Mobileyeの自動運転、未編集25分動画で空と車内からリアル体験!インテル傘下

安全確保に向けたAIの思考とは?





米半導体大手のインテルと傘下のイスラエル企業・Mobileye(モービルアイ)が、長時間にわたる自動運転車の走行動画を公開している。再生時間約25分の未編集の動画で、自動運転車がエルサレムのまちを走行する動画だ。

ここまで長時間の走行動画は珍しく、複雑な交通環境下を自動運転車がどのように走行しているかが非常に分かりやすく収められている。







こうした動画を公開したインテルとモービルアイの狙いは、自社技術のアピール以外にあるという。今回は、動画の内容を紹介しつつ、自動運転に関する両社の考え方に触れていく。

■動画は俯瞰映像・車内映像・3次元表示で構成

動画は、右側にドローンで真上から自動運転車を追随撮影した俯瞰映像、左上に車両が搭載する12台のカメラから見た3次元表示とマッピング映像、左下にセーフティドライバーを映した車内映像を組み合わせた構成で、それぞれが自動運転車の走行に合わせてリアルタイムに変化している。

俯瞰映像は車両周辺の交通状況が非常に分かりやすく、自動運転車がその都度どのような状況に置かれているかがひと目でわかる。

一方、3次元マッピング映像では、車両に搭載された12台のカメラが捉えた周囲の車両や歩行者などが次々と表示され、位置や挙動などをもとに安全性・危険性を随時解析している様子がわかる。動いている歩行者は赤で表示されているが、危険性がないと判断すれば黄色、緑へと変化していくイメージだ。

走行映像は、エルサレムの幹線道路への合流から始まる。時速90キロの速度で接近する車両を検知し、安全を確認して本線へ。駐車車両を避ける動作や交差点で少しだけ頭を出している車両を避ける様子、横断歩道で歩行者に道を譲る様子、ラウンドアバウトを通過する様子、混雑する交差点で、左車線の進行が速いと判断し車線変更する様子など、複雑な交通状況を次々とクリアして走行する様子が収められている。

中には、前方で停止している大型トラックが信号待ちをしているのか停車しているかを、ハザードランプやトラフィックコーンなどのインジケーター、信号などから判断する様子や、車線の流れを検知し、流れの速い車線に進路変更する様子、非常に狭い一方通行路で歩行者を検出し、道路を横断するかどうか挙動を判断する様子なども収められている。

■自動運転車の社会受容性向上

動画は「CES 2020」で公開したもので、自動運転車がどのように機能・制御するかを世界中に示すことで、自動運転に対する社会からの信用を高めることを目的としている。このため、良い部分のみを切り貼りせずに未編集にこだわり、さまざまな状況にどのように対応しているかを誠実に伝えようとしているのだ。

たどたどしいところが全くないわけではないが、安全性を重視したスムーズな走行を実行しているのがよくわかる。想像以上に複雑な交通環境下において、カメラのみのセンシングで非常に高度な自動運転を実現しているのだ。

社会受容性を高める狙いは、最終消費者向けのマスマーケット展開を見据えたもののようだ。自動運転車はまずロボットシャトルを利用したライドシェアなどを手段に実用化が進み、その後個人向け自動車へと展開される。

大規模な展開を推進する上で、コストやHDマップ(高精度地図)の普及、そして安全性が主な課題となるが、この安全性がソフトウェアやハードウェアのアーキテクチャーを設計する上で最も優先されるべきであるとしている。動画は、この安全性の確保に向けた同社の開発方針を示す内容でもあるようだ。

■モービルアイが提唱する安全性の概念

モービルアイは2017年、安全保証の標準化に向け安全性の概念を公表した。この概念を構成する一つの考え方として、責任感知型安全論(RSS/Responsibility Sensitive Safety)がある。

車線の合流時などの意思決定プロセスにおける判断ミスが原因の事故は、運転操作において注意すべきことを形式的な方法で明確化することで回避できる。例えば「優先通行は譲られるもので、自分から取りにいくものではない」といった安全な判断を行うために想定されるパラメーターを持たせるイメージだ。

RSSモデルでは、前提条件の範囲内で起こり得る最悪のシナリオを想定し、路上の他の車両や歩行者らがどのような行動をとるかも踏まえているため、それ以上の予測を立てる必要がなく、理論上は、AVが前提条件に従い、かつこの理論で定義された走行をするならば、意思決定をする自動運転車の頭脳は決して事故を起こさないことになるという。

RSSの理論は、自動運転車が意思決定する標準規格として、米国の技術標準化機関IEEEがインテル主導の新しいワークグループを立ち上げ、標準規格「IEEE 2846」を策定している。

