Googleの自動運転タクシー、「絶対乗るな」って本当?逆走に信号無視も

すでに毎週10万回規模で運行中



米国、中国を中心に実用化が進む自動運転タクシー。ネット上には、その無人化技術を称賛する声が多い一方、トラブルや危険性を指摘する声も少なくない。


業界をけん引するグーグルの自動運転タクシーも例外ではなく、SNSにトラブル画像や動画がアップされることも珍しくない。「乗るのはやめとけ」「ヤバい」といった声がSNSに上がることがある。実際、グーグルの自動運転タクシーによるトラブルがニュースとなって飛び交うこともある。

果たして、グーグルの自動運転タクシーはヤバいのか、それとも安全なのか。その実態に迫る。

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■グーグルの自動運転開発

毎週10万回超のライドを達成

グーグルは、グループ企業のWaymoが2018年から自動運転タクシーサービスを米アリゾナ州フェニクッスで提供している。現在カリフォルニア州サンフランシスコでもサービス展開しており、ロセンゼルスでも一部住民を対象にサービス実証を開始している。

今後、年内を目途にテキサス州オースティンでもサービスインする見込みで、2025年初頭には、ジョージア州アトランタでもUber Technologiesの配車アプリを通じて一般客の受け入れを開始し、徐々にサービスを拡大していくという。


すでに毎週10万回以上の乗車回数を実現しており、サンフランシスコなどではもはや珍しい存在ではなくなっている。

■自動運転車による事故の実態

3年余りで事故報告は744件

Google系Waymoが展開している自動運転タクシー=出典:Waymo公式ブログ

では、実際に自動運転車による事故はどれほど発生しているのか。NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が取りまとめている自動運転車を対象としたクラッシュレポートによると、事故報告が義務付けられた2021年7月から2024年8月15日までの間に計744件が報告されている(*同一の衝突事故が複数組織から報告されることもあり、実際の事故件数とは異なる場合がある)。

2021年7月~12月の期間は71件、2022年は166件、2023年は288件、2024年1月~8月15日の期間は219件となっている。


月別の最多は2023年8月の52件で、GM系Cruiseが人身事故によりサービスを停止した2023年10月以降やや減少したものの、2024年5月から3カ月連続で月間40件に達している。やはり増加傾向にあるようだ。

州別ではカリフォルニア州が449件で最多となっており、アリゾナ州155件、テキサス州64件、ネバダ州25件と続く。

企業別ではWaymoが最多、死亡事故はなし

企業別では、Waymoが401件、Cruise152件、GM146件、Transdev119件、Zoox60件、Argo AIとMay Mobility20件の順となっている。走行距離に比例していると言えそうだ。

その他自動車メーカー系では、トヨタの北米法人7件、メルセデス・ベンツ6件、フォルクスワーゲンとヒョンデが各5件といった状況だ。新興企業系では、WeRideとAurora Innovationが10件、Pony.aiとNuro7件、Motional6件、百度(Apollo)とEasymile3件、Navya1件といった具合だ。

大半は軽傷以下だが、中傷程度14件、重傷5件が発生している。死亡事故は今のところ報告されていない。

【参考】やや古いがNHTSAのクラッシュレポートについては「自動運転車の事故、Waymoが62件で最多 米当局が公表」も参照。

■Waymoの自動運転車による事故

電柱や自転車、前走車への接触も……

Waymo関連の事故では、は2024年5月、アリゾナ州フェニックスで電柱に衝突する事故が発生している。乗客はおらず車内は無人で、乗客を乗せるためにクルマを停車させる際に低速で電柱に衝突したようだ。この事故を受けWaymoはリコールを実施し、全672台のソフトウェアをアップデートした。

【参考】Waymoの事故については「Googleの自動運転、全672台がリコール!電柱との衝突事故を受け」も参照。

2024年2月には、サンフランシスコで自転車と衝突する事を起こした。Waymo車が乗客を乗せ交差点を左折しようとしていたところ、対向側からトラックが来たためWaymo車は一旦停止する。トラック通過後に左折を開始したところ、死角にいた自転車に気付くのが遅れて接触したようだ。

事故は軽微だったようで、自転車はそのまま立ち去ったためWaymoが自主的に通報した。

2023年12月には、フェニックスで牽引されていた車両に接触する事故が発生している。牽引車が不適切な方法でピックアップトラックを引っ張っており、このトラックに接触した。

