日本の自動運転と国土交通省(2022年最新版) 取り組み内容は?

ラストマイルや道の駅拠点の取り組みなどけん引



官学民が一体となり実用化に向けた取り組みを推進している自動運転分野。「官」においては、国土交通省や経済産業省が中心となり、民間の研究開発や実証などをバックアップしている。







この記事では2022年5月時点の情報をもとに、日本の省庁の1つである国土交通省に焦点を当て、その取り組みに迫っていく。

■実証関連
ラストマイル自動運転サービス
出典:国土交通省

経済産業省との連携のもと、ラストマイル自動運転による移動サービスを2020年度に実現する目標に向け、車両技術の開発などを推進してきた。

実証では、小型の自動運転カートを活用した福井県永平寺町や沖縄県北谷町の取り組みや、自動運転バスを活用した茨城県日立市の取り組みなどが代表的で、永平寺町と北谷町では遠隔監視・操作型のレベル3車両が実用化されている。

【参考】永平寺町の取り組みについては「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

中型自動運転バスの実証

ラストマイル自動運転関連では、中型自動運転バスを使用した公道実証実験事業にも2019年度に着手している。

京阪バス(滋賀県大津市)、神姫バス(兵庫県三田市)、西日本鉄道(福岡県北九州市、苅田町)、茨城交通(茨城県日立市)、神奈川中央交通(神奈川県横浜市)の5事業者が選定され、各地域で実用化に向けた運行形式の実証を進めている。

【参考】中型自動運転バスの取り組みについては「2020年度の中型自動運転バス実証、事業者5者と各テーマは?」も参照。

中山間地域における道の駅を拠点とした自動運転サービス
出典:島根県飯南町

道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実装を目指し、2017年7月に検討会を設置し、国内各地の道の駅で実証を推進している。

2017年度は、秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」など5カ所で技術検証を行ったほか、8カ所でビジネスモデルの検討を進めた。その後も取り組みを拡大し、2021年度までに18カ所の地域で実証が行われている。

このうち、かみこあにと滋賀県東近江市の道の駅「奥永源寺渓流の里」、島根県飯南町の道の駅「赤来高原」、福岡県みやま市内の4カ所で自動運転車両を活用したサービスがスタートしている。

2022年度も各地域に続く動きが出てくるか、要注目だ。

【参考】道の駅における取り組みについては「全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ」も参照。

ニュータウンにおける多様な自動運転サービス

ニュータウンにおける持続可能な公共交通サービスの実現に向けた取り組みも進めており、2019年2月には東京都多摩市多摩ニュータウン諏訪・永山団地と兵庫県三木市緑が丘・青山地区でそれぞれ実証を行っている。

将来的なレベル4の段階的実装を念頭にドライバー同乗のもとレベル2で走行し、運営面における課題抽出やビジネスモデルの構築、社会受容性の課題などについて検証を進めている。

トラックの後続車無人隊列走行技術

物流関連では、経済産業省とともに高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術の実現に取り組んでいる。

2016年度に事業開始し、まず後続車有人システムの実証に着手した。後続車無人の実証は2019年1月以降にスタートし、同年6月に新東名の浜松いなさICから長泉沼津IC間でセーフティドライバー同乗のもと2~3台の後続車無人システムの車群を組む実証を行った。

2021年2月には、新東名の遠州森町PA~浜松SA間で後続車の運転席を実際に無人とした状態で実証を行い、3台の大型トラックが時速80キロで車間距離約9メートルの車群を組んで走行することに成功している。

今後は、2025年度をめどに高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実現を目指す方針で、運行管理システムをはじめ自動運転技術を搭載した高性能トラックの開発や社会実装を推進していく構えだ。

【参考】トラックの隊列走行については「自動運転トラックの隊列走行、割り込み発生にどう対処?」も参照。

■研究関連
自動運転戦略本部

国土交通省は2016年12月、未来投資会議などの議論や産学官の動向に対し的確に対応するため自動運転戦略本部を設置した。

車両に関する国際的な技術基準や自動運転車の事故時の賠償ルールなどの環境整備をはじめ、車両技術や道路と車両の連携技術といった自動運転技術の開発・普及促進、移動サービスや物流の生産性向上に資する実証実験・社会実装について検討する省内組織だ。2019年11月までに6回の会合を開いている。

トラック隊列走行や中山間地域における道の駅を拠点とした自動運転サービスなどについて、各施策のロードマップを確実に実施するための検討や準備を進めたほか、空港における自動運転実証や地理空間情報活用の環境整備、自動運転に係るルール整備など、全般的に議論を進めてきた。

▼国土交通省自動運転戦略本部
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk7_000018.html

先進安全自動車(ASV)推進検討会

交通事故削減を目的に1991年度からASV(先進安全自動車)推進計画を実施しており、現在は2021年度策定の第7期計画に着手している。

ドライバー支援を原則としているが、先進安全自動車と密接な関係にある自動運転技術も取り入れる形で議論しており、第6期計画では「自動運転の実現に向けたASVの推進」をテーマに①自動運転を念頭においた先進安全技術のあり方の整理②路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システムの技術的要件の検討③ISA(自動速度制御装置)の技術的要件の検討④実現されたASV技術を含む自動運転技術の普及――について検討を進めてきた。

