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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