自動運転デリバリー、新型コロナが規制緩和の引き金に?

中国で配送ロボットが活躍、事業化加速の予感





出典:ドミノピザ

依然として世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。収束までの道のりは長そうで、長期戦を覚悟しなければならないようだ。

経済・社会活動の停滞を懸念する声も依然として強いが、収束に向け他人との密接な接触をなるべく避ける行動が求められるなど、いわば引きこもりを推奨するかのような情勢が続いている。







このような状況下、中国では自動運転技術を搭載した配送ロボットの走行制限が緩和され、一部地域で配送ロボットを活用した取り組みが盛んに行われているようだ。

有事の際に自動運転技術がどのように活用されているのか。中国の例を取り上げ、その全貌を探ってみよう。

■新型コロナウイルスによる小売・宅配業への影響
コロナウイルスで在宅人口増加 宅配需要が大幅に増加中

新型コロナウイルスの感染は、主にくしゃみや咳などと一緒に放出されたウイルスを口や鼻から吸い込む飛沫感染と、手や周りの物に付着したウイルスに触れることで感染する接触感染によるものと考えられている。

厚生労働省によると、多くの事例において新型コロナウイルス感染者は周囲の人にほとんど感染させていないとする一方、一人の感染者から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例が存在している。換気が不十分な環境下で密に接することがクラスター発生の主要因とされているようだ。

こうした状況から、自粛要請を含めなるべく人との接触を避けようとする動きが広がっており、食料品や衛生用品を中心に買いだめを行う人や、逆に買い控えを行う人が続出している。

また、スーパーなどの人込みを避けるため、直接店に出向かず配送を頼む人も大幅に増加しており、欧州では料理や食品配達プラットフォームサービスを手掛けるウーバーイーツやデリバリー・ヒーローが、配送対象品を雑貨などに拡大しているようだ。

米アマゾンドットコムもオンラインショッピング需要の急増に伴い、従業員を新たに10万人雇用すると発表している。

一方、集配を担う従業員らがコロナウイルスに感染する事例も出ている。ヤマト運輸はセールスドライバー社員2人の感染が判明したと発表したほか、佐川急便も宅配協力会社の社員の感染が判明し、対応に追われている。

基本的にドライバーも被害者だが、需要の急増によって感染リスクが高まっている可能性もある。ひとたびウイルスキャリアになってしまうと、自身が感染源となるため仕事どころの話ではなくなってしまう。

感染を100%防止するには完全に外部との接触を断つ必要があるため、現代社会においては事実上不可能とも言える。感染リスクを少しでも低下させるため、外部との接触をなるべく避けようと宅配需要が増加した結果、個々のドライバーにかかる負担や接触機会が増加してしまうのも悲しい現実なのだ。

無人の配送ロボットに注目集まる

中国の広州市では2020年2月、新型コロナウイルスの感染予防措置強化に向け人や車両の出入りを制限する通告を発した。配達員は居住区に入ることができないため、配達物を居住区管理者が指定した場所に置き、利用者が受け取りに行く仕組みを採用した。少しでも接触を避けるための措置だ。北京市なども非接触配送を推奨しているようだ。

こうした状況下、自動運転技術によって無人で配送を行う宅配ロボットに注目が集まるのは必然とも言える。不特定多数の顧客と接触するドライバーの役割を機械が担うことで、飛沫感染を防ぐことができるからだ。

中国ネットメディアのTechNodeによると、中国では配送ロボットの規制が緩和され、一部地域で自動運転による配送需要が急増しているという。

2015年設立の中国スタートアップ・Neolix(新石器)は2019年5月、資金調達Aラウンドの完了とともに自動運転レベル4搭載の配送ロボットを年間3万台生産できる工場の存在や、同年中に1000台を超える納品があることなどを発表していたが、今回のコロナウイルスの影響により注目が高まり、注文が殺到しているという。

米メディアBloombergが2020年3月に報じた記事によると、Neolixはこの2カ月間で200台以上を受注し、その中にはアリババやJD.com(京東商城)らEC大手も名を連ねているという。同社の配送ロボットは幅1メートルと小柄ながら2.4立方メートルの積載容量を確保しており、バッテリーを交換することで24時間走行することができるという。

同社は2020年2月、シリーズA+で2億元(約30億円)を調達したことも報じられており、事業を加速していく可能性が高そうだ。

中国では京東グループの物流子会社京東物流が2019年、中国初の「5Gスマート物流モデルセンター」を上海に建設したほか、無人配送車も開発するなど物流の無人化を促進しており、2020年2月に武漢市で無人配送車による医療物資の配送を初めて行ったようだ。

このほか、物流大手の蘇寧物流(Suning Logistics)なども、南京市で無人配送ロボットを稼働している。

自動運転デリバリー事業化加速の契機に

中国内の各市が正式に規制を緩和したのか、あるいは黙認しているのかなどはわからないが、各地で配送ロボットを活用した取り組みが進んでいるのは紛れもない事実である。

本来であれば、公道走行に関するルールづくりや実証実験における安全性の証明など許認可にまつわる障壁が高く、実施までに相応の準備期間が必要だったはずだが、新型コロナウイルスの蔓延という危機的状況が、実用実証を加速するきっかけを生み出したようだ。

中国国内において自動運転ロボットの開発を手掛けるスタートアップは多く、これを契機に表舞台に登場する企業などもでてくるかもしれない。また、中国の事例をもとに、他国においても規制を緩和して実証を推奨する動きも出てくる可能性がある。

「世界中で多数の死者を出している新型コロナウイルスをきっかけにするのは不謹慎だ」とする感情論も出てきそうだが、自動運転をはじめとした最先端技術は、利便性の向上のみならず社会課題を解決する役割も担っている。

新型コロナウイルスを例にすると、飛沫感染リスクという社会課題が表面化したからこそ無人の自動運転ロボットにスポットライトが当てられたと言えるだろう。

こうした動きは配送ロボットだけでなく、消毒清掃用のロボットや配膳を行うロボットなど、病院内で活躍するロボットにも広がりを見せている。中には、感染防止対策の一環としてマスク着用の確認や体温モニタリング機能を備えた自動運転型の5Gパトロールロボットなども登場したようだ。

また、ロボットではないが、感染者との濃厚接触者を迅速に探し出すアプリや、自宅待機などを確認するアプリといったスマートフォンを活用した対策なども各国で進められている。一部の機能はプライバシーの侵害など別の問題を含みそうだが、ある意味世界各国が目指すスマート社会の一端を垣間見ているような印象だ。

【参考】5Gパトロールロボットについては「人のマスク着用を監視!自動運転パトロールロボ、中国で活躍」も参照。有事における自動運転の活用については「皮肉にも新型コロナが気付かせた自動運転の有用性 中国での活用方法は?」も参照。

■【まとめ】有事の際に生きる自動運転技術 取り組み促進を 

繰り返しになるが、こうした有事の際に最新技術の導入を目指す動きは決して不謹慎なものではない。大規模震災時にロボットの有効活用を探る取り組みと同一のものである。安全性の担保を前提に、むしろ促進すべきである。

自然災害同様、感染症の流行もいつ襲ってくるかはわからない。有事に備えるため、今まさに直面している有事を活用することで、技術の進展を含め将来の対策効果を引き上げることができる。その結果として、平時における自動運転デリバリーの事業化に弾みがつくのはおかしことではない。

ウイルスの蔓延を悲観していても何も始まらない。これを契機に技術がいっそう進展し、実用化に弾みがつくことに期待したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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