今年の入社式で「自動運転」という単語を使った企業は?

ジェイテクト、トヨタ車体…社長メッセージを分析



2020年4月1日に開催された今年の企業の入社式は、新型コロナウイルスの影響によって分散型やビデオメッセージ型で行われるケースが目立つなど、異例の状況となった。こうした状況に各メディアが注目しているが、自動運転ラボとしては、各企業の入社式で「自動運転」にどれだけ注目されたかにも注目したい。


この記事では新入社員に向けた社長メッセージの中で「自動運転」に触れた企業をいくつかピックアップし、紹介する。

■ジェイテクトのメッセージ

トヨタグループの株式会社ジェイテクトは、光洋精工と豊田工機が2006年に合併して誕生した自社を「歴史ある若い会社」であることに触れ、先人が築き上げた技術と想いについての大切さを伝えたうえで、以下の文章(公式リリースから引用)を述べている。

「自動車業界はまさに今、『100年に1度の大変革期』に直面しています。その変化は『CASE』と呼ばれ、中でも当社が大きく関わるのが『Autonomous』、自動運転です」

ジェイテクト社は、自動運転車用の電動パワーステアリングやバックアップ電源の「リチウムイオンキャパシタ」などを開発しており、社長メッセージではその技術の重要性なども説明した。



■トヨタ車体のメッセージ

創立75周年を迎えるトヨタ車の企画・開発・生産を担うトヨタ車体は、以下の文章(公式リリースから引用)を述べている。

「皆さんには、100周年に向けた次の四半世紀の担い手としてトヨタ車体をけん引してほしいと願っています。今、自動車業界はCASEと呼ばれる電動化や自動運転などの技術革新によって大変革期を迎えています。その競争に打ち勝つには、今までの成功体験ではなく『新たな発想とそれを実現するリーダー』が必要です」

同社は超小型EV「COMS(コムス)」を製品化・販売しており、自動運転機能はついていないが、MaaSの中において今後存在感を高める可能性を秘めている。

島根県は2015年にコムスを公用車として導入した。沖縄県の久米島では2019年7月から観光型MaaS事業「久米島Ha:mo」での活用も始まった。そのほか、岡山県津山市、鹿児島県薩摩川内市、山梨県南アルプス市、茨城県つくば市、愛知県豊田市、同名古屋市などというように、導入事例は多い。

【参考】関連記事としては「超小型モビリティが、高齢者の移動に革新をもたらす」も参照。

■住友電気工業のメッセージ

住友電気工業株式会社は冒頭で400年の歴史を持つ住友グループの共通理念を述べたうえで、自動運転の技術が自社の発展に欠かせないものと述べた。以下がその文章(公式リリースから引用)だ。

「グローバリゼーションの進展により、当社を取りまく環境変化はますます加速しています。また、AIやIoT、自動運転などの新技術や、さまざまなビジネスモデルは劇的に変化しており、世界中でイノベーションが起こっています。こうした大きな変化に対し、チャレンジしていくことが、当社グループが持続的に発展していくために必要です」

同社は、ソフトバンクとトヨタ自動車などの共同出資会社であるMONET Technologiesが設立した企業間連携組織「MONETコンソーシアム」にも参画している。

■長瀬産業のメッセージ

複合大手の長瀬産業株式会社は、自社が大きく変革する時期であると述べた。以下がその文章(公式リリースから引用)だ。

「トランプ大統領に代表されるポピュリズムの台頭で国際貿易の流れが変わりつつあります。CO2排出による環境破壊から、化学製品に求められる基準が日々変わっています。自動運転や5G通信などの新技術の実用化はもうすぐそこまで来ています。」

同社は2019年1月に「自動運転の目」を呼ばれるセンサー「LiDAR」の取り扱いを開始し、自動運転ビジネスに参入している。

■ANAホールディングスのメッセージ

ANAは、現在の航空ビジネスの苦難やこれまでの自社の安全観念について述べたうえで、以下の文章(公式リリースから引用)を述べている。

「これからの令和の時代、昭和・平成の時代には想像もつかなかった、未体験の世界が待っています。AI、ロボット、IoT、ドローン、顔認証技術、自動運転、こうしたデジタルトランスフォーメーションの技術を活かして、お客様の多様なニーズにお応えし、より良いサービスを提供すると同時に、労働力不足を補い、より働きやすい環境の構築を図るためにも、新しいテクノロジーを積極的に導入していく考えです」

ANAは空港制限区域内での自動運転バス導入に向け、2018年から実証実験を重ねている。

■デンカのメッセージ

化学素材メーカーであるデンカは、激しく変動する世界情勢、また日本で起きた多数の自然災害などについて述べてうえで、以下の文章(公式リリースから引用)を述べている。

「EVや自動運転に代表される自動車の急速な進歩や、IoTやAI、Big-Data、更には5Gなどサイバー空間の驚異的な膨張、遺伝子治療などに代表される医療革命などのメガトレンドが速度を増しており、市場における競争条件そのものを破壊的に変化させています。昨日の常識が今日の非常識となる世界に、我々は足を踏み入れているのです」

同社は自動車関連の製品として半導体の樹脂封止材などに用いられる「球状アルミナフィラー」はじめとした製品を開発している。

■【まとめ】入社式のスピーチから垣間見えるその企業の方向性

うちの会社はどの方向に舵を切っているのか…。このことを新入社員に伝えておくことは非常に重要だ。そして入社式はその絶好の機会だ。だからこそ各社の入社式での社長スピーチの内容を紐解けば、その企業の今後の戦略がみえてくる。

つまり、今年「自動運転」というキーワードを入社式のスピーチで使った企業は、自動運転業界としても今後注目していきたい企業ということになる。ちなみに自動運転ラボは昨年度も同様の視点で記事を書いているので、参考にしてみてほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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