自動運転開発で「特需」か!デンソー系J-QuAD、2期連続増益

統合制御ソフトなど開発、純利益5.6億円に



出典:J-QuAD DYNAMICS公式サイト

自動運転の統合制御ソフトウェア開発などを手掛けるデンソー系の株式会社J-QuAD DYNAMICS(本社:東京都中央区/代表取締役社長:渡辺浩二)=ジェイクワッド ダイナミクス=の第5期(2023年4月〜2024年3月)決算公告が、このほど官報に掲載された。当期純利益は前期比19.6%増の5億6,837万円で、2期連続での増益となった。

自動運転ソフト開発も手掛けるJ-QuAD。自動運転移動サービスの商用展開のフェーズはまだ先になりそうではあるが、各社が自動運転ソフトウェア開発に乗り出している状況にある。同社は自動運転タクシーなどの商用展開前の時点でも発生するソフトウェアについての開発ニーズを受け止めていることで、純利益が増えているとも考えられる。


このような流れが続けば、特需的に同社の売上高や利益は大きく伸びていく可能性がある。なお、これまでの純損益の推移は以下の通りとなっている。

<純損益の推移>
・第1期:4億754万1,000円
・第2期:6億9,928万1,000円
・第3期:3億3,870万3,000円
・第4期:4億7,498万7,000円
・第5期:5億6,837万2,000円

■決算概要(2024年3月31日現在)

賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 2,580,237
固定資産 2,625,052
資産の部合計 5,205,289
▼負債及び純資産の部
流動負債 3,026,404
(賞与引当金 515,647)
負債の部合計 3,026,404
株主資本 2,178,885
資本金 50,000
資本剰余金 50,000
資本準備金 50,000
利益剰余金 2,078,885
その他利益剰余金 2,078,885
(うち当期純利益 568,372)
純資産の部合計 2,178,885
負債及び純資産の部合計 5,205,289

出典:官報

■4社の技術と知見を集結して誕生

J-QuADは、センシング技術に強みを持つデンソー、パワートレイン技術で先端を走るアイシン、最高レベルのステアリング技術を有するジェイテクト、高信頼なブレーキ技術のアドヴィックスの4社により2019年4月に設立された合弁会社だ。自動運転・車両運動制御などのための統合制御ソフトウェアを開発することを目的としている。


4社が持つ自動運転・車両運動制御などの技術知見を結集することで、ソフトウェアの開発を効率化しスピードアップを図るとともに、自動車メーカーのニーズに合わせた開発を行うことで、より付加価値の高い車両統合制御システムを実現し、より良いクルマづくり、スマートなモビリティ社会の創造に貢献していく。

J-QuADは「ソフトウェア開発」「ソフトウェア販売」「エンジニアリングサービス」の3つの事業を展開している。技術領域としては、衝突被害軽減制動制御や車間距離・速度制御といった「自動運転・先進安全運転支援」のほか、リモートパーキングや自動バレーパーキングなどの「自動駐車」、「車両運動制御」、「新価値アプリケーション」の開発を手掛けている。

出典:J-QuAD DYNAMICS公式サイト

■自動運転の実用化に伴って需要も高まる?

J-QuADは次世代自動運転・先進安全支援領域におけるソフトウェア開発を強化するため、NTTデータ オートモビリジェンス研究所(ARC)に出資したことを2021年4月に発表した。また、J-QuAD、ARC、NTTデータが自動運転・先進安全支援領域の開発環境の共同開発・研究を中心とした業務提携を結んだことも発表している。

▼J-QuAD DYNAMICSによるNTTデータオートモビリジェンス研究所への資本参加および業務提携について|J-QuAD DYNAMICS
https://www.j-quad.co.jp/news/newsroom/2021/20210405/


2023年4月には、三井住友海上火災保険と共に、三井住友海上が保有する事故分析レポートを活用し、J-QuAD の低速衝突被害軽減ブレーキ装置の安全性を検証する取り組みを共同で行うことを発表した。

▼J-QuAD と三井住友海上、低速AEBの安全性について共同検証を開始|J-QuAD DYNAMICS
https://www.ms-ins.com/news/fy2023/pdf/0428_1.pdf

公式サイトでは、その後の事業に関するニュースは出ていないようだ。しかし順調に黒字を拡大させていることからも、同社の技術力が高い信頼を得ているとみられる。

J-QuADの次世代開発環境では、市場で起きたヒヤリハットシーンやソフトウェアの不具合を自動で吸い上げ、AI(人工知能)とデータを使い、半自動でソフトウェアを改善・アップデートしていくようなデータドリブンな開発環境を実現している。それにより、自動運転時代の大規模ソフトウェア開発の効率化・高品質化に貢献していくという。

自動運転はこの数年で本格実装されていく予定で、同社がますます躍進することが期待される。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「自動運転ソフト開発のJ-QuAD、純利益40%増!第4期決算」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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