自動運転業界で求められているエンジニアは?【この機を逃すな!「自動運転×転職」特集 第4回】

AIやセンシング、通信、セキュリティ、HMI……





新型コロナウイルスで自動運転技術の有用性の認知がさらに広がり、今後さらに活気づくことが予想される自動運転業界。転職情報サイトを覗いてみると、軽く100を超える職種が用意されている。選び放題と受け取れなくもないが、細分化されればされるほどより専門的で高い技術が求められるとも言えそうだ。

非常に多岐にわたる自動運転求人だが、実際にどのような技術を持った人材が求められているのか。自動運転システムを構成する要素技術などを中心に、現場ではどのような開発が進められているのかを見ていこう。




■AI領域エンジニア:自動運転開発のカギを握る認識・解析技術を研究

自動運転において「脳」の役割を担うAI。車両を制御する各種判断を従来のドライバーに代わってコンピューターが行うため、自動運転における最重要開発分野であり、課題でもある。近年は機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)が定着し、AIの能力を向上させる技術も飛躍的に発展している。

現在各社が力を入れているのは、カメラやLiDARといったセンサー類が取得したデータ・画像を認識・分析する画像認識技術だ。センシング領域と重複するが、画像に移し出された人や自転車、他車、構造物、交通標識などを正確に把握(認識)し、これらがどのような挙動を行うかをAIが予測するのだ。

また、その結果をもとに自車をどのように制御するかといった判断もAIが行うことになる。この一連の作業をいかに正確かつ迅速に行うことができるかが自動運転において重要なカギとなり、認識技術とともに予測技術や解析技術なども必要となってくる。

認識技術には、画像認識をはじめ自車が置かれた状況を把握するシーン認識や自車位置特定、予測・判断技術にはリスク予測やパスプランニングなどの技術領域が含まれる。AI開発では、これらを円滑に実行するアルゴリズムを構築するのだ。

このほかコネクテッド領域やHMI、ビッグデータ解析などさまざまな領域でAIは活用される。AIそのものの品質保証に関する要素技術の研究も必要だろう。

■センシング領域エンジニア:五感を担うセンサー 「目」を中心に研究過熱

自動運転において「目」や「耳」などの役割を担うセンシング領域の研究開発も盛んだ。AIによる画像認識アルゴリズムの設計開発をはじめ、画像処理やレーダー信号処理などの認識処理、カメラやLiDARなど搭載するセンサーの情報を統合するフュージョン技術、車内に設置したカメラによる車内センシング、画像やレーダーを活用した自車位置特定技術、これらを可能にするハードウェアの開発などが考えられる。

開発の中心は「目」の役割を担うカメラやLiDARなどのセンサーそのものの開発やソフトウェア開発だが、自動運転においては移動時間を自由かつ有効なものにするため、車内におけるインフォテインメント技術やシステムと乗員のコミュニケーションを担うHMI(ヒューマンマシンインタフェース)技術も必要となる。

これらの開発に向け、車内センシング技術で乗員の状態を把握・予測する技術や、聴覚センサーなどを用いた音声認識技術の開発なども需要が高まっている。

また、より高い認識技術を可能とするため、イメージセンサーやLiDARといったハードウェアそのものを高度化する研究開発も必要だ。認識技術を担うソフトウェアと一体となった開発体制が求められる。

今後も自動運転においてはあらゆるシステムのセンサー化が進む可能性が高い。センサーはいわば人間の五感に代わるものとなるため、AI開発とともに自動運転開発の花形研究分野として扱われそうだ。

■通信技術:コネクテッド関連や遠隔監視、プラットフォームサービスなど通信需要が急増

自動運転では、コネクテッド化された車両が自動運転に必要とされる各種データのやり取りを管制センターや他車、交通インフラなどと随時行う仕組みがベースとなるほか、GPSをはじめとした衛星測位システムとの通信も欠かせない。

この領域では、大容量のデータを高速かつ安全に送受信する車載通信システム(DCM)の開発をはじめ、車載電子システムのアーキテクチャ設計、通信システムにおけるセキュリティ開発、通信制御・メモリ制御技術、標準インターフェイスの開発、コネクテッド技術を活用した各種統合制御などが研究課題として挙げられる。

今後主力となる5Gなど移動体通信技術も必然で、5GやLTE-V2Xを活用した車載無線機の回路設計などの開発需要もある。すでに6Gを見越した開発を進めている企業もあり、携帯電話分野における技術が生かされる場面も多そうだ。

