自動運転開発を手掛けるティアフォーはこのほど、経済産業省の補助のもと自動運転タクシーとトラックの開発を加速すると発表した。横展開可能な車両の開発と実用化に向けたサービス実証を推進していく構えだ。
海外で商用化されている自動運転タクシーは自家用車ベースの改造モデルが主流となっているが、まもなくZooxが専用設計のオリジナルモデルを投入する予定だ。今後、手動制御装置を備えないオリジナルモデルの実用化が徐々に進み始めるものと思われる。
ティアフォーが開発する自動運転タクシーはどのようなモデルとなるのか。その全貌に迫る。
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記事の目次
■ティアフォーの自動運転タクシー開発
自動運転タクシーと自動運転トラック開発を推進
ティアフォーは、自動運転開発者を対象とした経済産業省の令和5年度補正予算「モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援補助金」に採択され、自動運転タクシーサービスの社会実装に向けた「自動運転移動サービス用車両開発事業」と、物流サービスの社会実装に向けた「自動運転トラック開発事業」を推進するとしている。補助額の上限は2024年度において約7億円という。
自動運転によるタクシーサービスの早期社会実装を目指し、2024年度中に一般利用者を対象としたロボットタクシーによる移動サービス実証を開始する計画で、全国横展開を可能とする車両開発と都内複数地域におけるサービス実証を、アーバンテック事業を手掛けるAMANEと共同提案した。
AMANEとは、自動運転タクシーを活用したモビリティハブ構想の検証を行う。また、車両開発では東レ・カーボンマジック、都内複数地域におけるサービス実証では日本交通とそれぞれ連携して事業を進めていく。
これらの取り組みを通して自動運転タクシー量産化の準備を整え、すでに発表済みの自動運転タクシー事業を推進させるとともに、導入検討からサービス開始までを標準化することで事業参入を加速させ、自動運転タクシーの普及を支援していく方針だ。
新モデルはオリジナルのミニバンタイプ?
プレスリリースでは、ミニバンタイプの自動運転タクシー車両のイメージデザインが示されている。四方に360度LiDAR、ルーフ前方にソリッドステーキ式LiDARらしきものが配置された自動運転車両だ。
このモデルが、既存の量産車をベースに改造したものか、一から設計したものかで仕様は大きく変わる。
既存車ベースであれば、ハンドルなどの手動制御装置を備えた一般的な自動運転車となる。米Waymoなど先行する多くの企業が導入しているモデルと同じパターンだ。
量産車を利用することで製造コストを抑えることができ、また実証段階ではセーフティドライバー同乗のもと通常通り走行することができる。実用化後も、万が一の際は手動運転で対応することもできそうだ。
自動運転車としてオリジナル感や特別感は乏しいものの、メリットは大きい。
自動運転専用設計の可能性も?
一方、専用設計の場合、仕様の幅は広がる。従来の自家用車のように運転席を設置し、手動運転にも対応可能にするケースや、運転席を排除して自動運転専用とし、車内空間すべてを乗客がくつろげるよう設えるケースもある。
例えば、米Cruiseの自動運転サービス専用のオリジナルモデル「Origin」は運転席を備えず、車内にはゆったりとした対面座席を設けている。Zooxも同様で、前後の区別がないシンメトリーなデザインのオリジナルモデルを2024年中に実用化する計画だ。
タクシー専用モデルではないが、トヨタが開発を進めるe-Paletteは、移動サービスや移動コンビニなど、用途に応じて車内を改造できる仕様となっている。もともと運転席を備えない自動運転専用モデルだったが、実用性を考慮して運転席を搭載したモデルも用意したようだ。
果たして、ティアフォーが開発する自動運転タクシーはどのような仕様となるのか。要注目だ。
【参考】Originについては「ホンダの自動運転タクシー、Googleすら未実現の「運転席なし」」も参照。
JPN TAXIやShuttle Bus改良モデルも
ティアフォーの自動運転タクシー開発事業は、2019年にさかのぼる。JapanTaxi(現GO)、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーとともにトヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化する取り組みで、東京都内のお台場や西新宿などで実証を重ねている。これがティアフォーにおける自動運転タクシーの原点的モデルだ。
