コロナ禍で注目!自動運転での”コンタクトレス配送”実証まとめ

アメリカや中国で実用実証が拡大

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出典:Nuro公式ブログ

新型コロナウイルスの拡大を機に世界で注目が高まっているコンタクトレス配送(非接触配送)。コロナ禍が一段落したかと思われた国内でも再度感染が拡大しており、継続的な対策が強く求められていることを実感した人も少なくないだろう。

人と人との接触をできるだけ避けなければならない状況下、自動運転技術によって無人で走行する配送ロボットに掛けられる期待は思いのほか大きい。

コンタクトレス配送に向けたアメリカ中国・日本における取り組みを改めてまとめてみた。

■米国
Amazon.com:「Scout」がネットユーザーからの注文をさばく

EC(電子商取引)世界最大手の米Amazon.comは、自動配送ロボット「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」を使った配送実証に取り組んでいる。実証実験をスタートさせたのは2019年初旬のことで、まず本社があるシアトルで実用実証をスタートさせた。

同社の自動配送ロボットは、6つの車輪がついた40センチ四方程度の小型タイプ。ネットユーザーがAmazon.comを通じて注文した商品を、配送基地から顧客の自宅などにこのロボットが届けるという形だ。

注文した人が商品を受け取る際にはアプリを使って認証を行い、注文者以外の人が商品を受け取ることができないよう工夫されている。

Nuro:医療現場でサービス提供 パイロットプログラムも着々

乗用車に近いサイズの道路走行型配送ロボット「R2」の公道実証に力を入れる米スタートアップのNuroは、これまでにスーパー大手のKrogerやWalmart、宅配ピザ大手のDomino’sなどとパートナーシップを結び、無人配送のパイロットプログラムをテキサス州やアリゾナ州で実施してきた。

コロナ禍においては、連邦政府などと協議を進め、患者を収容するカリフォルニア州内のスタジアムやイベントセンターなどの代替医療施設で医薬品や食料品などの配送を実施したようだ。

また、2020年5月には、薬局チェーン大手のCVS Pharmacyと提携し、テキサス州で処方箋や日用品などの配送を行うパイロットプログラムに着手することを発表している。

2020年4月にカリフォルニア州から公道走行許可を受けるなど、着々と事業環境は整いつつあるようで、本格的な社会実装に向け飛躍の1年となりそうだ。

Starship Technologies:サービスエリア拡大中

歩道を走行可能な小型タイプの配送ロボットの開発を手掛ける米Starship Technologiesはこの分野の代表格で、コロナ禍前の2019年8月に英国や米国などで累計10万回の配達を完了している。

2020年3月には6つの新しい都市でサービスをスタートさせたと発表しており、テキサス州フリスコやバージニア州のフェアフェニックスなど、サービスエリアの拡大が進んでいるようだ。

Pony.ai:自動運転タクシーを配送に転用

自動運転開発を進める米中スタートアップのPony.aiは、EC企業と手を結び、米カリフォルニア州アーバインで自動運転タクシーを活用したコンタクトレス配送の取り組みに着手している。

カリフォルニア州フリーモントでも同市と協力し、自動運転車を非接触型の食事配達に適応させる形でサービスを展開している。

自動運転タクシーのフリートを転用する取り組みは、将来の自動運転タクシーによる貨客混載事業につながる可能性が高く、その意味でも注目だ。

ドローン配送にも大きな期待

コロナ禍により、無人のドローン配送も大きな注目を集めている。輸血用血液製剤など医療用品に特化したドローン配送サービスを手掛ける米スタートアップのZiplineは、これまでアフリカのルワンダやガーナに拠点を構え、血液や医薬品の配送を手掛けてきた。

コロナ禍においては、連保航空局から米ノースカロライナ州の病院へ医薬品などを配送する承認を得ており、同社は各家庭向けの配送なども計画しているという。

米物流大手UPSも2019年、スタートアップMatternetとの提携のもとドローン配送を手掛ける子会社を設立し、医療サンプルの配送などを行ってきたが、コロナ禍においてフロリダ州でもサービス提供を行うことを2020年4月に発表している。コロナウイルスの蔓延を阻止するためヘルスケア業界をサポートする方法を模索しているようだ。

