米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)はこのほど、Google系の自動運転開発企業であるWaymoの自動運転タクシーによる事故が、報告よりも多く発見されたことをこのほど明らかにした。
2024年5月始めに調査を開始した当初の22件のほか、Waymoの自動運転タクシーが関与した事故がさらに9件あることが判明したという。
自動運転開発で米国のみならず世界をリードするWaymo。事故数について虚偽の報告を行っていた可能性もある。もちろん現時点では、故意の虚偽報告ではなく、報告すべき事案とWaymo側が認識していなかっただけの可能性もある。
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故一覧(2024年最新版) 日本・海外の事例を総まとめ」も参照。
■新たにゲートや駐車車両との衝突事例?
NHTSAはWaymoの自動運転タクシーについて、交通違反の可能性や17件の衝突事故など、異常な動きの運転をしているとして、調査を続けてきた。新たに判明した9件の事故がどういったものであるかは明らかにされていないが、NHTSAは「有能なドライバーであれば避けることができる、はっきりと目に見える物体との衝突があった」とコメントしているようだ。
米メディアの報道によると、NHTSAは「報告内容にはゲートやチェーンなど静止物体などとの衝突や、駐車車両との衝突、自動運転システムが交通安全制御装置やルールに従わなかったと思われる事例が含まれる」と、書面で述べているという。
NHTSAは追加で判明した事故について、2024年6月11日までに回答するようWaymoに質問状を送った。また、全ての事故についてのビデオを提出するよう要請している。
■世界初の商用無人タクシーを展開したWaymo
Waymoは、Googleの自動運転開発部門をスピンアウトする形で2016年12月に設立された。2018年12月に世界初となる商用自動運転タクシーサービス「Waymo One」を、アリゾナ州フェニックス郊外で一部ユーザーを対象に開始した。
2021年8月からはカリフォルニア州サンフランシスコ、2024年3月からはロサンゼルスでも本格的にサービスを開始し、2024年後半にはテキサス州オースティンにも拡大させていく予定となっている。
Waymoはこれまで、自動運転タクシーやトラック輸送、デリバリーなど、さまざまな用途に向けての自動運転システム「Waymo Driver」を開発していたが、トラック向けの自動運転開発は一時中止することを2023年7月に発表した。ビジネスの成長が著しい自動運転タクシーサービス事業に注力するためというのが理由だ。
■Waymo独走状態の潮目が変わる?
そんなWaymoにとって自動運転タクシー事業においてのライバルであったのが、GM傘下の米Cruiseだ。
そのCruiseは、自動運転タクシーが2023年10月に歩行者が重傷を負った事故を起こしたことなどが引き金となり、米国内で展開していた全ての運行を停止した。その後、サービス再開に向けて「手動運転」によるデータ収集を一部都市で再開すると2024年4月に発表している。
Cruiseの一時停滞により、米国の自動運転タクシー開発で独走状態となっていたWaymoであるが、今回のNHTSAによる指摘で潮目が変わる可能性もゼロではない。まずはNHTSAの6月11日期限の要請にどう対応するのか、引き続き注視したい。
【参考】関連記事としては「Googleの自動運転タクシー、すでに「週5万回規模」運行 3都市での実績値」も参照。