SBドライブの自動運転戦略は? ソフトバンクグループのベンチャー企業

グループ生粋の自動運転関連企業





鳥取県八頭町とSBドライブが連携協定を締結したときの写真。右から2人目がSBドライブの佐治友基CEO=出典:SBドライブ社プレスリリース

自動運転で新しい移動を——。自動運転や社会やMaaS(Mobility as a Service)社会の到来を見越し、モビリティ分野への出資や協業を進めるソフトバンクグループ。この中で、唯一グループ生粋の自動運転関連企業が存在する。2016年設立のSBドライブだ。

多角的に事業を進めるグループにおいて、SBドライブはどのような存在なのか。企業の成り立ちや取り組みを掘り下げ、その実像やビジョンに迫ってみよう。







■SBドライブの企業概要

SBドライブは、自動運転技術の導入や運用に関するコンサルティングをはじめ、旅客物流に関するモビリティーサービスの開発・運営を手掛けるソフトバンクグループ傘下のベンチャーとして、社長兼CEOを務める佐治友基氏を中心に2016年4月に設立された。

ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)に入社した佐治社長は、営業部門で施策推進などに従事する一方、2010年にソフトバンクグループの孫正義代表による後継者発掘・育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」の第1期生として、新規事業の企画・提案などを手掛けてきた。

当時、ソフトバンクの事業の中で大きな柱だった通信事業において、通信の付加価値を高める新しい武器が必要だと感じ、世の中を変えるIoT製品について考えた際に着目したのが自動運転技術だった。

自動車産業は、カーシェアやライドシェアなどのサービス拡大により、所有型から利用型へと進化する中で市場がさらに大きくなると予想。自動運転普及後の社会は、ユーザーが好きな場所で車を呼び出せるアプリや、車の安全を遠隔で見守るなどの仕組みが不可欠で、ソフトバンクが持つ通信インフラと、クラウド上のビッグデータを活用した技術が果たす役割は大きいと考え、自動運転技術にたどり着いたという。

そして2015年春、ソフトバンク社内で行われたビジネスアイデアコンテストで「自動運転技術を活用した交通インフラ事業」のアイデアを提出。500件以上のアイデアの中から最終審査で2位となり、事業化に向け本格的な活動を開始した。その後経営幹部と議論を重ね、コンテストからわずか1年後の2016年4月、ソフトバンクと自動運転開発を手掛ける先進モビリティの出資のもとSBドライブ設立にこぎつけ、社長に就任した。2017年3月にはヤフーも第三者割当増資を引き受け、累計出資額は約10億円となっている。

設立後は、スマートモビリティーサービスの企画や開発、環境整備に向けた取り組みとして地方自治体などと連携協定を積極的に結ぶほか、自動運転バスの実証実験なども各地で実施。自動運転技術を活用した特定地点間を往来する路線バス型などの地域公共交通や、大型トラックの隊列走行による幹線輸送などの社会実証・実用化に向けた取り組みを加速し、新しい移動サービスの実現に向け着実に成果を出している。

【参考】佐治友基氏については「自動運転・AI業界、偉人21人の肖像 年齢順、神童から重鎮まで」も参照。

■SBドライブの取り組み
自治体との連携:地域の交通課題を掘り起こし移動サービスを提案

設立間もない2016年4月、福岡県北九州市と自動運転技術を活用したスマートモビリティーサービスの事業化を通じた学術の振興及び地域経済の活性化に向け連携協定を結んだのを皮切りに、同年5月に鳥取県八頭町、8月に長野県白馬村とそれぞれ自動運転技術の開発やスマートモビリティーサービスの事業化に向けた環境整備などに関して協定を締結している。

同年9月には静岡県浜松市とも協定を結び、地域住民の移動の利便性の向上など地域公共交通の課題を解決し、地域や産業の振興と次世代モビリティーサービスの創出に資することが可能な自動運転技術を活用したスマートモビリティーサービスの事業化に取り組んでいる。

また、愛知県による自動走行の社会受容性実証実験事業を受託したアイサンテクノロジーから事業の一部を受託し、ソフトバンクグループでクラウドAI(人工知能)サービスなどを手掛ける「cocoro SB社(ココロエスビー)」が開発した無人タクシーを疑似体験できるアプリケーション「cocoro Drive(ココロドライブ)」を活用して実証実験に取り組んでいる。

こういった地方自治体との連携を糸口に、地域の実情に即した移動サービスの在り方について考察を深めていったようだ。

国の事業との関わり:先進モビリティと実証実験を加速

2016年11月に、経済産業省による「平成28年度スマートモビリティシステム研究開発・実証事業」の「専用空間における自動走行等を活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」を統括する産業技術総合研究所(産総研)から事業の一部を受託し、実証事業に参画した。

