世界最大級の家電見本市となる「CES 2019」が2019年1月8日から11日にかけ、米国ネバダ州ラスベガスの「ラスベガス・コンベンションセンター&ワールドセンター」で開催される。「自動運転」や「人工知能(AI)」などの分野でも多数の企業が出展し、全体では世界155カ国以上から4000社以上が参加するマンモスイベントとなる。
ウーバーが2018年末に自動運転タクシーの商用サービスを一部住民に対して提供し始めるなど、車両自体の実用化とMaaSなどと組み合わせたサービスの開発に各社が意気込む中、CES 2019ではモビリティ分野でどのような展示が注目を集めていくのか。注目企業の展示内容を紹介する。
記事の目次
- ■(日本)トヨタ:自動運転の進化に向けた新型実験車両「TRI-P4」を展示
- ■(日本)日産自動車:見えないものを可視化する将来技術「I2V」を展示
- ■(日本)ホンダ:ロボティクス・モビリティ分野などで研究開発パートナーなど募集
- ■(日本)ヤマハ発動機:カスタマイズ可能な低速自動運転モビリティ「PPM」をアピール
- ■(日本)デンソー:MaaS実現に向けた最新のコネクテッド技術を展示
- ■(日本)パイオニア:最新の3D-LiDARや周辺認識技術を紹介
- ■(ドイツ)ダイムラー:最新のインフォテイメントシステム「MBUX」の搭載車発表
- ■(ドイツ)BMW:次世代EVコンセプトカー「Vision iNEXT」の仮想ドライブを体験
- ■(ドイツ)ボッシュ:ドライバーレスEVシャトルを来場者にPR
- ■(韓国)現代モービス:窓ガラスをディスプレイ化する新技術を紹介
- ■CASE4分野に結びつくモビリティ関連の展示
■(日本)トヨタ:自動運転の進化に向けた新型実験車両「TRI-P4」を展示
トヨタ自動車のアメリカ現地法人であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)社は、自動運転技術の開発をさらに促進させるための新型実験車「TRI-P4」を展示する。
報道発表によると、新型実験車にはTRIが開発するガーディアン(高度安全運転支援システム)とショーファー(自動運転システム)を搭載させ、2019年春からの実証実験でこれらのシステムを試しながら開発に役立てていくようだ。
TRI-P4はトヨタの高級ブランド「レクサス」の旗艦セダン「LS」をベースにしている。画像センサーやLiDAR、自動運転向けのカメラも備えており、自動運転の頭脳として機能するコンピューターボックスもトランクに搭載されているという。
外形デザインは米ミシガン州のCALTY Design Researchが担当したという。
【参考】関連記事としては「トヨタのアメリカ子会社TRI、新型の自動運転実験車「TRI-P4」公開へ」も参照。
■(日本)日産自動車:見えないものを可視化する将来技術「I2V」を展示
日産自動車の展示は一際来場者の注目を集めそうだ。現実世界とバーチャルな世界を融合させ、運転手が見えないものを可視化する技術を展示するようだ。
将来的にコネクテッドカーに搭載する技術で、技術の名称は「Invisible-to-Visible(I2V)」だという。例えば建物があって見えないカーブの先を映し出すなどできるようで、ドライバーの運転を強力にサポートする技術と言えそうだ。
具体的には、日産の「SAM(シームレス・オートノマス・モビリティ)」と「プロパイロット」、車室内センサーがセンシングした情報を統合する「Omni-Sensing(オムニ・センシング)技術を活用するという。
【参考】関連記事としては「日産、”ビルを透明化する”将来技術発表 自動運転車に搭載へ」も参照。
■(日本)ホンダ:ロボティクス・モビリティ分野などで研究開発パートナーなど募集
ホンダはCES 2019では「ロボティクス」「モビリティ」「エネルギー」の3領域で研究開発パートナーと事業化パートナーを募る。
研究開発パートナーを募る技術としては、ロボティクス分野ではアタッチメントを取り付けることでさまざまな用途に活用可能な「Honda Autonomous Work Vehicle」を出展し、自律移動機能を開発している企業や屋外での自律移動モビリティー活用を検討する企業などを募るという。「Honda RaaS Platform」も出展し、ロボティクスサービスなどの開発企業もパートナーとして募集する。
事業化パートナーを募る技術としては、「Honda Omni Traction Drive System」の展示によって、前後・左右や斜め360度などを自由に移動可能な車輪機構を求める企業などを募集するようだ。
■(日本)ヤマハ発動機:カスタマイズ可能な低速自動運転モビリティ「PPM」をアピール
ヤマハ発動機は同社が開発する低速自動運転の移動サービスシステム「パブリック・パーソナル・モビリティ」(PPM)のほか、エア・ソリューションの提供に適した産業用無人ヘリコプターの次世代コンセプトモデルなどを展示する予定だ。
パブリック・パーソナル・モビリティは「低速自動運転×貨客混載」によって幅広い活用可能性を秘めていると言われる。基本的には数キロ程度の近距離移動での利用を想定したもので、移動販売車への変換なども可能なカスタマイズ性も強みだ。
CES 2019の会期中には野外道路でデモ走行も実施する。発表によれば「AI(人工知能)車掌」が搭乗して発車や停止をコントロールし、搭乗者の管理も行うという。
【参考】関連記事としては「ヤマハ発動機、CES 2019に出展 低速自動運転のPPMなど目玉に」も参照。
■(日本)デンソー:MaaS実現に向けた最新のコネクテッド技術を展示
