東京の西新宿エリアで、自動運転バスが運行する。運転手搭乗型の「自動運転レベル2」(部分運転自動化)の技術水準で走行する。
アメリカではGoogle傘下のWaymo(ウェイモ)が、すでに完全無人の「自動運転レベル4」(高度運転自動化)で自動運転タクシーを展開している。そのため、単純比較はできないものの、今回の取り組みはグーグル級の技術水準での運行とはならない。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシー、Waymoが「完全無人×一般向け」でスタート!セーフティドライバーすら乗せずに」「Waymoの自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。
とはいえ、西新宿で運行させるのは大型の自動運転バスで、Waymoの乗用車型の自動運転タクシーよりも車体がはるかに大きいため、事故が起きた際の被害規模などを考えると走行リスクも大きい。
ただし、走行ルートが決まっていない自動運転タクシーとは異なり、自動運転バスの運行ルートは決まっている。今回の西新宿エリアでの自動運転バスの運行は、こうした難易度に関する複数の視点を持って成果に注目したいところだ。
■西新宿エリアで10月に運行する自動運転バス
車両を提供するのは、自動運転バスの開発を手掛ける埼玉工業大学で、実際の営業バス路線と同様に走行するという。現在、乗車希望者の募集も行われている。
西新宿でのこの取り組みは、建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツが東京都都市整備局の「令和5年度 自動運転社会を見据えた都市づくりに関する調査検討業務委託」を受託し行うものになる。
走行中の位置計測などを東海理化が、高精度3次元地図の作成をアイサンテクノロジーが行う。車両提供や自動運転システムの開発・運用は、埼玉工業大学が手掛けている。京王バスは、乗務員派遣や運行管理などを担当する。
自動運転バスは、2023年10月2〜13日に運行される(10月5日、10日は運休)。走行するのは、現在の営業バス路線である都庁循環バスと同様の「新宿駅西口(地下)~都庁第一本庁舎~都庁第二本庁舎~新宿駅西口」というルートになる。
現在乗車希望者を募集中で、先着順の乗車予約を受け付けている。予約は、京王電鉄が運営するMaaSサービス「TAMa-GO」のウェブサイトまたはLINE公式アカウントから行う。運賃は無料。
■埼工大の自動運転バスが都内の公道で初走行
今回の自動運転バス走行で車両を提供しているのは埼玉工業大学だ。同大学の大型自動運転バスが東京都内の公道で走行するのは、これが初めてになるという。
使用される車両は、埼玉工業大学の自動運転技術開発センターが開発した、路線バスタイプの日野レインボーⅡをベースとした自動運転バスになる。全長9メートルで、着席定員18人、法定速度の時速50キロ以下で走行する。荒天やシステム調整で自動運転走行ができない場合は、手動運転に切り替える場合もあるようだ。
冒頭で触れた通り、自動運転レベルは「2」となり、車載センサーで自車位置を測定し、前方の他者や障害物など検知を行いながら自律走行する。なお車載センサーとして、GNSS(衛星測位システム)やLiDAR、IMU(慣性計測装置)、車外カメラが搭載されている。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。
自動運転レベルとは?(2023年最新版) https://t.co/B7vwnOlAbg @jidountenlab #自動運転 #レベル
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) January 11, 2023
■どんな成果をもたらすかも注目
埼玉工業大学は、自動運転開発を積極的に行う大学として知られている。2023年4月には、同大学の入学式において、新入生と保護者を乗せた大型自動運転バスが、大学と最寄り駅間の約1.6キロの公道を特別運行した。
また同年6月には埼玉県深谷市における地域公共交通の自動運転技術の導入と推進に向けて、「深谷自動運転実装コンソーシアム」連携協定を締結した。10月に実施される神奈川県川崎区内おける自動運転バスの実証実験運行にも参加している。
全体運営管理のパシフィックコンサルタンツは、自治体などと協業し、多数の自動運転の実証実験実績がある。また2020年5月には、オリエンタルコンサルタンツグローバル、ソフトバンクと共に、コネクテッドカーを利用した道路インフラメンテナンス関連事業を米国で展開するための合弁会社「i-Probe」を2020年5月に設立した。
今回の西新宿エリアでの自動運転バス走行では、新宿駅や都庁など、東京を代表するようなスポットをめぐる。どんな成果をもたらすか、注目を集めそうだ。
【参考】関連記事としては「西新宿で「LINEで自動運転車」サービス!ビル25階から遠隔監視」も参照。