自動運転向けのクラウドプロバイダーまとめ!活用事例も解説

AmazonやMicrosoftが存在感、中国勢も虎視眈々



ITやテクノロジー企業が相次いで参入する自動運転分野。グーグル系Waymoのように自ら自動運転車を開発し、業界をリードする姿も目立つが、このほかにも大きな伸びを見せている事業領域がある。クラウドコンピューティングサービスだ。







開発段階、サービス実装段階を問わずクラウドの利用がスタンダードになりつつあるといっても過言ではなさそうだ。

この記事では、自動運転におけるクラウドの活用方法や、クラウドプロバイダー各社の取り組みを解説していく。

■自動運転向けのクラウドサービスを展開している企業
Amazon:「AWS(Amazon Web Services)」を展開

世界1位のシェアを誇るクラウドコンピューティングサービス「AWS(Amazon Web Services)」には、AI(人工知能)・ML(機械学習)、IoT、HPC、データ分析などさまざまなサービスが用意されている。

自動運転開発においては、膨大なストレージとコンピューティング性能、Apache MXNetやTensorFlow、PyTorchといったディープラーニングフレームワークのサポートにより、アルゴリズムのトレーニングやテストを加速させることができるという。

AWSはトヨタヤホンダ、デンソー、フォルクスワーゲン、BMW、ヤマハ、Uber、Lyft、HERE Technologiesなどをはじめ、ティアフォーやMomenta、TuSimpleといった自動運転開発を手掛けるスタートアップも数多く利用している。

ティアフォーは、自動運転車両の運行に必要な各種サービスを搭載したプラットフォームを、AWS IoT CoreやAWS Fargateなどのマネージドサービスを用いて構築しているという。また、トヨタ子会社のウーブン・プラネット・グループ(旧TRI-AD)は、Amazon EC2 P3インスタンスを使用することでAIトレーニングに要する時間を大幅に短縮できたという。Momentaは、開発当初からAWSを導入している。

Google:「Google Cloud Platform(GCP)」を展開

グーグルは「Google Cloud Platform(GCP)」というクラウドサービスを展開している。自動運転関連では、統合 AI プラットフォーム内のトレーニング済みのカスタムツールを使用してMLモデルの構築やデプロイ、スケーリングを高速化できるVertex AIが多く活用されているようだ。TensorFlowやPyTorchなどの機械学習オープンソースフレームワークもすべてサポートしている。

GCPは、グループのWaymoをはじめトヨタや日産、三菱自動車、フォード、FCA(現ステランティス)、ボルボ・カーズ、ルノーなどが採用している。

トヨタのカナダ法人や日産などはマーケティングにGCPを活用しているほか、フォードはコネクテッドカー、FCAはAR(拡張現実)、ボルボカーズはインフォテインメントシステムなどの領域でそれぞれ活用しているようだ。

Microsoft:「Microsoft Azure」を展開

マイクロソフトは、クラウドコンピューティングサービス「Microsoft Azure」を武器に自動車業界との関わりを深めている。

ソリューションでは、シミュレートした数十億マイルものデータをGPUや自動運転ソフトウェアのような高度なハードウェアを使用し、センサーの性能を素早くテストすることができる「Azureハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)」や、コネクテッドカーイノベーションのアクセラレータとして Azure サービスを利用でき、ADASや自動運転システムの開発・テストに活用できる「Microsoft Connected Vehicle Platform」などを提供している。

また、シミュレーター開発を手掛けるCognataと大規模クラウドベースのシミュレーション実現というビジョンを共有し、CognataのシミュレーションソリューションをAzureクラウドで利用できるようにしている。

自動運転関連では、アウディが自動運転開発にAzureベースのシミュレーションを活用しているほか、2019年にアセントロボティクスが自動運転テクノロジーの開発に向けAzureを活用することに合意したと発表している。

2021年には、GM Cruiseと長期的な戦略的関係を結び、自動運転車の商用化に向けソフトウェア・ハードウェアエンジニアリングとクラウドコンピューティングの機能、製造ノウハウ、パートナーエコシステムを集結し、移動手段の変革に向け共同開発を進めていくことを発表した。

また、フォルクスワーゲングループとも自動運転機能のアジャイル開発実現に向け自動運転プラットフォームを構築していくことが発表されている。

このほか、ボッシュとも車載ソフトウェアの開発コストの低減や実装スピード加速に向け、Azureをベースにした新しいソフトウェアプラットフォームを開発することも発表している。

【参考】Cruiseとの提携については「GM&Cruise、自動運転タクシー実現へ前進!Microsoftと提携、Azure採用」も参照。

IBM:「IBM Cloud」を展開

IBMはAIや機械学習、データベース、オートメーションなど各種機能を提供可能な「IBM Cloud」を展開している。

自動車関係では、ホンダが車体の設計者と車載ソフトウェアの設計者の協働を支えるデータ活用技術構築に向けIBMソリューションを活用しているほか、フォルクスワーゲンは車内サービスの強化に利用している。ダイムラーは2020年、アフター・セールス・ポータルをIBM Cloudに移行している。

自動運転関連では、スタートアップの米ローカルモーターズが2016年、拡張知能「IBM Watson」を使用している。

百度(バイドゥ):アポロ計画でクラウドHDマップなどを提供

中国の自動運転開発をけん引する百度も、オープンソースプラットフォームを活用した開発連合「アポロ計画」の中で、クラウドサービスプラットフォームとしてHDマップやシミュレーション、セキュリティ、OTA、V2Xなどのサービスを提供している。

