信号は無くなり、標識はQRに!?自動運転化が「未来の道路」の姿を変える

道新交通管理システムなどの実証も進む



出典:国土交通省資料「2040年、道路の景色が変わる〜人々の幸せにつながる道路〜」

限定地域における自動運転レベル4(高度運転自動化)の移動サービスが本年中に始まろうとしている。局所的とは言えいよいよ自動運転時代が到来し、MaaSとともに交通に変化をもたらすことになる。

こうした変化は、モビリティのみならず道路をはじめとしたインフラにも変化を求めることになるが、自動運転が普及する将来、道路はどのように姿を変えているのか。







高度道路交通システム(ITS)確立に向けたこれまでの取り組みとともに、「自動運転に対応した道路空間に関する検討会」の議論などをもとに未来の道路の在り方に迫ってみよう。

■高度道路交通システム(ITS)確立に向けた現在の取り組み

日本では、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)のもとITSを推進しており、道路交通情報通信システム(VICS)や新交通管理システム(UTMS)、高知能自動車交通システム(SSVS)、先進安全自動車(ASV)、次世代道路交通システム(ARTS)、ワイヤレスカードシステム、ノンストップ自動料金収受システム、小電力ミリ波レーダーなどの各分野で研究開発が進められている。

すでに導入されているVICSやETCなども、光ビーコンから取得した信号情報を用いて信号交差点を円滑に通行するための運転を支援する信号情報活用運転支援システム(TSPS)の開発や、高速道路と自動車がリアルタイムに情報連携するETC2.0の開発など、現在進行形で進化を続けている。

新交通管理システム(UTMS)では、光ビーコンなどの最新の技術で交通状況を把握するITCS(高度交通管制システム)、ドライバーが必要とする交通情報をリアルタイムで提供するAMIS(交通情報提供システム)、バスなどの公共車両が優先的に通行できるよう支援するPTPS(公共車両優先システム)など高度交通管制システム(ITCS)の確立に向けたさまざまな研究開発が進められているようだ。

次世代道路交通システム(ARTS)では、人と車と道路が一体となり、高齢者や身障者も含めた全ての人々がより高度に道路を利用することを目的に、以下の6つのテーマを掲げて研究開発などを体系的に推進しており、将来の自動運転を可能とする走行支援道路システム(AHS)の研究開発などの積極的な推進も図ることとしている。

  • ①旅行(計画を含む)の最適化
  • ②安全運転の支援
  • ③歩行・自転車利用の最適化
  • ④公共交通の最適化
  • ⑤物流の最適化
  • ⑥道路管理の効率化
■自動運転の実現に向けた現在の取り組み
SIPでインフラ協調システムなど実証中

自動運転社会の実現に向け、自動運転技術の初期導入や一般車両との混在などを想定したさまざまな研究や整備が進められている。

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のもと現在東京臨海部で実施中の実証実験では、高精度3次元地図情報を含むITS無線路側機による信号灯火色情報などを提供する環境を整備するとともに、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路では、ETC2.0路側無線装置によって走行車両に関する情報やETCゲートの開閉に関する情報を自動運転車に提供する環境の構築、羽田空港においては、公共交通システム用の磁気マーカーやPTPS、仮設バス停、バス専用レーンなどの整備を進めている。

有明・お台場地区の一般道におけるインフラ協調システムの実証実験では、信号情報配信による交差点走行支援などを実証し、データ収集や分析を通してインフラ整備の考え方を整理している。羽田空港では、自動運転技術を活用したARTSやPTPSのもと、バスプラットフォーム(バス停)に正確に横付けする正着制御技術や、円滑な運行のための公共車両優先システムなどの開発を進めているのだ。

BRTや磁気マーカーの敷設も

BRT(バス・ラピッド・トランジット/バス高速輸送システム)の確立に向けた取り組みも盛んだ。連節バスやPTPS、バス専用道、バスレーンなどを組み合わせ、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大を図るバスシステムで、自動運転や隊列走行技術などが活用されるケースもある。

専用道を用いることで自動運転レベル4の敷居も下がるため、初期の無人移動サービスの導入においては有力なシステムとインフラになる。

また、磁気マーカーの活用も進められている。あらかじめ道路に敷設した磁気マーカーを、車両底部に取り付けた磁気センサーモジュール(MIセンサモジュール)で読み取るシンプルな仕組みで、走行ルートが事前に決定している場合には有用なシステムとなる。