事業は2018年度までで、先進モビリティ株式会社と連携して独自に開発する自動走行に対応した小型バスや自動走行システムを活用し、2018年度内に自動走行技術の実証評価を実施。2020~30年ごろの実現が期待される専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムを対象として、安全性・社会受容性・経済性の観点や国際動向などを踏まえまがら、必要な技術開発と実証を通して社会実装に必要な技術や事業環境などを検討することとしている。

2017年3月には、先進モビリティとともに「沖縄自動運転コンソーシアム」を組成し、内閣府が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の「自動走行システム」において、沖縄県南城市で行われるバス自動運転実証実験を受託。

先進モビリティが独自に開発した実験車両を使用し、走行ルートにおける自動運転の性能評価や、SBドライブが設計・開発した遠隔運行監視システムを使用した走行状況のデータ収集・モニタリング、運行管理などに関するシステム検証、自動運転技術を使った公共バスの社会受容性の調査などを進めている。

なお、両社は同年11月にも「沖縄自動走行バスコンソーシアム」を組成し、沖縄県宜野湾市や北中城村で実施されたバス自動運転の実証実験も受託している。

先進モビリティやNAVYAの自動運転バスなど活用

SBドライブは、SIPなどによる実証実験では出資元である先進モビリティが開発・改造した小型バスを用いることが多いが、2017年7月に東京都港区で行われた、自動運転バスの実用化に向けて受容性や安全性などを調査する「自動運転バス調査委員会」の実証実験で、国内では初めて仏Navya(ナビヤ)製の自動運転シャトルバス「NAVYA ARMA」を使用した。

「NAVYA ARMA」は、GPSなどで自車位置を測位し、LiDAR(ライダー)やカメラなどで障害物を検知してあらかじめ設定したルートを自律走行することが可能な自動運転車両。以後、「Japan Innovation Challenge 2017実行委員会」(JIC実行委員会)が2017年10月から北海道上士幌町で実施している実証実験や、2017年12月に東京都千代田区で実施した自動運転シャトルバスの試乗会、2018年4月から福島第一原子力発電所に導入された自動運転EVバスの運行支援などに同車両を活用している。

【参考】先進モビリティをはじめとした実証実験車両については「自動運転実証実験の”常連”8車両まとめ MileeやeCOM-10、RoboCar、Robot Shuttleなど」も参照。

中国バイドゥの自動運転バス「Apolong」で協業

また、2018年7月には中国IT系企業・百度(Baidu:バイドゥ)の日本法人であるバイドゥ株式会社と、百度が提供する自動運転システムプラットフォーム「Apollo(アポロ)」を搭載した自動運転バス「Apolong(アポロン)」の日本での活用に向け協業することを発表している。

両社は、SBドライブが開発を進める遠隔運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」と、百度の自動運転システムのプラットフォーム「Apollo」を連携させ、日本の公道における自動運転バスの実用化を目指すこととしており、「Apolong」を開発・製造する中国の金龍客車との協業のもと、2018年度中に実証実験に着手し、2019年初期までに実証実験用車両を含め10台の「Apolong」を日本に持ち込む予定としている。

Dispatcher(ディスパッチャー):自動運転バスと監視者をつなぐ遠隔監視システム

さまざまな自動運転バスの実証実験の中で、同社が開発に力を注いできたのが遠隔監視システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」だ。ドライバー不在の自動運転バスに必須ともいえるシステムで、GPSなどで位置情報をリアルタイムに発信するほか、社内外に取り付けた複数台のカメラ映像や万が一の際の車両の停車・発車、走行中に起きたアラート情報の管理や分析、乗客の車内移動や転倒の検知などを遠隔で行うことができる。

2019年1月には、「Dispatcher」の機能の一部を手動運転バス向けにカスタマイズした「DaiLY by dispatcher(デイリー バイ ディスパッチャー)」のリリースを発表。バス車内にカメラや車載AIコンピューター、通信ユニットなどを設置することで利用可能なバス事業者向けのサービスで、バス運行時の安全性や効率化を高めることができる。

同サービスは、共同で研究を進めてきた西日本鉄道株式会社が導入するほか、2月からは江ノ島電鉄株式会社が正式導入に向け試験的に導入することが決まっている。

■自動運転レベル4の急先鋒となるか…今後の動向に注目

同社におけるサービス第一号とみられるディスパッチャーの普及が目下のターゲットになりそうだが、次の段階として見据えているのが、ディスパッチャーを搭載した自動運転バスの普及だ。決められたルートを走行する自動運転レベル4(高度運転自動化)の自動運転バスサービスを、地方都市をはじめ商業施設や空港などへ導入促進していく構えだ。

その次のステップでは、運行ルートを網の目のように細かく増やしていき、ドア・ツー・ドアの移動により近いタクシー型の無人運転サービスを考えているという。

グループ全体の技術力やネットワークといった強力なバックボーンを武器に、国内における自動運転レベル4実現の急先鋒となるか。今後の動向を注視したい。







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