デンソーは、MaaS(Mobility as a Service)を実現するコネクテッド技術の取り組みとして、多様な車両情報を一元管理・共有するためのクラウド技術「デジタルツイン」など3技術などを展示する。
3技術はそのほか、車両とクラウドを連携させるための車載エッジコンピューター「Mobility IoT Core」、車両のソフトウェアやデータの改ざん防止を目的とした「ブロックチェーン」。こうした技術を体感できる展示も行う予定だ。
デンソーのパートナー企業として技術開発を手掛けるアメリカのスタートアップ企業の取り組みも紹介する。コネクテッド分野ではRidecell社、サイバーセキュリティ分野ではDellFer社、センシング分野ではMetawave社、半導体分野ではThinCI社、ディスプレイ分野ではCanatu社の技術が披露される。
■(日本)パイオニア:最新の3D-LiDARや周辺認識技術を紹介
パイオニアのアメリカの販売子会社であるパイオニア・エレクトロニクス社は、自動運転に関連する先進技術やテレマティクスサービスなどについて来場者にアピールする。
目玉は3D-LiDARセンサーで、既に提供をスタートしているMEMSミラー方式の3種4モデルを紹介する。3D-LiDARだけではなく、自動運転車の周囲の状況を把握するための周辺環境認識アルゴリズムや、自動運転車の場所を把握する「自車位置推定アルゴリズム」に関するデモも行う予定だ。
自動運転レベル5(完全運転自動化)向けのコンセプト・コックピットも参考出品する予定で、今後のパイオニアの自動運転戦略を結集させた展示となりそうだ。
【参考】関連記事としては「パイオニア、CES 2019で3D-LiDARや周辺認識技術など紹介」も参照。
■(ドイツ)ダイムラー:最新のインフォテイメントシステム「MBUX」の搭載車発表
ドイツの大手自動車メーカーのダイムラーは、メルセデス・ベンツの新型「CLA」を世界に向けた発表する予定だ。「Mercedes-Benz User Experience」(MBUX)と呼ばれるインフォテイメントシステムを搭載させ、ダイムラーのコネクテッドカーの将来像を感じさせる展示となりそうだ。
また、ダイムラートラックは開発中の自動運転トラックに関する新たな戦略を発表するようだ。
ダイムラーは自動運転トラックの2025年までの実用化を目指している。CES 2019では会期中に自動運転車両を使ったデモ走行と試乗会を実施する予定で、運送業界などからも大きな注目を集めそう。
■(ドイツ)BMW:次世代EVコンセプトカー「Vision iNEXT」の仮想ドライブを体験
ドイツの自動車メーカーBMWは、同社が開発する次世代EV(電気自動車)コンセプト車両「BMW Vision iNEXT」のバーチャルドライブ(仮想ドライブ)を体験できるブースを出展する予定だ。
発表によれば、BMWのブースでは来場者が自動運転時代の高性能アシスタント機能「インテリジェント・パーソナル・アシスタント」も体験できるVR(仮想現実)ゴーグルをつけ、同社が開発する自動運転技術も体感できるようだ。
バーチャルドライブだけではなく、BMWが開発するコネクテッド技術の展示にも注目したいところだ。
■(ドイツ)ボッシュ:ドライバーレスEVシャトルを来場者にPR
ドイツの自動車部品大手ボッシュは、コネクテッドサービス機能を搭載したドライバーレスEV(電気自動車)シャトルのコンセプトカーを初出展する。
ボッシュは報道発表で「まもなくこのタイプのモビリティが主役となる」と強調している。モノやサービスをシームレスに接続し、車両の予約や料金の支払いなどに必要となるソフトウェアやハードウェアを搭載し、開発中のデジタルサービスも実装されるようだ。
ボッシュはまた、CES 2019に先立って発表されたCESイノベーションアワードを6つ受賞している。そのうちの一つが「車両ネットワーク化に向けたオールインワンの原理」で、V2X(ビークル・ツー・エブリシング)通信で使用されるWi-Fi・無線ベースの伝送テクノロジーに対応する汎用ネットワーク化ユニットを開発したという。
■(韓国)現代モービス:窓ガラスをディスプレイ化する新技術を紹介
韓国の自動車部品メーカーである現代モービス(ヒュンダイ・モービス)は、車両の窓ガラスをティスプレイ化してさまざまな情報を映し出す最新の車載インフォテイメントシステムを発表する。
完全自動運転車はAI(人工知能)システムが運転操作を完全にコントロールする。そのため極端に言えば、車両に乗る人は車両の外を見る必要が無くなる。こうした理由から、窓ガラスを全面ディスプレイ化し、さまざまな情報を映し出すことも可能になるわけだ。
現代モービスの車載インフォテイメントシステムでは、人がジェスチャーだけで画面の操作を行うことができるシステムもセットで来場者に披露される予定だという。
【参考】関連記事としては「自動運転車の窓ガラスをディスプレイに ヒュンダイ・モービスが新コンセプト発表へ」も参照。
■CASE4分野に結びつくモビリティ関連の展示
自動車業界ではCASE(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)それぞれの分野で要素技術やサービスの開発が進む。CES 2019でのモビリティ関連の展示もこの「C」「A」「S」「E」のいずれかに結びついている。
またCES 2019では次世代通信規格「5G」に関する展示も多いほか、米インテルも次世代コンピュータ事業を紹介する。自動運転業界からも注目も集めることになりそうだ。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ」も参照。