また、2024年5月に開催された東京都主催の国際イベント「SusHi Tech Tokyo 2024」では、次世代ロボットタクシー事業に向け開発を進める電気自動車(EV)のプロトタイプを展示した。
自動運転EVソリューション「fanfare(ファンファーレ)」のラインナップの一つ「Shuttle Bus(シャトルバス)」モデルを改良したもので、2025年までに次世代ロボットタクシー向けの新たな車両モデルとして製品化する予定という。
ステアリングやブレーキなどの駆動系電動化モジュールとレベル4水準の自動運転機能に対応した電気電子アーキテクチャを開発し、後付けのソフトウェアによってサービス提供時の自動運転機能を定義できるよう設計されている。
「Shuttle Bus」はファンファーレで紹介されている「Robo Shuttle」と同一と思われる。3.8×1.9×2.3メートルの取り回しの良いボディサイズで、外観はZooxのモデルに近い丸みを帯びたボックス型となっている。
対面式の座席に6人まで乗車することができる。最大時速20キロの低速モデルで、レベル2運転にも対応しているという。
▼SusHi Tech Tokyo 2024出展の様子はこちら(ティアフォー公式X)
https://x.com/tier_iv_japan/status/1791046191486206327
汎用性に優れたAutowareでさまざまなモデルが誕生する?
ティアフォーの自動運転タクシーは、JPN TAXIベース、ファンファーレのShuttle Busベース、プレスリリースで示されたミニバンモデル――とさまざまなタイプがあるようだが、基幹となる自動運転システム「Autoware」は共通している。
Autowareはさまざまなプラットフォームに統合可能であることが特徴の一つであるため、今後もさまざまなモデルが誕生する可能性が高い。ティアフォー自らによるオリジナルモデルはどのような仕様となるのか、要注目だ。
【参考】ティアフォーの取り組みについては「東京に自動運転タクシー!トヨタ車で11月事業化へ ティアフォー発表」も参照。
■自動運転トラック開発事業の概要
新東名で実証に着手、高精度地図不要のシステム開発へ
自動運転トラック開発においては、自動運転による物流サービスの実現を目指し、2024年度中に自動運転大型トラックを開発し、新東名高速道路の自動運転車優先レーンを含む区間で実証走行を開始する計画だ。
いすゞ自動車や三菱ふそうトラック・バスらパートナー企業の技術支援を受け、両社の大型トラック車両を基盤とした高速道路向け自動運転トラック車両の構築を進めていく。
2024年5月に発表した高速道路トラック向け自動運転システムの開発を加速し、早期導入を図っていく構えだ。
5月の発表では、独スタートアップdriveblocksの技術を活用することで、長距離・広域の高速道路環境に対応できる高精度地図を必要としない認識技術を導入するとしている。
2024年度の実証に向け、高速道路の一般的なシナリオに加え、衛星測位システムが利用できないトンネルや低照度環境など、さまざまなシナリオ下で時速100キロで正確に動作する認識機能の検証や走行車線のモデル作成を完了させ、リファレンスデザインとして提供していく。
開発成果となるリファレンスデザインには、オープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutowareの基本機能に加え、開発パートナー認定プログラム「TIER IV Autoware Partner Program」における協業で得られた高速道路トラックに特化した機能も含むとしている。
【参考】ティアフォーの自動運転トラック開発については「自動運転トラック、新東名高速で「高精度地図なし」実証 ティアフォー」も参照。https://jidounten-lab.com/u_47103
■【まとめ】社会実装フェーズ到来、自動運転社会の構築へ前進
自動運転バス、タクシー、トラック――と開発の幅を広げるティアフォー。Autowareは一定の水準に達し、量産化を見据えた取り組みも進展しており、本格的に社会実装を推し進めるフェーズに到達したようだ。
今後、公道実証で目にする機会も大幅に増えていくものと思われる。さまざまなパートナー企業とともに、国内の自動運転市場をどのように盛り上げていくか、そして自動運転社会をどのように構築していくのか、要注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシーとは?アメリカ・日本・中国の開発状況は?」も参照。