バス停などの正着制御技術としても用いられており、BRTや空港制限区域内などをはじめ、中山間地域における道の駅などを拠点とした自動運転サービスにおいても実証が進められている。

■未来の道路の在り方は?
自動運転専用走行空間の創出へ

では、自動運転が前提の未来の道路はどのようなものになるのか。

自動運転に必要な道路空間の在り方の検討に向け国が設置した「自動運転に対応した道路空間に関する検討会」は2019年11月発表の中間とりまとめにおいて、自動運転に対応した専用走行空間の確保や、磁気マーカーや電磁誘導線などで車両の自己位置特定をインフラ側から支援することなど今後の方針をまとめた。

▼自動運転に対応した道路空間のあり方「中間とりまとめ」
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/road_space/pdf/chu-matome.pdf

自動運転車専用レーンを設ける案など

具体的には、道路空間を再配分することで自動運転車専用レーンを設ける案や、ライジングボラードや磁気マーカーを設置したラウンドアバウトなどを活用して乗り入れを制限する交差点、車線位置検出精度を保つための区画線や舗装などの反射率・反射度の基準化、自動運転車用標識の導入、歩行者横断空間の整備、混在交通の基準体系、縁石側など道路空間の活用(カーブサイドマネジメント)などについて検討を進める方針のようだ。

道路空間を再配分では、車線の幅員を減少し、小型の低速自動運転車専用レーンを設置したり、歩行者滞留スペースや賑わい空間を新たに創出したりする案などが出ているようだ。カーブサイドマネジメントとして、部分的にカーシェアリングの滞在場や乗り換え場、移動店舗、小口配送車両の停車場に使用することなども検討している。

自動運転の普及期、つまり一般車両と混在する期間において道路交通の安全を確保するには、専用レーンを設けることが望ましいのは言うまでもない。かといって、道路そのものを新設する余裕は日本の狭い国土を考慮すると現実的ではない。

将来、MaaSが浸透して自家用車保有台数が減少して道路交通に余裕が生じることや、都市圏内の走行車両の幅員に厳しい制限を設けることなどを前提とすれば、従来の道路の幅員や車線を減少することで新たなスペースを創出することができる。

車両向けの信号も必要なくなる?

極論、走行車両が全て自動運転化されれば、高精度な安全走行が見込めるため幅員の遊びを減らすことも可能になる。また、車両向けの信号も必要なくなり、道路を横断する歩行者に合わせて全車両が制御される仕組みの導入も考えられる。交差点から信号が撤廃され、細い道路が計画的に整備される未来が訪れる可能性は決してゼロではないのだ。

自動運転車用の標識ではQRコードの導入も?

一方、自動運転車用の標識では、QRコードの導入が案として出されているようだ。道路脇に設置されたQRコードを車両に搭載されたカメラなどのセンサーで読み取ることで、「制限速度40キロ」「この先急カーブあり」などの情報を伝達する仕組みだ。

出典:国土交通省資料

QRコードは現在、数字のみであれば7089字、英数4296字、漢字・かな1817字のデータを格納することが可能なため、道路標識としてはもちろん、自動運転車やカーナビに自動で周辺店舗情報などを読み込ませる広告的な機能なども持つことができそうだ。

【参考】自動運転に対応した道路空間に関する検討会の取り組みについては「道路標識にQRコード設置か 自動運転向け、国がイメージ図公表」も参照。

道路政策の中長期的ビジョンでも道路空間の再配分を提示

国土交通省が発表した道路政策の中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」では、以下の将来像のもと、道路行政が目指す持続可能な社会の姿と政策の方向性を提案している。

  • ①通勤帰宅ラッシュが消滅
  • ②公園のような道路に人が溢れる
  • ③人・モノの移動が自動化・無人化
  • ④店舗(サービス)の移動でまちが時々刻々と変化
  • ⑤災害時に「被災する道路」から「救援する道路」に