また、遠隔監視システムを採用する自動運転システムも多いため、ベースとなる通信技術とともに通信技術を活用した新たな運転支援技術なども開発の余地がありそうだ。

コネクテッド技術は従来の自動車への標準搭載化も進んでいるほか、MaaSをはじめプラットフォームを活用した移動サービスも今後続々登場する可能性が高い。バーチャルキーなどの通信を生かした各種サービスも標準化されていくことが見込まれている。通信を要するサービスの増加は確実視されており、さまざまな場面で通信技術を生かす機会が生まれる。

【参考】遠隔監視システムについては「自動運転車、”脳”を積まない「遠隔型」が最有力? 鍵は通信技術」も参照。自動運転とデータ通信については「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。

■サイバーセキュリティ:ITセキュリティ技術を自動運転分野で発揮

自動運転においてコネクテッド化される場面の増加は、悪質なハッキング被害の増加にもつながる。このため、サイバーセキュリティ技術の強化も必然的に求められることになる。

車載ネットワークや車載制御システムにおける脅威を分析し対策を講じる技術や、センターとの連携を含めた車載情報セキュリティアーキテクチャの企画、車載セキュリティシステムの開発車載情報セキュリティ要素技術の研究・開発など、IT分野の技術を自動車・自動運転分野に応用していくスキルが求められそうだ。

■機械領域エンジニア:コンピュータ機器と化した自動運転車を設計

さまざまな新技術が搭載される自動運転車においては、自動運転OSをはじめ各種センサーやDCMなどがしっかりと連動・機能する仕組みを構築しなければならない。ソフトウェア開発が主軸となる自動運転システムだが、自動運転車両そのものはあくまでハードなのだ。

インターフェース技術をもとに、電子機器・コンピュータ機器と化した自動運転車を新たに設計するほか、構成する各種機器類の設計開発、ひいては車両の横方向への平行移動を可能にする制御技術など、次世代に求められる新たな技術開発も視野に臨むことが求められそうだ。

■HMI技術:人とクルマのコミュニケーション手段を開発

インフォテインメント・HMIの開発も急務だ。従来の車両ですでに実用化が進むコネクテッドサービスをはじめ、自動運転時代には乗員の意思を自然にくみ取るHMI技術が欠かせないものとなる。

新たなディスプレイ開発など人間工学に基づいた表示システムの研究開発を進めるのはもちろん、自然言語処理の研究開発や音声処理・認識・合成の研究開発、HMI向けの画像認識技術、ビッグデータを活用した行動推計、AIアルゴリズムを活用したシステムアーキテクチャなど、ハードからソフトまであらゆる研究開発が望まれる分野だ。

■データサイエンティスト:ビッグデータの有効活用で存在感

自動運転やMaaSは、交通関連のデータをはじめ周辺環境や気象、移動にまつわるデータなど膨大なビッグデータを生成する。こうした大量のデータを利活用するためのシステム開発や分析・加工アプリケーションを開発するデータサイエンティストも重要性を増している。

データ分析・解析システムの企画開発のほか、解析結果を基に新たなサービスを生み出し、プラットフォームやアプリ開発を進めていく人材が求められる。

【参考】ビッグデータについては「自動運転におけるビッグデータ解析、活用シーンまとめ&解説」も参照。




■【まとめ】選択肢は無限 自身が目指すエンジニア像を明確に

自動運転における開発領域は非常に多岐に及び、AI技術やセンシング技術、通信技術など核となる技術がさまざまな面で連動するため明確に分類することが難しい。だからこそ、それぞれの要素技術でとがった才能を発揮する人材や、それぞれの技術を的確に連動させる人材などさまざまな技術者が求められることになる。

自身の持つ技術が明確であれば、それに適した職種が必ず見つかる。そこから技術や知識に磨きをかけ、いっそうとがらせることで専門性を高めることも、応用を利かせて他分野を守備範囲に収めることも自分次第だ。

自身が目指すエンジニア像はどのようなものか。有望なエンジニアが結集する開発現場において技術と存在感をしっかりと発揮するためにも、ビジョンを明確にしておこう。

>>特集目次

>>第1回:自動運転業界への転職、3つのパターン

>>第2回:自動運転業界へ転職する具体的な方法は?

>>第3回:自動運転業界、採用に積極的な企業は?

>>第4回:自動運転業界で求められているエンジニアは?

>>第5回:非エンジニア職でも自動運転業界に転職できる!求められる職種は?

>>「自動運転×デジタル人材」で採用支援サービスを本格展開【ストロボ・下山哲平】

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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