■2通りのセンシングシステムで冗長性を高める

カメラのみでセンシングシステムを構成したのも安全性を高める一手だ。今回の自動運転車は、遠距離カメラ8台、パーキングカメラ4台を搭載し、撮影データは2つのEyeQ5によるコンピューティング・システムで収集している。カメラセンサーのみを使用してLiDAR(ライダー)に似た出力を実現するソリューション「VIDAR」と名付けられたシステムだ。

もともと同社は単眼カメラを主軸とした独自の画像処理アルゴリズムで成長してきたが、自動運転の開発に向けてはLiDARなどに対応したシステムオンチップの開発にも力を入れている。

その上でカメラのみのセンシング技術を公開したのは、カメラのみをベースに走行できるシステムを搭載した完全にエンドツーエンドの自動運転車を開発し、別途レーダーやLiDARを使用して走行する完全に独立したシステムを開発すれば、異なる2つの冗長性をもつサブシステムを備えることができると考えているからだ。

両方のシステムで同時にセンシング機能の不具合が発生する確率は低く、より高度に安全を担保できるという発想だ。カメラやLiDARなどのセンサーフュージョンによるアプローチとも異なる、同社独自の視点だ。

自動運転車の頭脳が正しい判断を行っていても、センシングシステムで故障が発生すれば当然事故につながる可能性が発生する。センシングシステムは、ソフトウェアがインストールされたカメラ、レーダー、LiDARで構成され、センサーが収集したローデータ、特に路上の他の車両などの位置や速度といったデータを「周辺環境モデル」に変換する。

こうしたデータの収集において、センシングシステムの見落としや計測値の算出を誤る可能性などは常にあり、その確率は極めて低いとしても、関連オブジェクトを見誤って事故を引き起こしてしまう危険性がないとは言えない。

自動運転車が人間による手動運転に比べ1000倍安全に走行できるようにするための手法として、こうしたセンシングシステムの開発を進めているようだ。

■モービルアイの取り組み
モービルアイのアムノン・シャシュアCEO=出典:インテル

システムオンチップEyeQでADAS市場のシェアを大きく拡大したモービルアイ。国内では日産やホンダなどが採用しており、日産のプロパイロットではカメラのみのセンシングで全速度域におけるアダプティブ・クルーズ・コントロールを達成している。

2018年発表のEyeQ4が自動運転レベル3、2020年発表のEyeQ5がレベル4~5に対応するなど、高機能化も格段に進んでいる。

マッピングシステムの開発にも尽力

主力のチップ開発のほか、マッピングシステムの開発にも力を入れており、マッピングテクノロジー「Road Experience Management(REM)」では、カメラベースのADASシステムを搭載した一般車両の協力のもと、カメラで収集した画像データをクラウドに集めて解析し、リアルタイムで更新可能なマップ作りを進めている。

ドイツ勢との協業も目立つ

自動運転の開発関連では、ドイツ勢との協業が目立つ。BMWと開発連合を組織し、2021年の完全自動運転実現に向け協業を進めているほか、フォルクスワーゲンとも2022年にイスラエル国内で自動運転タクシーサービスを実現できるよう開発を進めている。

2020年7月には、ドイツ国内すべての道路で自動運転テスト車両の走行を可能とする許可を受けたと発表している。

日本のWILLERと戦略的パートナーシップ

また同月には、移動サービスを手掛ける日本のWILLERと戦略的パートナーシップを結んだことも発表している。日本と台湾を含む東南アジアの市場で自動運転タクシーやシャトルなどのサービス実現を図っていく構えで、日本を皮切りに実証実験などを進めていくこととしている。

このほか、2020年5月には、インテルがMaaSプラットフォーマーのイスラエル企業・Moovit(モービット)の買収を発表している。自動運転の開発とともにサービス化に向けた取り組みも加速している印象だ。

【参考】WILLERとの協業については「WILLERとMobileye、自動運転タクシー「日本第1号」候補に!?」も参照。Moovit買収については「IntelのMoovit買収、自動運転タクシーの世界展開の布石か!?」も参照。

■【まとめ】AIの交通安全理念にスポットライトを

自動運転技術のクオリティそのものに注目が集まるところだが、その根底にあるのが道路交通の安全確保に向けた同社の考え方だ。自動運転における安全確保は、道路交通法などによる規制以前に、車両の制御をつかさどるAIがどのような理念のもと判断するのかが問われる。

各社のAIによる判断基準を標準化することで自動運転業界全体の安全確保を図ることもできる。自動運転技術の本格的な社会実装が目前に迫った今だからこそ、こうした取り組みにもしっかりと注目しておきたいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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