まだ公表されていないが、7期においても自動運転技術が主要テーマに上り、議論はより深まっていくものと思われる。

▼ASV(先進安全自動車)|自動車総合安全情報
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/index.html

【参考】ASV推進検討会については「自動運転、死傷事故を約9割削減 ASV推進計画、第6期報告書を公表」も参照。

■法律・ガイドライン・制度関連
道路運送車両法や道路法の改正

法律関連では、道路運送車両法や道路運送法、道路法などを所管している。道路運送車両法は2020年4月施行の改正で保安基準対象装置に自動運行装置が追加されたほか、自動運行装置などに組み込まれたプログラムの改変による改造などに係る許可制度の創設についても盛り込まれている。

今後、レベル4が本格的に実用化された際、従来の保安基準で対応できない新たな規格の車両が登場してくる可能性が高く、さらなる法改正の動向に引き続き注視したいところだ。

など、道路法においても自動運転による運行を道路インフラ側から支援する「自動運行補助施設」が道路の附属物などとして追加されるなどの改正が行われている。

自動運転車の安全技術ガイドラインを策定

国土交通省は2018年9月、自動運転車の導入初期段階において車両が満たすべき安全要件として、レベル3とレベル4の自動運転システムを搭載する乗用車やトラック、バスを対象としたガイドラインを発表した。

運行設計領域(ODD)の設定、自動運転システムの安全性、保安基準の遵守、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)、データ記録装置の搭載、サイバーセキュリティ、無人自動運転移動サービスに用いられる車両の安全性、安全性評価、使用過程における安全確保、自動運転車の使用者への情報提供――の10項目について指針を示している。

▼自動運転車の安全技術ガイドライン|国土交通省自動車局
https://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf

【参考】安全技術ガイドラインについては「国土交通省、自動運転レベル3とレベル4に関する安全技術ガイドライン作成」も参照。

無人自動運転移動サービス実用化に向けたガイドライン発表

国土交通省は2019年6月、限定地域で無人自動運転移動サービスを導入する事業者を対象に安全確保の基本的な考え方を示す「限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン」を発表した。

2020年7月には、ラストマイル自動運転車両の開発から実用化、普及促進に向けたガイドライン「ラストマイル自動運転車両システム基本設計書」も発表した。エリアや速度、天候といった走行環境を具体例としてまとめるとともに、自動運転車が満たすべき安全基準への適合性確保にあたって設計時に留意すべきポイントを規定している。

▼限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001295527.pdf

【参考】ラストマイル自動運転車両システムのガイドラインについては「【資料解説】ラストマイル自動運転車両システムのガイドライン、国交省が策定」も参照。

中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」策定
出典:国土交通省

国土交通省は2020年、道路政策における中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」を策定・公表した。未来の道路空間の在り方を示す内容で、自動運転技術・サービスの普及も前提となっている。

既存の道路空間に自動運転を当てはめていく観点ではなく、目指すべき社会像に向け純粋に将来の道路の在り方を模索し、政策の方向性を示す中身だ。

▼中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/road/vision/pdf/01.pdf

■【まとめ】全方位で自動運転の実用化に貢献

掲載した取り組み以外にもスマートモビリティチャレンジなどさまざまな事業が国土交通省によって進められており、実証や研究・検討、法律面など全方位において自動運転の実用化に貢献していることがわかった。

自動運転技術の社会実装に向けては経産省とのつながりも深い。道路や車両を所管する省庁として、また各事業のけん引役として、実用化に向けた取り組みをいっそう加速していくことに期待したい。

■関連FAQ
    自動運転分野に対する国土交通省の取り組み方は?

    民間企業の研究開発や実証実験を支援したり、ガイドラインを策定したり、自動運転解禁に向けて所管する法律の改正などに向けて動いたりと、さまざまな取り組みを進めている。

    国土交通省がすでに策定したガイドラインは?

    2018年9月には「自動運転車の安全技術ガイドライン」を策定し、2019年6月には「限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン」を策定している。

    国土交通省以外にも自動運転に関するガイドラインを策定している?

    している。警察庁は「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」を策定・公表しているほか、「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」や「特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準」などの基準も策定している。詳しくは「自動運転|警察庁」を参照。

    国土交通省が策定した中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」とは?

    2020年に国土交通省が策定し、未来の道路空間はどうあるべきかを国土交通省として示したものだ。このビジョンでは、自動運転車を使った移動サービスが社会実装されることなどが盛り込まれている。

    SIPに国土交通省は携わっている?

    携わっている。SIPとは内閣府が事務局を務める「戦略的イノベーション創造プログラム」のことで、国土交通省や経済産業省もSIPの関係府省として携わっている。

(初稿公開日:2022年5月13日/最終更新日:2022年5月23日)

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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