自動運転と東京(2022年最新版)

2040年代に向け都市改革に着手



日本の首都・東京。多くの企業が集積する日本経済の中心地として、多方面で日本をリードする存在であることは言うまでもない。自動運転分野においてもその存在感は大きく、大都市ならではの取り組みが際立つ。







この記事では、東京都の戦略をはじめ、東京における自動運転の取り組みを網羅的に紹介していく。

■2016年ごろから取り組みが加速

東京都で自動運転に関する取り組みが加速し始めたのは、2016年ごろのようだ。東京都都市計画審議会が2016年に答申した「2040年代の東京の都市像とその実現に向けた道筋について」の中で、自動運転の導入による各種効果が提言され、同年発表された「2020年に向けた実行プラン」や2017年発表の「都市づくりのグランドデザイン」において本格導入に向けた検討を進めていく方針が打ち出された。

▼2040年代の東京の都市像とその実現に向けた道筋について 答申
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/keikaku/shingikai/toushin.htm

「都市づくりのグランドデザイン」では、人やモノがスムーズに移動できるよう道路から渋滞をなくすことや、道路空間をリメイクしてゆとりやにぎわいを生み出すこと、高度に連携した効率的な物流ネットワークを形成することなどが交通政策として掲げられ、自動運転技術やスマートモビリティなどの先端技術の導入やフィーダー交通の有効活用などが具体策として挙げられている。

2017年9月には、民間の公道実証をワンストップでサポートする「東京自動走行ワンストップセンター」を立ち上げた。公道実証に必要となる手続き関連の相談や関係機関との調整、公道実証の実施に係る関係機関への事前連絡、地域への周知などを担うもので、ZMPが同センターの支援第1号となり、2017年12月に遠隔型自動運転システムの実証を行っている。

2018年度からは、ビジネスモデルプロジェクトを支援する「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」も開始した。この事業における実証については後述する。

■「自動運転レーン」設置を検討

2019年には、将来の自動運転社会を見据え東京の地域特性に応じた都市づくりの在り方を検討する「自動運転社会を見据えた都市づくりのあり方検討会」を設置した。7回の検討を経て2021年度末に基本的な考え方を取りまとめた。都内各自治体は、マスタープランや地域交通計画など都市交通計画の策定にこの考え方を反映させていく方針だ。

「自動運転社会を見据えた都市づくりのあり方」では、2040年代の都市内交通における目指すべき東京の将来像として、以下を掲げた。

  • ①多様な交通モードの充実によるコンパクトでスマートな都市の実現
  • ②鉄道ストックを基軸とし、新たなモビリティやMaaSなどの先端技術を活用した人中心のモビリティネットワーク構築によるスムーズな移動の実現
  • ③道路空間の再配分により、車と人の適切な分担や中心部のにぎわい空間創出の実現
  • ④ポストコロナを見据えた新しい日常が定着したまちづくりの実現

▼自動運転社会を見据えた都市づくりの在り方
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/kotsu_butsuryu/jido_unten.html

①では、タクシーやバスなどの既存サービスと新交通システムや自動運転サービス、パーソナルモビリティといった新たなサービスを駆使した地域公共交通の再編により利便性の向上を図るとともに、自動運転技術やIoTを活用した地域内における物流の効率化を目指す。

②では、鉄道ストックを基軸に新たなモビリティやMaaSなどの先端技術を活用し、人中心のモビリティネットワーク構築によるスムーズな移動を実現する。

③では、道路ネットワークの整備と自動運転車の普及によって余裕の生じた車道部分を活用し、道路空間のリメイクを図っていく。

道路空間においては、高密度走行が可能で車線減少や幅員縮小の可能性もある自動運転の普及によって、車道空間と歩行者・自転車空間の再配分が可能となり、自転車通行空間の確保やゆとりのある歩行者空間、カーブサイドなどを創出することができるとしている。

例えば、幅員3.25メートルの片側3車線道路のうち2車線を減少し、幅員3メートル未満の自動運転レーンや自転車通行空間を新たに設けるといったイメージだ。

出典:東京都(※クリックorタップすると拡大できます)

路肩側の車道空間であるカーブサイドについても、歩行者の滞留空間やにぎわい空間、配送車両の荷さばきスペースなど多目的利用ができる空間として有効活用策を検討していく。

