【高齢者モニターや操作ガイドも】自動運転関連の求人・転職市場が過熱

非エンジニア職の活躍の場が拡大中



右肩上がりを続ける自動運転関連の求人。その多くはエンジニア職が占めているが、業界の動向を反映するかのように一方では職種の多様化が進んでいる。







変化の兆しを見せる求人内容をもとに、自動運転関連業界の動向に触れていこう。

■自動運転関連求人は2年足らずで2倍の規模に

自動運転ラボが定期調査している主要6転職サイトにおける2020年9月末時点の「自動運転」関連求人案件は2万1,262件となった。

同求人は、2018年12月の調査開始以来2020年2月まで前月比増の右肩上がりを続け、新型コロナウイルスの影響で2020年3~4月に減少に転じたものの、5月から8月まで再び上昇し、9月末時点の件数は2018年12月の1万657件から21カ月間で約2倍となった。

一方、「MaaS」関連求人案件数は、調査を開始した2020年6月の381件から3カ月連続で増加し続けており、9月末時点で578件となっている。


若干の増減はあるものの、業界の求人はまだまだ伸びていく見込みだ。かつてはAIアルゴリズムや画像認識技術の開発といったエンジニア職がほぼすべての求人を占め、今でも高いエンジニア需要を背景に売り手市場が続いているが、近年では多様化の傾向も強く見られるようになった。

その背景には、自動運転開発が次のフェーズを迎えつつあることが関係している。自動運転の研究開発はまだまだ続くものの、一部ではサービス実装を見据えた取り組みがすでに始まっている。

ドライバーを必要としない自動運転レベル4の移動サービスは、自動運転バスを中心にまもなく実用化が始まる見込みだ。自動運転を活用した移動サービスは今後実証が加速し、数年のうちに国内各地で産声を上げることが予想される。こうしたサービスに向けた準備が各所で進められているのだ。

また、自動運転技術を応用したさまざまなモビリティの開発もいっそう盛んになっている。ビジネス化を前提に企画力や発想力が問われる職種もあり、MaaSと相まって新たな交通サービス網を構築していく礎となる。

エンジニアをはじめ、コンサルやマーケティング、サービス提供などさまざまな領域での活躍が見込まれる求人は今後いっそう多様化していくだろう。

■多様化する自動運転関連求人

ここからは求人案件の多様化を象徴するような募集をいくつか紹介していこう。

大型自動運転車のテストドライバー

ドライバーを中心に人材派遣を手掛けるアルバクルーは、大型自動運転車のテストドライバーを募集している。2週間から1カ月程度の短期業務だが、自動運転技術向上に向けたデータ取得走行や補助業務を行うレアな求人だ。

交通量の少ない深夜にテスト走行を重ね、本番の運行に臨むとしている。勤務地は関東地区(東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬)と東海地区(愛知・岐阜・三重)となっており、どの企業の自動運転開発・実証現場になるのかは定かではないが、開発現場に触れる貴重な求人だ。

車両ドライバーの募集

自動運転開発を手掛ける先進モビリティも、車両ドライバーを募集している。全国の実証実験の実施場所に赴き、大型自動車の運転や検証業務を担う。

東京大学発ベンチャーとして活躍の場を広げる同社は、自動運転バスやトラックの隊列走行など多方面で実証を重ねており、今後もその需要を増していく可能性が高い。

自動運転サービスの実用化を目指す企業は今後、従来の自動車関連企業や交通事業者の枠に留まらず広範に及んでいくことを踏まえると、こうした自動運転ドライバーの求人もしばらく増加傾向が続く可能性もありそうだ。

自動運転実験における運転者モニター

建設分野を中心に人材サービス事業を手掛けるエル・コーエイは、自動運転の実証実験における運転者モニターを募集している。

新規開発中の自動運転システムの運転者モニターとして、お台場エリアの公道に設定したルートを規定回数周回する短期アルバイトだ。同様にシニア運転者モニターも募集している。

実証における乗客側の無料モニターは数多いが、運転者モニターは珍しい。自動運転レベル3相当のシステムなのか、あるいはレベル4なのか。詳しい実証内容などは明かされていないが、不特定多数のドライバーの存在を前提とした実証となるため、システム構成が気になるところだ。

自動運転モビリティの操作ガイドキャスト

電動車椅子型の自動運転モビリティの実用化を目指すWHILLは、操作ガイドキャストを募集している。自動運転システムを搭載した超小型モビリティとして実用化に最も近いグループに入るWHILLの電動車椅子は、今まさに社会実装の時期を迎えているようだ。

業務内容は、利用者へのサービス説明をはじめモビリティの簡単なメンテナンス作業や動作確認の実施、課題や改善点の記録、メンバーや施設担当者へのフィードバックとなっている。必須スキルは、コミュニケーション能力やWord・Excelスキル、自動運転ロボットの操作や取り扱いに抵抗がないこととなっており、従来の自動運転関連の求人とは異なり、明らかに一般化している。

こうした求人の一般化は、自動運転技術の一般サービス化の表れとも言える。今後自動運転の実用化が進めば、こうした求人が顕著に増加することになりそうだ。

自動運転分野などを担当するコンサルタント

三菱総合グループのコンサルティング企業であるMRIリサーチアソシエイツは、自動運転やコネクテッドカー、テレマティクスなどの分野において、民間企業向けコンサルティングや開発支援、官公庁向け調査研究などの業務をプロジェクトリーダーまたはメンバーとして担当する人材を募集している。

あれば望ましい経験・スキルとしては、自動車メーカーや自動車部品メーカーなどにおける事業企画や運営、システム構築・開発などが挙げられており、当該分野のコンサルティングや調査研究を担当したことがある人も歓迎しているようだ。

MRIリサーチアソシエイツでは、自動運転向けの高精度3次元地図データ「ダイナミックマップ」を多目的で活用するためのプロジェクトも立ち上がっており、自動運転に関連する求人が今後も多く出てきそうだ。

■【まとめ】自動運転に携わるチャンスはまだまだ広がる

自動運転の研究開発はレベル5を見据えまだまだ熱気を帯びていく一方、レベル4サービスのうち走行可能な条件を示す運行設計領域(ODD)のハードルが低い自動運転システムはまもなく実用実証が本格化し、開発領域とは分離した交通サービス領域の事業として新たな雇用を生んでいく。今まさにその段階を迎えつつある。

MaaSの進展とともに移動革命を担う自動運転に携わるチャンスは、今後いっそう広がっていくのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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