都市部の配送、車を遠くに停め自動運転ロボが配達 こんな未来も

国交省主導の検討会での発言まとめ





国土交通省が主導する「都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会」が2019年10月に開かれた。







将来的な自動運転の活用に向け、自動運転技術の都市への影響可能性の抽出や整理をはじめ、自動運転技術の活用に関する検討を行うもので、2017年度から年2回ペースで開催している。

自動運転技術の普及により、現在の都市交通や交通体系、社会活動がどのように変わっていくのか――といった視点が盛り込まれており、非常に興味深い内容となっている。

そこで今回は、最新の検討会で各委員から出された意見をピックアップし、展望を探っていこう。

■検討会の概要

自動運転に関する技術開発を踏まえ、都市にとって望ましい自動運転技術の活用のあり方を検討する目的で2017年度に設置された。座長は早稲田大学創造理工学部の森本章倫教授が務めている。

国土交通省の取り組みにおいて実証実験などの検討項目として位置づけられた「ニュータウン」と「基幹的なバス」についても分科会を設置し、実務的な見地から検討を進めている。

■主な意見
貨物車両は離れた場所で荷下ろし、そこから小型の自動運転車で

「貨物車両は必ずしも店舗前で荷さばきを行わずとも、離れた場所で荷下ろしし、そこから小型の自動運転車によって歩道等を通って目的の店舗まで荷物を配送することが可能となるような社会も想定される」

高層ビルが林立する大都市などおいては、道路状況は常に過密状態にあり、集配などの貨物車両の駐停車を制限している地域もある。ビル内に荷さばきスペースを設置するなど、スムーズな交通確保に向けた取り組みは必須となっている。

こうした顕著な例は当然として、効率的な宅配を可能にする仕組みづくりは地方などでも有効で、自動運転機能を備えた宅配ロボットの実用化に期待が持たれるところだ。

例えば、各地域の集配ステーションを拠点に、道路を走行可能な自動運転車が各地に設置した宅配ロッカーと協調して荷物を収納したり、宅配需要が密集した地域の集配拠点から歩道を走行可能な小型の宅配ロボが各店や家を回ったりするなど、さまざまな仕組みが考えられる。

交通結節点での交通量が過多となる可能性

「今後50年で自動運転車が普及すると、不特定多数の他者が混在する乗り合いバスには乗りたがらず、パーソナルな小型の乗り物を求めるようになることで、交通結節点での交通量が過多となる可能性がある。そのため、例えば、乗り合いに運賃や乗降場所のインセンティブを付けていくような需要コントロールが必要となるのではないか」

自動運転化が進むことでモビリティの多様化が進み、その結果パーソナル志向が強まる可能性があるとし、交通結節点(交通ハブ)が混雑する懸念を示している。

自動運転社会の初期段階では、安全面などを考慮し一定のルートを走行する自動運転バスなどが主力になるが、技術の高度化に伴い自動運転タクシーなどのODD(運行設計領域)も拡大し自由度を増していくことが想定される。自動運転システムを搭載した超小型モビリティなども登場するだろう。

そのころには「より自由な移動」を求める声が多くなり、パーソナル化が進む。経済成長期に自家用車ブームが訪れたのと近い感覚だ。

交通ハブなどのインフラ整備に際し、早い段階からこうした未来を想定した開発を進めていくことも必要だ。

自動運転側がリスクを負わないような環境を

「従来、自動車の運転に係るリスク管理は人間のドライバーの責任において果たされてきたが、自動運転社会を見据え、自動運転側がリスクを負わないような環境を構築するための施策やプランニングが必要となるのではないか」

自動運転における責任の所在に関する意見だ。システムが自動車の制御を担う自動運転は、万が一の事故を起こした際の責任もシステム側に移行する部分が多い。交通ハブにおいては、自動運転車同士の事故などが起こりにくいインフラ作りを進めなければならないだろう。

別の観点では、個々の自動運転車のシステムに過失があるケースがすべてではなく、V2I(路車間通信)やダイナミックマップなどの情報不備に起因する事故発生なども想定される。また、社会受容性が一定レベルに達するまでは、自動運転車の事故を誘発するようなドライバーが出てくる可能性もある。

さまざまな観点からリスクを最小限に抑える取り組みが必要となるのだ。

交通結節点における充電施設の設計も重要に

「今回の検討では、CASEのうちConnected, Autonomous, Sharedの観点は含まれているが、Electricの観点が抜けている。交通結節点における充電施設の設計も重要になる」

自動運転の進展とともに導入が進むのがEV(電気自動車)だ。環境負荷の観点から欧州を中心にEV化の波が押し寄せているが、電気と自動運転の相性がよいため、自動運転車は軒並みEV化される見込みだ。

充電ステーションの設置は今後全国的に拡大していくものと思われるが、交通ハブにおいては必然ともいえる重要なインフラになることは間違いないだろう。

交通ハブ、利用者の需要に応じた差別化の可能性も

「現状、駅のすぐ近くで乗り換えできることが是とされているが、MaaSが普及していく上で、例えばパーソナルモビリティ等を使って駅から離れた場所で乗り換える等の選択肢も出てくることが考えられ、利用者の需要に応じた差別化が図られる可能性があるのではないか」