歩行者空間においては、自動宅配ロボットや電動車椅子などのパーソナルモビリティが通行することが想定され、これまでよりも幅員の広い歩道が必要になることが見込まれるため、歩行者空間を整備していくことが必要と結論付けている。

自動運転レーンに関しては、自動運転の特性を考慮した幅員の縮小やインフラ整備、路面標示などを踏まえ検討を進めていく。先行導入地域において多車線道路のうち1車線を自動運転レーンとして位置付け、道路インフラ側の必要な対応を踏まえた先行的な整備について検討していく方針だ。

駐車場に関しては、自動運転車の普及を見据え自動バレーパーキング方式の導入推進に向けた検討を進めていくこととしている。

自動運転技術を活用した移動サービスに関しては、地域のニーズを踏まえた検討が必要不可欠とし、中枢広域拠点域、新都市生活創造域、多摩広域拠点域、自然環境共生域の各地域において導入推進に向けた検討を進めていく。

【参考】自動運転社会を見据えた都市づくりの在り方については「東京都、「自動運転レーン」の先行整備を検討」も参照。

■ビジネスモデル構築プロジェクト
2018年度の取り組み

自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクトでは、2018年度に神奈川中央交通とSBドライブ(現BOLDLY)による「郊外部住宅団地での自動運転バスによる移動手段創出」と、日の丸交通とZMPによる「都心部での自動運転タクシーによるサービス実証」が採択された。

BOLDLYらは多摩ニュータウンで日野ポンチョをベースとした自動運転車両で遠隔運行管理システムやAI(人工知能)を活用した車内サービスの活用などについて実証を進めた。

ZMPらは千代田区などでトヨタエスティマをベースとした自動運転タクシーを用い、遠隔監視やICT技術を活用した配車サービスなどについて検証した。

2019年度の取り組み
「空港リムジンバスと連携した都心部での自動運転タクシーサービス」における取り組み=出典:JTBプレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)

2019年度は、日の丸交通やZMP、JTBなどによる「空港リムジンバスと連携した都心部での自動運転タクシーサービス」と、愛光観光・NTT東日本・NTTデータ・群馬大学による「島しょ部観光MaaSの実現に向けた移動手段創出実証」が採択された。

ZMPらは、空港リムジンバスの拠点と東京駅周辺を自動運転タクシーでつなぎ、MaaSを活用した効率的な配車サービスについて実証を進めた。

群馬大学らはEV(電気自動車)バス「eCOM-10」をベースにした自動運転車を用い、八丈島空港と既存交通間を自動運転バスで繋ぐビジネスモデルについて検証した。

2020年度の取り組み

2020年度は、Mobility Technologies・ティアフォー・損害保険ジャパン・KDDI・アイサンテクノロジーによる「5Gを活用した自動運転タクシーの事業化に向けた運行管理実証」と、WILLERによる「地域の公共交通・サービスと連携した自動運転の実用化」が採択されている。

ティアフォーらは、4G・5G混在エリアにおける連続車両運行や、一人で複数車両を監視する遠隔管制、専用モバイルアプリからのオンデマンド配車について実証を行った。

WILLERはNAVYA ARMAを用い、まちなか交流バス「IKEBUS」をはじめ結節する公共交通と接続した運行、飲食・物販のネット注文・宅配サービス、大学向けサービスなどの実証を進めた。2022年度中の事業化を目指す方針だ。

2021年度の取り組み

2021年度はMobility Technologiesなどによる「自動運転車両を活用した臨海副都心エリアにおける新たなモビリティサービスの実証」など3件が採択された。

ほかは、京王電鉄バス・日本モビリティ・ソフトバンク・あいおいニッセイ同和損害保険などによる「都心部特有の自動走行困難な営業ルートでの自動運転バス運行実証」、大成建設・ティアフォー・損害保険ジャパン・KDDI・アイサンテクノロジーなどによる「まちのインフラと協調した自動運転サービスの運行実証」だ。

Mobility Technologiesは、トヨタの「e-Palette(イーパレット)」を用い、臨海副都心エリアのシンボルプロムナード公園内のセンタープロムナードからセントラル広場を往復する1周約10分の運行を行うなど、実環境を想定した実証を進めた。

e-Palette=出典:トヨタ

京王電鉄バスらは、LiDARの白線・縁石認識機能を高度化した日野ポンチョロング2ドアをベースとした自動運転バスを用い、車外カメラ画像やセンサー情報を5Gの大容量通信で送信する遠隔監視や顔認証、アプリなどを活用した各種実証を進めた。