逆向きで引かれるピックアップトラックの動きを誤って予測したようで、数分後には別のWaymo車も同トラックに接触したという。

2023年5月には、セーフティドライバー同乗のWaymo車がサンフランシスコで犬に接触する事故も発生している。放し飼いの犬が飛び出してきたことを自動運転システムは検知したものの、接触を避けることができなかったようだ。

NHTSAは2024年5月、Waymoの自動運転タクシーによる事故が相次いでいることを受け、予備調査を開始したようだ。報告された事故件数は22件だったが、調査により新たに9件の事故が判明したという。

米メディアによると、ゲートなどの静止物体への衝突や駐車車両との衝突などの事例が判明したという。NHTSAは新たに判明した事故についてWaymoに質問状を送り、回答とともに全ての事故に関するビデオを提出するよう要請している。

事故以外の問題事案も……

出典:X(THO〽️🅰️S🇺🇸)https://twitter.com/budrcn88/status/1782920628951220244

実際に発生した事故以外にも、Waymo車が対向車線に逸脱したうえ赤信号を無視したケースや、あおり運転のように蛇行を続けたケース、片側3~4車線の幹線道路に左折で進入して逆走したケース、自転車レーンに進入したケース、車道上で立ち往生するケースなど、一歩間違えれば大事故につながる事案もいろいろと報告されている。

こうした事故や事案を実際に目撃した人にとって、自動運転車のイメージは最悪に近いものとなるだろう。なるべく近づかず、距離を空けておきたい存在だ。

特に、自動運転タクシーの場合、全車両に原則同一の自動運転システムが搭載されているため、一台の挙動がおかしければ他の車両も疑いたくなる。あやしい運転を行う「Waymo Driver」という名のドライバーが全車両を操作しているからだ。

一台がおかしな挙動を行っていれば、それは全フリートにかかってくるため、自動運転車に恐怖を感じる人にとっては地獄となる。前走車がWaymo車だったため右折したところ、回避先にもWaymo車がいた上、後ろからもWaymo車が来た――という幻のシチュエーションに遭遇するかもしれない。

サービスとしてスタンダードな存在に近づいたとは言え、まだまだ自動運転車は目立つ存在だ。一般車両と異なる挙動をとれば当然悪目立ちしやすい。ひとたび事故を起こせば多くの人の目に留まりやすく、その印象は大きく損なわれることになるのだ。

自動運転車への攻撃・抗議活動も

自動運転車に対する負の感情や印象は、時としてターゲットへの攻撃となって表面化することもあるようだ。歩行者の安全や公共交通機関の利用を提唱する米団体「Safe Street Rebel」は2023年、自動運転車への抗議として、車両のボンネット上に「三角コーン」を置く活動を実施した。

同団体は自動車社会全般に疑問を投げかけており、自動運転車のみを「敵」とみなしているわけではないが、やり玉にあげられた格好だ。ボンネットにコーンを置かれた自動運転車はセンサーが異常を検知し、走行することができなくなる。

また、自動運転車への抗議か面白半分なのかはわからないが、自動運転車が襲撃される事案も複数発生している。

春節を迎えたサンフランシスコ中華街では、通りがかったWaymoの自動運転タクシーが群衆に取り囲まれた。無人車両へのちょっかいがエスカレートし、最終的に車両が炎上する事態に発展した。

無人化技術が犯罪の温床になる懸念も

襲撃ではないが、近々では女性が乗った自動運転タクシーがナンパ男性に行く手を遮られ、身動き取れなくなる事件も発生したようだ。過去には、無人の自動運転タクシーの運転席に乗り込み、車両を盗もうとした輩もいた(未遂)。

「ドライバー不在」という本来のメリットは、裏を返せば悪行をとがめる存在がいないということにもなる。管理者がいない空き家が立ち並ぶことで治安悪化が懸念されるのと同様、無人車両が犯罪の温床になりかねず、こうした問題を危惧する声も今後大きくなる可能性がありそうだ。

【参考】自動運転車への襲撃については「Google自動運転車への襲撃、セブンイレブンも過去に類似の被害」も参照。

Google自動運転車への襲撃、セブンイレブンも過去に類似の被害

SNSが小事を大事に変える

自動運転車の事故やミスは、周囲の車両のドライブレコーダーやスマートフォンなどに収められ、容赦なくSNSにさらされることも少なくない。内容によってはプチ炎上や大炎上することもある。

