成長著しい自動運転関連市場。2020年代には自動運転レベル3(条件付き運転自動化)以上が実用化され、コネクテッド技術やサービス、MaaS(Mobility as a Service)分野など広範囲に波及しながら市場規模を拡大し続けていくものと思われる。
こういった憶測を裏付けるかのように、各調査会社が自動運転をはじめMaaSやライドシェア、センサー、コネクテッドカーなど、多岐にわたる予測調査結果を発表している。
次世代の自動運転関連市場は、どれほどの規模に達するのか。さまざまな調査に目を通し、各市場の将来規模をまとめてみた。
記事の目次
- ■自動運転:レベル3以上は2040年に4412万台に
- ■EV(電気自動車):米中欧で大幅増、2035年に6000万台超
- ■コネクテッドカー:新たなサービス引き金に急成長、2025年には2兆円規模に
- ■MaaS:2020年代に急拡大、2030年には6兆円規模に
- ■ライドシェア:2018年の7兆円規模から2025年には20兆円以上に
- ■CASE関連デバイス:2030年には13兆円見込む
- ■センサー:LiDAR需要拡大、2030年には3兆円規模に
- ■5G:基地局市場2023年に4兆円市場に
- ■車載ディスプレイ:多様化・高機能化進み、HUDは2035年には2412億円に
- ■テレマティクス保険:新規参入増加で市場拡大、2035年には2億3200万件規模に
- ■【まとめ】市場規模拡大のピークはまだ見えず…波及効果にも期待
■自動運転:レベル3以上は2040年に4412万台に
富士キメラ総研が2018年12月に発表した自動運転・AIカーの世界市場調査によると、自動車製造各社は2020年に高速道路や自動車専用道路における自動運転レベル3の実用化を目指しており、法規制やインフラ整備、社会における受容性の醸成などといった課題はあるものの、自動運転レベル4車両の実用化も身近なところまできている。レベル3以上の自動運転車の販売台数は2020年以降急速に伸び、2040年には4412万台、世界自動車販売台数の33.0%を占めると予測している。
また、アメリカに拠点を置く市場調査会社「グランドビューリサーチ」が2018年8月に発表したレポートによると、自動運転レベル4~5の無人型自動運転車の市場規模は2030年までに420万台に達するという。
【参考】富士キメラ総研の調査結果については「AI自動運転車、2040年に4412万台に 大半は「条件付き」運転自動化のレベル3」も参照。
■EV(電気自動車):米中欧で大幅増、2035年に6000万台超
富士経済が2018年12月に発表した主要20ヵ国のxEV(EV、PHV、HV、マイルドHV、FCV)市場(販売台数)に関する調査によると、地域別xEV販売台数では欧州が2017年の91万台から2035年には1545万台に達すると予測。同様に、米州では68万台から1804万台、中国では83万台から2045万台、日本は173万台から271万台で、総計では442万台から14.3倍となる6341万台に大幅に拡大すると予測している。
また、2018年6月に発表したHV(ハイブリッド)、PHV(プラグインハイブリッド)、EVの世界市場(販売台数)調査では、HVが2017年の208万台から2035年には420万台に、PHEVが40万台から1243万台に、EVが76万台から1125万台にそれぞれ増加すると予測している。
■コネクテッドカー:新たなサービス引き金に急成長、2025年には2兆円規模に
矢野経済研究所が2018年1月に発表した国内のコネクテッドカー関連市場の調査によると、新たなサービスの伸長や研究開発投資が行われることで、2020年の国内コネクテッドカー関連市場規模は1兆円規模に拡大すると予測しており、コネクテッドカーの増加、プローブ情報を使ったサービスやクラウドADASのサービスなどが利用されていくことから、2025年の同市場規模は2020年の約2倍の2兆円規模となると予測している。
なお、2016年の国内コネクテッドカー関連市場規模は、B2C市場が712億円、B2B市場が1850億円、研究開発投資が1418億円で、合計3980億円と推計している。
コネクテッドカーはこれまで、カーナビに付随するインフォテインメント・サービスが該当すると考えられてきたが、実際には自動運転カーとEV(電気自動車)の時代に対応すべく、走行データの収集・解析を中心とするものに変化してきており、消費者の目に留まりにくいB2B市場や研究開発投資の領域で大きく成長してきているという。
また、富士経済が2018年2月に発表したコネクテッドカーの世界市場調査によると、2035年にコネクテッドカー(乗用車)は2016年比で5.3倍となる1億1010万台に達し、普及率は96.3%に拡大するという。
■MaaS:2020年代に急拡大、2030年には6兆円規模に
矢野経済研究所が2019年2月に発表した国内MaaS市場調査によると、2018年はMaaSサービス事業者売上高ベースで845億円が見込まれており、2020年に1940億円、2025年に2兆1042億円、そして2030年には6兆3600億円に達するものと予測している。
