VW(フォルクスワーゲン)「We」のMaaS事業解説&まとめ

WeShareやWeExperienceなどサービス多角化





出典:VWプレスキット

欧州自動車メーカーの雄、フォルクスワーゲン(VW)グループがモビリティサービスへの参入を加速させている。2019年6月にはカーシェアリング事業に本格参入し、世界展開を図っていく構えだ。

このほかにもさまざまなシェアサービスや付帯サービスの実用化を進めており、さまざまなモバイルオンラインサービスを取りまとめる「Volkswagen We」の機能やサービスが徐々に強化されている。







こうした動きはMaaS(Mobility as a Service)構築を見据えた事業展開であり、移動のサービス化や付帯サービスへのシフトが大きく感じられる。

今回は、同社の「We」をはじめ、新たなモビリティサービスや移動サービス分野への取り組みについてまとめてみた。

■Volkswagen Weとは?

「Volkswagen We」は、コネクテッドサービスやスマートフォンアプリなどの個々のサービスを統括するデジタルプラットフォームで、2017年開催のフランクフルトモーターショーで発表された。ユーザーが所有する車両をはじめ、それ以外のすべての利用可能なデジタルサービスを統合するシステムだ。

サービス面では、テレマティクス機能を備えたモバイルオンラインサービス「Volkswagen Car-Net」や、「WeDeliver」「WePark」といったアプリが同一のプラットフォームにまとめられ、一つのユーザーIDで利用や管理を可能にする。

VWグループは2025年までにデジタル化分野に35億ユーロ(約4200億円)を投資し、モノのインターネットの中心的なハブを構築する計画を打ち出している。また、2019年6月には新たなソフトウェア部門「Car.Software」の設立を発表し、2025年までに5000人規模のエンジニアを配置し、開発体制の集約を図っていくこととしている。

ソフトウェア開発の内製率を大幅に引き上げ、将来的にはすべての基本機能を備えた統一ソフトウェアプラットフォームをグループの全車両用に開発する方針で、車両オペレーティングシステム(OS)「vw.OS」と、「Volkswagen Automotive Cloud(フォルクスワーゲンオートモーティブ クラウド)」の構築を進めている。

同社は、こういったソフトウェアと関連サービスが将来の自動車産業の差別化に大きく貢献するとし、2020年以降のIDモデルに新たな車両ITアーキテクチャを搭載し、統合プログラミング言語によってソフトウェアが1つのソースから提供されるシンプルなシステムを構築していくこととしている。

メーカー固有のソフトウェアで実行される不特定多数の制御ユニットを不要とすることでハードウェアをソフトウェアから分離することが可能になり、継続的な更新やアップグレードが容易になるという。

こうしたデジタル化分野の進化をコネクテッド領域で支えるのがVolkswagen Weだ。プラットフォームを統一することでユーザビリティを向上させるとともに、MaaSを構築するシェアリングサービスやモビリティサービスとの接続性や連携も向上させることが可能になる。

これまでに、クルマのトランクを宅配の配達先に指定することができるサービス「WeDeliver」や、空き駐車場の検索や駐車料金の支払いが可能な「WePark」、充電ステーションを検索できる「WeCharge」などを提供しているほか、2019年には周辺の店舗情報などを閲覧できる「WeExperience」やカーシェアリングサービス「WeShare」なども展開している。

同社は2020年にVW乗用車ブランドのすべての新車をネットに接続可能なコネクテッドカーにする方針も発表しており、デジタル化の促進に合わせて自家用車、移動サービスなどさまざまなサービスを本格展開していく構えだ。

■WeShare:EVを活用したカーシェアリングサービス

「WeShare」は、EVを活用したカーシェアリングサービスで、2019年6月にドイツの首都・ベルリンで開始した。

サービスにはEV「e-Golf(e-ゴルフ)」1500台を投入し、貸出ステーションを設けない「フリーフロート型」で運営する。

当面は、ベルリン市内中心部からSバーンという市内を走る環状線の範囲を少し越えた約150平方キロメートルのエリアを範囲とし、その後、車両台数の拡大に合わせて拡大していく予定という。

サービスを利用するには、スマートフォンとクレジットカードを所有するほか、年齢21歳以上、運転免許証取得後少なくとも1年間経過、そしてドイツで住民登録をしている必要がある。利用料金は1分間当たり19セント(約23円)で、登録料は無料。24時間利用は39ユーロ(約4700円)となっている。

車両の充電は、パートナーシップ契約を締結したスーパーマーケットのリドル(Lidl)とカウフランド(Kaufland)の70の店舗に新設される充電ステーションをはじめ、ベルリン市内の一般用充電ネットワークを使用する。

運用開始当初は、バッテリー残量が少なくなった車両は「WeShare」サービスの従業員が回収し、適時充電する。将来的には、ユーザー自身が充電するとインセンティブを受け取れる仕組みを設ける方針という。

2020年には、コンパクトカー「up!」のEVバージョン「e-up! (e-アップ!)」500台をはじめ、新規発売する「ID.3(アイディ.3)」を追加する予定で、シュコダやプラハ、ハンブルグへ拡大していくほか、欧州の主要市場や北米の一部都市に参入していく予定としている。全車両をEVとするコンセプトと、We ParkやWe Experience などVolkswagen Weで提供している各種サービスの利便性を武器に世界展開を図っていく構えだ。

