
AIを活用した新興保険会社の米Lemonade(レモネード)は、テスラの自動運転ソフト「FSD」向けにほぼ無料の自動車保険を設定する提案を行った。
イーロン・マスク氏は反応していない模様だが、実際、FSDによって極めて高い安全性が保障され、事故の発生を大幅に抑制できるならば、こうした話は現実味を帯びてくるのではないだろうか。
マスク氏がこの提案に乗って自動運転向け保険に興味を持ち始めたら、2030年以降に世界市場が約10兆円にも及ぶ巨大市場に成長するという自動運転保険マーケットを奪いにいく可能性もありそうだ。
自動運転技術は保険料金に影響するのか。Lemonadeの概要とともに見ていこう。
【参考】関連記事としては「自動運転車向け保険、「10兆円の世界市場」形成へ」も参照。
記事の目次
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■Lemonadeの概要
AI保険サービスを提供

Lemonadeは2015年、CEOのDaniel Schreiber(ダニエル・シュライバー)氏と社長を務めるShai Wininger(シャイ・ウィニンガー)氏が立ち上げた新興保険会社だ。シュライバー氏はワイヤレス充電ソリューション開発を手掛けるPowermatで社長を務めていた経歴を持ち、ウィニンガー氏はフリーランサーと企業を繋ぐオンラインスキルマーケットプレイスFiverr創業者としても知られる。
LemonadeはAIと行動経済学を基盤としたピアツーピア型の保険サービスを提供しており、自動車保険をはじめ、住宅保険や賃貸保険、生命保険、ペット保険なども取り扱っている。ボットや機械学習を活用することで、書類手続きをゼロにするなど低コストで効率的な事業運営を行っている。
2017年の資金調達シリーズC、及び2019年のシリーズDはソフトバンクグループが主導している。2020年7月にニューヨーク証券取引所に上場を果たした。ソフトバンクグループは2025年に保有株式の一部を売却しているが、依然として主要株主として名を連ねている。
テレマティクス保険は時間帯や天候なども加味
Lemonadeの自動車保険はいわゆるテレマティクス保険で、メーカー・車種や走行距離などのほか、ドライバーの運転スタイルに応じて「Safety Score(セーフティスコア)」を割り出し、保険額を算出する。
セーフティスコアは、走行距離だけでなく携帯電話の使用やブレーキ、運転時間帯など、運転に関する複数の要素を総合的に評価し、住んでいる州に応じて0から10の11段階で算出する。時間帯や天候なども要素に含めている点がポイントだ。
運転ルートの危険度は走行する時間帯やタイミングによって異なる。ラッシュアワーの交通渋滞を走行し続けるより、開けた道路をゆっくりと走行する方が安全――といった具合だ。また、日中に用事を済ませる方が夜間よりも視界が良好で安全を確保しやすい。
気象条件も重要で、晴天時に運転する方が雨や雪、雹などの中で走行するよりもはるかにリスクが低い。悪天候時は、視界の悪化や路面状況の悪化、同じ状況に直面している他のドライバーの存在などがリスク要因となり、事故に遭う可能性が高くなるのだ。

道路条件も勘案される。高速道路や比較的シンプルな道路網を走る方が、複雑で混雑した道路を走るよりもリスクが低くなる。急カーブや二重左折レーン、四方停止標識、出口ランプなど、統計的に事故に遭う確率に影響を与える要素を踏まえた上で保険料金に反映するようだ。
さらに、道路の状態も重要で、例えば小さな穴が空いた手入れが必要な道路は、舗装の行き届いたアスファルト道路を走るよりも車にダメージを与える可能性がある――といった感じだ。
ドライバーの運転挙動に関しては、スマートフォンに搭載された慣性センサー(モーションセンサー)で検知する。例えば、一時停止の標識に気づかず急ブレーキを踏んでしまった場合などは、スマートフォンの加速度センサーやジャイロセンサーが反応する。
急加速や急ブレーキが頻繁に行われる場合は、Lemonadeアプリは車間距離の詰め過ぎと認識する。車間距離の詰め過ぎは運転の危険度をさらに高めるうえ、目的地に早く到着できるわけでもない。
コーナリングもスコアに影響する。カーブを曲がる際、カーブ前の減速の仕方とカーブ自体の鋭さが車の重心に影響を与える。カーブに高速で進入すると、特に車体前部が重い場合は横転する危険性がある。カーブに入る前に徐々に適切な安全速度まで減速し、カーブを抜ける際にゆっくりと加速するのがベストとしている。
携帯電話の使用も当然スコアに影響する。 手持ちであれハンズフリーであれ、携帯電話やモバイル機器の使用は交通事故の危険性を著しく高める。運転中に電話をかけたり、カーナビアプリに住所を入力しようとしたりすることはドライバーとしての安全を脅かす。
こうした挙動を、スマートフォンに搭載されたモーションセンサーを活用して高精度に判定し、セーフティスコアを算出する。スマートフォンがポケットの中にあってもダッシュボードホルダーの中にあっても些細な動きを検知し、分析することができるという。
さらに、Lemonade アプリは、対象者がドライバーなのか助手席の乗客なのか、公共交通機関を利用中なのか――といったことも判別・予測できるという。
このほか、交通違反履歴や保険の請求履歴なども加味される。
今のところ一般の乗用車向け保険しか扱っておらず、Uber Technologiesのライドシェアドライバーなど業務・商用目的の利用には対応していない。
車種別ではテスラへのひいきはなし?