2016年から2030年のCAGR(年平均成長率)は44.1%で推移するものとしており、今後、ゼロから立ち上がるサービスが多いことが想定されるため、CAGRは高い値になるとしている。
なお、同調査では、オンラインアプリまたはプラットフォームを用い、スマートフォンやICカードなどのモバイル機器を利用して予約や決済ができ、1台のモビリティに対して複数のユーザーが利用できる、あるいは1人のユーザーが異なる事業者に関わらず複数のモビリティを連続して利用できるサービスを対象としている。
一方、インドに本社を置くワイズガイ・リサーチ・コンサルタント社が2018年11月までに発表した世界市場規模に関する調査によると、2017年に241億ドル(約2兆7000億円)規模だったMaaS市場は2025年には2304億ドル(約25兆円)規模まで拡大するという。2018年から2025年までの年間平均成長率(CAGR)は32.6%と予測している。
また、世界4大会計事務所PwC傘下の米国の経営コンサルティング会社Strategy&が2018年11月に発表した「デジタル自動車レポート2018」によると、MaaS市場は米・欧・中3地域の合計で、2017年から2030年の間に年平均成長率(CAGR)25%で成長し、2030年までに1.4兆ドル(約155兆円)に到達すると想定されている。
地域別では、2030年に中国が6560億ドル(約72兆5000億円)、米国は2500億ドル(約27兆6000億円)、欧州は4510億米ドル(約49兆9000億円)に達するとしており、MaaSが自動車業界における売上の22%(2017年は2%)、利益の30%(同1%未満)を占めるという。
【参考】関連記事としては「MaaSの国内市場規模、2030年には飲食市場上回る6兆円台に」も参照。
■ライドシェア:2018年の7兆円規模から2025年には20兆円以上に
リサーチステーション合同会社が2019年1月までに発表したライドシェア市場に関するレポートによると、ライドシェアの世界市場は2018年段階では613億ドル(約7兆円)規模で、予測通りにいけば2025年には3倍以上に拡大するとしている。3倍以上と言えば20兆円を超える規模となる。
一方、米国の調査会社Juniper Research社が2016年までに発表したライドシェアの市場規模に関する調査によると、プラットフォーム事業者における市場規模は2015年の33億ドル(約3600億円)から2020年には約2倍となる65億ドル(約7200億円)に拡大すると予想している。
また、富士総研が2019年2月に発表した自動車関連の国内シェアサービス調査では、カープール型のライドシェア市場は2018年は1億円(見込み)だが2030年には131億円に達するものと予測している。
付随して、駐車場シェアリングは35億円から1094億円に、カーシェアリングは36億円から260億円になるとしている。
【参考】リサーチステーションの調査結果については「日本は置き去りのライドシェア世界市場、2025年に20兆円超え」も参照。
■CASE関連デバイス:2030年には13兆円見込む
CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング・サービス、電気自動車の頭文字をとった次世代モビリティ産業を象徴する造語だ。電子情報技術産業協会(JEITA)が2018年12月に発表したECU(電子制御装置)やCASE関連のデバイスに関する調査によると、CASE関連デバイスの世界生産額は2017年の3.5兆円から2030年には13兆3000億円に達するとの見通しを示した。
■センサー:LiDAR需要拡大、2030年には3兆円規模に
矢野経済研究所が2018年6月に発表したADAS・自動運転用キーデバイス・コンポーネントの世界市場の調査によると、2017年における世界市場規模は8959億1800万円に達しており、拡大基調が続いている。日米欧において2016年から2017年にかけてAEB(自動緊急ブレーキ)の標準搭載が進んでおり、日欧のNCAP(新車アセスメントプログラム)に対応するため、車両だけではなく歩行者保護のためのAEBの採用も増加傾向にあるという。
センサー別の世界市場規模は、ミリ波レーダーが2017年の3969憶800万円から2020年に7692憶8500万円、カメラが4458憶6000万円から8132憶8000万円、超音波センサーが506憶1600万円から838憶500万円、現在は低価格帯の赤外線レーザー系は2017年の25憶3400万円から24億4000万円とそれぞれ予測している。
2021年以降については、高速道路上における自動運転レベル2の自動運転機能の採用が日米欧の主要自動車メーカーを中心に進み、車両一台当たりのセンサー搭載個数が増加するため、2025年の世界市場規模は2兆9958億5500万円と予測している。
また、2025年以降は、自動運転レベル3の高級車、MaaS向け商用車の市場も本格的に立ち上がるためLiDARの需要も拡大し、2030年のADAS・自動運転用センサーの世界市場規模は3兆2755億2700万円に達するとしている。