同社によると、ドイツにおけるカーシェアリングのユーザー登録数は、2010年に約18万人だったが、2019年には約14倍の246万人に増加しており、引き続き拡大傾向にあるという。

■WeExperience:車両周辺の店舗情報などを知らせるサービス

「WeExperience」は、車両周辺の店舗情報などを知らせるサービスで、2019年5月にVolkswagen Weに追加された。

スマートフォンにアプリ「We Connect Go」をダウンロードし、クルマのコネクテッド機能と合わせることで利用できる。車両の位置情報や時刻をもとに、ユーザーの嗜好に適した周辺の店舗情報などを勧めるほか、クーポンの発行機能などもあるようだ。

現在はドイツとスペインで利用可能で、エネルギー関連事業を手掛けるシェルやドミノピザ、カークリーニングサービスを手掛けるMyCleaner、宿泊事業を手掛けるB&Bホテルなどが提携・協力し、サービスの恒常を図っている。

■WePark:スマホでキャッシュレス決済が可能な駐車サービス

「We Park」は、スマートフォンを利用することによってキャッシュレスで駐車サービスを受けることができるサービス。2017年のベルリンを皮切りに、現在ドイツ国内の134都市で利用できるようだ。

スマートフォンアプリでは、現在地付近の駐車場や駐車料金を表示できるほか、ドライバーが駐車場を利用する際、アプリを操作することで自動的に課金がスタートし、利用後に退出すると自動的に精算され、登録したクレジットカードなどから引き落とされる仕組みだ。いわば、スマートフォンがパーキングメーターになるイメージだ。

■VWグループのその他の移動サービス:「MOIA」

VWグループは2016年12月、都市部に住む人々の移動の在り方を再定義する目的で新会社MOIAを設立し、オンデマンドモビリティサービスに本格着手した。2017年には、ライドシェアサービスに最適化した6人乗りのオリジナルEVの発表とともに「2018年にライドプーリング(ライドシェア)のコンセプトを国際的に開始し、2025年までにヨーロッパとアメリカの主要都市の自動車数を100万台削減する」という目標を打ち出した。

2018年には、ドイツのハンブルグでシャトルオンデマンドサービスを正式に開始し、100台のMOIA車両が投入されたようだ。

利用者がスマートフォンアプリを介して現在地と目的地を入力すると、MOIA車両が250メートル以内の仮想停留所に到着し、利用者はアプリの案内のもと車両が停車する場所に向かう仕組みだ。バスに比べて自由度が高い一方、タクシーに比べれば料金が安く、ラストワンマイルを担う移動手段としてのその成果に注目が集まる。

VWグループは、こうしたサービスから得られるデータを、無人自動運転によるオンデマンドカーなど将来のモビリティビジネスモデルの開発の基盤にし、2025年までにこれらの新しい事業分野を通じて収益の大部分を生み出す構えだ。

■その他の移動サービス:モービルアイと自動運転配車サービスへ

VWは2018年10月、米インテル傘下のイスラエル企業モービルアイとともに、自動運転車による配車サービスをイスラエルで早ければ2022年に開始すると発表した。開発に向け両社の合弁を2019年に設立するとしている。

イスラエルを選んだ理由として、同国はサイバーセキュリティやAI(人工知能)、スマートデータ、センサーなど、新しいモビリティテクノロジーが豊富であり、また、イスラエル政府が自動運転に対応する法や規制の枠組みを作成してプロジェクトをサポートすることを約束したことなどを挙げている。

【参考】自動運転配車サービスの取り組みについては「VWとモービルアイが自動運転タクシー事業 2022年からイスラエルで試験開始」も参照。

■VWグループのその他の移動サービス:電動キックボードも開発

VWはマイクロモビリティの分野にも注目しているようだ。2019年のジュネーブモーターショーで電動キックボードのようなモビリティ「Cityskater」を発表している。

Cityskaterは3輪の折りたたみ式電動スクーターで、最高時速20キロで走行可能で、駐車場やバス停から最終目的地までの移動といったラストワンマイル用に設計されている。

ドイツでは2019年6月に電動キックボードが解禁され、乗り捨てシェアリングサービスなどを中心に10月時点で18社が認可を受けているという。なお、走行可能な場所は自転車専用道に限定し、自転車専用道のない場合に車道で走行できる。歩道や歩行者専用ゾーンでの走行は禁止だ。

事故発生の懸念など問題は山積しているが、シェアリングサービスとして導入しやすいため、今後この分野に本格進出する可能性も十分考えられるだろう。

■【まとめ】モビリティサービスへのシフトは世界的な潮流

カーシェア事業への参入をはじめ、ライドシェアなど各移動サービスに参入し、それに適した車両の開発も進める。その裏側では、車両を制御するOSをはじめとしたソフトウェアやプラットフォームの統一を進め、開発や実用化の効率性を高めていることがわかった。

今後、提携を深める米フォードとの協業や、力を入れる中国市場での展開などにも注目が集まりそうだ。

なお、VWグループと非常に類似した動きを見せているのがトヨタ自動車だ。モビリティサービスに必要とされるさまざまな機能を備えたモビリティサービス・プラットフォーム「MSPF」を構築し、コネクテッドサービスなどの展開を促進しているほか、カーシェア事業や超小型モビリティサービスの導入などにも積極的だ。

MaaSを見据えたモビリティサービスへのシフトは、やはり世界的な潮流のようだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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