■中国
京東や美団が無人配送車両で実証

新型コロナウイルスの発生源とされる中国では、いち早くコンタクトレス配送への注目が高まった。厳しい移動制限が課される中、局所的に自動運転の走行規制も緩み、実用実証の形で導入が進んでいるようだ。

EC大手の京東商城(JD.com)は2020年2月、自社開発した配送ロボットを活用して武漢市内の配送ステーションから病院まで医療用品の配送を行った。今後、ドローンを使って河北省や陝西省、江蘇省の遠隔地への配達も行う計画なども発表している。

オンデマンドサービスプラットフォーマーのMeituan Dianping(美団点評)も、コロナ禍を機に自動運転配送車を設計し、北京郊外で食料品の配送などを行ったようだ。

Neolixら配送ロボット開発企業の躍進にも注目

配送ロボットの開発を手掛けるスタートアップ・Neolix(新石器)は、EC大手のアリババやJD.comなどをはじめ、各社から注文が殺到したという。

Ninebot傘下でセグウェイの開発でおなじみのSegway Roboticsも、配送ロボットを開発している。搭載するLiDARやカメラなどで障害物を避けながら走行するようで、持ち前の電動モビリティ技術の応用に期待がかかる。

自動運転ソリューションの開発を手掛けるUISEE Technologyも注目の1社だ。同社は自動運転レベル3をはじめレベル4自動運転バス、無人バレーパーキング技術、無人物流車両などのシステムを確立している。

レベル4の無人物流車両は空港や工場など特定用途に限られているが、すでに香港国際空港などで実証済みで、今後の応用に注目したい。

中国ではこのほかにもIdriverplusやYUNJI TECHNOLOGY、YOGO Robotなど配送ロボットを開発する企業がひしめいている。配送センターなどの倉庫内で配送を手掛ける自律走行ロボットを開発するGeek+や、ホテルやカラオケルームなど室内向けの配送ロボットを中心に開発するUditechもなども需要が伸びているという。コロナ禍を契機に注目が高まり、業績を大きく伸ばす企業が続出する可能性もありそうだ。

【参考】Neolixについては「自動運転デリバリー、新型コロナが規制緩和の引き金に?」も参照。

■日本
配送ロボット実用化へ大きく前進

米国や中国に比べると配送ロボットの分野で出遅れた感が否めない日本だが、2020年に大きく動き出す可能性が出てきた。2020年5月に開催された未来投資会議で低速・小型の自動配送ロボットが議題に上がり、安倍晋三首相から早期実現を促す指示が出されたのだ。

これを受け、「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」は新たな配送サービスの実現に向け、自動走行ロボットの公道実証実験手順や基準緩和認定制度などについて意見をまとめ、2020年度中に事業者からの提案を受け、課題整理や実証計画の議論を進めていく方針を打ち出している。早ければ2020年中にも公道実証が可能になる見込みだ。

事業としては、NEDOが2020年6月まで「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」を公募した。自動走行ロボットの早期実現に向け、技術開発や開発成果の実証を集中的に行うとともに、自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現の観点から、社会受容性向上に向けた取組の在り方などの分析・検討を実施するとしている。

ZMP:宅配ロボット「DeliRo」の商用プログラム開始

民間開発勢では、ロボット開発ベンチャーのZMPが頭一つ抜け出している印象だ。自律走行可能な宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」は大学キャンパスなどで実証済みで、実用化域に達しているとの見方が強い。2020年5月からは、マップ作成やルート設定、現地チューニング、実証実験をセットにした商用プログラムも提供している。