レーダーと超音波センサーは出荷数量は拡大するもののコストダウンが進み、市場規模は2025年よりも縮小し、それぞれ1兆3914億9000万円、904億6200万円と試算した。カメラは、センシングカメラ、ビューカメラともに搭載率が上昇するとともに多機能・高画素化が進み、世界市場規模は1兆2976億7500万円に拡大するとみている。レーザー・LiDARは、レベル3以上の自動運転車の増加に比例して出荷数量も増加し、2030年には4959憶円と予測している。
【参考】矢野経済研究所の調査結果については「急拡大!2030年のLiDAR市場、現在の200倍に 5000億円規模、自動運転車普及で」も参照。
■5G:基地局市場2023年に4兆円市場に
富士キメラ総研が2018年6月に発表した第5世代移動通信システム(5G)関連市場調査によると、5Gは、LTEと比較して高速・大容量、多数同時接続、高信頼・低遅延という特徴があり、映像配信や低遅延を生かした自動運転車の実現、IoTの活用など、BtoCに加えてBtoB向けの市場拡大が期待されるとしている。
5G対応基地局世界市場は、2019年に1100億円と予測。その後、スモールセル基地局が拡大をけん引し、2023年にマクロセル基地局が1兆180億円、スモールセル基地局が2兆9500億円規模になると予測している。5G対応基地局合計では4兆1880億円で、LTEなども含めた基地局全体に占める5G対応の比率は80%を超えるとみている。
■車載ディスプレイ:多様化・高機能化進み、HUDは2035年には2412億円に
富士経済が2018年10月に発表した車載ディスプレイに関する市場予測によると、2018年に4808億円を見込む車載ディスプレイ世界市場は、2022年には7184億円規模に達すると予測している。
後方カメラ用モニタディスプレイの搭載や、意匠性を高めたディスプレイオーディオの増加、ADASやHUD(ヘッドアップディスプレイ)といった先進技術を利用したシステムの採用によるディスプレイの搭載率増加が予想され、現在主流の平面・四角形状のディスプレイから、徐々に曲面ディスプレイや異形ディスプレイが拡大していくとみている。
曲面ディスプレイの市場規模は2018年の92億円(見込み)から2022年には600億円に、異形ディスプレイも同85億円から536億円に拡大していくと予測しているほか、操作インターフェイス系では、静電容量式タッチパネルの世界市場規模が同1299億円から2090億円に、触覚デバイスも同12億円から25億円に拡大していくとみている。
また、同社が2018年2月に発表した調査結果によると、HUD(ヘッドアップディスプレイ)は2017年の627億円から2035年には2412億円と約4倍に達することが予測されている。大衆車への搭載が進み市場は拡大傾向にあり、今後、コネクテッドカーの普及とともにADASとの機能連携が強まり、クラウド上から提供される運転支援情報の表示機器として、オプション設定から標準へと移行し、搭載はさらに増えるものとみられている。
一方、矢野経済研究所が2018年12月に発表した車載用ディスプレイ市場調査によると、メーカー出荷数量ベースは2017年に1億4868万枚で、2021年には1億9199万枚に成長と予測している。
■テレマティクス保険:新規参入増加で市場拡大、2035年には2億3200万件規模に
富士経済が2018年2月に発表したコネクテッドカーの世界市場調査の中で、注目市場としてテレマティクス自動車保険に触れている。現在欧米を中心に加入者は急増しており、2017年見込み数は3170万件の状況。日本ではまだテスト段階だが、新たにサービスを開始する保険会社や2018年中にサービスを本格的に開始する保険会社も出てきており、商品ラインアップの充実とともに需要増加が期待される。
今後、保険会社や自動車関連会社以外も参入し、テレマティクス保険の価格競争が進むとみられる。従来の保険料より安価になるケースが多いとみられることから加入者数の増加が予想され、さらなる市場の拡大が期待されるとしており、2035年には2億3200万件に達すると予測している。
■【まとめ】市場規模拡大のピークはまだ見えず…波及効果にも期待
自動運転に関連する市場は2020年代以降も軒並み規模拡大し続け、成長が落ち着く時点はまだまだ先のようだ。特に、MaaSに代表されるサービス分野は未知数の要素が強く、予測をさらに上回る成長を遂げる可能性もある。
また、自動運転開発で磨かれたAI(人工知能)やセンサー技術などが、他分野に波及していくこともほぼ間違いなく、裾野はどんどん広がっていく。
さらに言えば、自動運転レベル5の実用化が大きなヤマ場となり、そこから社会構造そのものが変革していく可能性もある。
かつてパソコンやインターネットの普及により大きく社会が変わったのと同様、自動運転のインパクトも創造を超えるものになるだろう。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ」も参照。