ティアフォーらは、インフラ支援情報による走行性向上や路上駐車回避機能などを拡充したトヨタJPN TAXI「匠」をベースとした自動運転車両を用い、5Gを活用したV2Iや非GPS環境における自車位置推定の精度向上、複数台同時の遠隔見守りなどの実証を行った。

■八王子で自動運転車いすや自動運搬ロボを実証

2021年3月には、八王子市内の南大沢駅周辺で自動運転車いすや自動運搬ロボットを活用した実証が行われたようだ。

Doog製の自動運転車いす「ガルー」や自動運搬ロボット「THOUZER」、WHILLの自動運転車いす「WHILL Model C」、avatarinのアバターロボット「newme」などを用い、自動運転パーソナルモビリティの走行実証や追従運搬、アバターロボットを利用した遠隔での来店者対応などを実証した。

■東京臨海部ではSIP実証も
出典:SIP公式サイト

東京臨海部では、国のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)関連の実証も2019年度から行われている。自動運転に必要なインフラの配置の在り方や、インフラ・自動運転車が道路交通に与える正負両面の影響などについて整理を進めてきた。

2021年度は自動車メーカーをはじめとする計22機関が参加し、仮想空間による安全性評価環境の構築などに取り組んだようだ。

【参考】東京臨海部における実証については「トヨタなど参加!SIP自動運転、東京臨海部で実証実験スタートへ」も参照。

■その他にもさまざまな取り組み
空飛ぶクルマ実用化に向けた事業にも本腰
出典:東京都

東京都は、空飛ぶクルマ実用化に向けた事業にも力を入れている。2018年度の「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」のもと、SkyDriveと日本電気(NEC)がeVTOL(電動垂直離着陸機)の製造・開発や有人試験飛行を通じた機体認証に耐え得る安全性・信頼性の向上などに取り組んでいる。

2022年度には、ベイエリアを舞台とした「東京ベイeSGプロジェクト」における先行プロジェクトとして、空飛ぶクルマやマイクロモビリティなどの次世代モビリティビジネスの社会実装を目指す事業を公募している。

【参考】空飛ぶクルマ関連の取り組みについては「東京都、「埋立地」で空飛ぶクルマ実装へ 夏ごろに事業者募集」も参照。

都市の3Dデジタルマップ化プロジェクトも進行

都はスマート東京実現に向け、超スマート社会の基軸となるデジタルツインの実現の基盤として「都市の3Dデジタルマップ」の構築を進めている。

西新宿、都心部、ベイエリア、南大沢といった2021年度のモデルエリアをはじめ、都市再生緊急整備地域や都市開発諸制度拠点地区など都市機能集約が特に進むエリアでは、道路や建物低層部など足元レベルの3D点群データを取得・活用しながら道路モデルの精緻化を進めており、自動宅配ロボット走行などへの活用について一定の汎用性も確認されているという。

今後、モデルエリアに加え都市再生緊急整備地域など順次3Dデジタルマップの整備・実装・運用を進め、都内全域を網羅していく計画だ。

ホンダも東京都内でレベル4実証

ホンダのモビリティサービス事業運営子会社ホンダモビリティソリューションズは2022年4月、帝都自動車交通と国際自動車とともに、2020年代半ばの都心部での自動運転モビリティサービスの提供開始に向け検討を進めていくことに合意したと発表した。

米GMとCruise(クルーズ)と3社で共同開発した自動運転モビリティサービス専用車両「クルーズ・オリジン」を導入し、オンデマンド型無人移動サービスの提供を目指す構えだ。

時事通信の独自取材によると、公道実証を始めることをホンダモビリティソリューションズの高見聡社長が明らかにしたようだ。

■【まとめ】都市型自動運転の一大拠点として存在感を発揮

自動運転実証は大きく都市型と地方型に大別できるが、都市型の実証は東京に集中する。東京の過密した道路交通をクリアすれば、地方拠点都市における技術・サービスの導入もスムーズに進みそうだ。

政治の中心地である点や予算面などさまざまなストロングポイントを有しているのも一因だが、やはりイノベーションの多くは東京から生まれるのかもしれない。

今後、レベル4に関する法整備が進めば、自動運転実証が全国各地で一気に加速することが予想される。その際、都市型の一大拠点として東京都はどのように位置付けされるのか。今後の動向に引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









関連記事