自動車業界に革命を起こすと言われる次世代技術「自動運転」。既に日本を含む各国では公道での実証実験も行われており、一部では限定されたエリアでの導入も進んでいる。国単位での法整備も進み、実用化に向けた環境整備も整ってきた。
また自動運転社会が実現すると、自動運転車の市場規模はそのマーケットサイズを年々膨脹させ、センサー市場やソフトウェア市場、広告市場などさまざまな関連市場に大きな影響を与えていく。
この記事では現在までに公表されている市場予測レポートなどを基に、各市場の将来性を探る。
記事の目次
■自動運転車、2030年にレベル3〜5で22兆円規模に
アメリカに拠点を置く市場調査会社「グランドビューリサーチ」が2018年8月に発表した予測レポートによれば、自動運転レベル4(高度運転自動化)や自動運転レベル5(完全運転自動化)の無人型自動運転車の市場規模は2030年までに420万台に達するという。仮に自動運転車1台100万円で売られた場合、販売額ベースだけでも4兆2000億円に上る。
調査会社の株式会社矢野経済研究所(本社:東京都中野区/代表取締役社長:水越孝)の発表によれば、緊急時以外はAI(人工知能)が運転の主体となる自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の2030年の販売台数は1800万台近くに上る。同様の計算でいけば販売額ベースの市場規模は18兆円規模になり、レベル3〜5の市場規模は計22兆円(約2200万台)ほどになる。
【参考】自動運転車の市場規模については「自動運転車市場、2030年に「420万台」 主要市場は「アメリカ・中国・日本」|自動運転ラボ
■自動運転向けセンサー、LiDAR市場が2030年には200倍に
自動運転車はさまざまなセンサーを使って無人運転を実現する。そのコアセンサーとなるのが、光技術を活用して車両の周辺環境を検知するLiDAR(ライダー)や画像認識のためのカメラ、ミリ波レーダーなどだ。
矢野経済研究所が2018年7月に発表した自動運転や先進運転支援システム(ADAS)向けのセンサー市場(出荷額ベース)の予測によれば、世界のマーケットサイズは2017年の8959億円から2030年には約3兆2755億円規模まで約3.6倍に拡大するという。
特に注目すべきはLiDARの市場規模の拡大だ。矢野経済研究所によれば、レーザを含むLiDARの市場規模は、2017年の約25億円から2030年には約4959億円まで約200倍に急拡大するという。
【参考】矢野経済研究所の詳しい予測結果は「急拡大!2030年のLiDAR市場、現在の200倍に 5000億円規模、自動運転車普及で|自動運転ラボ
■車載向け組込ソフトウェア、自動運転車普及で倍増の8000億円に
自動運転車の普及によって、自動車がより「デジタル化」する中、車載向けの組み込みソフトウェアの市場規模も急拡大する。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の発表によると、2030年ごろには8000億円規模まで世界市場が拡大するという。
これは2014年の市場規模4613億円から比べると倍増近くまで拡大していることになる。自動運転車のほかUAV(無人航空機)などの普及で車載向け組み込みソフトウェアの市場は急拡大し、デンソーやパナソニック、富士ソフトなどもそれぞれマーケットシェアの維持・拡大に向けた事業戦略を打ち出し、開発スピードを加速されている。
【参考】車載向け組み込みソフトウェアの市場規模や各社の取り組みについては「自動運転の車載向け開発で競争過熱 組込ソフトウェア、2030年に2兆円市場 専門エンジニアの求人・需要増も|自動運転ラボ
■車内の過ごし方革命、自動運転車向け広告市場は52兆円規模に
自動運転車の普及で劇的に変わると言われているのが、人の車内での過ごし方だ。完全自動運転では運転に関して人が関与する必要が無くなるため、より車内空間での自由度が増す。
そんな中、自動運転車の車内における広告市場が将来爆発的に拡大するとの予測が2018年5月に発表された。スイスの金融大手UBSグループによると、自動運転車の広告・サービス市場はアメリカ国内だけでも2030年に4720億ドル(約52兆円)規模に達するという。
日本でも自動運転車向けの広告市場は将来大きな期待を持てるマーケットだ。電通も自動運転車向けの広告配信プラットフォームの構築に乗り出している。
【参考】自動運転車向けの広告市場については「自動運転の広告市場、年50兆円規模に googleシェア60%と試算|自動運転ラボ
■膨脹する市場を将来的に制覇するのはどの企業!?
自動運転車が普及するに連れ、さまざまな市場の膨脹は当面続くと思われる。どの企業がその膨脹する市場の覇者になっていくのだろうか。
また自動運転タクシーやライドシェアなどの関連サービス、5Gなどの通信などの市場規模がどう拡大していくのかも注視していきたい。