自動運転とテスラ、「近くレベル5実現」宣言は国抜きで語れない

レベル4から5へのステップアップに必要なこと





テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEO=出典:Heisenberg Media/Flickr (CC BY 2.0)

米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は2020年7月9日、中国・上海で開幕した「世界人工知能(AI)カンファレンス」において、自動運転レベル5(完全自動運転)について「近く実現するだろう」と語った。

自社の技術開発を強力に推し進め、世界で最初にレベル5の技術を確立させることに意欲を示した形だが、「レベル4」ではなく「レベル5」については、テスラが単独で実現させることは不可能だ。国によるさらなるインフラ整備や法整備が不可欠だからだ。







この点を理解するためには、レベル4とレベル5の違いを知る必要がある。

■レベル5実現に求められるもの

自動運転レベルは「0〜5」の6段階で示される。レベル3から自動運転が徐々に可能なようになり、レベル3では人がいつでも運転を代われる状況での自動運転、レベル4ではエリアを限定した完全自動運転、レベル5では走行場所を問わない完全自動運転という段階となる。

レベル4の自動運転は既に米ウェイモが自動運転タクシーの商用サービスで実現しているが、走行エリアは今のところ限られている。逆に言えば、走行エリアが限定されているからこそ地図データやルールの整備が比較的容易にでき、このサービスを展開できているのだ。

ただレベル5となると、国レベルでの高精度地図データの整備や法整備が不可欠となる。そのためには国家レベルの取り組みが必要となり、いくら企業が単独で自動運転レベル5の技術が確立しても、現実的にレベル5で自動車が無人走行することはできないのだ。

【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。

■国側にも求められるスピード感

マスク氏は前のめりな発言で知られており、今回の「近くレベル5実現」宣言もそうした部類に入るかもしれない。ただ、完全自動運転の実現によって交通事故の死者などが減ることを考えれば、マスク氏の「近く実現」という発言が現実のものとなるかは別として、レベル5は早期実現されるべきだ。

いずれにしても、民間企業側がどんどん技術開発を加速していく中、国側もそれに負けないスピード感でインフラ整備や法整備を進めていく必要がある。「近くレベル5実現」宣言は、国家抜きでは語れないのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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