一般車両と異なる挙動をとれば当然目立ちやすく、ドライバーもいないため遠慮なくアップされやすいのかもしれない。

SNSがコミュニケーションツールとして浸透し、良くも悪くもバズりやすい社会となった。一昔前であれば表沙汰にならなかったようなちょっとしたトラブルも、ひとたびSNSに載ればネット民の餌食となり得る時代だ。

SNSにはドライバーレスの自動運転タクシーに初めて乗ってその技術水準を褒めたたえるものも多いが、人間の性と言うべきか、悪いものほど目に留まりやすく、そしてバズりやすい。そのため、「自動運転車すごい!」――よりも、「自動運転車ヤバくない?」――的な意見の方が多く集まってしまうのだろう。

【参考】Waymoの逆走については「Googleの自動運転車、公道を逆走!Xで目撃投稿」も参照。

同業他社のイメージも降りかかる

負の影響は、同業他社からも受ける。わかりやすい例はCruiseだろう。Cruiseも、緊急車両(消防車)の走行を妨げたり、嵐の影響で木などが倒れ注意喚起の黄色のテープが設置された場所に突っ込んだりとさまざまなトラブルを起こしている。

一般人からすれば、WaymoとCruiseの区別はどうでも良く、一括りに「自動運転車」として扱われる。Cruise車がトラブルを起こせば自動運転車の評価が下がり、Waymoの評価も下がるのだ。もちろん、これは逆も然りだ。

衝突を伴う事故はそれほど多くないかもしれないが、立ち往生などで周囲に迷惑をかけるケースは相当数に上るものと思われる。

また、制限速度など道路交通法を正しく守る走行が実勢速度にそぐわず、周囲のドライバーが苛立ちを覚えることも少なくないのではないだろうか。自動運転車に過失はないが、周囲の交通参加者にストレスを与える可能性がある点もイメージの悪化につながる。

■Waymoの自動運転車の安全性

事故発生率はすでに手動運転を下回る

では、実際Waymoの自動運転タクシーは危険なのか?――と言えば、答えはNOだ。Waymoが公表しているデータによると、エアバッグ展開事故や負傷を伴う事故、警察に報告された事故件数などの比率は、人間に比べWaymo車の方が少ないのだ。

Waymoのドライバーレス自動運転車は、2024年6月までに2,200万マイル(約3,500万キロ)走行している。フェニックスとサンフランシスコにおける100万マイル当たりのエアバッグ展開事故数は、人間1.45件に対しWaymo0.23件、負傷を伴う事故は人間2.92件、Waymo0.80件、警察に報告された事故件数は人間4.74件、Waymo2.48件となっているようだ。

現時点で人間を上回る安全性を担保していることがわかる。自動運転車は必要以上に速度を出さないため大きな事故を発生させにくい点も要因にあげられるが、それも自動運転車の特性であり、正しい走行方法だ。

自動運転車の逆走などあってはならない重大案件だが、人間による手動運転の逆走は毎日各所で行われている。立ち往生するドライバーもいれば、〇×ミサイルと言われるほどあちこちに突っ込むドライバーも珍しくない。

安全意識が高い熟練ドライバーと比べるとまだまだ至らない点は多いだろうが、人間による手動運転全体と比べればすでにWaymoの自動運転車は安全な領域に達しているのだ。もちろん、走行可能なエリアや速度域などに限りはあるが、問題点・課題を一つひとつ着実にクリアし、退化することなく現在進行形で進化の道を歩んでいる。

開発当初は技術的課題も多かったが地道に改良を重ね、技術が一定水準に達したからこそドライバーレスサービスを提供できるのだ。

■【まとめ】安全性と積極性のバランスが重要

SNSなどの影響で「ヤバい」とする声が大きく聞こえがちだが、実際はヤバいフェーズはずっと前に乗り越えており、熟練ドライバーへの道を着実に突き進んでいるのだ。単純比較はできないが、Cruiseと比べても重大トラブルは少ない印象だ。

サービス提供エリアは、フェニックスとサンフランシスコに加え、ロサンゼルス、オースティン、アトランタと拡大傾向にある。その過程でさまざまな事故の発生が懸念されるが、同時にフリートの増加により進化の速度も加速していく。

軽微な事故も起こさぬよう石橋を叩いてほふく前進していては、開発はどんどん遅れていく。ある意味、Waymoは安全性と積極性をバランスよく織り込んだ事業展開を行っていると言えるのではないだろうか。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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