パーソナルモビリティの普及により移動の自由度が増すことで、交通ハブの機能が分散する可能性を指摘しているものと思われる。

現状、多くの都市が鉄道駅を中心に交通ハブを形成しているが、こうした駅前を第一の拠点に、パーソナルモビリティの活用になって第二の拠点、第三の拠点――といったものが形成される可能性もあらかじめ考慮しておく必要がありそうだ。

ハードではなくMaaS側からも情報提供できるように

「MaaSのようなサービスの普及が進むと人の流れが詳細に分かるため、ハードではなくMaaS側からも情報提供できるようになると考えられる」

MaaSにおける各種データは基本的にプラットフォーム上で管理されるため、利用者の移動データなどをビッグデータとして活用していくことが求められる。

これらのデータはまちづくりをはじめとした各公共政策においても有用で、都市計画などと結び付ける形でMaaS事業者らと情報共有を図ることが求められそうだ。

自動運転によって自由度の高い時間と空間の使い方が可能に

「まちづくりの観点からは、例えば乗降空間を主体別、時間別で分けたり、駐車場を遠くに設置することによって駅前のポテンシャルの高い空間を活用したりと、自動運転によって自由度の高い時間と空間の使い方が可能になると考えられる」

自動運転やMaaSの導入により、駅前に集中していた都市機能の分散化が起こることを示唆している。従来、商業地における一等地は移動の利便性をもとに、住宅地としての一等地は移動や環境面などをもとに形成される。

この移動の利便性を享受できる地域が自動運転やMaaSによって拡大するため、駐車場や一部のテナントオフィスなどは徐々に郊外化が進んでいく可能性がある。

これらを早期に見極め、再開発を進めていくことも後々重要性を増すことになるだろう。

【参考】自動運転やMaaSによる一等地への影響については「自動運転普及で「WeWork型」一等地不動産ビジネスは崩壊する」も参照。

運賃の支払いがICや顔認証だけで可能になると、リスクも高まる

「運賃の支払いがICや顔認証だけで可能になると、乗務員の負担が軽減される一方でリスクが高まる。運賃支払いの仕組みによって都市インフラのあり方も変わってくるため、ニュータウン等で実証実験を重ねていって社会受容性を確認していただきたい」

MaaSによる各移動サービスの決済はキャッシュレス決済が主体となり、スマートフォンを介して支払いの有無を確かめることがベースとなるが、決済の確認などを車両内で行うか、バス停などで行うかなど、仕組みはいろいろ考えられる。

また、こうした仕組みを悪用するケースが出てくる可能性も否めないほか、スマートフォンを持ち合わせていない層に対するアプローチも必要となる。実証段階でさまざまな声を聞き、効率的で安全な仕組みを構築していく必要がありそうだ。

我慢できるものという意見やネガティブ意見、その差異はどこから?

「基幹的なバスの分科会では、まちなかで自動運転車を走行させたところ、低速ではあるが地域に必要なもの、我慢できるものという意見が得られた一方で、ニュータウン分科会では、運用面の課題としてネガティブな意見が見受けられるが、その差異はどこから生まれるのか」

ニュータウン分科会では、大きめのアルファードを使用したことで、細い街路において後続車両が追い抜くことができずイライラされるという状況があったほか、自動運転車の挙動が分からない点などから不安を感じる意見があったようだ。

自動運転の公道実証においては、制限速度内で走行する自動運転車に対しあおり運転や無理な追い越しをかける例が海外・国内を問わず報告されている。

「自動運転車とはこういうものだ」という社会認知と許容の醸成や、自動運転車の挙動を周辺の車両や歩行者に周知するシステム、後続車が混雑してきたときに安全に道を譲る仕組みの導入など、さまざまな対策が求められる。

自治体・住民組織の取り組みなどをうまく把握し、実証実験に取り組む視点が大切

「自動運転の実証実験においては、地方自治体やバス事業者のみならず住民側の機運の有無の観点が大切である。その意味で、現在駅前広場設計の見直しに取り組んでいるところや、自動運転バスの導入に関心の高い自治体・住民組織の動向をうまく把握して、実証実験に取り組むという視点が大切ではないか」

社会受容性の重要性につながる意見だ。交通事業者や自治体が率先して動いても、実際に自動運転による移動サービスを享受する住民がそっぽを向いていたら意味がない。

自動運転に対する正しい理解とともに、導入に至る背景なども交え、地域全体が協力して自動運転に適した環境づくりを進めていくのが理想論だ。

■【まとめ】自動運転やMaaSが都市構造に変革をもたらす

自動運転やMaaSが、現在の都市構造にどのような変化を及ぼす可能性があるかがよくわかる。特に、交通結節点などのインフラ整備は、自動運転などの開発と並行して進めていかなければならず、将来のあるべき姿をしっかりと予測しておかないと後の祭りとなりかねない。

今後、都市構造に変革をもたらす自動運転やMaaSが各地の都市計画や交通政策などに盛り込まれていくことになる。中央(国土交通省)のみならず、地方においても早い段階から検討を進めていくことが肝要だ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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