カメラやレーザーセンサーで周囲の環境を360度認識しながら最大時速6キロで屋内外を走行することができ、目と音声によるコミュニケーション機能も搭載している。最大50kgまで積載可能で、荷室はロッカーのように区分けされており、運ぶ荷物の大きさや形状に応じて1ボックス、4ボックス、8ボックスの各モデルを選択することができる。

日用品や医薬品の宅配、クリーニングの集配、移動店舗などさまざまなユースケースを想定し、実証実験パートナーも広く募集しているようだ。

Hakobot:開発一段落 実証実験を加速

自動運転ロボットメーカーとして2018年5月に宮崎県で設立されたHakobotは、三笠製作所と提携を交わすなど開発体制の強化を進め、製品化を目指している。

アドバイザーを務めるホリエモンこと堀江貴文氏の「ホリエモン祭 in 名古屋」で披露されたほか、2019年11月には長崎県壱岐市で開催されたフェス「SDGs WEEKEND IKI COLORs」でも実証実験を行っている。

これまでクローズドな環境で実証実験を重ねていたが、安全面や機能面で一定の基準に達したと判断し、今後さまざまな場所で実証実験を実施するとしている。目にする機会が増え、話題が大きく広がることに期待したい。

楽天:西友とともに横須賀で商品配送実証

楽天と西友の取り組みにも注目したい。2019年9月から1カ月間、時速5〜6キロで走行する自動走行ロボットを活用し、神奈川県横須賀市内の「西友 リヴィンよこすか店」から港湾緑地「うみかぜ公園」へ商品を配送するというサービス実証を実施した。

配送料金は1回300円で、バーベキューなどでうみかぜ公園を訪れる一般顧客からの注文を受け、自動走行ロボットが西友から商品を運ぶ形だ。横須賀市が推進する「ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ」の一環として実施された。

海外製品導入の動きも

国内では、海外製品を導入する動きも活発だ。ソフトバンクグループのアスラテックは、香港のRice Roboticsが開発した屋内向け自律走行型配送ロボット「RICE(ライス)」の日本国内での展開に向けたサポートを2020年3月に開始している。NECネッツエスアイやマクニカは、米Saviokeが開発した屋内向け配送ロボット「Relay(リレイ)」の導入を支援している。

一方、日本郵便は2020年3月、本社でイタリア企業e-Noviaの子会社が開発した配送ロボット「YAPE」を活用した配送実験を行った。

森トラストは搬送ロボット「Relay」を活用したカフェメニューのデリバリー実証実験を、港区虎ノ門の城山トラストタワーのオフィスビル内で実施した。三菱地所は、ドイツの Deutsche Post AGが開発した運搬ロボット「PostBOT」やフランスのロボットメーカーEffidenceが開発した「EffiBOT」などを活用した実証実験を横浜ランドマークタワーで行っている。

このように、これまでは規制が緩い施設内や敷地内での運用が主となっていたが、今後公道実証が可能となれば、各社の取り組みも一気に加速する可能性がある。大きく動き出す1年として注目の年になりそうだ。

■【まとめ】配送ロボット開発分野、新規参入のチャンス

このほかにも、オーストラリアのスタートアップMarathon Targetsなど宅配ロボットを開発する企業は多い。大手では、自動車部品大手の仏ヴァレオがCES2020で電動配送ドロイド「Valeo eDeliver4U」を発表している。

国内勢では、工場内のみで機能する自動搬送ロボットの開発を手掛ける企業や、自律走行可能な警備ロボットを開発するベンチャーのSEQSENSEなどは存在するが、コンタクトレス配送を実現する自動運転ロボットの開発企業は依然少ない印象だ。

水面下における研究開発は不明だが、今のところ大手の本格参入も聞こえてこない。コロナ禍の特需が収まった後もラストワンマイルを中心とした配送需要は高まることが予想されており、大きな商機が眠っている分野だ。

類似技術の開発を進めている企業も、一念発起して配送ロボット分野へ進出してみてはどうだろうか。小売各社も、国が力を注いでいるこの機会を逃さず前向きに実証実験に着手し、開発と社会実装をぜひ促進してほしいところだ。

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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