開発者向けのオープンソースプラットフォームは、クラウド活用の利点が大きい。ストレージ機能を主体としたクラウド「Baidu Wangpan」を展開する同社が、将来的に自動運転開発に特化した新クラウドサービスを立ち上げる可能性も否定できないだろう。

アリババ:「Alibaba Cloud」を展開

自動運転分野への進出を強めるアリババも、アマゾンなどと同様クラウドコンピューティングサービス「Alibaba Cloud」を提供している。

グローバル化の点でアマゾンなどに比べ遅れをとっており、自動運転分野における実績は乏しいが、自動走行ロボットやシミュレーションプラットフォームを自社開発するなど意欲的に同分野への関わりを深めている。

2021年5月には、スタートアップを支援するBMWの中国法人BMW Startup Garage Chinaとともに「Joint Innovation Base」を開設した。アリババのクラウドコンピューティングやBMWビジネスユニットへのアクセスを提供し、自動車業界のイノベーションに向けスタートアップのサポートを強化する狙いだ。

グローバルな展開は未知数だが、巨大な中国市場をめぐる開発競争の過程で急浮上する可能性もありそうだ。

テンセント:「Tencent Cloud」を展開

中国では、ビッグ3の一角であるテンセントもクラウドに強い。「Tencent Cloud」では、高速コンピューティングとグラフィックス処理能力を備えたクラウドサーバーでさまざまなサービスを提供している。

同社は2019年にBMWと提携し、自動運転向けのシミュレーションプラットフォームを備えたデータセンターを建設すると発表している。このシミュレーションプラットフォームはクラウドベースとなっているようだ。

自動運転分野では百度やアリババに比べおとなしい同社だが、今後クラウドサービスを武器に新たな展開を見せることも考えられそうだ。

■自動運転でクラウドはどのように活用される?

自動運転車は、車両に搭載した各種センサーでさまざまなデータを収集・解析しながら走行する。カメラやLiDARなどのデータをもとに周囲の状況を把握し、どのように車両を制御すべきかAIが判断する仕組みだ。

加えて、ダイナミックマップやV2V(車車間通信)、V2I(路車間通信)などを活用し、常時さまざまなデータを通信することで自動運転の精度を高める。

【参考】関連記事としては「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。

自動運転車が扱うこうした各種データは、個々の自動運転車で消費してしまうのではなく、共有することで自動運転社会全体の安全性や効率性を高めることができる。センサーデータはリアルタイムの道路交通情報として有益なほか、高精度3次元地図の更新にも役立つ。さらには、ビッグデータとしてAI認識技術の向上に資する側面なども持っている。

個々の自動運転車のデータは、集約することでその価値を何倍にも高めることができるのだ。この際、活躍するのがクラウドだ。大量のデータを保存するサーバーとしての機能はもちろん、クラウド側に備えた高性能AIで効果的にアルゴリズムを生成することもできる。

ソフトウェアやアプリケーションを提供することも可能なため、収集されたデータをもとに分析した結果をさまざまな形でフィードバックすることも可能だ。

また、データ処理の過程でもクラウドに利点が生まれる。クラウド側に備えた高性能GPUやAIを活用してデータ処理を行うことが可能なため、各自動運転車に搭載するコンピュータのコストを抑えることも可能になる。

■エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違いは?

自動運転においてクラウドコンピューティングが支持を集める一方、エッジコンピューティングも存在感を高めている。

エッジコンピューティングは、利用者に近い側(エッジ)にコンピュータを配置し、データ処理を行う。各家庭のパソコンやスマートフォンでデータ処理を行うイメージで、自動運転では各車両、あるいは各車両に近い位置でデータ処理を行うことを指す。

「クラウドでデータ処理を行った方が効率的では?」――といった疑問が浮かぶが、ことはそう簡単ではない。自動運転車が生成するデータや必要とするデータは膨大で、1台1日あたり数テラバイト単位になると想定されている。この数字は、自動運転やコネクテッドサービスの進化に伴いさらに大きなものへと変わっていくことも予想に難くない。

将来、コネクテッドカーや自動運転車が普及すると、こうした膨大なデータがあちこちで無数に生成されることになるが、5Gを含めた現在の通信網ではこのデータを支えることができなくなる。肥大化し続けるデータに対し、通信技術やインフラが追い付かなくなり、ネットワークリソースやコンピューティングリソースの両方に大きな負荷がかかることになるのだ。

自動運転においては、センサーが取得したデータをリアルタイムで解析して自動車の制御を行う必要がある。データ処理に即時性が求められており、クラウドとの通信に遅延が生じるのは致命的となるのだ。

このため、即時性が求められるデータ処理はエッジコンピューティングで行い、ビッグデータとして後々処理するデータはクラウドコンピューティングで行うなど、「データの住み分け」を進める必要がある。特定エリアで限られた数のコネクテッドカーをカバーするローカルネットワークを構築するなど、効果的な分散コンピューティングを実現するシステムやインフラが近い将来重要となりそうだ。

■【まとめ】自動運転分野におけるクラウド需要は右肩上がりに

自動運転の開発段階においてはオープンソースのプラットフォームサービスなども存在感を高めており、クラウドコンピューティングを活用した取り組みは今後いっそう進展しそうだ。

また、将来的には高精度3次元地図の作製などにおいてもクラウドの活用に期待が持たれる。協調領域として各社がデータを持ち寄り、世界の主要道路を網羅するのだ。

いずれにしろ、現状は自動運転開発とコネクテッドサービス関連が軸となる。効率的な開発とサービス提供に向け、クラウドの需要はまだまだ伸びを見せそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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