車種別の参考料金は、トヨタ RAV4 ハイブリッドの場合月額34ドル、ハイランダー35ドル、ホンダの CR-V35ドル、フォードの F250 スーパーデューティレギュラーキャブ30ドル、リンカーンのMKT33ドル、テスラのモデルY32ドル、ロードスターやモデル3が36ドル、モデルSやモデルXが39ドルとなっている。
ウィニンガー氏がX上でマスク氏に「保険ほぼ無料」を提案
車種別料金を見る限り、特段テスラが割安になっているわけでもない。サービス上はテスラをひいきしているわけではないが、ウィニンガー氏は2025年10月、「If @elonmusk is game, we’d be happy to explore insuring Tesla FSD miles for (almost) free.」と投稿した。
「もしイーロン・マスク氏が賛成してくれるなら、テスラのFSDを(ほぼ)無料で保険に加入させることを喜んで検討する」といった内容だ。
If @elonmusk is game, we’d be happy to explore insuring Tesla FSD miles for (almost) free. https://t.co/VDcKX1JzSi
— Shai Wininger (@shai_wininger) October 17, 2025
投稿には、以下のようなリプライが寄せられている。
- テスラの保険がない州でも提供されるのでしょうか?ネブラスカ州民としては非常に興味深い
- テキサスにこれが必要です!
- フロリダ!フロリダにレモンを持って来よう
- Lemonadeは魅力的なオファーを提供している。FSDの保険を(ほぼ)無料で提供することで、FSDは消費者にとってはるかに魅力的になり、完全自動運転への移行が加速するでしょう
- これならFSD自体の月額費用をほぼカバーできそう
- 家族で5台の車を持っている。2台がテスラで、1台はFSD付き、もう1台はFSDなしだが、保険料が大幅に下がるならもう1台のテスラにもすぐにFSDを付ける。そして、娘の23年式ホンダシビックを下取りに出し、3台目のFSD付きテスラを買うことも検討する。
- イーロン・マスク氏お願いします!!これによりFSD搭載のテスラを購入するインセンティブが高まり、所有コストも下がる
- テスラの保険に加入している。まだベータ版だが運転の99%でFSDを使っている。保険料はもっと安くすべき。FSDを使っていないテスラドライバー全員の保険料を払っているような気がする。
今のところ、表向きにマスク氏からの反応はないようだが、テスラオーナーからの反応は上々なようだ。
テスラに代表されるBEVは、世界的に保険料が高いと言われる。国やオーナーによるが、年間3,000ドルを超えることも珍しくないという。最新モデルが中心で、バッテリーをはじめパーツ代が高いことなどが要因とされている。
こうした状況下、FSD利用時の保険料金がほぼ無料となるのはオーナーにとって非常にありがたい話だ。FSDのパッケージ価格は8,000ドルと高額だが、保険料金が安くなるならばその分を相殺できるため、利用者増加に大きく寄与するものと思われる。
テスラも自社で保険事業を手掛けているため何とも言えないところだが、こうした新たな保険商品はテスラにとっても大きなメリットがありそうだ。
■自動運転技術の安全性
一般車両比でFSDの事故は概ね7分の1の水準
では、保険料金をほぼ無料にできるほどテスラのFSDは事故を回避できるのか。テスラの安全レポートによると、FSD(監視付き)における衝突事故は511万マイルに1回発生しているという。テスラのアクティブセーフティ車は229万マイル、テスラの非アクティブセーフティ車は97万マイル、他社含む全米平均は70万マイルに1回の状況だ。
小規模な衝突事故は、FSD(監視付き)が148万マイル、テスラのアクティブセーフティ車は74万マイル、テスラの非アクティブセーフティ車は31万マイル、他社含む全米平均23万マイル――といった状況だ。