▼2040年、道路の景色が変わる〜人々の幸せにつながる道路〜
https://www.mlit.go.jp/road/vision/pdf/01.pdf

モビリティサービスの進化によって大都市に集中していた人の移動が分散し、交通サービスの形が都心から放射状に拡がるハブ・アンド・スポーク型から、多様なODペア(出発地と到着地の組合せ)に対応したポイント・トゥ・ポイント型に移行するとしている。

また、道路ネットワークの空間再配分をはじめ、可変型の道路表示などを活用することで道路と沿道民地を一体的に運用し、曜日や時間帯に応じて自動運転車の乗降スペースや移動型店舗スペース、オープンカフェなどに変化する路側マネジメントが普及するとしている。

防災面では、AIカメラなどが交通の状況を常時モニタリングし、災害やパンデミック発生時にリアルタイムな情報提供や交通誘導を行うことで人流・物流を最適化するほか、災害モードの高速道路が、浸水エリアにおける避難スペースや被災地アクセス用の緊急出入口を提供し、道の駅やSA・PAなども、避難場所や救援拠点、物資中継基地として機能するとしている。

【参考】道路政策の中長期的ビジョンについては「【資料解説】「2040年の道路」はこうなる!国交省最終ビジョン 自動運転実用化も」も参照。

パーソナルモビリティや配送ロボット専用空間も?

車両が走行するために設置された道路の存在そのものが変化し、自動運転対応をはじめ沿道と一体化し手有効活用を図る動きが進んでいく印象だ。

2040年を想定すると、まだ手動運転車両と自動運転車両の混在が予測されるため、専用レーンの設置が現実的かもしれない。また、商業集積地区など一部のエリアの道路は自動運転車専用に位置付けられ、道路全体の有効活用が始まっている可能性もある。こうしたエリアでは、実際に信号が姿を消し、道路標識がQRコードに代わっている可能性もありそうだ。

手動運転車も全ての車両がコネクテッド化され、かつ高精度なセンサーを備えたADAS(先進運転支援システム)を搭載しているならば、専用空間以外でも自動車向けの道路標識や信号は役割を終えることができる。自動車がこうした情報を常時通信で入手し、ドライバーに伝えることが可能になるからだ。

現在から少し先の2020年代には、路車間通信(V2I)が大きく普及し、自動運転車・手動運転車双方に交通関連情報を提供する仕組みが普及しそうだ。現在のVICSの進化版のような形で、交差点情報や渋滞、事故情報などをはじめあらゆる情報を広く提供し、一般車両もADASがこれらの情報をもとに自動車の制御を行うシステムなども普及する可能性が高い。

プライバシーの問題とせめぎ合いが続きそうだが、交差点を中心に道路を映し出すカメラの設置が大幅に進み、道路交通を常時監視することで危険運転の排除や防災、事件対応などが進む可能性もある。

自動運転車の専用レーン関連では、自転車専用レーンのような感覚でパーソナルモビリティや配送ロボット専用・優先空間が創出される可能性もありそうだ。

このほか、EV(電気自動車)関連では、道路上を走行するだけで車両が充電可能なインフラが誕生するかもしれない。非接触充電技術などの進化は目覚ましく、離れた場所のものに給電する技術も確立されている。将来、こうした技術が道路に普及し、全てのEVに恩恵を与える日が訪れるかもしれない。

■【まとめ】自動運転技術やMaaSの普及が道路改革を実現する

未来の道路が自動運転に対応したインフラに作り替えられていくことが示されているが、だからと言って決して自動運転を主目的としたものではなく、道路空間そのものにいかに余裕を持たせるかといった観点と、MaaSや専用レーンの設置などでいかに交通そのものを高効率化するかといった観点が重要となる。その結果として、信号や道路標識が姿を変えるかもしれないという話だ。

一方、こうした道路改革を実現させるためには、自動運転技術やMaaSの普及が必須となるのも事実だ。配送ロボットやパーソナルモビリティなど、新たなモビリティの登場も人の移動やサービスの在り方に変化を与え、交通に影響を及ぼす。

これらの変化に向けた対応を迫られているのが現在であり、2020年代となる。一部地域でレベル4移動サービスが始まろうとしているが、こうした新サービスの導入によって、未来の道路がどのように変わっていくのかが垣間見えてくることになる。

自動運転技術とともに、道路をはじめとしたインフラの変化にも注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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