トヨタ市販車史上最高の技術!レクサス新型LS、自動運転につながる「Lexus Teammate」とは?

自動車専用道路におけるハンズフリー運転が可能に



トヨタ・レクサスはこのほど、新型「LS」を世界初公開した。日本では2020年初冬の発売を予定している。


常にその時々の最新技術を採用してきたフラッグシップモデルは、ハンズフリー運転を可能にする最新のADAS(先進運転支援システム)「Lexus Teammate」を搭載する。2020年代の自動運転時代につながるADASとして要注目だ。

新型LSの概要とともに、Lexus Teammateに盛り込まれた最新技術を見ていこう。

■Lexus Teammateの概要
AI技術を取り入れたLexus Teammate

Lexus Teammateは、自動運転技術の恩恵を享受しながら運転の選択の自由をドライバーに委ねるトヨタ独自の自動運転の考え方「Mobility Teammate Concept」に基づいて開発されたもので、人とクルマが気持ちの通った仲間のようにお互いを高め合い、安全な運転を自由に楽しめることを重視している。

技術的特徴としては、Perceptive(高い認識性能)、Intelligent(知能化)、Interactive(ドライバーとクルマの対話)、Reliable(信頼性)、Upgradable(ソフトウェアアップデート)の5点を備え、トヨタの市販車史上最高の技術を搭載したモデルになる予定だ。


乗員に安心感を与える運転支援を実現する上で、必要不可欠となる車両の高い基本性能を徹底的に磨き上げるとともに、ディープラーニングを中心としたAI技術を取り入れることで、運転中に発生するさまざまな状況を予測し、対応を強力にサポートする。

また、車両の性能評価・開発や人材育成を担当するトヨタの「凄腕技能養成部」に所属する開発ドライバーの運転操作を取り入れたシステム制御にこだわることで、複雑な道路状況下でも安全性と優れた走行安定性を実現するという。

具体的な安全運転支援機能としては、「Advanced Drive」と「Advanced Park」が目玉となるようだ。

Advanced Drive:高速道路におけるハンズフリー運転を可能に

トヨタ最新のADASで、高速道路などの自動車専用道路において、ドライバー監視の下に交通状況に応じて車載システムが適切に認知・判断・操作を支援し、車線維持や車間維持、分岐、レーンチェンジ、追い越しなどを安全にサポートする。


クルマに運転操作を安心して任せられるよう基本性能を磨き上げ、常に安全を最優先に判断することでドライバーに信頼される運転操作を追求しており、ドライバーはアクセルやブレーキ、ハンドル操作から解放されるという。

明確に「ハンズフリー」「ハンズオフ」などと表現していないが、ハンドル操作からの解放はこれらの機能と同義で、高度な自動運転レベル2にあたる。日産スカイラインやBMW3シリーズなどが実現しているハンズフリー機能と同等のADASを、レクサスLSも搭載するのだ。

Advanced Park:駐車操作を強力にサポート

Advanced Parkは最新の高度駐車支援技術だ。ドライバー監視の下、カメラと超音波センサーを融合し全周囲を監視することで周囲の状況を適切に認知・判断し、ハンドル操作やアクセル、ブレーキ、シフトチェンジの全操作を車両が支援する。

モニターには俯瞰映像に切り返し位置や目標駐車位置を常に表示し、安全・安心でスムーズな駐車を実現するという。

LiDAR採用の報道も

公式発表には見当たらないが、LiDAR(ライダー)を4基搭載することが一部報道で報じられている。量産車におけるLiDARの採用は、自動運転レベル3モデルとして脚光を浴びた独アウディのA8に次ぐものと思われる。

スカイラインやBMW車などは三眼カメラを主体としたセンサー群でハンズフリー運転を実現しており、複数のLiDAR搭載は量販車初となる可能性が高い。

LiDARを巡っては、スウェーデンのボルボカーズがLiDAR開発スタートアップの米Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)と提携し、次世代型プラットフォームに搭載していく方針を発表している。

【参考】ボルボ・カーズの取り組みについては「ボルボ・カーズ、LiDARベンチャーの米Luminarと提携 次世代型車両に導入へ」も参照。

小型化・低価格化と高性能化が進み、1基数万円台のLiDARが実用化域に達したことから、今後も高度なレベル2車両やレベル3車両への搭載が加速していくものと思われる。こうしたLiDAR時代の幕開けを、トヨタのLSが飾ることになりそうだ。

なお、トヨタもルミナーと提携しており、最先端技術の研究開発を手掛ける子会社のTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の自動運転実験車両にもルミナー製LiDARが搭載されている。ただ、日経クロステックによると、レクサスLSのLiDARはデンソーと独コンチネンタルが供給するようだ。

■トヨタの自動運転開発

Mobility Teammate Conceptに基づき、トヨタはガーディアンとショーファーという2種類のアプローチで自動運転技術の開発を進めている。

ガーディアンは安全で信頼できるドライビングを高いレベルで可能にする高度安全運転支援技術で、新型LSに搭載されるLexus Teammateと同じベクトルと言える。一方のショーファーは完全な自動運転を実現するシステムで、機械学習やAIといった最先端テクノロジーとトヨタの信頼性を融合させ、安全かつ信頼できる自動運転を提供する技術だ。

【参考】ガーディアンについては「トヨタの運転支援技術「ガーディアン」とは? 自動運転機能なの?」も参照。

AI開発分野では、自動運転技術以外でもモビリティエキスパートとして乗員に特別な移動体験を提供するAIエージェント「YUI」を開発するなど、多方面で研究開発を進めているようだ。

また、自動運転ソフトウェアの先行開発を行うTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)は、自動運転向けに効率的に一般道の高精度地図生成を行う技術を開発・実証している。

専用の計測車両を使用せず、衛星や一般車両から得られる画像データなどを元に自動運転用の地図情報を生成する技術で、将来的には新型LSのようにカメラやLiDARを搭載した市販車を対象に技術を導入し、地図の作成や更新を行う可能性もありそうだ。

【参考】TRI-ADの高精度地図生成技術については「トヨタTRI-AD、効率的な自動運転用HDマップの更新に向けて実証実験」も参照。

■【まとめ】レベル3搭載車種にも今後注目

アイズオフ」を可能にする自動運転レベル3の搭載には至らなかったが、実用性を考慮し、まずは高度なレベル2技術でより自動運転に近づいた最新システムの社会実装を進めていくものと思われる。

その後にレベル3相当の技術が導入されることになるが、改めてレベル3搭載車種の行方についても注目が集まりそうだ。

今後、レーダークルーズコントロールやレーンチェンジアシスト機能などを備えた「Lexus CoDrive(Lexus Safety System + A)」の高度化を含め、新型LSが発売される冬までに詳細な技術や機能が発表される見込みで、続報に期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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