一般車両平均と比較し、FSDは概ね7分の1の水準だ。テスラによると、FSDは道路交通の安全性を80%以上改善できるという。2023年に米国では4万900人が命を落とし、負傷者数は190万人に上るが、FSDであればこのうち3万2,000人の命を救え、負傷者も190万人防げたかもしれないという。
なお、テスラが四半期ごとに発表しているAutopilot使用時の事故は、2025年第3四半期で走行距離636万マイルごとに1件という。前述のFSDの測定期間が四半期データなのか累計なのかなど不明だが、なぜかAutopilotの方が安全という結果になっている。
いずれにしろ、市街地でもハンズオフ運転を可能にするFSDは、正しく利用すれば非常に安全であることに異論はないだろう。
【参考】関連記事「テスラの自動運転・運転支援(Autopilot|FSD|ロボタクシー)部門を徹底解説」も参照。
Waymoは衝突事故を80%削減
世界トップ水準の自動運転技術を誇る米Waymoのデータを参照してみよう。フェニックス、サンフランシスコ、カリフォルニアにおける2024年末までのデータにおいて、警察に届け出があった衝突事故は100万マイルあたり0.021件(人間のドライバー0.232件)で、エアバッグ作動を伴う事故は0.354件(同1.649件)、負傷を伴う衝突事故は0.802件(同3.963件)という。
1件当たりの走行距離に換算し直すと、警察への届け出事故は4,762万マイル(同431万マイル)、エアバッグ作動事故は282万マイル(同61万マイル)、負傷事故125万マイル(同25万マイル)となる。
測定エリアなどがテスラの算出基準とは異なるため単純比較はできないが、レベル4のWaymoも当然手動運転に比べ非常に安全と言える。テスラもWaymoの数値ももらい事故も含んでいるため、第1当事者となった事故はさらに少ないことになる。
Waymoによると、フェニックスとサンフランシスコで5,000万マイル以上走行した場合、平均的な人間のドライバーと比較し、重傷事故91%、エアバッグ展開事故79%、負傷を伴う衝突事故80%を削減できるとしている。
安全性が高ければ保険は安くなる
Waymoは商用車だが、こうした安全性の高いクルマの保険料金が従来の一般車と同等――というのも確かにおかしな話だ。搭載するセンサーやコンピュータなど本体価格が高額な分保険料金が割高になるのは納得できるが、それを差し引いてもお釣りが出るくらい事故を防止できる安全性があるならば、保険料金を割引するのは妥当と言える。
実際、安全性が高まり事故が減少すれば、保険料率は下がる。日本でも、損害保険料率算出機構が2021年9月に自動車保険の参考純率を平均3.9%引き下げる内容の届出を行ったが、その要因としてADASの普及による事故減少を挙げている。
保険会社の多くは、事故防止や被害軽減に役立つ先進的な機能を搭載した車には「ASV割引」を適用している。また、東京海上日動火災保険のように、レベル3以上の自動運転中に発生した事故であれば、保険金を支払った場合でもノンフリート等級が下がらず更新契約の保険料負担が増えない取り扱いとする取り組みなども行われている。
将来、非常に完成度が高い自動運転車が誕生すれば、ほぼ無料の自動車保険が本当に誕生するのかもしれない。
■【まとめ】将来各社のADASや自動運転技術がスコア化される?
自家用車市場においてもレベル3が実用化され、ADASの安全水準も年々高まっている。今後、テレマティクス保険の普及とともに各メーカーのADASや自動運転技術の安全性も個別にスコア化され、細かく料金設定される日が訪れるかもしれない。
自動運転技術の高度化とともに、自動車業界同様保険業界も変革を迫られるのは間違いなさそうだ。
【参考】関連記事としては「自動車保険の一括見積もりサイト、おすすめ3社の特徴解説!メリットは?」も参照。












