自動運転、進む医療領域での活用!米Nuroが処方薬の配送開始

将来は「遠隔医療」も自動運転車両で?





出典:Nuro公式ブログ

自動運転開発を手掛ける米スタートアップのNuroが米薬局チェーン大手のCVS Pharmacyと提携し、テキサス州ヒューストンで無人の自動運転車を活用した処方箋配達のパイロットプログラムに着手する。

Nuroは2019年4月にスーパー大手のKroger、同年6月に宅配ピザ大手のDomino’s、同年12月にスーパー大手のWalmartと公道実証に向けた取り組みをヒューストンで開始することをそれぞれ発表しており、パイロットプログラムの輪が確実に広がっている。







食料品などに始まり、医療領域にも広がりを見せ始めた自動運転配送の取り組みは、新型コロナウイルスの影響で確実に加速している。

Nuroの取り組みを中心に、医療分野における自動運転技術の活用例を見ていこう。

■Nuroの取り組み
Nuroとは?

Nuroは、米Googleの自動運転車開発チームに所属していたエンジニアが2016年に設立したスタートアップで、小型モビリティより一回り小さいサイズの配送用自動運転車の開発を進めている。2019年2月には、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から9億4000万ドル(約1030億円)の出資を受けることも発表された。

現在主力となっている自動運転配送車R2は、360度の視界を確保するカメラやLiDAR(ライダー)、超音波、レーダーなどのセンサーで自律走行を可能にしている。最高速度約40キロ、荷室容量は634リットルほどで、幅広い食料品に対応できるよう温度制御を可能としている。

ヒューストンのほか、アリゾナ州スコッツデールでもKroger傘下のFry’s Foodと提携し、食料品の配達を行う公道実証プログラムを実施している。

2020年4月には、カリフォルニア州からも公道走行許可を取得したと発表している。

CVSとの取り組み

CVSは北米で1万近い店舗を展開するドラッグストアチェーンで、デジタルトランスメーション化を図り処方薬宅配の全国展開を進めている。米国の76%以上の人がCVS薬局から5マイル以内に住んでおり、同社は毎日全国450万人の顧客にサービスを提供しているという。

CVSと無人宅配を手掛けるNuroとの結び付きは必然とも言え、新型コロナウイルスの感染拡大の観点からも、医療分野での配送提携が今後拡大する可能性も考えられそうだ。

今回の提携では、ヒューストンのパイロットエリアにいるCVSの利用者が同社のサイトやアプリを利用してその他商品を含む薬を注文し、自動配送オプションを選択すると、3時間以内に希望した住所に自動運転車が配送する。当初はプリウスを改造した車両を用い、R2に切り替えていくようだ。

出典:Nuro公式ブログ
米国における自動運転車の公道走行環境が着実に進展

こうした実用実証が盛んに行われる背景に、自動運転車に対する米国の許認可制度が挙げられる。各州の法規制のもと、無人の自動運転車が公道を自由に走行できる環境が着々と整ってきているのだ。

米国では、日本同様自動車は手動運転が前提であり、ミラーやハンドルなどを備える必要がある。連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠していない場合は、NHTSAへ一時的な免除を申請し、許可を受けなければならない。

しかし、自動運転システムの安全な社会実装を促進する動きが活発で、NHTSAは自動運転システムの導入において不必要となる規制障壁の撤廃に向け、2019年にパブリックコメントを募集するなど新技術の実装を後押しする取り組みを進めている。

2020年2月には、Nuroが申請していた「特定の低速車両における標準要件を一時的に免除」するという要求を認め、2年間にわたりR2を5000台以下生産・配備することを許可した。

R2はサイドミラーやハンドルがなく、フロントガラスも視界を確保する目的で設置されていない。無人運転を前提とした設計で、既存の規制では対応不可能な仕様となっている。

エレイン・L・チャオ米国運輸長官は今回の認可に対し、「低速自動運転の配送車両であるため、同省が伝統的に要求していたミラーなどの特定機能はもはや意味がない」としている。また、NHTSA代表管理者のジェームズ・オーウェン氏は「NHTSAは革新的な車両設計を含む高度な車両技術の安全なテストと展開を促進することに専念しており、将来の安全性の向上に大きな期待を寄せている」と話している。

無条件ではないものの、一定エリアで実用実証を進めやすい環境が整いつつある米国。道幅が狭い日本と単純比較はできないものの、公道での無人走行を可能としている点で、実用実証面での日本の遅れが気になるところだ。

■医療×自動運転の取り組み
各社がコンタクトレス配送に注目

新型コロナウイルスの影響が深刻化する2020年4月、Nuroは商品を非接触で受け渡し可能な無人車両を感染拡大防止に役立てることができないか検討し、代替医療施設として患者を収容する屋内競技場や多目的施設で、医薬品の配送などで活用している。

また、フロリダ州では、医療施設のMayo Clinicが仏NAVYAの自動運転バス「NAVYA ARMA」を活用し、コロナウイルス検体の輸送を行っている。

一方、中国ではEC大手のJD.com(京東商城)が武漢市で、配送ステーションから600メートル先の病院まで自動運転配送車両で医薬品を配送する取り組みを行っている。

公道走行が原則として不可能な国内では、ソフトバンクグループのアスラテックが医療機関などを対象にロボット活用ソリューションの無償提供を発表している。

人と人の接触を減らすのに役立つ配達ロボットとして、自律走行型ロボット「RICE」による無人配送ソリューションをはじめ、「VRcon for Pepper」による遠隔会話ソリューション、遠隔操縦型ロボットによる消毒ソリューションの提供を行っている。

将来的には自動運転車を活用した遠隔診断も

今後は、自動運転車両を用いた遠隔医療診断の登場なども考えられる。感染拡大を踏まえたオンライン診療・相談が全国で広がり、CT画像を判定する遠隔読影や画像診断サービスなども登場しており、オンラインによる遠隔診療は今後も研究開発が進んでいくものと思われる。

フィリップス・ジャパンのように、医療×MaaS(Mobility as a Service)に着目した実証も進められており、モビリティを活用した取り組みも加速する可能性がある。

自動運転車であれば、一定の設備を備えた無人の車両を各地に派遣することが可能になり、軽症患者や感染の疑いがある人の移動や接触を最小限に抑えつつ対応にあたることが可能になる。

【参考】自動運転技術の活用については「皮肉にも新型コロナが気付かせた自動運転の有用性 中国での活用方法は?」も参照。

■【まとめ】モノの輸送を担うレベル4開発にも注力を

米国や中国を筆頭に公道走行を含めた実用実証が着実に進んでいる印象だ。規制が追い付かない日本では施設内での活用が中心となっているため、技術開発の点で大きく水をあけられる恐れがありそうだ。

より実態に即した実証を行うには、公道の使用が不可欠となる。国内では、人の移動に比べモノの輸送に特化した自動運転レベル4の実証が乏しく、この分野に力を入れる企業の登場を熱望したい。

また、自動運転やMaaSと医療の結びつきは、感染症対策以外でも有用な場面が多く想定されるため、医療施設を巻き込む形で新たなモビリティの研究開発が進むことにも期待したいところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転・MaaSは「医療」にも貢献する」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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